【令和8年(2026年)】就労継続支援A型・B型は補助金の対象になる?二重受給の判定と補助金別の活用可否を徹底解説
就労継続支援A型・B型を運営する法人から、「生産性を高めるために設備投資をしたいが、給付費(自立支援給付)を受け取っている事業で補助金を申請すると、二重受給になってしまうのではないか」という相談が、近年きわめて増えています。福祉サービスでありながら生産活動も行うという二層構造を持つ事業だからこそ、補助金との関係が分かりにくくなっているのが実態です。
結論から言えば、就労継続支援A型・B型を運営していること自体は、補助金の対象外事由にはなりません。判定の核心は「就労支援をやっているかどうか」ではなく、同一の経費が別の公的制度からの給付・補助と重複していないかという一点にあります。この原則を理解すれば、活用できる補助金の幅は大きく広がります。
本記事では、ものづくり補助金事務局の公表見解や厚生労働省の公的データをもとに、就労支援事業者が補助金を活用する際の判断基準と補助金別の取り扱いを整理します。事業所を運営する経営者の方はもちろん、利用者支援にあたる支援員の方、同業のコンサルタントの方にも参考になります。
就労継続支援A型・B型という事業の現在地
就労継続支援は、障害者総合支援法に基づく訓練等給付(自立支援給付)に位置づけられる障害福祉サービスです。一般企業への就職が難しい障害のある方に対し、働く場と就労に必要な訓練を提供する事業であり、雇用契約を結ぶA型と、雇用契約を結ばないB型の2類型があります。
市場は拡大を続けてきました。厚生労働省「社会福祉施設等調査」によれば、就労継続支援B型事業所数は平成30年(2018年)3月の約9,959か所から増加を続け、令和4年(2022年)には13,000か所を超える水準に達しています。令和5年(2023年)の同調査では、就労継続支援B型の9月中の利用実人員は約461,003人と、障害福祉サービスの中でも最多となっています。営利法人による参入が進んだ業種でもあり、生産性向上や経営改善への関心が年々高まっています。
A型とB型の基本的な違い
補助金との関係を考えるうえで決定的に重要なのが、就労支援事業の収益が二層構造になっているという点です。ひとつは国から支払われる訓練等給付費(基本報酬)であり、これは福祉サービスを提供したことへの公的な対価です。もうひとつが、利用者が行う作業・製品・サービスから生まれる生産活動売上であり、これは一般の事業者と同じ市場ベースの収益です。この二つを切り分けて理解することが、二重受給の判定を正しく行う出発点になります。
▍この章のまとめ
就労継続支援は拡大を続ける業種であり、収益は「給付費(福祉サービスの対価)」と「生産活動売上(市場収益)」の二層構造になっている。この切り分けが補助金判定の鍵となる。
補助金における「二重受給」とは何か
多くの補助金の公募要領には、「国庫及び公的制度からの二重受給となる事業」を補助対象外とする規定が置かれています。この文言を、「公的なお金をもらっている事業者はすべて対象外」と読んでしまうと判断を誤ります。条文が禁じているのは事業者の属性ではなく、同一の経費・同一の事業に対して、複数の公的制度から二重に資金が支払われる状態です。
この点を最もはっきり示しているのが、ものづくり補助金事務局が公表する「よくあるご質問」です。同資料では、診療報酬や介護報酬を受ける事業に対して補助することは国庫及び公的制度からの二重受給となるため補助対象外としつつ、医療保険外診療(自由診療)や介護保険外サービスのみの事業で重複する部分がない場合は補助対象になる、と整理しています。つまり、判定軸はあくまで「重複があるかどうか」だということです。
就労支援事業が二重受給に該当しない理由
就労継続支援の訓練等給付費は、福祉サービスを提供したことへの対価であり、性格としては診療報酬や介護報酬と同じ「公的制度からの報酬」です。ここだけを見ると、二重受給を心配する声が出るのも無理はありません。しかし、就労支援には診療・介護にはない「生産活動売上」という別建ての収益レイヤーが存在します。
ものづくり補助金をはじめとする設備投資型の補助金が支援するのは、革新的な製品・サービスの開発や生産プロセスの高付加価値化に必要な設備投資です。これは生産活動(市場売上を生み出す側)に投じる経費であって、福祉サービス提供への報酬である給付費とは資金の対象がそもそも異なります。給付費が支援員の配置や支援サービスの提供を支える一方、補助金で導入する設備は生産活動の品質や生産性を高めるものであり、両者の間に重複は生じません。これが、就労支援事業者の通常申請が二重受給に当たらないと判断される構造的な理由です。
