【令和8年度・東京都】暑さに配慮した職場環境づくり奨励金20万円|対象要件・対象物品・申請の流れを徹底解説

令和8年(2026年)4月27日、公益財団法人東京しごと財団は「令和8年度 暑さに配慮した職場環境づくり奨励金」の第1回事前エントリー受付を開始しました。令和7年(2025年)6月1日施行の労働安全衛生規則改正により、全事業者に対して職場の熱中症対策(体制整備・手順作成・関係者周知)が義務化された流れを踏まえ、対応リソースの限られる都内小規模企業を後押しするために設計された制度です。

本制度を理解するためには、本制度が「物品購入の補填制度」ではないという点を最初に押さえる必要があります。本制度の核心は、WBGT値(暑さ指数)の測定・評価から、作業環境管理・作業管理・健康管理・労働衛生教育・救急措置までを一体で職場に実装させることにあります。言い換えれば、単に冷房機器や冷却用品の購入費を補助する制度ではなく、「測定→評価→対策→記録→報告」というPDCAサイクルを職場に根付かせるための、総合的な職場環境改善支援制度として設計されています。

本記事では、制度誕生の政策的背景、対象事業者の要件、対象となる3つの取組、申請手続きの流れ、提出書類、活用戦略まで、経営者・労務担当者が知るべき情報を網羅しています。製造業・建設業・運輸業の経営者の方はもちろん、屋外作業や高温多湿の作業環境を抱える小売業・飲食業・サービス業の労務担当者の方にも参考になる内容です。

Contents
  1. 制度創設の背景と政策的意義
  2. 制度の基本的な仕組みと目的
  3. 対象事業者の要件
  4. 奨励金額・募集規模・年間スケジュール
  5. 対象となる3つの取組
  6. 申請手続きの流れ
  7. 提出書類と注意事項
  8. 類似制度・関連義務との比較
  9. 制度活用の実践的戦略
  10. 制度の課題と注意事項
  11. まとめ
  12. よくあるご質問
  13. 暑さに配慮した職場環境づくり奨励金の活用支援なら壱市コンサルティング

制度創設の背景と政策的意義

令和7年6月施行の熱中症対策義務化が出発点

本奨励金の意義を理解するためには、令和7年(2025年)に進んだ熱中症対策の法制度上の大きな変化を俯瞰する必要があります。厚生労働省は令和7年5月20日付で労働安全衛生規則の一部改正を行い、令和7年6月1日から全ての事業者に対して、熱中症の重篤化を防止するための「体制整備」「手順作成」「関係者への周知」を義務付けました

これは、近年の気候変動による猛暑日の常態化と、それに伴う職場における熱中症死傷災害の増加を受けた措置です。職場での熱中症は、屋外作業を行う建設業・運輸業に限らず、製造現場・倉庫・厨房・清掃業・警備業など幅広い業種で発生しており、いまや「特定業種の問題」ではなく「全産業に共通する経営リスク」となっています。

小規模企業の対応負担を軽減する補完策としての位置づけ

しかしながら、義務化が全事業者に一律に適用される一方で、小規模企業にとってはWBGT指数計の購入、スポットクーラーや電動ファン付き作業服の整備、労働衛生教育の実施、健康管理体制の構築といった対応を自力で進めるには、人的・資金的な負担が小さくありません。

東京都および東京しごと財団は、こうした義務化と現場対応力のギャップを埋めるべく、都内小規模企業等が熱中症予防対策に取り組んだ場合に20万円の奨励金を支給することで、職場環境づくりの実効性を高めようとしています。本制度は単なる物品購入助成ではなく、「義務化された取組の実装を行政が伴走支援する仕組み」と位置付けて理解しておくことが、制度の根幹をなす視点です。

