【分析】中小企業省力化投資補助金(一般型)採択結果から見る都道府県別傾向と注目事業
2025年6月16日に発表された中小企業省力化投資補助金(一般型)第1回公募の採択結果では、全国47都道府県から1,240件の事業が採択されました。都道府県別の採択件数や業種別の傾向から、地域ごとの特徴が明らかになっています。
都道府県別の採択件数トップは「大阪府」
最も多くの採択件数を記録したのは「大阪府(124件)」で、次いで「愛知県(108件)」「東京都(93件)」が続きました。大都市圏に中小製造業が集積していることが、採択数の多さに直結していると見られます。
業種別では「製造業」が6割超
採択案件のうち、61.7%を「製造業」が占めており、次いで「建設業(11.3%)」「卸売業(5.9%)」が続きました。省力化による生産性向上への期待が高く、自動化設備やロボット導入の申請が多く見られました。
各地の注目事業例
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北海道:「魚三枚卸し機の導入による増産」(水産加工)、「乾燥・選別ライン改良」(農業)など、地域資源を活用した自動化投資が多く採択されました。
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青森県:「AI検査機器の導入による食品製造業の生き残り計画」(八戸缶詰株式会社)など、DX化による業務効率化が進んでいます。
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栃木県:「配管工事の溶接の自動化」(株式会社ケーエムサービス)や「葬儀業のDX化による省力化」(有限会社誠和葬祭)など、幅広い業種での応用が目立ちました。
省力化のアプローチ
補助金の活用は、単なる機械導入にとどまらず、業務プロセス全体の見直しやDX推進といった広範な取組が評価されています。実際に採択された事例では、以下のような工夫が見られます:
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製造業:熟練技術者に依存していた溶接工程のロボット化
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建設業:紙図面を使わずQRコードによる指示自動化
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小売業:カットフルーツ加工の自動化による新製品開発促進
今後の公募に向けては、単なる機械化ではなく「人手不足の解消」「品質の安定」「新たな付加価値の創出」を狙った計画がカギとなりそうです。各地での創意工夫あふれる取り組みに注目が集まっています。
採択結果の分析と今後の傾向
1. 採択件数の地域的傾向
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都市部優勢:採択件数上位は、大阪府(124件)、愛知県(108件)、東京都(93件)。これらの地域は中小製造業の集積地であり、DXや省力化への関心が高い。
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地方も幅広く分布:全47都道府県から採択があり、地方でも積極的な取り組みが進んでいることが確認できる。例えば北海道(43件)、新潟県(27件)、福岡県(49件)など。
2. 業種別の傾向
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製造業が過半数超(61.7%):機械加工、食品製造、金属加工など、多くの業種で自動化・省人化が進む。設備投資への即効性があることから高採択率。
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建設業(11.3%)も目立つ:ICT施工や鉄筋加工の自動化など、熟練労働力の代替ニーズが高い。
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サービス業や農業分野でも採択あり:DXによる受付業務の自動化(宿泊業)、搾乳ロボット(畜産)など、幅広い業種に拡大。
3. 採択された事業の特徴
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オーダーメイドの自動化設備:単なる市販機器でなく、自社課題に合った機器の導入が評価されている。
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全体最適化(プロセス全体の見直し):例としてCAD連携、QRコード管理、生産・品質管理の統合など、業務全体の効率化を図る計画が多い。
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熟練者依存からの脱却:溶接、自動車整備、建築資材加工など、人に依存する工程の自動化が顕著。
4. 補助金額・企業規模の傾向
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申請額:最多帯は「1,500万円〜1,750万円未満」で17.6%と最多。
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企業規模:従業員数21~30人が最も多く13.2%。比較的小規模な中小企業による活用が中心。