✅ POINT
給付費は「福祉サービスの対価」、補助金が支援するのは「生産活動の設備投資」。資金の対象が別であるため、就労支援を行っていること自体が二重受給になるわけではありません。実際にものづくり補助金事務局へ照会した場合も、就労継続支援A型・B型を活用した事業は二重受給に該当せず、通常どおり申請して差し支えないとの見解が示されています。
それでも本当に二重受給になるケース
「就労支援だから大丈夫」と安心しきってしまうのは危険です。二重受給が問題になる典型は、給付費との関係ではなく、同一の設備・同一の経費に、別の公的補助が入っているケースです。就労支援の現場では、福祉系の整備費補助が利用できる場面が多く、ここに重複が生じると一気にリスクが高まります。
⚠️ 注意
次のような場合は、就労支援であるかどうかに関わらず二重受給に該当します。
・同じ設備に対して社会福祉施設等施設整備費補助金や自治体の設備整備補助を受けている、または申請中
・工賃向上計画などに紐づく設備補助と、補助対象の設備が重なっている
実務では、見積書・経費明細のレベルで「他の公的補助と重複していない」ことを説明できる状態を整えておくことが重要です。
補助金別に見た就労支援事業の活用可否
経済産業省・中小企業庁が所管する設備投資型の補助金は、いずれも「同一経費が他の公的給付・補助と重複していないか」という同じ判定軸で運用されています。したがって、就労支援事業であること自体が失格事由になることはありません。主要な補助金ごとの取り扱いを整理すると、次のとおりです。
いずれの補助金でも共通する判断のポイント
補助金の種類が変わっても、判定の本質は変わりません。「補助対象として申請する経費が、給付費や別の公的補助で既に賄われていないか」を確認することが第一歩です。就労支援事業者の場合、補助金で導入する設備が「生産活動を高度化するためのもの」であると明確に位置づけられていれば、給付費との重複の心配はほとんど生じません。一方で、福祉サービス提供そのものに紐づく設備(送迎や支援室の整備など)を、福祉系の整備費補助と二重に申請するような構成は避ける必要があります。
▍この章のまとめ
主要な経産省系補助金は、就労支援事業であっても「生産活動側の設備投資」として申請できる。判定軸は制度を問わず「同一経費が他の公的資金と重複していないか」に集約される。
厚生労働省系の雇用関係助成金との違い
就労支援事業者が補助金・助成金を検討するとき、混同しやすいのが厚生労働省系の雇用関係助成金です。これは二重受給というより支給要件の問題であり、設備投資型の補助金とは性格が異なります。
多くの雇用関係助成金は、労働者が常用雇用されることや、雇用されている労働者の数・割合に応じて支給される仕組みです。そのため、利用者を雇用しない就労継続支援B型事業や、雇用契約のない形態のA型事業では、利用者が「常用雇用労働者」に当たらず、助成金の対象外となるケースが少なくありません。設備投資型の補助金(生産活動への投資)と、雇用関係助成金(人の雇用に対する支援)は、対象も要件もまったく別の制度であると理解しておくことが重要です。
ℹ️ 補足
ものづくり補助金などの「設備への補助」と、厚生労働省の雇用系助成金の「人への支援」を組み合わせる構想がある場合は、後者で利用者が支給対象から外れる可能性があります。制度を横断して資金計画を組む際は、それぞれの支給要件を早い段階で確認することが賢明です。
実務上の進め方
就労支援事業者が補助金を活用する際に、壱市コンサルティングが特に重視しているのが、事務局へ確認した内容のエビデンス化です。電話口での口頭回答は後から覆ることがあり、採択後の事業化状況報告や検査の段階で説明を求められる場面もあります。問い合わせを行った日時・担当者名・回答内容を記録し、可能であればメールなど書面で確認を残しておくことが、後の安心につながります。
そのうえで、申請書では補助対象設備が「生産活動の高度化・生産性向上に資するもの」であることを明確に位置づけ、見積書・経費明細のレベルで他の公的補助と重複していないことを示せる構成にしておくことが重要です。福祉サービスとしての側面と、生産活動を営む事業者としての側面を切り分けて整理することが、説得力のある事業計画につながります。早い段階で認定経営革新等支援機関と連携し、制度横断で資金計画を設計しておくことをおすすめします。
この記事のまとめ
よくある質問(Q&A)
Q1. 就労継続支援B型でも、ものづくり補助金は申請できますか?
