【2026年最新】健康経営優良法人2026を認定データで読み解く|業種別・都道府県別の傾向と中小企業の活用戦略

令和8年(2026年)3月9日、経済産業省・日本健康会議による「健康経営優良法人2026」の認定法人が公表されました。第10回となる今回、大規模法人部門に3,765法人、中小規模法人部門に23,085法人が認定され、前年度から両部門とも大幅に増加しています。健康経営は、もはや一部の大企業だけの取り組みではなく、中小企業の経営戦略そのものに組み込まれる段階へと移行しました。

本記事の特徴は、認定事務局が公表する認定法人一覧(エクセル)の実データを集計し、業種別・都道府県別の傾向まで踏み込んで分析している点にあります。「どの業種が、どの地域で、なぜ認定を取りに行っているのか」を数字で読み解くことで、自社が認定を取得・活用すべきかどうかの判断材料が見えてきます。

本記事は、健康経営の認定取得を検討している中小企業の経営者の方はもちろん、人材採用や公共調達、金融機関との関係強化を考えている経営者の方にも参考になります。特定の事業者の立場に偏らず、公的な公表データをファクトとして客観的に整理します。

健康経営優良法人2026の全体像|認定数と階層構造

健康経営優良法人認定制度は、従業員等の健康管理を経営的な視点から戦略的に実践している法人を「見える化」し、社会的に評価される環境を整備するための顕彰制度です。経済産業省が平成28年(2016年)度に創設し、日本健康会議が認定しています。企業規模に応じて「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」の2部門に分かれ、それぞれの上位法人には特別な称号が付与されます。

健康経営優良法人2026では、前年度と比べて両部門ともに認定数が大きく伸びました。下表のとおり、特に中小規模法人部門の伸び率が高く、制度の裾野が中小企業へと急速に広がっていることが読み取れます。

部門 2026認定数 2025認定数 増減
大規模法人部門 3,765法人 3,400法人 +365(約+10.7%)
中小規模法人部門 23,085法人 19,796法人 +3,289(約+16.6%)

※認定数は令和8年(2026年)3月9日時点の公表値。出所:経済産業省「『健康経営優良法人2026』認定法人が決定しました」。

称号の階層構造を理解する

健康経営優良法人には、単なる「認定/非認定」だけでなく、評価上位法人に付与される称号の階層があります。この階層を理解しておくことが、自社がどこを目指すべきかを考える出発点になります。

称号 部門 位置づけ
健康経営銘柄 上場企業 経済産業省・東京証券取引所が共同選定。投資家向けの最上位顕彰
ホワイト500 大規模 大規模法人部門の上位法人に付与(501法人)
ブライト500 中小規模 中小規模法人部門の上位500法人に付与
ネクストブライト1000 中小規模 中小規模法人部門の上位501〜1500位の法人に付与
💡 補足
ネクストブライト1000は、令和6年(2024年)申請(健康経営優良法人2025)から新設された称号です。中小規模法人部門の裾野をさらに広げる狙いがあり、「ブライト500には届かないが、上位を目指したい」中小企業にとって、現実的な次の目標として機能しています。

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中小規模法人部門の業種別傾向|建設業・製造業で約半数

ここからは、認定事務局が公表する認定法人一覧(令和8年〈2026年〉5月12日時点)の実データを集計した結果を見ていきます。中小規模法人部門の認定法人を業種別に集計すると、特定の業種への明確な偏りが浮かび上がります。

順位 業種 認定法人数
1 建設業 5,562
2 製造業 5,238
3 卸売業 1,875
4 運輸業 1,649
5 サービス業(他に分類されないもの) 1,529
6 専門・技術サービス業 966
7 小売業 960
8 情報通信業 945
9 保険業 720
10 福祉 375

建設業(5,562法人)と製造業(5,238法人)の2業種だけで、中小規模法人部門の認定全体(23,077法人)の約47%を占めています。この偏りは偶然ではなく、業種ごとに認定取得のインセンティブが大きく異なることを反映していると整理されます。

なぜ建設業が突出して多いのか

建設業が最多となっている背景には、公共工事の入札における加点評価があります。多くの自治体や発注機関が、総合評価落札方式の入札において、健康経営優良法人の認定企業に対して加点を行う動きを加速させています。受注機会に直結するため、建設業にとって認定取得は「福利厚生」ではなく「営業戦略」として位置づけられていると理解するのが実態に近い見方です。

製造業についても、取引先である大企業からのサプライチェーン上の要請や、人材確保の競争激化が、認定取得を後押ししていると考えられます。

✓ POINT
自社の業種が建設業・製造業・運輸業に該当する場合、認定取得は人材面だけでなく受注・取引の観点でも直接的な経営メリットにつながる可能性が高いと言えます。「同業他社がすでに取得している」状況であれば、未取得であること自体が競争上の不利になりかねません。

