【令和8年(2026年)8月】中小企業成長加速化補助金 2次公募 採択率25.6%|1次公募との比較と14指標の全数値分析

令和8年(2026年)8月4日、中小機構は中小企業成長加速化補助金の2次公募採択者を公表しました。有効申請件数872件に対して採択件数は223件、採択倍率は約3.9倍です。1次公募が申請1,270件・採択207件(後日の追加採択4件を含めて211件)で採択倍率約6.1倍だったことと比べると、数字の上では門戸が広がったように見えます。

しかし、同時に公表された「各種指標」を読み込むと、まったく逆の構図が浮かび上がります。採択率は上がったにもかかわらず、採択された企業に求められる成長計画の水準は1次公募より明確に引き上がっているのです。全社売上高成長率の中央値は年23.7%から年30.5%へ、売上高投資比率の中央値は44.0%から54.6%へと上昇しました。倍率だけを見て「通りやすくなった」と判断するのは、実態を取り違えた見方です。

本記事では、中小機構が公表した2次公募の採択者一覧と各種指標を一次情報として、1次公募との比較を含めた採択率の推移、採択者と申請者全体を分ける14指標の全数値、そして3次公募に向けた実務上の示唆を、数値に基づいて整理します。

Contents
  1. 2次公募の採択結果 ― 申請872件・採択223件・採択率25.6%
  2. 採択率が上がった本当の理由 ― 「100億宣言」は倍増、申請は3割減
  3. 採択者と申請者全体を分ける14指標 ― 中央値の全数値
  4. 1次公募から2次公募へ ― 採択ラインは確実に上がっている
  5. 金融機関による確認書 ― 96.1%から100%へ
  6. 3次公募に向けた実務上の示唆
  7. まとめ
  8. よくあるご質問
  9. 成長加速化補助金の申請をご検討の経営者様へ

2次公募の採択結果 ― 申請872件・採択223件・採択率25.6%

中小企業成長加速化補助金は、売上高100億円超を目指す中小企業の大規模投資を支援する制度です。補助上限5億円(一定要件下で最大7億円)、補助率2分の1という規模の大きさに加え、投資額1億円以上という下限要件と「100億宣言」の公表が必須という点で、他の中小企業向け補助金とは性格が異なります。

令和8年(2026年)8月4日に公表された2次公募の結果と、令和7年(2025年)9月19日に公表された1次公募の結果を並べると、次のとおりです。

項目 1次公募 2次公募
申請締切 令和7年(2025年)6月9日 令和8年(2026年)3月26日
採択発表日 令和7年(2025年)9月19日 令和8年(2026年)8月4日
有効申請件数 1,270件 872件
採択件数 207件(追加採択4件を含めて211件) 223件
採択率 16.3%(211件ベースで16.6%) 25.6%
採択倍率(公表値) 約6.1倍 約3.9倍
金融機関による確認書の提出率 96.1%(199件/207件) 100%(223件/223件)
構成事業者数(共同申請含む) 採択者251者/申請全体1,538者 採択者241者/申請全体1,018者

まず押さえておくべきは、採択件数そのものは207件から223件へと16件しか増えていないという点です。採択率が9ポイント以上改善した最大の要因は採択枠の拡大ではなく、分母である申請件数が1,270件から872件へと約31%減少したことにあります。

補足

1次公募については、令和7年(2025年)9月19日の当初発表が207件、その後の令和7年(2025年)10月6日に4件の追加採択が公表され、合計211件となりました。2次公募の各種指標において1次公募の参考値がn=211で集計されているのはこのためです。本記事では、公表資料の記載に合わせて両方の数値を併記します。

📊 このセクションの要点

2次公募は有効申請872件・採択223件で採択率25.6%、採択倍率約3.9倍でした。1次公募の採択率16.3%から改善しましたが、採択件数の増加は16件にとどまり、改善の主因は申請件数が約31%減少したことにあります。金融機関による確認書の提出率は96.1%から100%へと上昇しました。

採択率が上がった本当の理由 ― 「100億宣言」は倍増、申請は3割減

本補助金の申請には、事前に「100億宣言」を100億企業成長ポータルサイトで公表していることが要件となります。この宣言件数と申請件数を並べると、2次公募で何が起きたのかが見えてきます。