制度の基本的な仕組みと目的

制度の正式名称と所管

項目内容
正式名称令和8年度 暑さに配慮した職場環境づくり奨励金
実施主体公益財団法人東京しごと財団 企業支援部 雇用環境整備課
制度目的都内小規模企業等における暑さに配慮した職場環境づくりの取組を促進すること
奨励金額1事業者あたり一律20万円(定額)
年間募集規模合計1,000社(年4回に分けて募集)
申請方式Jグランツ(GビズIDプライム必須)
採択方式抽選方式(先着順ではない)

制度設計の核心は「3つの取組をすべて実施」させる構造

本制度の名称が示す通り、「暑さに配慮した職場環境づくり」を核心に据えた制度です。言い換えれば、単に物品を購入する補助金ではなく、「測定→評価→対策→記録→報告」というPDCAサイクルを職場に根付かせることを目的とした制度設計になっています。

支給対象事業者は、以下の3つの取組を「すべて」実施する必要があります。一つでも欠けると対象外となるため、エントリー前に取組内容を正確に把握しておくことがきわめて重要です。

取組内容
取組①厚生労働省「職場における熱中症予防基本対策要綱」に規定する取組の実施(WBGT値の活用+熱中症予防対策)
取組②熱中症予防対策に資すると認められる物品の購入
取組③取組①および②に係る報告(取組結果報告書の提出)

この仕組みの本質は「物品の購入金額に対する補填」ではなく「職場の予防対策体制の整備」であるという点を、深く理解しておく必要があります。

対象事業者の要件

4つの基本要件

支給対象事業者となるためには、以下の4つの基本要件をすべて満たす必要があります。

要件内容
本社所在地本社または主たる事業所が東京都内にあること(営業実態が必要。法人都民税・個人都民税の納付済であること)
企業規模中小企業基本法第2条第5項に規定する小規模企業者であること
作業環境熱中症を生ずるおそれのある作業を行う職場(高温多湿作業場所)があること
雇用要件都内本社または事業所に勤務する常時使用する従業員(雇用保険被保険者)を1名以上、6か月以上継続して雇用していること

業種別の従業員数要件

「小規模企業者」の判定は、業種ごとに常時使用する従業員数の上限が定められています。常時使用する従業員には、解雇予告が必要なパート・アルバイトも含まれますが、会社役員・個人事業主・派遣労働者は含まれません。

業種常時使用する従業員数
小売業(飲食業含む)5人以下
サービス業5人以下
卸売業5人以下
製造業・建設業・運輸業・その他の業種20人以下

なお、熱中症予防対策の重点的な実施が必要と理事長が認める業種(一般廃棄物処理業、産業廃棄物処理業、建物等維持管理業、警備業など)については、サービス業に分類されていても従業員数の上限が20人以下に緩和されます。これは、現場作業の身体負荷が高い業種への配慮として設計されたものです。

「高温多湿作業場所」の定義

高温多湿作業場所とは、「WBGT値28度以上または気温31度以上の作業場で、継続して1時間以上または1日あたり4時間を超えて行われる作業」を行う場所を指します。屋内・屋外を問わず、現に主たる業務を行っている作業場所が対象になります。

この定義は、令和7年5月20日付基発0520第6号「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について」に準拠しており、本奨励金独自の基準ではなく、国が定める熱中症対策の対象作業の定義そのものです。屋内事務所のみで作業する企業は対象外となる点に注意が必要です。

欠格要件

以下のいずれかに該当する場合は、要件を満たしても申請できません。過去5年間に東京都の助成事業で不正受給による不支給決定または支給決定取消しを受けたことがある、過去5年間に重大な法令違反等がある、労働関係法令(最低賃金、36協定、年次有給休暇5日取得義務等)を遵守していない、大企業が実質的に経営に参画している(株式・出資の50%以上、または役員兼務2分の1以上等)、都税の未納がある、暴力団関係者である、風俗営業等を行っている、過去に本奨励金を受給したことがある、本年度中に同一目的の他の奨励金等を受給している、といった項目です。これらの欠格要件は事前エントリー段階で誓約書による申告が必要であり、虚偽申告が判明した場合は不支給決定となります。

