【令和8年最新】事業承継・M&A補助金16次公募|4つの枠の上限額・要件と加点10項目を徹底解説
事業承継・M&A補助金の16次公募要領が、令和8年(2026年)9月4日に開示されました。公募申請の受付期間は令和8年(2026年)10月2日から11月6日17時までです。準備に使える時間は実質1か月あまりであり、動き出しの速さがそのまま採否に影響する局面にあります。
16次公募も、事業承継促進枠・専門家活用枠・廃業再チャレンジ枠・PMI推進枠の4枠構成です。15次公募で新設された専門家活用枠の小規模売り手支援類型も引き続き設けられており、補助上限450万円・補助率3分の2という条件で、小規模事業者が売り手として使えるメニューが確保されています。
一方で、この補助金は「使える経費の発生時期」と「加点の取り方」で結果が大きく変わります。直前回にあたる14次公募の採択率は60.7%でした。決して低くはありませんが、4割は不採択です。枠の選択を誤る、交付決定前に契約してしまう、加点を取り逃がす——この3点が実務上の主要な失点要因となります。
本記事では、16次公募要領および事務局公表資料をもとに、4つの枠の補助上限額・補助率・要件、スケジュール、加点事由10項目、そして申請前に必ず押さえるべき実務上の注意点を整理します。
16次公募の全体像と押さえるべき日程
事務局が公表する16次公募の日程は次のとおりです。公募要領の開示から申請締切までが約2か月、そこから補助金が実際に交付されるまでは1年以上を要します。
| 工程 | 時期 |
|---|---|
| 公募要領開示 | 令和8年(2026年)9月4日 |
| 説明会 申込受付 | 令和8年(2026年)9月9日〜10月7日17時 |
| 説明会(オンライン) | 令和8年(2026年)10月9日14時〜(Microsoft Teamsタウンホール形式) |
| 公募申請受付期間 | 令和8年(2026年)10月2日〜11月6日17時(厳守) |
| 採択日 | 令和8年(2026年)12月下旬以降、順次(予定) |
| 交付申請受付期間 | 令和9年(2027年)1月上旬〜11月中旬(予定) |
| 交付決定日 | 令和9年(2027年)1月下旬以降、順次(予定) |
| 補助事業期間 | 令和9年(2027年)1月下旬(予定)から14か月以内/事業実施は令和10年(2028年)3月中旬まで(予定) |
| 実績報告期間 | 令和9年(2027年)6月上旬〜令和10年(2028年)3月下旬(予定) |
| 補助金交付手続き | 令和9年(2027年)10月上旬以降、順次(予定) |
この日程から読み取るべき点は2つあります。第一に、補助金が実際に入金されるのは申請から1年近く先だということです。補助金は精算払いであり、事業者が先に自己資金で支出します。公募要領も、補助金交付までの間のつなぎ融資を検討する場合はできるだけ早めに金融機関に相談するよう促しています。
第二に、専門家との契約や設備の発注は交付決定日以降でなければ補助対象になりません。16次公募の交付決定は令和9年(2027年)1月下旬以降であり、申請から実際に動き出せるまで3か月以上のタイムラグが生じます。M&Aの交渉が先に進んでしまうケースでは、補助金の使い方そのものを組み替える必要があります。
📊 このセクションの要点
16次公募の申請受付は令和8年(2026年)10月2日から11月6日17時まで、説明会は10月9日に開催されます。交付決定は令和9年(2027年)1月下旬以降、補助金交付は同年10月上旬以降であり、精算払いを前提とした資金計画が必要です。
制度の目的と4つの枠の全体像
事業承継・M&A補助金は、中小企業庁が所管する中小企業生産性革命推進事業の一つです。公募要領によれば、中小企業者及び個人事業主が事業承継、事業再編及び事業統合を契機とした取り組みを行う事業について、その経費の一部を補助することにより、事業承継・事業再編及び事業統合を促進し、生産性向上による我が国経済の活性化を図ることを目的としています。
補助の対象となる取組内容や経費の種類に応じて、「事業承継促進枠」「専門家活用枠」「廃業・再チャレンジ枠」「PMI推進枠」の4枠が用意されています。承継のどの局面にいるかによって使うべき枠が決まる構造であり、枠選択が申請の出発点となります。
| 枠 | 対象となる局面 | 補助上限額 | 補助率 |
|---|---|---|---|
| 事業承継促進枠 | 5年以内に親族内承継・従業員承継等を予定 | 800万円(賃上げ要件を満たす場合1,000万円) | 2分の1以内(小規模事業者等は3分の2以内) |