A1.申請できます。就労継続支援B型を運営していること自体は、ものづくり補助金の対象外事由にはなりません。補助金が支援するのは、利用者が行う生産活動の革新的な製品・サービス開発や生産プロセスの高付加価値化に必要な設備投資であり、福祉サービス提供への対価である給付費とは資金の対象が異なります。事業計画では、導入する設備が生産活動の生産性向上にどう寄与するかを具体的に示すことが採択のポイントになります。なお、同じ設備に福祉系の整備費補助を併用していないかは事前に確認しておく必要があります。
Q2. 給付費を受け取っていること自体が、二重受給になりませんか?
A2.なりません。二重受給とは、同一の経費・同一の事業に対して複数の公的制度から二重に資金が支払われる状態を指します。給付費は福祉サービスを提供したことへの対価であり、補助金で導入する設備(生産活動への投資)とは対象が別です。診療報酬や介護報酬と異なり、就労支援には市場ベースの生産活動売上という別建ての収益があるため、設備投資への補助と給付費の間に重複は生じません。事務局へ照会した場合も、就労支援を活用した事業は二重受給に該当しないとの見解が示されています。
Q3. どんな場合に本当に二重受給になってしまうのですか?
A3.補助金で申請する設備や経費に、別の公的補助が入っている場合です。たとえば同じ設備に対して社会福祉施設等施設整備費補助金や自治体の設備整備補助を受けている、または工賃向上計画に紐づく設備補助と対象が重なっている、といったケースです。これは就労支援かどうかに関わらず二重受給に該当します。複数の制度を併用する場合は、どの経費をどの制度で賄うかを明確に切り分け、見積書・経費明細のレベルで重複がないことを示せる状態を整えておくことが重要です。
Q4. 持続化補助金は就労支援事業でも使えますか?
A4.使えます。小規模事業者持続化補助金は、生産活動で生み出した商品・サービスの販路開拓を支援する補助金です。ECサイトの構築、商品パンフレットの作成、店舗の改装、新たな販売チャネルの開拓などに活用できます。販路開拓に関する経費は給付費と重複しにくいため、就労支援事業者にとって相性のよい制度です。商工会・商工会議所の管轄や小規模事業者の要件を満たすかどうかを確認したうえで、生産活動の売上拡大に向けた計画を組み立てることがポイントになります。
Q5. 新事業進出補助金で、就労支援を活かした新事業を申請できますか?
A5.申請できます。新事業進出補助金は、既存事業とは異なる新たな市場・新たな事業への進出を支援する制度です。就労支援の生産活動を基盤に、新たな製品・サービスや販売先へ展開する構想であれば対象となり得ます。審査では、既存事業との対比や新規性の説明が論点になるため、これまでの生産活動と新事業がどう異なり、どのように市場を広げるのかを明確に描くことが求められます。給付費との重複は生じないため、二重受給の懸念なく計画を設計できます。
Q6. デジタル化・AI導入補助金は就労支援でも活用できますか?
A6.活用できます。デジタル化・AI導入補助金は、登録されたITツールやAIを活用した業務効率化を支援する制度です。就労支援事業では、受注管理・在庫管理・販売管理などのシステム導入、生産活動の進捗管理、利用者の作業データの可視化などに役立てられます。生産活動や管理業務の効率化を目的とした導入であれば、給付費との重複は生じません。対象となるツールは事前に登録されたものに限られるため、自社の課題に合うツールが対象に含まれているかを確認したうえで検討するとよいでしょう。
Q7. 厚生労働省の雇用関係助成金も併せて使えますか?