都道府県別の傾向|大阪・愛知が東京を上回る

中小規模法人部門を本社所在地の都道府県別に集計すると、一般的なイメージとは異なる結果が現れます。認定数が最も多いのは東京ではなく、大阪府(2,659法人)、次いで愛知県(2,385法人)であり、東京都(1,737法人)はこの2府県を下回っています。

順位 都道府県 認定法人数
1 大阪府 2,659
2 愛知県 2,385
3 東京都 1,737
4 兵庫県 976
5 北海道 870
6 静岡県 815
7 長野県 756
8 宮城県 679
9 広島県 671
10 神奈川県 629

大阪府の認定数は東京都の約1.5倍に達しています。企業数の母数だけでは説明できないこの差は、地域の医療保険者(協会けんぽ各支部など)が実施する「健康宣言事業」の浸透度や、地方銀行・信用保証協会による認定企業への優遇制度の整備状況が地域ごとに異なることを反映していると整理できます。健康経営優良法人の認定を取得するには、加入している保険者が実施する健康宣言事業への参加が前提条件となっており、この入口の浸透度が地域差を生む一因になっています。

⚠ 注意
都道府県別の傾向は、その地域の「企業数の多さ」だけでなく「地域の支援インフラの充実度」を映し出しています。自社の所在地域で同業の認定が進んでいる場合、取引先や金融機関が認定を前提に企業を見る土壌がすでに形成されている可能性があり、対応の優先度は高まると認識する必要があります。

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大規模法人部門・健康経営銘柄2026の傾向

大規模法人部門(会社法上の会社等3,392法人)を業種別に見ると、サービス業(586法人)、情報・通信業(471法人)、小売業(386法人)、卸売業(352法人)が上位を占めます。中小規模法人部門で最多だった建設業(159法人)や製造系が、大規模では相対的に順位を下げる点が対照的です。上位の称号「ホワイト500」の内訳では、情報・通信業(68法人)とサービス業(56法人)が突出しています。

健康経営銘柄2026は28業種44社

上場企業を対象とした最上位顕彰である「健康経営銘柄2026」には、第12回となる今回、28業種44社が選定されました。原則1業種1社の選定ですが、基準を満たす場合は1業種から最大5社まで選定されます。これまでの累計選定社数は167社にのぼり、うち10回以上選定された企業は4社です。

花王・大和証券グループ本社がいずれも11回目の選定となるなど常連企業が並ぶ一方、安藤・間、日清食品ホールディングス、日本新薬、ツムラ、ピジョン、東北電力など、初選定の企業も多数登場しました。健康経営が成熟期に入りつつも、新規参入が続いている構図が見て取れます。

認定企業が得られるメリット|経営者の視点で整理

健康経営優良法人の認定は、従業員の健康増進という直接効果に加えて、経営面での具体的なインセンティブをもたらします。主なメリットを下表に整理します。

メリット 内容
公共調達の入札加点 自治体・発注機関の総合評価落札方式で加点評価を受けられる場合がある(特に建設業で効果大)
金融機関の優遇 地方銀行・信用保証協会による融資金利の引き下げ等の優遇措置を受けられる場合がある
補助金・助成金の加点 一部の補助金で審査の加点対象となる場合がある
採用力の向上 認定ロゴを求人票等で使用でき、求職者・学生からの企業認知と信頼が高まる
保険料の割引 一部の保険会社が認定企業向けの保険料割引制度を設けている
取引先からの信頼 BtoB取引において、従業員を大切にする企業としての社会的評価が高まる

採用面の効果は、選定企業の声からも具体的に確認できます。古野電気は「新卒採用活動において、ホワイト500の認定が入社を決めた一因という学生がいる」と報告しており、群馬銀行は群馬県内で初めて健康経営銘柄に選定された結果「取引先からの問い合わせが増え、入行を希望する学生からの注目も高まった」としています。人材獲得が困難な中小企業ほど、認定が採用ブランディングの実効的な武器になると整理できます。

認定取得の要件と申請の流れ

認定取得には、部門ごとに定められた要件を満たす必要があります。中小規模法人部門の概要は下表のとおりです。

項目 大規模法人部門 中小規模法人部門
認定申請料(税込) 88,000円/件 16,500円/件
前提条件 健康経営度調査への回答 保険者の健康宣言事業への参加が必須
認定要件の目安 評価モデル5側面で総合評価/ホワイト500は必須項目+選択14項目以上 必須7項目+選択17項目のうち8項目以上(小規模法人特例あり)
認定有効期間 1年(毎年更新申請が必要) 1年(毎年更新申請が必要)