| 専門家活用枠 | M&Aで株式・経営資源を譲り受ける/譲り渡す | 買い手600万円/売り手800万円/100億企業特例2,000万円/小規模売り手450万円 | 3分の2以内〜3分の1以内(類型により異なる) |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 譲り渡せなかった事業の廃業と再チャレンジ | 16次公募要領で確認が必要(15次公募では300万円) | 16次公募要領で確認が必要(15次公募では単独申請3分の2以内) |
| PMI推進枠 | M&A成立後3年以内の経営統合 | PMI専門家活用類型150万円/事業統合投資類型800万円(賃上げ要件を満たす場合1,000万円) | 2分の1以内(事業統合投資類型で小規模事業者等は3分の2以内) |
この4枠は独立して存在しているわけではありません。廃業・再チャレンジ枠は他の枠との併用申請が可能であり、PMI推進枠のPMI専門家活用類型は専門家活用枠の買い手支援類型と同一公募回での同時申請が認められています。枠を組み合わせることで、承継の前段階から統合後までを切れ目なく補助対象にできる設計になっています。
📊 このセクションの要点
16次公募も4枠構成で、補助上限額は150万円から2,000万円まで幅があります。廃業・再チャレンジ枠は他枠との併用が可能で、PMI専門家活用類型は専門家活用枠の買い手支援類型と同時申請できます。
事業承継促進枠の要件と補助条件
事業承継促進枠は、5年以内に親族内承継・従業員承継等を予定している中小企業者及び個人事業主が、承継を契機として行う生産性向上に資する設備投資等を補助する枠です。承継が終わってから使う枠ではなく、これから承継する予定の企業が使う枠である点が最大のポイントです。
16次公募の補助上限額は800万円、公募申請時から補助事業期間終了時までに一定額以上の賃上げを実施する場合は1,000万円です。補助率は補助対象経費の2分の1以内で、中小企業基本法上の小規模事業者等に該当する場合は3分の2以内に引き上げられます。補助対象経費は、設備費、産業財産権等関連経費、謝金、旅費、外注費、委託費等です。
承継の内容と形態に関する要件
事業承継促進枠では、承継予定者・事業承継の内容・事業承継の形態のそれぞれに要件が設けられています。事業承継の内容としては、経営権・所有権のいずれもが被承継者から承継者に譲渡され、実質的な事業承継の実施が客観的に確認できることが求められます。したがって、経営権と所有権の移転を伴わない代表者の交代のみ、物品・不動産等のみを保有する事業の承継、グループ内の事業再編は、原則として補助対象外です。
また、公募申請前に、事業承継の蓋然性が高いことについて認定経営革新等支援機関等による確認を受け、事業承継計画に対する確認書の発行を受ける必要があります。公募開始後に支援機関を探し始めると、確認書の取得が締切に間に合わないおそれがあります。16次公募の締切は令和8年(2026年)11月6日であり、逆算すれば10月上旬には計画の骨格を固めておく必要があります。
POINT
事業承継促進枠には、事業承継・引継ぎ支援センターまたは中小機構地域本部から事業承継計画の策定支援を受けた場合に審査の加点措置が設けられています。公的支援機関の窓口を早い段階で使っておくこと自体が、加点につながります。
生産性向上要件と承継のリアリティ
補助対象事業は、補助事業期間を含む5年間の補助事業計画において、生産性向上要件の達成が見込まれる取り組みである必要があります。生産性向上要件とは、承継予定の中小企業者等の「付加価値額」または「1人当たりの付加価値額」の伸び率が年3%の向上を含む計画を指します。付加価値額は、法人の場合は営業利益+人件費+減価償却費、個人事業主の場合は営業利益+減価償却費+福利厚生費+給料賃金で算出します。
なお、事業承継促進枠のチラシでは、帝国データバンクの調査を引用し、承継先の内訳は親族承継と従業員承継で約7割を占めること、60代で後継者が決まっていない企業が約4割にのぼること、後継者を決めてから承継が完了するまで3年以上かかるケースが多いことが示されています。承継は決めてから完了までに時間がかかる取り組みであり、選択肢が残っているうちに着手することが賢明です。
📊 このセクションの要点
事業承継促進枠は補助上限800万円、賃上げ要件を満たせば1,000万円、小規模事業者等は補助率3分の2以内です。公募申請前に認定経営革新等支援機関等の確認書を取得し、付加価値額の年3%成長を含む5年計画を作り込むことが前提となります。
専門家活用枠の4類型と補助上限額