項目 1次公募 2次公募 変化
申請締切時の「100億宣言」件数 1,517件 3,091件 約2.04倍
有効申請件数 1,270件 872件 398件減(約31%減)
宣言件数に対する申請件数の比率 約83.7% 約28.2% 約55.5ポイント低下
申請1件あたりの採択件数 0.163件 0.256件 改善

宣言件数は1,517件から3,091件へと約2倍に増えているにもかかわらず、申請件数は3割以上減りました。「100億宣言は出したが、補助金申請には至らなかった」企業が大量に生まれていると整理されます。

この背景には、1次公募で1,000件を超える不採択が生じたという事実があります。中小機構は不採択事業者に対して具体的な不採択理由を個別に通知しており、この経験を通じて「投資額1億円以上」「事業完了後3年間で売上高100億円に接近する成長計画」「金融機関の確認書取得」といった要件の重さが市場に共有されました。結果として、準備が整わない企業が申請を見送り、残った872件が相対的に質の高い母集団になったと理解するのが実態に近い見方です。

注意

採択率25.6%という数字を、ものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金の採択率と同列に比較することは適切ではありません。本補助金は「100億宣言の公表」「投資額1億円以上」「プレゼンテーション審査」という三重のフィルターを通過した企業だけが分母に含まれます。実質的な難易度は、採択率の数字が示すよりもはるかに高い水準にあると認識する必要があります。

📊 このセクションの要点

申請締切時の100億宣言件数は1,517件から3,091件へ約2倍に増加した一方、申請件数は1,270件から872件へ約31%減少しました。宣言件数に対する申請比率は83.7%から28.2%へと大幅に低下しています。採択率の改善は制度が緩和された結果ではなく、申請母集団が絞り込まれた結果と整理されます。

採択者と申請者全体を分ける14指標 ― 中央値の全数値

中小機構は2次公募の採択発表と同時に、採択者(n=223)と申請全体(n=872)の各種指標を14項目にわたって公表しました。1次公募では8項目だった開示が14項目に拡充され、EBITDAマージンやROAといった収益性指標も加わっています。中央値で並べると次のとおりです。

指標(中央値) 2次 採択者 2次 申請全体
全社売上高成長率 30.5%/年 26.0%/年 +4.5pt
全社付加価値増加率 34.9%/年 28.6%/年 +6.3pt
労働生産性成長率 23.6%/年 18.0%/年 +5.6pt
売上高投資比率 54.6% 38.5% +16.1pt
最新決算期の売上高 20.6億円 26.9億円 △6.3億円
補助事業全体に要する経費(税抜) 11.3億円 10.3億円 +1.0億円
EBITDAマージン 9.5% 6.8% +2.7pt
従業員1人当たり給与支給総額の増加率 6.5%/年 6.0%/年 +0.5pt
給与支給総額の増加率 17.4%/年 12.5%/年 +4.9pt
最新決算期の1人当たり給与支給総額 437.1万円 418.9万円 +18.2万円
足下の賃上げ 3.0%/年 3.0%/年 差なし
最新決算期の自己資本比率 43.8% 34.4% +9.4pt
ローカルベンチマークの得点 22.3点 21.0点 +1.3点
最新決算期のROA 5.1% 3.7% +1.4pt

最大の差は「売上高投資比率」の16.1ポイント

14指標のうち、採択者と申請全体の差が最も大きいのは売上高投資比率です。これは最新決算期の全社売上高に対する補助事業全体の経費の割合を示す指標で、採択者の中央値は54.6%、申請全体は38.5%と16.1ポイントの開きがあります

言い換えれば、採択された企業は年商のおよそ半分に相当する規模の投資を一度に実行しようとしています。平均値で見ると採択者59.6%、申請全体45.8%であり、平均でも約6割という水準です。本補助金の名称が示す通り、既存事業の延長線上にある堅実な設備更新ではなく、企業の規模そのものを変える大胆な投資が評価軸の中心に据えられていると理解する必要があります。