奨励金額・募集規模・年間スケジュール

奨励金額は一律20万円の定額方式

本制度の奨励金額は、対象事業者が3つの取組をすべて実施した場合に一律20万円が支給されます。物品購入額に応じた変動はなく、20万円の定額方式です。逆に言えば、20万円相当を上回る投資をした場合でも上限は20万円となります。

年4回・合計1,000社の募集枠

令和8年度は年間合計1,000社の枠を、4回に分けて募集します。各回の募集枠と受付期間は以下のとおりです。

事前エントリー受付期間取組実施可能期間支給申請受付期間受付予定事業者数
第1回令和8年4月27日(月)~5月13日(水)令和8年3月5日~9月30日取組終了後~11月30日250社
第2回令和8年6月22日(月)~6月26日(金)令和8年3月5日~11月30日取組終了後~令和9年1月29日300社
第3回令和8年8月24日(月)~8月28日(金)令和8年3月5日~令和9年1月31日取組終了後~令和9年3月31日300社
第4回令和8年10月19日(月)~10月23日(金)令和8年3月5日~令和9年3月31日取組終了後~令和9年5月31日150社

注目すべきは、取組実施可能期間の起算日が令和8年(2026年)3月5日となっており、エントリー回によらず一律である点です。すなわち、第1回エントリー前にすでに着手・購入した取組であっても、令和8年3月5日以降であれば奨励対象となります。

また、抽選で外れた場合は次回以降に再エントリーが可能です。第1回で外れても第2回・第3回・第4回と再挑戦できる設計のため、自社にとって最適な実施タイミングに合わせて応募回を選ぶことができます。

対象となる3つの取組

取組①:厚労省要綱に基づく熱中症予防対策の実施

取組①は、厚生労働省「職場における熱中症予防基本対策要綱」に規定する取組を実施するものです。具体的には、WBGT値(暑さ指数)の活用と、熱中症予防対策の実施という2つを行います。

WBGT値(暑さ指数)の活用

高温多湿作業場所でWBGT値を測定し、身体作業強度に応じたWBGT基準値と比較して評価を行います。具体的には、WBGT指数計(JIS規格適合品が推奨)または湿球温度計+黒球温度計で測定し、衣類による着衣補正値を加味して評価する流れです。WBGT値が基準値を超える場合は、冷房による低減・作業強度の変更・作業場所の変更を行う必要があります。

WBGT値の算出式は、屋外の場合「0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度」、屋内の場合「0.7×湿球温度+0.3×黒球温度」と定められています。なお、作業服の上にポリエチレン系のつなぎ服を着用するなど衣類が重なる場合は、最大で12℃-WBGTの補正値を加える必要があるため、見かけの気温よりも実態の負荷が高くなる点に注意してください。

熱中症予防対策の5領域

領域具体的な取組例
作業環境管理遮へい物の設置、通風・冷房設備の整備、冷房付き休憩場所の設置、ウォーターサーバーの設置、スポットクーラーの設置
作業管理連続作業時間の短縮、暑熱順化期間の設定、水分・塩分の定期摂取指導、透湿性・通気性の良い服装着用、作業中の頻繁な巡視
健康管理健康診断結果に基づく就業場所変更、日常の健康相談、作業開始前の健康状態確認、休憩場所への体温計・体重計の設置
労働衛生教育熱中症の症状・予防方法・緊急時の救急処置・事例についての教育を実施
救急措置病院等の所在地・連絡先の把握、緊急連絡網の作成と関係者への周知

取組②:熱中症予防対策に資する物品の購入

取組②では、以下の4分類のいずれかに該当する物品を取組期間内に購入し、高温多湿作業場所で活用する必要があります。

分類具体例
(1) WBGT値の測定機器WBGT指数計(JIS Z8504またはJIS B7922適合品)
(2) WBGT値を低減させる機器等ミストファン、スポットクーラー、冷風機、除湿機 等
(3) 労働者の身体冷却効果がある用品等電動ファン付き作業服、冷却ベスト、水冷服、遮熱ヘルメット 等
(4) 熱中症対策に特化した深部体温上昇検知等の機器心拍等身体データ計測器 等