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資本金帯:1,000~2,000万円未満が最多(34.0%)。中小製造業の典型的規模。
今後の傾向と予測
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地方のICT導入の拡大
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地方でも人材不足が深刻化。農業・林業・水産業へのスマート技術の導入が今後増加。
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複数設備の組み合わせが主流に
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一つの機器よりも「全体工程の自動化」が重視される傾向。IoT連携やクラウドシステムとの統合が増える見込み。
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サービス業・小売業でのDX化
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宿泊・飲食・小売などでも、予約・会計・在庫管理などの省力化ニーズが高まっており、次回以降の申請増が予想される。
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環境・脱炭素対応との融合
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今後、省力化と合わせて「省エネルギー」や「カーボンニュートラル」要素を兼ねた投資案件が注目される可能性がある。
【都道府県別分析】中小企業省力化投資補助金(一般型) 採択結果から見る地域ごとの特徴
都道府県別の採択傾向と地域ごとの特色を紹介します。
北海道・東北地方
北海道(43件)
農業や食品加工、水産業など地域資源を活かした分野で多数採択。ICT農機や自動梱包機、食品製造ラインの自動化など、幅広い業種での省力化が目立ちました。
青森県(10件)
製麺、缶詰、食品加工に加え、AI・IoT技術を活用した画像検査や作業効率化が多く、スマート農業・食品DX化が進展。
岩手・宮城・秋田県(各4件)
比較的少数の採択件数。建設業や製造業のロボット導入、食料加工の自動化に関する取組が確認されました。
山形県(14件)
繊維・印刷・食品・金属加工など多業種で機械化、自動化が進行。特にジャカード織機や紡績機など地域特性に即した設備導入が注目。
福島県(8件)
製本、自動車整備、食品製造分野での省力化が進み、地域産業における業務効率化がテーマ。
関東地方
東京都(93件)
情報通信業やサービス業を含む多様な業種で採択。DX・ロボット導入、クラウド型管理システムなど先進的な省力化事例が多い。
埼玉県(56件)・千葉県(29件)
製造業を中心に食品、印刷、鉄工、機械加工業での自動化事例が多い。AI検査装置や包装工程の無人化が目立つ。
神奈川県(33件)
工業、印刷、運送など中堅企業の設備投資が活発。特に製造ラインの高速化やクラウド統合管理の導入が多く見られました。
茨城・栃木・群馬県(21~32件)
製造・建設・農業分野でのスマート設備や自動化装置の導入が活発。栃木では食品加工、群馬では酒造や金属加工に特徴的事例。
中部地方
愛知県(108件)
大阪に次ぐ採択数。製造業の省力化ニーズが非常に高く、自動車部品・機械加工・溶接ラインの自動化が主力。
新潟・長野・静岡・三重(27〜46件)
食品・建材・精密機器分野での採択が目立ち、全体として堅実な業務改善や省人化が見られる。
近畿地方
大阪府(124件)
最多採択。製造・物流・サービス・医療など幅広い分野にわたり、特にロボット化、検査機器の導入が顕著。
兵庫府(47件)・京都府(31件)
伝統産業の革新を意識した省力化。京都では飲食業や小売業のデジタル化も進行。
中国・四国・九州地方
福岡県(49件)
九州トップ。食品・建設・IT連携型サービスが中心。DXやAI導入での新規顧客獲得も見込まれる。
広島県(28件)、岡山県(21件)
製造業、特に造船や金属加工の現場で自動溶接・自動切断設備の導入事例が多い。
香川県(10件)、徳島県(4件)、愛媛県(9件)
四国では機械加工や食品分野における自動化が進み、少数精鋭型の取組が目立つ。
沖縄県(13件)
観光業・食品加工・小売業が中心。DXツール導入や販売管理自動化など、人的リソースの削減に焦点。
総括
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都市部では多業種×DXが進展
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地方では食品・農業・建設業の省人化が顕著
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ロボット・IoT・クラウドなどの連携導入が増加傾向
今後は「業務全体の最適化」「付加価値の創出」を重視した提案が各地で増えると予測されます。次回公募に向け、地域の強みを生かした計画が重要です。
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中小企業省力化投資補助金(一般型)の申請サポート

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中小企業省力化投資補助金(一般型)