専門家活用枠は、M&Aに伴い株式・経営資源を譲り受ける側か譲り渡す側かの立場に応じて、買い手支援類型(Ⅰ型)と売り手支援類型(Ⅱ型)に分かれます。これに買い手支援類型の100億企業特例と、15次公募から追加された小規模売り手支援類型を加えた4つの申請パターンが存在します。
| 類型 | 補助率 | 補助下限額 | 補助上限額 | 上乗せ額 |
|---|---|---|---|---|
| 買い手支援類型(Ⅰ型) | 3分の2以内 | 50万円 | 600万円 | 廃業費300万円、デュー・ディリジェンス費用200万円 |
| 売り手支援類型(Ⅱ型) | 2分の1以内(一定要件に該当する場合3分の2以内) | 50万円 | 800万円 | 廃業費300万円 |
| 買い手支援類型 100億企業特例 | 別途の公募要領による | 別途の公募要領による | 2,000万円 | 別途の公募要領による |
| 小規模売り手支援類型 | 3分の2以内 | なし | 450万円 | 廃業費150万円 |
売り手の補助率が3分の2に上がる2つの要件
売り手支援類型の補助率は原則2分の1以内ですが、次のいずれかに該当する場合は3分の2以内に引き上げられます。ひとつは物価高等の影響により営業利益率が低下している者、もうひとつは直近決算期の営業利益または経常利益が赤字の者です。
営業利益率の低下は、直近の事業年度と2期前の事業年度を通年で比較する方法と、直近の事業年度および申請時点で進行中の事業年度のうちそれぞれ任意の連続する3か月の平均を比較する方法のいずれかで判定します。該当を主張する場合、営業利益率低下に関する計算書と損益計算書等の提出が必要となり、要件はいずれか1つのみを選択します。補助率が2分の1か3分の2かで補助額は3割以上変わります。決算数値の確認は申請準備の初期に済ませておくべき論点です。
小規模売り手支援類型の位置づけ
小規模売り手支援類型は、小規模事業者等におけるM&Aを推進するため、ファイナンシャルアドバイザーや仲介業者等の専門家への手数料負担を軽減することを目的とした類型です。補助上限450万円、補助率3分の2以内で、補助下限額が設定されていない点が買い手支援類型・売り手支援類型と大きく異なります。小規模な案件では専門家費用の総額も小さくなるため、下限撤廃は実務的な意味を持ちます。
対象となる小規模事業者等は、製造業その他は従業員20人以下、商業・サービス業は従業員5人以下、サービス業のうち宿泊業・娯楽業は従業員20人以下の会社及び個人事業主です。従業員の基準を満たせば、医者(個人開業医)、会社法上の会社または有限会社である農業法人、個人農家も含まれます。
注意
小規模売り手支援類型は、補助上限額を800万円とする売り手支援類型と同一公募回での申請ができません。どちらか一方を選択します。また、補助事業期間内にクロージングしなかった場合、補助上限額は50万円に変更され、着手金・システム利用料・デュー・ディリジェンス費用のみが補助対象経費として認められます。買い手支援類型の場合も、未成約時の補助上限額は300万円となり、原則としてデュー・ディリジェンス費用のみが補助対象です。
M&A支援機関登録制度と相見積のルール
専門家活用枠で仲介・ファイナンシャルアドバイザー業務の委託費が補助されるためには、M&A支援機関登録制度に登録された登録業者を活用することが条件です。登録の有無は交付決定時に確認されます。実績報告の段階で未登録業者を利用していたことが判明した場合、確定検査で当該経費は認められません。なお、デュー・ディリジェンス業務のみを行う士業等専門家は登録が不要ですが、支援内容が実質的に仲介業務等と同等と認められる場合は登録業者のみが対象となります。
経費面では相見積のルールも厳格です。補助対象経費は原則として2者以上からの見積取得が必須で、外注費・委託費・システム利用料・保険料については1件50万円未満であっても相見積が必要とされています。例外として、仲介・ファイナンシャルアドバイザー費用の見積額が譲渡額または移動総資産に基づくレーマン表により算出される報酬総額以下である場合には、関与専門家選定理由書を整備することで相見積が不要となります。
📊 このセクションの要点
専門家活用枠は買い手600万円、売り手800万円、100億企業特例2,000万円、小規模売り手450万円の4類型です。売り手は営業利益率低下または赤字に該当すれば補助率が3分の2に上がり、小規模売り手支援類型には補助下限額がありません。
PMI推進枠と廃業・再チャレンジ枠の使いどころ
PMI推進枠の2類型と対象期間