採択者のほうが「売上規模は小さい」という逆転現象

14指標のなかで、採択者が申請全体を下回っている項目が1つだけあります。最新決算期の売上高です。採択者の中央値は20.6億円、申請全体は26.9億円で、採択者のほうが6.3億円小さいという結果になりました。平均値でも採択者27.7億円に対して申請全体33.9億円です。

一方で、補助事業に要する経費は採択者11.3億円、申請全体10.3億円と採択者のほうが大きくなっています。この2つを組み合わせると、採択されているのは「すでに大きい企業」ではなく「規模に対して不釣り合いなほど大きな投資を決断した企業」であると整理されます。売上高50億円の企業が5億円を投じる計画よりも、売上高20億円の企業が11億円を投じる計画のほうが評価されているのが実態です。

POINT

本補助金は「規模の大きい優良企業を選ぶ制度」ではなく、「100億円企業になる可能性のある企業に、規模を飛び越えさせる制度」です。自社の売上規模が20億円前後であることは不利な条件ではなく、むしろ採択者の中心的なプロフィールに一致します。

足下の賃上げ率では差がつかない

賃上げ関連の指標には、明確なコントラストがあります。将来の給与支給総額の増加率は採択者17.4%/年に対して申請全体12.5%/年と4.9ポイントの差がありますが、最新決算期から基準年度までの「足下の賃上げ」は採択者3.0%/年、申請全体3.0%/年で完全に同水準です。平均値では申請全体3.4%に対して採択者3.3%と、わずかながら採択者のほうが低くなっています。

これは、審査において「これまでどれだけ賃上げしてきたか」よりも「補助事業によってどれだけ賃上げできるようになるか」が問われていることを示しています。過去の賃上げ実績が平均的であっても不利にはなりませんが、投資と賃上げの因果関係を計画上で説明できていなければ差はつきません。

ローカルベンチマークの得点は差が小さい

ローカルベンチマークの得点は採択者22.3点、申請全体21.0点で、差は1.3点にとどまります。財務健全性の基礎的な水準は申請段階でおおむね揃っており、この指標だけで合否が分かれる構造にはなっていません。一方で自己資本比率は43.8%対34.4%と9.4ポイントの差があり、ROAも5.1%対3.7%と開いています。総合スコアでは差がつかず、財務の厚みと資産効率で差がつくという構図です。

📊 このセクションの要点

14指標のうち差が最大なのは売上高投資比率で16.1ポイント、次いで自己資本比率9.4ポイント、付加価値増加率6.3ポイントです。唯一、採択者が申請全体を下回るのが最新決算期の売上高であり、売上規模が小さくても投資規模が大きい企業が選ばれています。足下の賃上げ率では差がつかず、将来の賃上げ計画で差がついています。

1次公募から2次公募へ ― 採択ラインは確実に上がっている

2次公募の各種指標には、参考値として1次公募(n=211)の数値も併記されています。採択者どうしを比較すると、要求水準の変化が明確に読み取れます。

指標(採択者・中央値) 1次公募 2次公募 変化
全社売上高成長率 23.7%/年 30.5%/年 +6.8pt
全社付加価値増加率 25.7%/年 34.9%/年 +9.2pt
労働生産性成長率 14.8%/年 23.6%/年 +8.8pt
売上高投資比率 44.0% 54.6% +10.6pt
給与支給総額の増加率 9.8%/年 17.4%/年 +7.6pt
最新決算期の自己資本比率 36.2% 43.8% +7.6pt
EBITDAマージン 8.0% 9.5% +1.5pt
最新決算期の売上高 21.9億円 20.6億円 △1.3億円
補助事業全体に要する経費 11.0億円 11.3億円 +0.3億円

売上高成長率は年23.7%から年30.5%へ、労働生産性成長率は年14.8%から年23.6%へと大幅に上昇しました。1次公募で採択された水準の計画をそのまま2次公募に持ち込んでいたら、中央値を下回っていた可能性が高いという関係です。

同時に、売上高は21.9億円から20.6億円へとわずかに縮小し、補助事業経費はほぼ横ばいです。つまり企業規模も投資規模も変わらないなかで、その投資から引き出すことを求められる成長率だけが引き上がっているという構図です。3次公募に向けては、この方向がさらに進む前提で計画を組み立てることが賢明です。

