【令和8年(2026年)】大規模成長投資補助金 第5次 採択結果分析|採択77社から読み解く新事務局NRI体制の評価軸
令和8年(2026年)5月、経済産業省「中堅・中小・スタートアップ企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」第5次公募の採択結果が公表されました。有効申請198件に対して採択は77件、採択率は約38.9%となり、第3次・第4次の高水準(50%前後)と比較するとやや絞り込まれた結果となっています。
第5次公募は事務局がTOPPAN株式会社から株式会社野村総合研究所(NRI)へ変更され、ポータルサイトもリニューアル(https://chukentou-seichotoushi-hojo.jp/)されました。同時に正式名称への「スタートアップ企業」の追加、投資額要件の20億円への引き上げ、賃上げ要件5.0%への厳格化、100億宣言企業向け類型の新設という、制度の根幹に関わる大きな改正が同時に実施された公募回でもあります。
本記事では、採択企業77社の業種・地域分布と、事務局公表の中央値データをもとに、第5次公募で実際に評価された数値水準と業種傾向を整理します。第6次公募(令和8年夏頃実施予定)への準備を進める経営者の方はもちろん、認定支援機関や金融機関で大型案件のサポートに携わる方にも参考になる内容です。
第5次公募の採択結果サマリー
第5次公募の有効申請は198件、最終的に採択された企業は77件で、採択率は約38.9%となりました。総額4,121億円(既存基金2,121億円+新規2,000億円)という拡充された予算枠を背景に、新事務局のもとで初めて実施された公募回です。
公募スケジュールと審査の流れ
過去公募回との採択率比較
第1次・第2次は採択率が10%前後と非常に厳しい狭き門でしたが、第3次以降は投資額要件の引き上げ等により申請件数が落ち着き、採択率は上昇傾向にあります。第5次は申請件数が198件と過去最少水準まで絞られた一方で、採択率は40%弱と第3次・第4次に比べてやや低下しました。
💡 POINT:第5次公募で採択率が前回より下がった背景には、投資額要件の20億円への引き上げ・賃上げ5.0%の厳格化により「制度趣旨に合致しない申請」が自然淘汰されたうえで、それでも198件もの強い申請が集まったことがあります。実質的に「強い案件同士の競争」になったと整理されます。
📌 セクション要約:第5次公募は申請198件・採択77件で採択率約38.9%。第4次までの48〜51%から低下したが、投資額要件20億円・賃上げ5.0%という厳格化された要件下で198件の有効申請が集まった点を踏まえると、「強い案件同士の競争」が進んだ公募回と読み取れます。
第5次公募の制度改正と新事務局体制
第5次公募は事務局の交代と並行して、制度の根幹に関わる4つの大きな改正が同時に実施されました。採択結果を読み解くうえで、これらの改正点を前提として理解しておく必要があります。
事務局の変更とポータルサイトのリニューアル
第1次〜第4次までの事務局は TOPPAN株式会社でしたが、第5次公募からは株式会社野村総合研究所(NRI)が事務局を受託しています。基金設置法人は引き続き一般社団法人環境パートナーシップ会議が担っています。
公式ポータルサイトも新URL「https://chukentou-seichotoushi-hojo.jp/」へとリニューアルされ、過去の seichotoushi-hojo.jp とは別ドメインとなりました。お問い合わせ先や様式ダウンロードも全て新事務局側に統一されているため、旧事務局(TOPPAN)への誤問い合わせには注意が必要です。
主な制度改正4点
⚠️ 注意:賃上げ要件の評価対象から役員が除外された点は、これまでの公募で役員報酬を計算に含めることで賃上げ率を確保していた申請パターンが通用しなくなったことを意味します。第6次公募以降を検討する企業は、従業員側だけで5.0%の年平均上昇率を達成できる人件費計画へと組み直す必要があります。
採択77社の業種・地域分布