対象外となる物品

「熱中症対策」に見えても対象外となる物品があります。特に、塩分タブレット・冷却タオル・保冷剤などの日用品的な消耗品は明確に対象外と定められているため、物品選定の段階で混同しないよう注意が必要です。

具体的には、飲食料品等の日用品(塩分タブレット・塩飴、使い捨ての冷却パック・シート、保冷剤、保冷ボトル、冷却タオル等)、中古品、レンタル・リース契約のもの、汎用性があり業務外の用途に使用しているもの、親会社・子会社・グループ企業との取引によるもの、現金・口座振込・口座振替以外の方法で支払われたもの(やむを得ず法人名義のクレジットカード払いとなった場合を除く)、自社の通常業務で取り扱う物品などが該当します。

取組③:取組結果報告書の作成・提出

取組①と②を完了した後、「取組結果報告書(様式第4号)」を作成し、写真等のエビデンスを添付してJグランツ上で支給申請を行います。物品の設置状況や使用状況がわかる写真の提出が必須であり、取組前と取組後の両方の状況を撮影しておく必要があります。

申請手続きの流れ

全体フロー

ステップ内容
① 事前準備GビズIDプライムのアカウント取得(発行までに2~3週間程度かかるため早めの準備が必要)
② 事前エントリーJグランツ上の事前エントリー画面から専用フォームに入力(締切は午後5時まで)
③ 抽選・結果通知受付期間終了後、概ね7営業日以内にJグランツ上で通知
④ 取組実施WBGT測定、予防対策の実施、対象物品の購入を令和8年3月5日以降に実施
⑤ 支給申請取組終了後、申請受付期間内にJグランツで支給申請(必要書類のアップロード)
⑥ 審査・支給決定事務局による書類審査(必要に応じて現地調査)→ 支給決定通知
⑦ 奨励金請求支給決定後、Jグランツの「奨励金請求フォーム」から請求手続き+振込先口座情報の提出
⑧ 振込請求受領から概ね1か月で指定口座に振込

GビズIDプライムの取得が最初の関門

本奨励金はJグランツでの申請のみを受け付けており、来所・郵送による申請は一切受け付けていません。Jグランツの利用にはGビズIDプライムが必須であり、デジタル庁の審査により発行までに時間がかかります。「GビズIDの発行が間に合わない」ことを理由とした受付期限の猶予は一切ありませんので、事前エントリーを検討する時点で速やかにGビズIDの取得手続きに着手することが重要です。

事前エントリーは抽選方式

本奨励金で最も注意すべき点の一つが、事前エントリーが先着順ではなく抽選方式であることです。受付予定事業者数を上回る申込があった場合は抽選が実施され、抽選倍率やエントリー数は公表されません。1企業あたり1回までのエントリーとなり、同一代表者が複数法人を所有する場合も同一企業とみなされる点に注意してください。

提出書類と注意事項

支給申請時の提出書類一覧

支給申請段階で提出が必要な書類は、合計13種類に及びます。Jグランツでのアップロードのため、書類は事前にPDF・JPEG形式で準備しておくことが効率的です。

No提出書類
1支給申請書(様式第1号)
2事業所一覧(様式第2号)
3取組前の状況報告書(様式第3号)+取組前の写真
4取組結果報告書(様式第4号)+取組後の写真
5誓約書(様式第5号)
6購入物品の支払等関係書類(領収書、納品書等)
7雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)
8会社案内または会社概要
9履歴事項全部証明書(法人)または開業・廃業届出書(個人事業主)
10代表者の住民票記載事項証明書(個人事業主のみ)
11所得税納税証明書、法人事業税または個人事業税納税証明書
12法人都民税または住民税納税証明書(居住地分・事業所地分)
13直近の水道光熱費の領収書または賃貸借契約書(物品購入事業所のもの)