健康経営優良法人2026では、申請受付が令和7年(2025年)夏から秋にかけて行われ、認定発表が令和8年(2026年)3月でした。例年このスケジュールで運用されているため、認定取得を目指す場合は前年の春頃から健康宣言事業への参加と社内体制の整備に着手しておくことが賢明です。申請書やエビデンス資料の作成には相応の工数がかかるため、早い段階からの準備が成否を分けます。

💡 補足
中小規模法人部門の入口となる「健康宣言」は、加入している協会けんぽの各都道府県支部や健康保険組合等が実施しています。参加方法は保険者ごとに異なるため、まずは自社が加入している保険者へ確認することが第一歩となります。

評価の分岐要因|健康風土の「見える化」が鍵

認定を取得するだけでなく、上位の称号や銘柄を目指す場合、何が評価の分岐点になるのか。健康経営銘柄2026の選定企業紹介レポートが、その手がかりを示しています。

同レポートによれば、自社の健康経営の推進方針・目標に対する従業員の認知・理解度の変化を定量的に把握している企業は、銘柄選定企業では9割以上にのぼる一方、その他の調査回答法人では4割弱にとどまっています。施策を実施するだけでなく、その効果を数値で検証し、組織に健康風土が根づいているかを定期的に振り返っている点が、上位企業の共通項として浮かび上がります。

✓ POINT
「健康診断を実施した」「イベントを開いた」という施策の実施だけでは上位評価には届きません。施策の前後で従業員の意識や行動がどう変わったかを定量的に把握し、PDCAを回している企業が高く評価されます。認定取得の本質は、健康経営を経営の仕組みとして定着させることにあると理解する必要があります。

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まとめ|5つのポイント

ポイント 内容
① 認定数は過去最多 2026は大規模3,765法人・中小規模23,085法人。中小規模は前年比約16.6%増と急拡大している。
② 建設業・製造業で約半数 中小規模では建設業と製造業の2業種で全体の約47%。入札加点・取引先要請がインセンティブになっている。
③ 大阪・愛知が東京超え 中小規模の認定は大阪府が最多で東京の約1.5倍。地域の健康宣言事業や金融優遇の浸透度が差を生む。
④ 経営メリットは多面的 入札加点・金融優遇・補助金加点・採用力・保険料割引・取引先信頼と、効果は経営全体に及ぶ。
⑤ 鍵は効果検証と健康風土 上位評価企業は施策の効果を定量把握している割合が9割超。仕組み化が認定の本質となる。