採択77社の業種構成を見ると、製造業が圧倒的多数を占めており、その中でも食品関連製造業・半導体関連・防衛宇宙・医薬品バイオといった政策重点分野に該当する案件が目立ちます。地域別では愛知県・東京都・大阪府・福岡県といった大都市圏に加え、北陸・四国・九州にも採択が分布しており、全国的な広がりが確認できます。
業種別の採択傾向
📝 補足:戦略17分野(半導体、防衛、航空・宇宙、データセンター、医薬品、食品基幹インフラ等)に該当する事業は、第5次公募で「重点化された想定事例」として政策的に評価される傾向が強まっていると整理されます。事業計画書の冒頭で戦略17分野のどこに位置付くのかを明示することが、評価上の有効な要素になっています。
地域別の採択分布
本社所在地ベースで集計すると、愛知県(9件)が最多、次いで東京都(8件)、大阪府・福岡県(各6件)と続きます。地方圏でも北海道(3件)、石川県(3件)、徳島県(3件)、三重県(3件)など各地域で着実に採択が出ており、地域経済牽引型の大型投資案件が全国的に支援されている構造が読み取れます。
📌 セクション要約:採択77社の業種構成は食品・半導体・機械金属・医薬品・防衛宇宙が中心。戦略17分野への該当性が評価軸として強く効いており、地域別では大都市圏だけでなく地方圏にも採択が分布しています。
採択者中央値から読み解く評価水準
事務局公表の「第5次公募における各種指標の中央値」を見ると、採択者と申請者全体の差から、どの指標で差が付いたのかが浮かび上がります。これらの指標は審査項目(経営力/先進性・成長性/地域への波及効果/大規模投資・費用対効果/実現可能性)と一致しており、申請事業者にとって計画水準の重要なベンチマークとなります。
採択者中央値 vs 申請者全体中央値(第5次)
採択者と申請者全体で差が大きい指標
採択者中央値と申請者全体中央値を比較すると、差が顕著な指標は以下の通りです。これらは「採否を分けたポイント」として読み取れる重要指標と理解する必要があります。
💡 採否を分けた重要指標
- 補助金額に対する付加価値増加額割合:採択213% vs 全体171%(差42pt)
- 全社売上高増加額:採択+82.4億円 vs 全体+67.1億円(差15.3億円)
- 補助事業売上高増加額:採択+74.8億円 vs 全体+57.4億円(差17.4億円)
- 補助事業付加価値増加額:採択+28.1億円 vs 全体+19.9億円(差8.2億円)
- 全社売上高に対する補助事業売上高割合:採択89% vs 全体80%(差9pt)
- 従業員給与支給総額の増加額:採択+3.9億円 vs 全体+2.8億円(差1.1億円)
特に注目すべきは「補助金額に対する付加価値増加額割合」で、採択者213%に対して申請者全体171%と42ポイントの大差が出ています。この指標は「投入した補助金が何倍の付加価値を生み出すか」という費用対効果の指標であり、政策側が最も重視する論点の一つと整理されます。
あわせて「全社売上高に対する補助事業売上高割合」が89%と高水準であることから、採択された案件は「会社全体の屋台骨となる主力投資」であることが読み取れます。本業の延長線上にある周辺投資ではなく、5〜10年後の企業の中核を担う事業への投資が評価されているという見方ができます。
⚠️ 注意:これらの中央値はあくまで「採択された企業のちょうど真ん中の数値」であり、これを上回れば必ず採択されるという保証ではありません。逆にこれらの水準を下回る計画は、書面審査段階で「実現可能性が高い計画」として評価されにくい可能性があるため、申請時点で数値の根拠と達成シナリオを十分に整備しておく必要があります。
第6次公募への準備のポイント
第6次公募は令和8年(2026年)夏頃の実施が想定されています。第5次の採択結果と中央値データから、第6次公募で意識すべき準備のポイントを整理します。
準備期間の確保が最重要
第5次公募の公募期間は約1ヶ月(2月27日〜3月27日)と非常に短く、20億円以上の大型投資計画を1ヶ月で仕上げるのは現実的に困難です。第6次公募に向けては、夏の公募開始の2〜3ヶ月前(つまり春先)からの本格準備が必要です。