申請書類で特に注意すべきポイント

第一に、取組前後の写真は必ず両方撮影しておくことです。取組後にあわてて取組前の写真を再現することは不可能のため、エントリー段階で撮影体制を整えておく必要があります。第二に、支払関係書類には「申請企業名」「都内事業所での購入」が明記されている必要があり、法人カード以外のクレジットカード払いや、現金・口座振込以外の支払方法は対象外となります。第三に、履歴事項全部証明書は発行から3か月以内のものを提出する必要があり、インターネット登記情報提供サービスの登記情報は不可です。第四に、納税証明書は「事業税」と「住民税」の両方が必要で、直近事業年度分を提出します。第五に、提出書類の追加・差し替えは原則不可であり、一度提出した書類で審査されるため、提出前に十分なチェックが必要です。

類似制度・関連義務との比較

本奨励金と労働安全衛生法上の義務との関係

項目労働安全衛生規則改正(令和7年6月~)本奨励金(令和8年度)
性質全事業者に対する義務都内小規模企業向けの任意支援制度
対象WBGT28度以上等の作業を行う全事業者都内小規模企業(業種別従業員数要件あり)
求められる内容体制整備・手順作成・関係者周知義務化の取組+物品購入+報告
金銭的支援なし20万円
不実施のリスク労働安全衛生法違反のリスク奨励金不交付のみ

つまり、義務化された取組はそもそも全事業者が実施しなければならないものであり、本奨励金はすでに義務として実施すべき内容を実施した上で、さらに物品購入と報告を行えば20万円が支給される構造です。「義務だから自費で対応する」のか「義務対応とあわせて20万円の財源を確保する」のかという、きわめて経営合理的な選択の問題として捉えるべき制度です。

東京都の他の関連制度

東京都・東京しごと財団は、本奨励金以外にも雇用環境整備に関する多様な支援制度を展開しています。同一目的の他制度との重複受給はできませんが、目的が異なる制度との併用は可能です。たとえば、人材確保のための奨学金返還支援事業やカスタマーハラスメント防止対策推進事業企業向け奨励金などは、目的が異なるため別個に活用することができます。

制度活用の実践的戦略

第1回エントリーを最優先で狙う

年4回の募集ですが、各回の募集枠は第1回250社、第2回300社、第3回300社、第4回150社と後半ほど枠が縮小します。また、夏本番前に予防対策を整備しておくべき制度趣旨から考えても、第1回エントリー(4月27日~5月13日)で勝負するのが最も合理的です。第1回で外れた場合は第2回以降に再エントリーが可能ですが、夏が深まってからの取組実施では予防対策としての実効性が低下します。早い段階でエントリーを行うことが賢明です。

取組内容を「義務化対応」と一体で設計する

令和7年6月から義務化された熱中症対策と本奨励金の取組要件は、ほぼ重なる内容です。すでに義務化対応を進めている企業であれば、義務化対応の延長線上で物品購入と報告を整備するだけで奨励対象になります。逆に、義務化対応がまだ着手できていない企業にとっては、本奨励金をきっかけとして職場の予防対策体制を一気に整備する好機といえます。

物品購入は「対象物品リスト」を踏まえて慎重に選定する

20万円という支給額の規模感から考えると、現場のニーズに合った機器を一通り揃えるには十分な金額です。具体的には、WBGT指数計1台+スポットクーラー1~2台+電動ファン付き作業服数着、あるいはミストファン+冷却ベストの組合せなど、現場の作業内容に応じた最適な投資を行うのが望ましいでしょう。塩分タブレットや冷却タオルなどの消耗品は対象外であるため、別途自社負担で準備する必要があります。