よくある質問

Q1.中小企業でも健康経営優良法人の認定は取得できますか?
A1.取得できます。中小規模法人部門には23,000を超える法人が認定されており、その大半が中小企業です。むしろ制度の裾野は中小企業へと急速に広がっています。中小規模法人部門の認定申請料は税込16,500円と比較的低く、評価要件も必須7項目+選択8項目以上と、大規模法人部門に比べて取り組みやすい設計になっています。従業員規模が小さい場合は「小規模法人特例」も用意されており、必須項目数が軽減されます。まずは加入している保険者の健康宣言事業への参加から始めるのが第一歩です。
Q2.認定を取得すると、具体的にどんな経済的メリットがありますか?
A2.主な経済的メリットは4つあります。第一に、自治体や発注機関の公共調達における入札加点で、これは建設業で特に効果が大きいものです。第二に、地方銀行や信用保証協会による融資金利の引き下げ等の優遇措置です。第三に、一部の補助金における審査の加点です。第四に、保険会社による保険料の割引です。これらに加えて、求人での認知向上による採用コストの削減や、離職率低下による定着効果といった間接的な経済効果も期待できます。ただし優遇措置の内容は自治体・金融機関ごとに異なるため、自社の地域・取引先で実際にどの優遇が使えるかを確認することが重要です。
Q3.申請から認定までの流れと期間を教えてください。
A3.中小規模法人部門の場合、まず加入している保険者(協会けんぽ各支部や健康保険組合等)が実施する健康宣言事業に参加することが必須の前提条件となります。その後、認定事務局のポータルサイトから申請を行い、申請書とエビデンス資料を提出します。申請受付は例年8月頃から秋にかけて行われ、認定発表は翌年3月頃です。健康経営優良法人2026では申請受付が令和7年(2025年)、認定発表が令和8年(2026年)3月でした。申請書類の作成には相応の工数を要するため、前年春頃から準備に着手することが現実的です。認定の有効期間は1年間で、維持には毎年の更新申請が必要です。
Q4.「ブライト500」と「ネクストブライト1000」の違いは何ですか?
A4.いずれも中小規模法人部門の上位法人に付与される称号です。ブライト500は上位500法人に、ネクストブライト1000は上位501〜1500位の法人に付与されます。ネクストブライト1000は令和6年(2024年)申請から新設された称号で、ブライト500には届かないものの高い水準にある企業を評価する枠組みです。なお、ブライト500・ネクストブライト1000の認定要件として、フィードバックシートをホームページ上で開示することが求められます。まずは中小規模法人部門の認定を確実に取得し、その上で上位を目指すという段階的なアプローチが現実的です。
Q5.認定を取得しても、すぐに採用や受注に効果が出るのでしょうか?
A5.効果の現れ方は活用の仕方によって大きく異なります。認定ロゴを取得しただけで自動的に効果が出るわけではなく、求人票・採用サイト・名刺・自社サイトなどで積極的に認定を発信することで、はじめて採用や取引先への訴求につながります。実際に古野電気は「ホワイト500の認定が入社を決めた一因という学生がいた」、群馬銀行は「取引先からの問い合わせが増えた」と報告しています。入札加点については、自社が参加する入札の評価基準に健康経営が含まれているかを事前に確認することが前提となります。認定は「取得して終わり」ではなく「活用してこそ価値が出る」ものと理解することが重要です。
Q6.認定取得にかかるコストや手間はどの程度ですか?
A6.直接的な費用は中小規模法人部門で税込16,500円の認定申請料です。一方で、実質的な負担は申請書とエビデンス資料の作成にかかる工数です。定期健診の受診率向上、ストレスチェックの実施、保健指導、受動喫煙対策など、認定要件を満たすための社内施策の整備にも時間がかかります。自社のみで進めると準備に長期間を要するケースもあります。ただし、これらの施策の多くは認定の有無にかかわらず従業員の健康と生産性向上に資するものであり、認定取得を「健康経営を仕組み化するきっかけ」と捉えることが賢明です。
Q7.デジタル化・AI導入補助金など、他の補助金と組み合わせて活用できますか?
A7.健康経営優良法人の認定は、一部の補助金で審査の加点対象となる場合があります。また、健康経営の推進にあたっては、勤怠管理や健康データ管理のデジタル化、業務効率化のための設備投資などが伴うことが多く、デジタル化・AI導入補助金やものづくり補助金、省力化投資補助金といった制度と組み合わせて取り組むことで相乗効果が期待できます。たとえば、人手不足の解消を目的とした省力化投資と、従業員の健康増進を両立させる設計が可能です。補助金の活用は要件や公募時期が複雑なため、自社の状況に合った制度の選定と申請設計には専門家の支援を受けることが効果的です。
Q8.認定を取得したものの、毎年の更新が負担になりませんか?
A8.認定の有効期間は1年間で、維持には毎年の更新申請が必要です。確かに毎年の対応は負担になりますが、いったん社内に健康経営の仕組みが定着すれば、更新の工数は初回より大幅に軽減されます。重要なのは、認定を「毎年の事務作業」と捉えるのではなく、施策の効果検証と改善のサイクルとして位置づけることです。健康経営銘柄に選定される上位企業は、こうした継続的な振り返りを通じて健康風土を醸成しており、更新プロセス自体が経営改善の機会となっています。負担を感じる場合は、初回の体制づくりの段階で更新を見据えた仕組みを設計しておくことが有効です。
Q9.自社の業種は認定数が少ないのですが、取得する意味はありますか?
A9.認定数が少ない業種であっても、取得する意味は十分にあります。むしろ同業の取得が少ない業種では、認定取得が差別化の要素として強く機能する可能性があります。建設業や製造業のように認定が広く浸透した業種では「持っていて当たり前」になりつつある一方、認定が少ない業種では「従業員を大切にする先進的な企業」としての印象を、求職者や取引先に強く与えることができます。業種の認定数の多寡は、あくまで現時点での取り組み状況を示すものであり、自社が取得するメリットの大小を直接決めるものではありません。自社の経営課題(採用難・人材定着・取引先からの評価など)に照らして判断することが重要です。
Q10.経営者として、健康経営に取り組むうえで最も意識すべきことは何ですか?
A10.最も意識すべきは、健康経営を「コスト」ではなく「投資」として捉え、経営戦略と結びつけることです。健康経営優良法人2026の選定企業の多くが、従業員の健康を「企業価値の源泉」「成長の土台」と位置づけ、エンゲージメントや生産性の向上、ひいては業績や採用力の強化につなげています。単発の健康イベントで終わらせず、推進方針を明確にし、その効果を定量的に把握しながら継続的に改善していく仕組みづくりこそが本質です。認定の取得はゴールではなく、健康経営を経営に定着させるための一里塚と理解することが、長期的な成果につながります。

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