PMI推進枠は、M&A後に譲り受けた会社と自社を融合させる経営統合の取り組みを補助する枠です。PMI計画の策定やPMI実行に係る専門家活用費用を補助するPMI専門家活用類型(補助上限150万円)と、製造ラインやIT会計システムの統合等の設備投資を補助する事業統合投資類型(補助上限800万円、賃上げ要件を満たす場合1,000万円)の2類型があります。補助率はいずれも2分の1以内で、事業統合投資類型で小規模事業者等に該当する場合は3分の2以内です。
対象となるのは、公募申請受付終了時点でM&Aのクロージング日から3年を超えていない取組です。16次公募であれば令和8年(2026年)11月6日の時点で、クロージングから3年以内である必要があります。親族内の事業承継やグループ内の事業再編は補助対象外です。またデュー・ディリジェンスを実施している場合には加点されます。
PMIの取組事例として事務局が挙げているのは、経営会議・意思決定・事業計画づくりの一本化、基幹・会計・販売管理システムの統合、人事・労務・評価制度の統一などです。業種別には、製造業では生産ライン・在庫管理の統合や仕入先の集約、建設・運輸業では工程・車両・原価管理の一元化、サービス業では予約・顧客管理・会計の共通化が示されています。中小企業庁の調査でも、PMIを実施した企業ほどM&Aの成果を実感している傾向が示されています。
廃業・再チャレンジ枠の単独申請と併用申請
廃業・再チャレンジ枠は、M&Aによって事業を譲り渡せなかった中小企業者等の株主や個人事業主が、新たなチャレンジをするために既存事業を廃業する場合の経費を補助する枠です。当枠のみで申請する再チャレンジ申請(単独申請)と、他の枠と併せて申請する併用申請があり、要件が異なります。
実務上、活用しやすいのは併用申請です。16次公募の専門家活用枠公募要領でも、廃業・再チャレンジ枠との併用申請時の実績報告書類が、法人・個人事業主それぞれについて完全廃業と一部廃業に分けて規定されています。完全廃業の場合は閉鎖事項全部証明書または法人の異動届出書、一部廃業の場合は変更登記申請書・資産除去の証憑・取引先への廃業通知等から2点を提出する構成です。
補足
14次公募における廃業・再チャレンジ枠の申請件数は1件でした。単独申請の要件が厳格であることの表れであり、この枠は単独申請より併用申請での活用を前提に検討するのが実態に近い見方です。単独申請の補助上限額・補助率・要件は、16次公募の廃業・再チャレンジ枠公募要領で確認してください。
📊 このセクションの要点
PMI推進枠は公募申請受付終了時点でクロージングから3年以内の取組が対象で、専門家活用類型150万円・事業統合投資類型800万円の2類型です。廃業・再チャレンジ枠は単独申請の要件が厳格であり、他枠との併用申請での活用が現実的です。
加点事由10項目と得点の取りに行き方
専門家活用枠(買い手支援類型・売り手支援類型)の16次公募要領には、10項目の加点事由が定められています。いずれも該当することを証する書類の提出が必要です。加点の多くは事前の認定取得や制度利用が前提であり、申請直前に着手しても間に合いません。
| 加点事由 | 準備の目安 |
|---|---|
| 中小企業の会計に関する基本要領・指針の適用 | 顧問会計専門家印のあるチェックリストで対応可能。比較的短期間で取得できる |
| 経営力向上計画・経営革新計画・先端設備等導入計画 | 認定・承認まで数か月を要する。申請時に有効期間内である必要がある |
| 地域未来牽引企業 | 選定証の保有が前提。新規に取りに行く性質のものではない |
| 小規模事業者等への該当 | 法人事業概況説明書等で証明。該当するなら必ず申告する |
| (連携)事業継続力強化計画の認定 | 認定まで概ね1か月程度。取り組みやすい加点の一つ |
| ワーク・ライフ・バランス等の推進 | えるぼし・くるみん認定のほか、従業員100人以下は行動計画の公表でも該当 |
| 健康経営優良法人 | 年次の申請サイクルがあるため、次回公募を見据えた計画的な取得が必要 |
| サイバーセキュリティお助け隊サービスの利用 | 申込書・請求書等で証明。短期間で着手できる |
| 賃上げ(1人当たり給与支給総額2%以上) | 誓約書と従業員への表明書が必要。未達時の減点措置があるため慎重な判断を要する |
| 米国の追加関税措置による大きな影響 | 関税という外部要因と自社事業の関連性を具体的に記述する必要がある |
小規模売り手支援類型の加点事由は、上記のうち小規模事業者等への該当を除いた9項目です。この類型ではそもそも小規模事業者等であることが応募要件であるため、加点項目からは外れています。
注意