写真エビデンスを取組前から計画的に取得する

本制度では、取組前と取組後の両方の写真提出が必須です。「取組前の写真を撮り忘れた」というだけで申請ができなくなるケースが想定されます。エントリー段階から、対象作業場所の全景・WBGT測定機器の設置状況・物品の使用状況など、必要な写真を計画的に取得する体制を整えておくことが重要です。

制度の課題と注意事項

抽選方式による不確実性

事前エントリーが抽選方式であるため、エントリーすれば必ず採択されるわけではありません。抽選倍率は公表されませんが、申込が募集枠を上回れば外れる可能性があります。「奨励金が支給される前提」で物品購入を進めることは推奨できず、エントリー結果通知後に取組を本格化させるのが安全な進め方です。最悪の場合、抽選で外れたうえに購入物品が想定外の出費となるリスクがあるため、エントリーから取組実施までの順序を冷静にご判断ください。

書類整備の負担

13種類の提出書類、取組前後の写真、納税証明書など、必要書類の整備には相応の手間がかかります。特に小規模企業の場合、人事・経理担当者が兼務であることが多く、申請業務の負荷が経営者本人に重くのしかかる懸念があります。申請実務を社内のどの担当者がどのスケジュールで進めるのかを、エントリー段階から明確化しておくことが肝要です。

取組前写真を撮り直せない

取組前の状況写真は、物品設置や予防対策実施の「前」の状態を示すものでなければなりません。すでに物品を購入・設置してしまった後では、取組前の写真を作り出すことは事実上不可能です。令和8年3月5日以降の取組が対象とはいえ、取組着手前に必ず現状の写真を取得しておく必要があります。

他奨励金との重複受給制限

本年度中に、国・都・区市町村が実施する同一目的の奨励金等との重複受給はできません。職場環境整備関連の他の助成事業を検討している場合は、目的の重複の有無を事前に確認しておく必要があります。

まとめ

令和8年度「暑さに配慮した職場環境づくり奨励金」は、令和7年6月の労働安全衛生規則改正による熱中症対策の義務化を背景に、都内小規模企業の現場対応を支援する制度として設計されたものです。本制度の要点は以下の5点に集約されます。

  1. 奨励金額は一律20万円、年間1,000社・年4回募集の抽選方式。第1回は令和8年4月27日~5月13日に受付。
  2. 対象は都内小規模企業で、業種別の従業員数要件(小売・サービス・卸売は5人以下、製造・建設・運輸等は20人以下)と、高温多湿作業場所の存在が必須要件。
  3. 3つの取組(厚労省要綱に基づく予防対策の実施+対象物品の購入+報告書提出)をすべて実施することが要件。一つでも欠けると対象外。
  4. 申請はJグランツ+GビズIDプライムが必須で、来所・郵送は不可。GビズID取得には時間がかかるため早期準備が重要。
  5. 取組前後の写真撮影や13種類の提出書類など、書類整備の負担が大きい。エントリー段階から計画的に準備を進めることが採択後のスムーズな申請につながる。

よくあるご質問

Q1.エントリーすれば必ず奨励金が支給されますか?

A1.エントリー=採択ではありません。事前エントリーは抽選方式のため、応募者多数の場合は抽選で外れる可能性があります。また、抽選を通過した後も支給申請の審査によって支給されない場合があります。エントリー段階で物品購入や大規模な投資を確定させることはリスクが高く、エントリー結果通知後に本格的な取組を進めるのが安全です。なお、抽選で外れた場合は次回以降に再エントリーが可能ですので、第1回で不採択となっても第2回・第3回・第4回と繰り返し挑戦できます。ただし後半回ほど募集枠が縮小する点には注意が必要です。

Q2.塩分タブレットや冷却タオルは対象になりますか?