数値計画の解像度を中央値以上に
採択者中央値の数値水準を一つの目安として、特に以下の3指標で「中央値超え」を狙える計画を組むことが重要です。
- 補助金額に対する付加価値増加額割合:213%以上を目標とする
- 補助事業付加価値増加額:+28億円以上の付加価値増加を計画する
- 全社売上高に対する補助事業売上高割合:本業の中核投資として89%以上を目指す
金融機関の確認書取得は事実上の必須要件に
第5次公募の採択77社のうち、ほぼ全ての企業が金融機関の確認書を提出しています。地銀・メガバンク・日本政策金融公庫のコミットメントは採択評価上の重要な加点要素であり、第6次公募でも同様の傾向が続くと予想されます。資金調達計画と並行して、早い段階で取引金融機関と確認書取得の調整を進めることが賢明です。
戦略17分野との接続を明確に
採択77社を見ると、半導体・防衛・宇宙・医薬品・データセンター・食品基幹インフラといった戦略17分野関連の事業が評価される構造が明確になっています。自社の事業がどの戦略分野とどう接続するかを事業計画書の冒頭で明示することが、第6次公募以降でも重要な要素となります。
まとめ:第5次採択結果から押さえる5つのポイント
よくあるご質問(Q&A)
❓ Q1.第5次公募の採択率はなぜ第3次・第4次より下がったのですか?
A1.要件厳格化のもとで強い案件同士の競争になったためです。第5次公募では投資下限額が10億円から20億円へ、賃上げ要件が4.5%から5.0%へ引き上げられ、さらに賃上げ算定から役員が除外されました。これにより制度趣旨に合致しない申請は自然淘汰されたものの、それでも198件の有効申請が集まり、実質的に「中央値を上回る強い計画同士の競争」になったと整理されます。採択率の数字だけを見て「難化した」と判断するよりも、要件厳格化後でも採択された企業の数値水準を理解することが重要です。
❓ Q2.100億宣言企業向けの類型と一般類型はどちらが有利ですか?
A2.要件水準だけ見れば100億宣言企業向けが有利ですが、申請には事前の宣言公表が必要です。100億宣言企業向けは投資下限15億円・賃上げ4.5%と要件が緩和されており、新規公募分2,000億円のうち1,000億円程度が確保されています。ただし、申請にあたっては売上高10億円〜100億円未満の中小企業として「売上高100億円を超える企業になること」を経営者自ら宣言・公表する必要があり、宣言は一定のIR的な重みを持ちます。安易に類型選択で要件を緩和するのではなく、長期成長ビジョンと整合した形で宣言できるかを慎重に検討する必要があります。
❓ Q3.第4次公募までで不採択だった企業は、第6次で再チャレンジできますか?
A3.再チャレンジは可能ですが、計画の全面的な見直しが必要です。第5次公募以降は投資下限額・賃上げ要件・対象者範囲が変更されており、第4次までの計画書をそのまま流用することは現実的に不可能です。特に賃上げ計算から役員が除外された点は、過去に役員報酬込みで4.5%を達成していた企業にとって大きな計画見直し要因となります。再チャレンジの場合は、新要件下で20億円以上の投資・従業員のみで5.0%の年平均上昇率を実現できる人件費計画へと組み直したうえで、不採択時のフィードバックを踏まえて事業計画の品質を引き上げる必要があります。
❓ Q4.金融機関の確認書がないと採択は難しいですか?
A4.加点要素であり、事実上の必須要件と捉えるのが実態に近い見方です。第5次公募の採択77社一覧を見ると、ほぼ全社で金融機関名が記載されており、確認書が提出されています。20億円以上の大型投資を計画する以上、自己資金だけでなく金融機関からの融資が前提となるケースがほとんどであり、金融機関のコミットメントは「実現可能性」の評価上、極めて重要な要素となります。早い段階でメインバンクと資金調達計画を共有し、確認書取得の調整を並行して進めることが賢明です。
❓ Q5.戦略17分野に該当しない事業は採択されにくいですか?