賃上げ加点を取得して採択された後に要件を達成できなかった場合、事業化状況報告において未達が報告されてから18か月の間、中小企業庁が所管する補助金への申請にあたって正当な理由が認められない限り大幅に減点されます。対象には、デジタル化・AI導入補助金、小規模事業者持続化補助金、事業承継・M&A補助金、Go-Tech事業、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金、中小企業省力化投資補助事業が含まれます。加点は取れるだけ取るものではなく、達成できる範囲で取るものです。
📊 このセクションの要点
専門家活用枠の加点事由は10項目で、小規模売り手支援類型は9項目です。事業継続力強化計画やサイバーセキュリティお助け隊は短期間で着手できる一方、賃上げ加点は未達時に18か月間の減点措置があり、達成可能性を見極めた判断が求められます。
14次公募の採択実績から読み取れること
事務局は令和8年(2026年)5月15日に14次公募の採択者を決定し、申請件数と採択件数を枠別に公表しています。16次公募の見通しを立てるうえで、直近で結果が公表されている14次の数値が最も参考になります。
| 枠 | 申請件数 | 採択件数 | 採択率 |
|---|---|---|---|
| 事業承継促進枠 | 169件 | 103件 | 60.9% |
| 専門家活用枠 | 299件 | 180件 | 60.2% |
| PMI推進枠 | 43件 | 27件 | 62.8% |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 1件 | 1件 | 100% |
| 合計 | 512件 | 311件 | 60.7% |
読み取るべき第一の点は、枠ごとの採択率にほとんど差がないということです。事業承継促進枠60.9%、専門家活用枠60.2%、PMI推進枠62.8%と、いずれも60%台前半に収束しています。枠を変えれば通りやすくなるという性質の制度ではなく、計画の内容と要件充足の精度で差がつきます。
第二に、申請件数の構成比です。専門家活用枠が299件と全体の約58%を占め、事業承継促進枠が169件で約33%と続きます。M&Aに伴う専門家費用の補助ニーズが、設備投資の補助ニーズを上回っている実態が示されています。15次公募で小規模売り手支援類型が新設され、16次でも継続されている背景も、この申請動向と無関係ではありません。
なお、審査は資格要件の審査と書面審査の2段階で行われます。書面審査の着眼点は、買い手支援類型では経営資源引継ぎの計画が補助事業期間内に適切に取り組まれるものであること、財務内容が健全であること、買収の目的・必要性、買収による効果・地域経済への影響、買収実現による成長の見込みです。売り手支援類型では、計画の実行可能性、譲渡の目的・必要性、譲渡による効果・地域経済への影響が問われます。いずれの類型でも地域経済への影響が明示的な着眼点となっており、自社の取り組みが地域にどう波及するかを言語化できているかが分かれ目になります。
📊 このセクションの要点
14次公募は申請512件・採択311件で採択率60.7%、枠別でも60%台前半に収束しました。申請の約6割を専門家活用枠が占めています。審査では買い手・売り手のいずれも地域経済への影響が着眼点として明示されています。
申請前に押さえるべき実務上の注意点
GビズIDプライムの取得は最優先
本補助金の申請にはGビズIDプライムアカウントが必要です。公募要領は、申請・発行に1週間から2週間程度、混雑時は3週間程度必要と明記しています。16次公募の締切は令和8年(2026年)11月6日ですので、未取得の場合は10月中旬までに手続きを終えておかなければ間に合いません。取得には印鑑証明書または印鑑登録証明書の原本、法人代表者印または個人事業主の実印を押印した申請書、代表者本人のメールアドレスとSMS受信可能な電話番号が必要です。
申請の入口で外れる事業者の類型
専門家活用枠の補助対象者には、見落とされやすい形式要件があります。法人の場合は申請時点で設立登記および3期分の決算・申告が完了していること、個人事業主の場合は開業届と青色申告承認申請書を提出した日から5年が経過していることが必要です。加えて、直近3年分の課税所得の年平均額が15億円を超える事業者、資本金5億円以上の法人に100%株式を保有される法人、みなし大企業やみなし同一法人に該当する場合は対象外です。社会福祉法人、医療法人、一般社団・財団法人、学校法人、各種組合も対象になりません。
経費の発生時期と支払方法
補助対象経費は、契約・発注が交付決定日以降かつ補助事業期間内であり、支払いまでが同期間内に完了している必要があります。見積は補助事業期間開始前でも構いませんが、発注以降のすべての工程が期間内でなければ補助対象外です。仲介・ファイナンシャルアドバイザー業務の委託契約を交付決定前に締結してしまう事例は毎回発生しており、これだけで補助金全額を失います。