A2.対象外です。本奨励金では、塩分タブレット・塩飴、使い捨ての冷却パック、冷却用使い捨てシート、保冷剤、保冷ボトル、冷却タオル等の飲食料品・日用品は明確に対象外と定められています。これらは消耗品的性質が強く、職場の予防対策体制の整備という制度趣旨に合致しないためです。対象となるのは、WBGT指数計、スポットクーラー、電動ファン付き作業服、冷却ベスト、水冷服、遮熱ヘルメットなどの設備・装備品です。物品選定の段階で対象範囲を取り違えると、20万円の支給を逃すことになりかねないため、購入前に対象物品リストとの照合をきわめて慎重に行うことが重要です。

Q3.レンタルやリースで導入した機器も対象になりますか?

A3.対象外です。本奨励金は「都内事業所において購入し、所有する物品」が対象です。レンタル契約・リース契約で導入した機器は所有権が事業者に移転しないため、対象外となります。スポットクーラーやミストファンなど、季節性の高い機器であってもレンタルではなく購入として導入する必要があります。なお、中古品も対象外であり、新品の購入が必要です。法人名義のクレジットカード払いは認められますが、現金・口座振込・口座振替・法人カード以外の支払方法は認められない点にも注意してください。

Q4.エントリー前にすでに購入した物品は対象になりますか?

A4.令和8年3月5日以降の購入であれば対象になります。本奨励金の取組実施可能期間は令和8年3月5日以降であり、エントリー回ごとに終了日が異なります。第1回エントリー前であっても、令和8年3月5日以降に購入した物品については奨励対象として申告できます。ただし、購入時点で取組前の状況写真を取得していない場合、申請に必要なエビデンスを整えられない可能性があるため、購入前に現状写真を撮影しておくことが重要です。エントリー前の購入はあくまで「自己負担で先行投資する」覚悟が必要であり、抽選で外れた場合は奨励金を受け取れない点を冷静にご判断ください。

Q5.屋内事務所のみで仕事をする企業は対象になりますか?

A5.対象外となる可能性が高いです。本奨励金の対象は「熱中症を生ずるおそれのある作業を行う職場(高温多湿作業場所)」がある企業です。具体的には、WBGT値28度以上または気温31度以上の作業場で、継続して1時間以上または1日4時間を超えて行われる作業が対象です。冷房が完備された一般的な事務所のみで業務を行う企業は、この要件を満たさない可能性が高くなります。一方、厨房を有する飲食業、屋外作業を伴う建設業、空調が効きにくい倉庫を持つ運輸業、機械加工で熱が発生する製造業などは対象になる可能性があります。実際の作業環境を測定した上で判断するのが確実です。

Q6.GビズIDの取得にはどれくらい時間がかかりますか?

A6.通常2~3週間程度を見込んでください。GビズIDプライムの取得は、デジタル庁のGビズID運用センターによる審査を経るため、申請から発行まで一定の時間を要します。書類の不備や繁忙期によってはさらに時間がかかる場合があります。本奨励金では「GビズIDの発行が間に合わないことに伴う受付期限の猶予」は一切行われないため、エントリーを検討する時点で速やかにGビズID取得手続きに着手する必要があります。GビズIDに関する問い合わせはGビズIDヘルプデスク(0570-023-797)が窓口となります。第1回エントリー(4月27日~5月13日)を狙う場合、すでに時間的猶予は限られているため、最優先で取得手続きを進めることが重要です。

Q7.取組結果報告書はどのような内容を記載するのですか?

A7.様式第4号に基づき、取組実施内容と物品設置状況を具体的に記載します。取組結果報告書には、WBGT値の測定結果、実施した熱中症予防対策の具体的内容(作業環境管理、作業管理、健康管理、労働衛生教育、救急措置)、購入した物品の使用状況などを記載します。あわせて、物品の設置状況や使用状況がわかる写真を添付する必要があります。報告書の内容と写真の整合性、購入物品が高温多湿作業場所で実際に活用されていることの証明が、審査の重要なポイントになります。記載が形式的・抽象的にとどまる場合は、現地調査や追加資料提出を求められることもあるため、具体的な事実を踏まえて記載することが重要です。

Q8.抽選で外れた場合、次回も同じ条件で申し込めますか?