A7.制度の性格が異なるため、慎重な確認が必要です。雇用関係助成金の多くは、労働者が常用雇用されることや雇用人数に応じて支給される仕組みです。そのため、利用者を雇用しない就労継続支援B型や雇用契約のないA型では、利用者が常用雇用労働者に当たらず対象外となるケースが少なくありません。これは二重受給ではなく支給要件の問題です。設備への補助(経産省系の補助金)と人への支援(厚労省系の助成金)は別の制度として整理し、それぞれの支給要件を早めに確認することが重要です。
Q8. 補助金を使うと、給付費が減らされることはありますか?
A8.補助金の活用が直ちに給付費を減額させるわけではありません。給付費(基本報酬)は、利用者数や生産活動の状況、支援体制などに基づく報酬体系で決まるものであり、設備投資への補助を受けたこととは別の枠組みです。むしろ、補助金で生産性を高めて生産活動売上を伸ばし、結果として平均工賃が向上すれば、報酬体系上のプラス評価につながる可能性もあります。ただし報酬体系は改定されるため、最新の算定要件を確認したうえで、補助金活用と報酬向上を結びつけた計画を立てることが望まれます。
Q9. 事務局に「対象になる」と言われましたが、それで安心してよいですか?
A9.基本的には信頼してよい回答ですが、エビデンスを残しておくことが重要です。電話での口頭回答は、担当者や状況によって表現が変わることがあり、採択後の事業化状況報告や検査の段階で説明を求められる場面もあります。問い合わせ日時・担当者名・回答内容を記録し、可能であればメールなど書面で確認を残しておくと安心です。あわせて、申請書のなかで補助対象設備が生産活動の高度化に資するものであり、他の公的補助と重複していないことを示せる構成にしておくことが、後のトラブル防止につながります。
Q10. 就労支援事業者が補助金活用で最も意識すべきことは何ですか?
A10.「福祉サービスとしての側面」と「生産活動を営む事業者としての側面」を切り分けて整理することです。補助金は後者、すなわち生産活動の生産性向上や付加価値創出を支援する制度です。給付費に依存した運営に留まらず、生産活動そのものを高度化して利用者の工賃・賃金の向上につなげる——この発想で設備投資を位置づけられるかどうかが、採択にも、事業の持続性にも直結します。制度を横断して資金計画を設計するには、早い段階で認定経営革新等支援機関と連携することが賢明です。
就労支援事業の補助金活用なら壱市コンサルティング
壱市コンサルティングでは、福祉と生産活動の二層構造を持つ就労支援事業ならではの論点を踏まえ、二重受給に当たらない形で補助金を活用できるよう、事業計画の設計から伴走支援まで一貫してサポートしています。採択の代行ではなく、事業の持続性と利用者の工賃・賃金向上につながる計画づくりを大切にしています。
📋 補助金の選定・事業計画策定
生産活動を軸に、ものづくり補助金・持続化補助金・新事業進出補助金など最適な制度を選定し、採択される事業計画を設計します。
🛡️ 二重受給リスクの整理
給付費・福祉系補助との重複を経費明細レベルで切り分け、安心して申請できる構成に整えます。
🔄 採択後の伴走支援
交付申請から実績報告、事業化状況報告まで、補助事業の完了までを継続してサポートします。
💼 経営改善・収益力強化
給付費依存から脱却し、生産活動の高付加価値化で持続的な経営をめざす支援を行います。
就労支援事業の生産性向上と補助金活用は、認定経営革新等支援機関である壱市コンサルティングにご相談ください。
こんなお悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください
✅ 生産活動の設備投資で生産性を高めたい
✅ 二重受給にならないか不安で申請に踏み切れない
✅ どの補助金が自社に合うのか相談したい
✅ 利用者の工賃・賃金を上げる経営に転換したい
※本記事は令和8年(2026年)時点の公表情報をもとに作成しています。各補助金の対象範囲や要件、二重受給の取り扱いは公募回や制度改定により変わる可能性があります。実際の申請にあたっては、最新の公募要領および各事務局への確認をお願いします。