支払方法にも制限があります。補助対象となるのは補助事業者名義の口座からの銀行振込またはクレジットカード1回払いのみです。口座から現金を引き出しての振込、現金払い、仮想通貨での支払い、PayPayやSuica等のキャッシュレスサービスでの支払いはいずれも補助対象外となります。
申請書類の作成代行と不正受給への対応
公募要領は、行政書士または行政書士法人でない者が申請者に代わって有償で申請の作成を行うことは行政書士法違反に該当する可能性があると明記しています。交付決定後に行政書士以外が申請の作成を行ったことが判明した場合、交付決定の取消となる可能性があります。支援者に依頼する場合は、その支援がどの範囲の行為にあたるのかを事前に確認する必要があります。なお、申請作成を行政書士に委任した際の費用は補助対象経費になりません。
不正受給への対応も厳格です。不正行為が認められた場合、交付決定を取り消したうえで、受領済の補助金に年10.95%の利率による加算金を加えた額の返還が求められます。あわせて事業者名と不正の内容が公表され、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第29条から第32条に基づく刑事罰の可能性も規定されています。譲渡価額や専門家報酬の設定について外部の助言を受ける場面では、報酬体系の透明性と説明の一貫性を冷静にご判断ください。
POINT
買い手支援類型では、補助対象経費への計上有無を問わずデュー・ディリジェンスの実施が必須です。計上する場合は交付申請時に見積書、実績報告時に証憑が求められ、計上しない場合も実績報告時に実施証憑の提出が求められます。実施しないという選択肢は事実上存在しません。
📊 このセクションの要点
GビズIDプライムは発行まで最大3週間を要するため最優先で着手する必要があります。契約・発注は交付決定日以降、支払は補助事業者名義の銀行振込かクレジットカード1回払いのみ、不正受給には年10.95%の加算金と刑事罰の可能性が規定されています。
まとめ
| 押さえるべきポイント | 内容 |
|---|---|
| 締切は11月6日17時 | 受付開始は令和8年(2026年)10月2日。GビズIDプライムの取得に最大3週間かかるため、未取得なら今週から動く必要がある |
| 4枠の使い分けが出発点 | 承継のどの局面にいるかで枠が決まる。廃業・再チャレンジ枠は併用、PMI専門家活用類型は買い手支援類型と同時申請が可能 |
| 補助率が変わる分岐点 | 小規模事業者等への該当、賃上げ要件、売り手の営業利益率低下または赤字。いずれも決算数値の確認が起点になる |
| 交付決定日が分水嶺 | 交付決定は令和9年(2027年)1月下旬以降。設備の発注も仲介・FA業務の委託契約もそれ以降でなければ補助対象外 |
| 加点は達成できる範囲で | 加点事由は10項目。賃上げ加点は未達時に18か月間の減点措置があり、取れるだけ取る対象ではない |
よくある質問
Q1.16次公募はいつまでに何を準備すればよいですか。
A1.令和8年(2026年)11月6日17時が締切であり、逆算すると10月上旬までに準備の山を越えておく必要があります。優先順位が最も高いのはGビズIDプライムアカウントの取得です。公募要領は申請・発行に1週間から2週間、混雑時は3週間程度必要としており、締切直前の着手では間に合いません。次に、申請に必要な公的書類の取り寄せです。履歴事項全部証明書や住民票は申請日以前3か月以内に発行されたものである必要があり、法人は直近3期分の決算書、個人事業主は直近3期分の確定申告書と青色申告決算書が求められます。加点事由に該当する場合はその証明書類も並行して準備します。事業承継促進枠であれば、これらに加えて認定経営革新等支援機関等による確認書の取得が公募申請前に必要です。10月9日には事務局のオンライン説明会も開催されるため、申込受付期間である10月7日17時までに申し込んでおくことをおすすめします。
Q2.15次公募から16次公募で変わった点はありますか。
A2.枠構成と主要な補助上限額・補助率に大きな変更はありません。事業承継促進枠は補助上限800万円(賃上げ要件を満たす場合1,000万円)・補助率2分の1以内(小規模事業者等は3分の2以内)、専門家活用枠は買い手600万円・売り手800万円・100億企業特例2,000万円・小規模売り手450万円、PMI推進枠はPMI専門家活用類型150万円・事業統合投資類型800万円(賃上げ要件を満たす場合1,000万円)という水準が維持されています。15次公募で新設された小規模売り手支援類型も継続されています。変更点として実務上意識すべきは日程です。16次公募の補助事業期間は令和9年(2027年)1月下旬から14か月以内とされており、15次公募より後ろ倒しになります。M&Aの成約時期が近い案件では、補助事業期間内にクロージングが収まるかどうかを事前に検証する必要があります。