A8.はい、次回以降に再エントリーが可能です。本奨励金では、各回の事前エントリーで抽選に当選しなかった場合、次回以降のエントリー回に再度申込むことができます。第1回(4月27日~5月13日)で外れた場合、第2回(6月22日~26日)、第3回(8月24日~28日)、第4回(10月19日~23日)に再挑戦できます。ただし、後半のエントリー回ほど募集枠が縮小する傾向があり、第4回の枠は150社と最も少なくなる点には注意が必要です。また、再エントリーの際は新たに事前エントリー手続きを行う必要があり、自動的に次回に繰り越されるわけではないため、エントリー期間を見落とさないようにしてください。

Q9.他の奨励金や補助金と併用できますか?

A9.目的が異なる制度との併用は可能です。本奨励金では、本年度中に国・東京都・区市町村が実施する「本事業の目的と同一の目的」の奨励金等との重複受給はできません。一方、目的が異なる制度(人材確保のための奨学金返還支援事業、カスタマーハラスメント防止対策推進事業企業向け奨励金、各種補助金など)との併用は妨げられません。ただし、同一の物品購入費用を複数の制度で重複して申請することはできないため、対象経費の切り分けには注意が必要です。複数制度の併用を検討する場合は、それぞれの公募要領で重複受給に関する規定を慎重に確認することが重要です。

Q10.代表者が複数の法人を経営している場合、それぞれの法人で申請できますか?

A10.できません。本奨励金では、同一の代表者が複数の企業等を所有する場合、別法人格であっても同一企業等とみなされます。同一代表者から複数の申込があった場合は、事前エントリーの対象外となる場合があります。複数法人を経営する代表者は、最も対策ニーズの高い法人を選定して申込む必要があります。なお、株式・出資の50%以上を保有している場合や役員兼務2分の1以上のケースなども実質的な同一企業として扱われる場合があるため、グループ企業構造を有する場合は事前に事務局に確認することが望ましいでしょう。

暑さに配慮した職場環境づくり奨励金の活用支援なら壱市コンサルティング

「義務化対応」と「奨励金獲得」を一体で実現する伴走支援

株式会社壱市コンサルティングでは、令和7年6月から義務化された熱中症対策と本奨励金の獲得を一体で進める伴走支援を提供しております。WBGT測定の実施手順、予防対策5領域の整備、対象物品の選定、写真エビデンスの取得計画、Jグランツでの申請書類作成まで、現場の実態に即して具体的にサポートいたします。

📋 制度適合性診断
御社が「都内小規模企業」要件、「高温多湿作業場所」要件、「常時使用する従業員」要件などをすべて満たしているか、申請前に書類ベースで精査します。要件不適合のままエントリーするリスクを未然に回避します。

🌡 取組計画策定支援
WBGT値の測定方法、予防対策5領域の実装、対象物品の選定(合計20万円超を効果的に投じるための優先順位付け)について、現場の作業内容を踏まえた具体的な計画策定を支援します。

📷 写真エビデンス取得計画
取組前・取組後の写真撮影箇所と撮影タイミングを事前に設計し、申請段階で「写真が足りない」事態を未然に防ぎます。

📝 Jグランツ申請書類作成支援
事前エントリー、支給申請、奨励金請求の各段階で、必要書類の準備と入力内容の精査を行います。13種類の提出書類の整備を漏れなく支援します。

令和8年度第1回エントリー(4月27日~5月13日)に間に合わせるためのご相談を、急ぎ承っております。

こんなお悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください。

  • ✅ 令和7年6月の熱中症対策義務化に対応できているか不安
  • ✅ 自社が本奨励金の対象要件を満たしているかわからない
  • ✅ どの物品を購入すれば対象になるのか判断できない
  • ✅ Jグランツでの電子申請に不慣れで作業負荷が大きい
  • ✅ GビズIDの取得から伴走支援してほしい
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