A5.該当しなくても採択は可能ですが、地域貢献の論点で代替する必要があります。採択77社には宿泊(加賀屋、KURASU KANAYA)、廃棄物処理(街クリーン、カンポ)、寝具(西川テックス)など戦略17分野に直接は該当しない事業も含まれます。これらの企業に共通するのは「地域経済への波及効果」「地方の雇用基盤の維持」「地域文化の継承」といった政策的価値を明確に打ち出している点です。戦略17分野以外の事業者は、地域への波及効果の論点で評価を獲得できる計画設計が重要となります。
❓ Q6.第6次公募はいつ頃の予定ですか?
A6.令和8年(2026年)夏頃の実施が想定されています。第5次公募が2026年2月〜3月で実施され、採択発表が5月であったことを踏まえると、第6次公募は2026年夏頃に公募開始される可能性が高いと予想されます。公募期間は例年通り約1ヶ月程度と短いため、公募開始の2〜3ヶ月前から事前準備に着手することが望ましいです。正式なスケジュールは新事務局(株式会社野村総合研究所)の公式ポータル(https://chukentou-seichotoushi-hojo.jp/)で随時公表される予定です。
❓ Q7.補助事業の事業実施期間はいつまでですか?
A7.交付決定日から最長で令和10年(2028年)12月末までです。大型の工場建設や設備導入を伴う案件では、用地取得・建築確認申請・施工・設備搬入・試運転といった一連の工程に時間がかかります。事業実施期間内に「設備の発注から納入、入金まで」を完了させる必要があるため、申請段階で工程表を厳密に組み、各年度の支出予定額を明確に示すことが求められます。期間延長は原則として認められないため、保守的なスケジュールを設定することが賢明です。
❓ Q8.賃上げ目標を達成できなかった場合はどうなりますか?
A8.未達成率に応じて補助金の返還が求められます。大規模成長投資補助金は「持続的な賃上げ」を制度の根幹に据えており、申請時に掲げた賃上げ目標(一般5.0%/100億宣言企業4.5%)を達成できなかった場合、未達成率に応じた補助金の返還を求められる仕組みになっています。天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は除外されますが、原則としてフォローアップ期間中(補助事業終了後3年間)の賃上げ実績は厳密に検証されます。申請段階で「無理のない範囲で確実に達成できる賃上げ計画」を組むことが重要です。
❓ Q9.ものづくり補助金や新事業進出補助金との併用はできますか?
A9.同一の建物・設備への併用はできません。大規模成長投資補助金で取得した建物・機械装置・ソフトウェア等について、他の国の補助金との重複は認められません。また、地域未来投資促進税制・中小企業経営強化税制・中小企業投資促進税制との併用も不可とされています。ただし、大規模成長投資補助金で工場新設を実施し、別の事業で別の経費にものづくり補助金や新事業進出補助金を活用することは可能です。投資全体のポートフォリオを設計するうえで、どの経費をどの制度に充てるかを設計段階から整理しておく必要があります。
❓ Q10.プレゼンテーション審査は誰が出席する必要がありますか?
A10.経営者の出席と説明が必須です。大規模成長投資補助金のプレゼンテーション審査(二次審査)は、外部有識者からなる審査会の前で経営者自身が事業計画を説明することが求められます。役員・事業部長・金融機関の同席は可能ですが、メインスピーカーは経営者でなければなりません。1次審査で提出した35ページの成長投資計画書がベース資料となるため、計画書の段階で経営者自身が腹落ちした内容に仕上げておく必要があります。スピーチ原稿の準備や想定問答の整備も含めて、プレゼンテーション対策は採択の最終関門として極めて重要です。
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