注意

1次公募と2次公募では、給与支給総額を算出する際の対象範囲が異なります。1次公募では従業員に加えて役員も対象に含めていましたが、2次公募では従業員のみを対象としています。賃上げ関連指標を比較する際は、この定義の違いを踏まえて読む必要があります。

📊 このセクションの要点

採択者どうしを1次公募と2次公募で比較すると、付加価値増加率が9.2ポイント、労働生産性成長率が8.8ポイント、売上高投資比率が10.6ポイント上昇しています。企業規模と投資規模はほぼ横ばいであり、同じ投資額からより高い成長を引き出す計画が求められる方向に変化していると整理されます。

金融機関による確認書 ― 96.1%から100%へ

実務上、最も重い意味を持つ数字がこれです。1次公募における金融機関による確認書の提出率は96.1%(199件/207件)でしたが、2次公募では100%(223件/223件)となりました。採択された223件すべてが、金融機関から事業計画に対する確認を得ています。

公募要領上、確認書の提出は加点項目であって必須要件ではありません。しかし結果として提出率が100%に達したという事実は、確認書のない申請が採択される余地が実質的に消滅したことを意味します。投資額1億円以上、補助金額最大5億円という規模を考えれば、自己負担分の資金調達に金融機関のコミットメントが伴わない計画は、審査上そもそも実現可能性を疑われる構造になっていると理解するのが実態に近い見方です。

2次公募の採択者一覧を集計すると、確認書を発行した金融機関は地方銀行が109件(48.9%)で最多、次いでメガバンクおよびりそなグループが56件(25.1%)、日本政策金融公庫・商工組合中央金庫の政府系が34件(15.2%)、信用金庫・信用組合が24件(10.8%)です。信用金庫や信用組合をメインバンクとする企業も一定数採択されており、金融機関の規模そのものが合否を決めているわけではありません。

POINT

3次公募を検討する場合、事業計画の執筆よりも先に着手すべきは金融機関との協議です。確認書は事業計画が固まってから依頼するものではなく、計画の数値を金融機関と一緒に作り込む過程そのものが採択可能性を左右します。公募開始を待ってから動き始めると、確認書の取得が間に合わない事態が現実に起こります。

📊 このセクションの要点

金融機関による確認書の提出率は1次公募96.1%から2次公募100%へ上昇し、採択223件すべてが提出しています。確認書を発行した金融機関は地方銀行が約49%、メガバンク・りそなグループが約25%、政府系が約15%、信用金庫・信用組合が約11%であり、金融機関の規模ではなくコミットメントの有無が問われています。

3次公募に向けた実務上の示唆

中小機構は3次公募に向けたよくあるご質問を準備中としており、令和8年(2026年)8月時点で公募要領は公表されていません。ただし、2回分の採択データからは、次回に向けて満たすべき水準が具体的に読み取れます。

確認すべき項目 2次公募の採択者中央値 実務上の目安
投資額と年商のバランス 売上高投資比率54.6% 年商の5割前後の投資規模を確保する
売上高の成長計画 年30.5%成長 年30%を下回る計画は再設計を検討する
付加価値と労働生産性 付加価値34.9%/生産性23.6% 売上だけでなく1人当たり指標で示す
財務基盤 自己資本比率43.8%/ROA5.1% 自己資本比率が3割台なら補強策を示す
賃上げ計画 給与支給総額17.4%/年 増員と単価上昇の内訳を分けて説明する
金融機関の関与 確認書提出率100% 公募前から金融機関と計画を共有する

これらの数値は合格ラインとして公表されたものではなく、あくまで採択者集団の中央値です。中央値を下回っていても採択された企業は当然存在します。ただし、中央値から大きく離れている項目がある場合、その差を埋める合理的な説明を計画のなかに用意しておく必要があることは確かです。

なお、本補助金は書類審査を通過した後にプレゼンテーション審査があり、この2次審査で合否が大きく分かれる構造になっています。計画書の完成度と同じ比重で、経営者自身が投資判断の根拠と成長の道筋を口頭で説明できる状態を作ることが求められます。

