令和8年度版｜中小企業・小規模事業者・地域経済向け 概算要求ポイント
米国関税・物価高騰・構造的人手不足という逆風のなか、令和8年度の概算要求は価格転嫁の実効化／資金繰りと賃上げ支援／省力化投資の加速を軸に、事業承継・地域活性を総動員で後押しする内容です。令和7年度との比較も交え、実務に効く要点だけを一つの記事でコンパクトに整理します。
はじめに：なぜ今、概算要求に注目すべきか
補助金・税制・金融は、単なる資金援助ではなく成長戦略の“政策インフラ”です。令和8年度は、賃上げと生産性向上を同時に達成する設計がより鮮明に。投資（GX・DX・設備）と人への分配（賃上げ）を結び付け、地域の中核企業まで含めた底上げを狙います。
全体像（グランドデザイン）
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基本方針
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物価高騰対策・賃金支援・省力化投資に万全を期す
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過去最高水準の賃上げを背景に、「100億企業」を含む中小企業の成長を政策総動員で後押し
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事業承継・小規模事業者の活性化・社会課題解決で地域経済を底上げ
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予算規模（要求）
中小企業対策費：1兆80億円 → 1兆3,780億円（要求） と大幅増。
※米国関税・物価高騰下でも生産性向上に挑む企業の賃上げ・成長の下支えを事項要求。
【1】厳しい経営環境への即応パッケージ
価格転嫁の実効化
※当初要求記載に係る凡例：予算事業名【令和８年度概算要求額（令和７年度予算額）】-
中小企業取引対策事業：37億円（29億円）＋8.3億円
下請法・取適法の執行強化、価格交渉促進期間（9–3月）運用、発注者名公表や下請Gメンの実効性強化、官公需基本方針の徹底、パートナーシップ構築宣言の推進。
資金繰り・雇用の下支え
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日本公庫 中小企業支援：252億円（223億円）／DBJ危機対応：72億円（41億円）
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雇用維持関連（日本公庫）：50億円（39億円）
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中小企業支援事業：387億円（256億円）の内数
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活性化・事業承継総合支援：222億円（144億円）＋61億円（再生支援協議会・引継ぎ支援センター等）
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省力化＆賃上げの同時実現
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中小企業省力化投資促進（省力化補助金）：既存基金の内数
IoT／AI／ロボット等の汎用製品で“安価・簡易”に生産性向上。国庫債務負担行為 3,000億円。 -
地域の中堅・中小企業投資促進：60億円（8.7億円）
人手不足対応の大規模設備投資・新設を後押し。
【2】持続的賃上げに資する生産性向上・成長支援
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中小企業生産性革命推進事業：3,400億円
先進的加速補助金（607億円）／持続化補助金／事業承継・M&A補助金をパッケージ展開。 -
中小企業事業承継促進支援：既存基金の内数
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中小企業支援事業（387億円の内数）
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ワンストップ総合支援：80億円（34億円）＋20億円
よろず支援拠点に加え、**生産性向上支援センター（仮称）**を整備。 -
小規模企業共済制度：2億円（2億円）
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中小企業強靱化型支援：112億円
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Go-Tech（研究開発）：128億円（112億円）
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海外展開支援／成長投資ファンド等（中小機構）：運営費交付金の内数
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税制：30万円未満一括償却延長／技術戦略強化税制拡充・延長／研究開発投資拡大型の新特例（増加分控除）
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新規輸出10万者支援プログラムで輸出初挑戦を後押し。
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成長ステージ企業には、売上100億円超を目指すためのファンド・ハンズオンを強化。
【3】事業承継・再編を起点に生産性と成長を加速
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後継者支援ネットワーク：3.5億円（4.0億円）
後継者候補の掘り起こし～育成、承継アイデアコンテスト等。 -
事業承継税制（法人版・個人版）延長・拡充
非上場株式の納税猶予・免除、承継計画期限延長。 -
不動産取得税の特例延長：事業譲渡時の負担を軽減。
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生産性革命（再掲）：M&A補助金等で、再編・統合後のPMIと投資を継続支援。
【4】小規模事業者・地域の底上げと災害復旧
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小規模企業対策推進：62億円（61億円）（再掲）
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地域経済集積支援：16億円（10億円）
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地域の中堅・中小支援：8.0億円（内数）／経営強化支援：3.5億円（4.0億円）
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地域の人材育成支援：3.3億円（1.0億円）
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資金繰り（内数）マル経：30億円（30億円）
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事業再生（内数）ゼロ円創業エコシステム調査：5.0億円（5.0億円）
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工業用水道事業費補助金：4.1億円（4.1億円）
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商店街活性化支援：中小機構運営費交付金の内数
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災害復旧：なかいあわせ補助金／グループ補助金 計216億円
令和7年度 ⇄ 令和8年度：何がどう変わるか（要約）
| 項目 | 令和7年度 | 令和8年度 | 方向性 |
|---|---|---|---|
| 金融 | 資金繰り支援 | 成長投資支援 | 延命から攻めへ |
| 承継 | 廃業防止中心 | 成長投資型承継 | 承継を成長の起点に |
| GX | 準備期 | 本格投資期 | 環境から産業政策へ |
| DX | 効率化中心 | 成長ドライブ | コスト削減→競争力強化 |
| 人材 | 制度導入支援 | 採用・定着まで | 少子化対応と連動 |
| 地域 | 基盤維持 | 中核企業強化 | 地域の持続可能性重視 |
実務視点での“使いどころ”
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価格交渉と契約の見直し
価格転嫁スキーム（宣言・公表・指導）を活用し、粗利＝賃上げ原資を確保。 -
省力化×賃上げの同時設計
省力化補助金で、工数削減→付加価値増→賃上げまでのKPI連鎖を明示。 -
成長テーマの選定
先進的加速／Go-Tech／海外展開／ファンド連携など、事業フェーズ別メニューで最短ルートを選ぶ。 -
承継・再編を“攻め”に転換
税制延長＋補助金併用で、承継→PMI→成長投資を一気通貫化。
まとめ
令和7年度から令和8年度へ、政策は**「延命型」から「成長型」**へ明確にシフトしました。
省力化補助金（3,000億円）や生産性革命（3,400億円）などの大型枠は、投資と賃上げを結びつける装置として再設計。いま求められるのは、補助金を「資金繰り対策」ではなく成長戦略の中核として捉える視点です。