Q3.すでに事業承継を終えた企業でも事業承継促進枠は使えますか。
A3.事業承継促進枠は、これから承継する予定の企業を対象とする枠です。事務局のチラシでも「5年以内に親族内承継、従業員承継等を予定している方」が対象と明示されており、公募申請期日から一定期間内に事業承継を完了することが条件となります。すでに承継が完了している場合はこの要件を満たしません。承継後の設備投資を検討している場合は、PMI推進枠の事業統合投資類型が使えるかを確認することになりますが、PMI推進枠は親族内の事業承継やグループ内の事業再編を補助対象となるM&Aの要件から除外しています。したがって、親族内承継を終えた企業が承継後の設備投資でこの補助金を使うことは想定されていません。設備投資については、中小企業省力化投資補助事業や新事業進出・ものづくり商業サービス補助金など、別の制度での検討が現実的です。
Q4.株式の譲渡代金や買収価額は補助対象になりますか。
A4.買収価額そのものは補助対象になりません。専門家活用枠の補助対象経費は、謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、保険料、および廃業費に限られます。委託費の中身は、仲介・ファイナンシャルアドバイザーへの着手金・マーケティング費用・リテーナー費用・基本合意時報酬・成功報酬、価値算定費用、デュー・ディリジェンス費用、弁護士による最終契約書の作成・レビュー費用、司法書士による登記費用、行政書士による許認可等申請費用、社会保険労務士による労務手続費用、セカンドオピニオン費用などです。事業承継促進枠でも、事業承継に際して支払う譲り受け費用や被承継者に対して支払う費用は原則として補助対象外とされています。この補助金は承継の対価をまかなう制度ではなく、承継を実現するための専門家費用と、承継後の生産性向上のための投資を支援する制度です。
Q5.小規模売り手支援類型と通常の売り手支援類型は、どちらを選ぶべきですか。
A5.想定する専門家費用の総額と、補助率2分の1か3分の2かの見通しによって判断が分かれます。小規模売り手支援類型は補助上限450万円・補助率3分の2以内、通常の売り手支援類型は補助上限800万円・補助率2分の1以内(営業利益率低下または赤字に該当する場合は3分の2以内)です。専門家費用が675万円程度までであれば、補助率3分の2の小規模売り手支援類型のほうが補助額は大きくなります。ただし通常の売り手支援類型でも補助率3分の2の要件に該当するのであれば、上限800万円まで使える分だけ有利になります。加えて、小規模売り手支援類型には補助下限額がないため、専門家費用が小さい案件でも申請できる点は実務上の利点です。両者は同一公募回での併願ができないため、申請前に費用見積りと決算数値を確認したうえで一方を選択します。
Q6.M&Aの仲介業者はどこでもよいのですか。
A6.M&A支援機関登録制度に登録された業者であることが条件です。この制度は、中小M&Aガイドラインの理解と普及を促し、中小企業が安心してM&Aに取り組める環境の実現を目指して中小企業庁が設けたものです。登録の有無は交付決定時に確認され、実績報告の段階で未登録業者を利用していたことが判明した場合、確定検査で当該補助対象経費は認められません。また、登録業者またはその代表者が補助事業者となる場合には、自己または関連会社を委託先としない事業であることが要件となります。なお、補助金を利用した場合、事務局から補助事業者が利用した登録業者に関する情報がM&A支援機関登録制度事務局に提供され、登録業者側からも実績報告がなされる仕組みです。支援機関の選定は、登録の有無を最初に確認するところから始めてください。
Q7.補助事業期間内にM&Aが成立しなかった場合はどうなりますか。
A7.補助上限額が大幅に切り下げられ、対象経費も限定されます。買い手支援類型では補助上限額が300万円に変更され、原則としてデュー・ディリジェンス費用のみが補助対象経費として認められます。小規模売り手支援類型では補助上限額が50万円となり、着手金・システム利用料・デュー・ディリジェンス費用が認められます。ここでいう成立とは、補助事業期間内のクロージング、すなわち最終契約書に基づくM&A取引が実行され、株式や事業等の引渡しと譲渡代金の支払により経営権や所有権等の移転が完了することを指します。基本合意書の締結だけでは成立とはみなされません。あわせて、未成約の場合は様式第19の未成約時の追加報告書の提出が必要となり、要因分析や今後の計画の記載が求められます。買い手支援類型では、相手方の責によらず申請者の一方的な自己都合により引継ぎが実現しなかったと事務局が判断した場合、すべての補助対象経費が認められず交付決定が取り消される可能性があります。