📊 このセクションの要点

3次公募の公募要領は令和8年(2026年)8月時点で未公表ですが、2回分の採択データから実務上の目安は読み取れます。年商の5割前後の投資規模、年30%超の売上成長、自己資本比率4割台、給与支給総額の年17%増、そして金融機関の確認書取得が、採択者集団の標準的な姿です。

まとめ

ポイント 内容
採択率は25.6%へ改善 2次公募は申請872件・採択223件で採択倍率約3.9倍。1次公募の16.3%(倍率約6.1倍)から改善しました。
改善の主因は申請減 採択件数の増加は16件のみ。100億宣言が3,091件に倍増する一方で申請は3割減り、母集団が絞り込まれました。
最大の差は投資比率 売上高投資比率は採択者54.6%対申請全体38.5%で16.1ポイント差。年商の半分規模の投資が標準です。
売上規模は小さくてよい 採択者の売上高中央値20.6億円は申請全体26.9億円を下回ります。規模より投資の大胆さが評価されています。
確認書は実質必須 金融機関による確認書の提出率は96.1%から100%へ。取得を前提とした準備スケジュールが必要です。

よくあるご質問

Q1.2次公募の採択率25.6%という数字は、他の補助金と比べて高いのですか。

A1.単純な数字の比較には意味がありません。ものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金では採択率が5割前後になる回もあり、25.6%という数字だけを見れば低い部類に入ります。しかし本補助金の分母は、100億宣言を公表し、投資額1億円以上の計画を作り込み、金融機関との調整を経て申請にたどり着いた872社です。他の補助金のように「とりあえず出してみる」層が分母にほとんど含まれていません。さらに書類審査通過後にプレゼンテーション審査があり、経営者本人が審査員の質問に応答する必要があります。準備段階でのふるい落としを含めた実質的な難易度は、採択率が示す水準よりもはるかに高いと認識する必要があります。

Q2.売上高が10億円未満でも申請できますか。

A2.売上高の下限要件はありませんが、投資額1億円以上という要件との関係を検討する必要があります。2次公募の採択者の売上高中央値は20.6億円、平均値は27.7億円です。売上高10億円の企業が11億円を投じる場合、売上高投資比率は110%となり、採択者の中央値54.6%を大きく上回ります。この水準の投資を回収できる根拠と、資金調達の裏付けを示せるかが焦点になります。実際に、売上規模の小さい企業が採択されている事例も一覧のなかに存在します。判断にあたっては、自己資本比率や既存借入の状況を踏まえ、金融機関と早い段階で協議することが賢明です。

Q3.「足下の賃上げ」で差がつかないなら、賃上げは重視されていないのですか。

A3.過去の実績では差がつかず、将来計画で明確に差がついています。足下の賃上げは採択者・申請全体ともに中央値3.0%/年で同水準ですが、補助事業完了後の給与支給総額の増加率は採択者17.4%/年に対して申請全体12.5%/年と4.9ポイントの差があります。本補助金は補助事業終了後3年間の従業員1人当たり給与支給総額について年平均上昇率の要件が課される制度であり、賃上げは制度の根幹をなす評価軸です。重要なのは、投資によって生産性が上がり、その結果として賃上げ原資が生まれるという因果関係を計画上で数値的に説明することです。単に賃上げ率の目標を高く書くだけでは、実現可能性を疑われることになります。

Q4.金融機関による確認書がなくても申請できますか。

A4.制度上は申請できますが、2次公募の採択者223件はすべて提出しています。1次公募では207件中199件(96.1%)が提出し、8件は確認書なしで採択されていました。しかし2次公募では提出率が100%となり、確認書なしでの採択事例が消滅しています。この変化を踏まえると、確認書は加点項目ではなく実質的な必須要件になったと理解するのが実態に近い見方です。補助金額が最大5億円、補助率2分の1という規模である以上、自己負担分の資金調達の確実性は審査の中心的な論点になります。3次公募を検討する場合は、公募開始を待たずに金融機関との協議を開始することが重要です。

