中小企業省力化投資補助事業(一般型)第5回公募の変更点とその対策!

中小企業省力化投資補助事業(一般型)は、人手不足という構造的課題を抱える中小企業に対し、IoTやロボット等のデジタル技術を活用した設備投資を支援する制度です。本記事では、第4回公募と第5回公募の公募要領を比較し、制度設計上の主な変更点とその背景について整理・分析します。

1.制度の基本的な考え方は維持されている

第4回公募と第5回公募はいずれも、省力化投資を通じて生産性および付加価値額を高め、その成果を賃上げにつなげることを制度の中核的な目的としています。

この点において、制度の根本的な方向性に大きな変更はありません。

一方で、第5回公募では、賃上げ要件や補助率の設計が見直され、補助金を受け取る事業者に対して、より明確な「成果の実現」が求められる制度へと進化しています。

2.最も大きな変更点:賃上げ要件の見直し

第4回公募の賃上げ要件

第4回公募では、賃上げ要件として次のいずれかを満たす事業計画の策定が求められていました。

給与支給総額の年平均成長率を 2.0%以上 増加させる

または、1人当たり給与支給総額の年平均成長率を、事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上とする

つまり、「給与総額」か「1人当たり給与」のどちらかを達成すればよい、比較的柔軟な設計であったと言えます。

第5回公募の賃上げ要件

これに対し、第5回公募では、賃上げ要件が次のように一本化されました。

1人当たり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上増加させること

この3.5%という数値は、日本銀行が掲げる物価安定目標(2.0%)に、実質的な賃上げを意味する1.5%を上乗せした水準です。
制度として、名目上の賃上げではなく、実質賃上げの実現を明確に求めている点が特徴です。

また、第4回公募で認められていた「給与支給総額」による代替的な達成方法は廃止され、評価指標は「1人当たり給与支給総額」に一本化されました。

この変更が意味するもの

この見直しにより、第5回公募では、

従業員数の増減や構成調整による形式的な要件達成が難しくなり

省力化投資による収益改善が、個々の従業員の賃金上昇として確実に還元されているか

が、より厳しく問われる制度設計となっています。

3.補助率・補助額構造の変更点

第4回公募の補助率構造

第4回公募では、補助率が補助金額によって段階的に区分されていました。

補助金額1,500万円までの部分

1,500万円を超える部分

補助金額が大きくなるにつれて、補助率が低下する構造であり、大規模な投資ほど自己負担が増える仕組みでした。

第5回公募の補助率構造

第5回公募ではこの区分が見直され、

従業員規模ごとに定められた補助上限額まで、同一の補助率を適用

する仕組みに整理されています(※一部特例措置を除く)。

実務上の影響

この変更により、第5回公募では、

比較的大きな省力化投資やシステム構築を計画する場合でも

補助率の急激な低下を過度に懸念する必要がなく

設備投資額と補助金額の関係が、より分かりやすくなったと言えるでしょう。

4.第5回公募の位置づけと評価

以上を踏まえると、第5回公募は第4回公募と比較して、次のような特徴を有しています。

賃上げ要件を厳格化し、成果としての賃金上昇を重視

補助率構造を簡素化し、中長期的な省力化投資を後押し

採択後も、事業計画期間を通じた継続的な経営改善と賃上げの実行を強く要求

すなわち、第5回公募は、単なる設備導入支援にとどまらず、

省力化投資 → 生産性向上 → 付加価値創出 → 賃上げ

という一連の経営改善プロセスを、より確実に実現させることを目的とした制度へと位置づけが明確化されたものと評価できます。

5.第5回公募に向けた実務的な対策

第5回公募では、制度の方向性が明確になった分、対策の立て方次第で評価に大きな差が生じやすい公募となっています。以下では、特に重要となるポイントを整理します。

(1)賃上げ要件は「数値」ではなく「構造」で示す

第5回公募において最も重要なポイントは、
1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上
という賃上げ要件です。

ここで注意すべきなのは、単に数値目標を置くだけでは不十分であるという点です。審査では、

なぜその賃上げが可能なのか

一時的ではなく、継続的に実現できるのか

といった**賃上げの「構造的な妥当性」**が重視されます。

対策のポイント

省力化投資によって削減される工数・時間を具体的に示す

削減されたリソースを、売上拡大・高付加価値業務へどう振り向けるかを明確にする

その結果として生まれる利益が、どのように人件費へ配分されるかを説明する

つまり、
省力化 → 収益改善 → 賃上げ
の因果関係を、事業計画全体で一貫して示すことが不可欠です。

(2)「給与総額」ではなく「従業員一人ひとり」を意識した設計

第4回公募まで可能であった「給与支給総額」による調整が認められなくなったことで、第5回公募では、従業員個々の処遇改善がより強く問われます。

対策のポイント

従業員数の増減に依存しない賃金設計を行う

職種・役割に応じた賃金改定の考え方を示す

評価制度や役割分担の見直しと賃上げを関連付ける

「何人雇っているか」ではなく、
「一人当たりで見たときに、どれだけ生産性と報酬が上がるのか」
を説明できるかが、評価を左右します。

(3)補助率の簡素化を踏まえた投資計画の立て方

第5回公募では、補助率が上限額まで一定となったことで、投資規模に関する自由度が高まりました。

しかしこれは、「高額投資をすればよい」という意味ではありません。

対策のポイント

投資額が事業規模や売上計画と整合しているかを確認する

導入設備が省力化にどう寄与するのかを定量的に示す

過剰投資と見なされないよう、段階的な投資計画を検討する

補助率が一定であるからこそ、
「なぜこの金額、この設備なのか」
という説明責任は、むしろ重くなっていると考えるべきです。

(4)採択後を見据えた「実行可能性」の担保

第5回公募では、採択後の事業実施や効果報告を含め、計画の実行可能性がより重視されています。


対策のポイント

現場の体制(人員・スキル・外部支援)を具体的に記載する

スケジュールは余裕を持たせ、実現性を優先する

数値目標については「やや保守的」と思われる水準を設定する

無理に高い目標を掲げるよりも、
「確実に達成できる計画を、確実に実行する」
という姿勢が、結果的に評価を高めます。

(5)第5回公募で求められる事業者像を意識する

第5回公募は、制度全体として、

省力化を経営改善につなげられる事業者

補助金に依存せず、自走できる事業者

成果を従業員に還元できる事業者

を選別しようとする意図が、より明確になっています。


対策のまとめ

補助金は「目的」ではなく「手段」として位置づける

経営全体の改善ストーリーの中に、省力化投資を組み込む

賃上げを経営の結果として自然に説明できる計画を作る


おわりに

第5回公募では、制度のハードルが上がった一方で、考え方が明確になった分、対策の方向性は読みやすくなったとも言えます。

表面的な数値合わせではなく、
省力化投資を起点とした経営改善の一貫性
をどこまで丁寧に描けるかが、採択を左右する最大のポイントになるでしょう。

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