Q8.PMI推進枠の2つの類型は同時に申請できますか。
A8.PMI専門家活用類型と事業統合投資類型の同一公募回での同時申請は認められていません。両類型には前後関係があり、まず専門家の支援を受けてPMI計画を策定・実行し、その分析に基づいて統合効果を高める設備投資を行うという流れが想定されているためです。自社のPMI実行状況を確認したうえで、適切な類型を選択することになります。一方で、PMI専門家活用類型については、専門家活用枠の買い手支援類型(Ⅰ型)との同一公募回での同時申請が認められています。この場合、専門家活用枠でM&A成立までの専門家費用を、PMI推進枠で成立後の統合支援費用を補助対象とすることが可能です。ただし、いずれの申請パターンでも、交付申請時点で経営資源の譲り受けに関する最終契約を締結していることが要件となります。また、PMI推進枠ではM&A成立前のプレPMIに関連する取り組みは補助対象外であり、プレPMIとしてのデュー・ディリジェンス費用は専門家活用枠で補助対象とできる場合があります。
Q9.相見積は必ず2者以上必要ですか。
A9.原則として2者以上からの見積取得が必須であり、外注費・委託費・システム利用料・保険料は1件50万円未満でも必要です。相見積を取得した場合は、最低価格を提示した者を選定することが求められます。例外は3つに限られます。第一に、選定先以外の2者以上に見積を依頼したものの、すべてから見積を作成できないと断られた場合です。この場合は断られた事実が確認できる書面の添付が必須となります。第二に、仲介・ファイナンシャルアドバイザー費用の見積額が、譲渡額または移動総資産に基づくレーマン表により算出される報酬総額以下である場合です。この場合は関与専門家選定理由書に試算額を記載する必要があります。第三に、成功報酬のみが経費となるM&Aマッチングサイトに複数登録する場合です。これら以外の選定理由は認められず、相見積を取得しなければ補助対象経費として認められません。
Q10.採択された後、いつまで報告義務が続きますか。
A10.補助事業の完了後3年間、事業化状況報告の義務が続きます。補助事業者は、補助事業が完了した日の属する事業年度を初回の対象事業年度として以後3年間、過去1事業年度の事業化状況および賃金引上げ等の状況をとりまとめ、各事業年度の終了後90日以内に事務局へ報告する必要があります。報告が行われない場合や虚偽の数値が報告された場合には、交付決定が取り消され補助金の返還が求められます。この報告義務は、補助事業期間内に経営資源引継ぎが実現しなかった場合にも同様に発生します。あわせて、補助対象事業に係る帳簿や支出の根拠となる証拠書類は、事業が完了した年度の終了後5年間、管理・保存しなければなりません。事務局や会計検査院による実地調査が入る可能性もあります。補助金は受け取って終わりではなく、数年単位の管理業務が付随する制度であると理解しておく必要があります。
16次公募での申請をご検討の方へ
認定経営革新等支援機関として、承継計画づくりから補助金申請までを一貫して支援します
壱市コンサルティングは、中小企業診断士が代表を務める認定経営革新等支援機関です。16次公募の締切である令和8年(2026年)11月6日に向けて、枠の選定から事業計画の策定、Jグランツでの申請準備までを、承継の局面に応じて支援しています。
📋 事業計画・承継計画の策定支援
付加価値額の年3%成長を含む5年間の計画を、自社の実績数値から無理なく組み立てます。承継予定者の要件充足も事前に確認します。
🛡️ 認定経営革新等支援機関としての確認書発行
事業承継促進枠で公募申請前に必要となる確認書について、計画内容の精査とあわせて対応します。
🔄 加点取得と交付決定後の実務サポート
加点事由の棚卸しから、契約・発注時期の管理、実績報告、事業化状況報告まで、補助金確定までの一連の手続きに伴走します。
締切は令和8年(2026年)11月6日17時。準備できる期間は限られています
こんなお悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください
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