Q5.100億宣言を出せば採択に近づきますか。

A5.100億宣言は申請の前提条件であって、加点要素ではありません。2次公募の申請締切時点で100億宣言は3,091件公表されていましたが、実際に申請したのは872件、採択されたのは223件です。宣言者のうち採択に至ったのは約7%にとどまります。宣言はあくまで入口であり、そこから投資計画・資金調達・成長シナリオを作り込む段階で大半が脱落しているのが実態です。ただし宣言を先に出しておくことには意味があります。宣言の公表は申請時までに完了している必要があるため、投資構想の初期段階で宣言を済ませておくことで、公募開始後のスケジュールに余裕が生まれます。

Q6.売上高投資比率が5割を超えないと不利になりますか。

A6.54.6%は中央値であり、基準値ではありません。中央値である以上、採択者の半数はこれを下回っています。ただし申請全体の中央値38.5%と比べて16.1ポイントも高いという事実は、投資規模の大きさが審査上の評価に直結していることを示しています。売上高が大きい企業ほどこの比率は下がるため、年商50億円の企業が10億円を投資する計画(20%)が直ちに不利になるわけではありません。重要なのは比率そのものではなく、その投資が企業の事業構造を変えるだけの規模とインパクトを持っているかどうかです。既存設備の更新に近い内容であれば、金額が大きくても評価は限定的になります。

Q7.1次公募で不採択となった場合、2次公募で再申請した企業は採択されたのですか。

A7.公表資料では再申請者の採択実績は開示されていません。中小機構は不採択事業者に対して具体的な不採択理由を個別通知しており、2次公募の不採択者についても令和8年(2026年)8月下旬を目途に通知するとしています。この通知は再申請にあたって最も価値のある情報です。採択者の指標水準が1次から2次にかけて明確に上昇していることを踏まえると、前回と同じ計画をそのまま再提出することは避けるべきです。不採択理由の通知内容を起点に、投資規模・成長率・資金調達体制のどこに不足があったのかを特定し、計画を再構築する必要があります。

Q8.ローカルベンチマークの得点はどの程度重要ですか。

A8.採択者22.3点、申請全体21.0点と差が小さく、この指標単独で合否が分かれる構造にはなっていません。14指標のなかで最も差が小さい項目の一つです。一方、自己資本比率は43.8%対34.4%で9.4ポイント、ROAは5.1%対3.7%で1.4ポイントの差があります。ローカルベンチマークの総合得点は複数の財務指標を平均化するため、個別項目の強弱が打ち消し合って差が出にくい性質があります。実務上は総合得点を気にするよりも、自己資本比率と資産効率という具体的な項目で自社の位置を確認するほうが有効です。自己資本比率が3割台にとどまる場合は、投資後の財務構造がどう推移するかを計画上で明示することが求められます。

Q9.共同申請は採択に有利ですか。

A9.2次公募の採択223件のうち共同申請は15件程度で、全体の1割に満たない水準です。公表資料では、共同申請の構成事業者を含めた採択者の事業者数は241者とされています。採択件数223件との差である18者が、共同申請の参加者にあたります(リース会社を除く)。件数の少なさから、共同申請そのものが有利に働くとは言えません。実際の採択事例を見ると、グループ会社間で工程を分担する製造業、複数の学校法人が連携する教育インフラ投資、原料調達から加工・販売までを担う事業者の連携など、投資の実態として複数事業者が不可分に関わるケースで共同申請が選択されています。形式を整えるための共同申請は、かえって役割分担の説明を難しくします。

Q10.3次公募はいつ実施される見込みですか。

A10.令和8年(2026年)8月時点で、3次公募の具体的な日程は公表されていません。100億企業成長ポータルサイトには「3次公募に向けた、よくあるご質問は現在準備中」との記載があり、3次公募の実施自体は想定されている状況です。1次公募は令和7年(2025年)6月9日締切・9月19日発表、2次公募は令和8年(2026年)3月26日締切・8月4日発表という流れでした。申請から採択発表まで約4か月半を要しており、書類審査とプレゼンテーション審査の二段階を経る制度設計であることがその理由です。3次公募の情報は同ポータルサイトで公表されるため、定期的な確認が必要です。準備期間を考えれば、公募要領の公表を待たずに投資計画と資金調達の検討を進めておくことが賢明です。

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