飲食店が使える補助金・助成金|オーナー・フランチャイズ加盟店の制度の選び方
飲食店には、飲食店だけの専用の補助金は、基本的にありません。そのため、お店の悩みごとに、業種を問わない制度の中から選び分けることになります。
補助金は公募の回ごとに条件や日程が変わります。そのため本記事は、日付や締切を前面に出さず、時間がたっても使える「選び方」を中心に整理しています。最新の回の条件は、必ず各制度の公式サイトで確認してください。
本記事では、飲食店のオーナーさんと、フランチャイズに加盟している店舗のオーナーさんに向けて、使える制度の全体像、制度ごとの中身、フランチャイズ加盟店の注意点、悩み別の選び方を、公式資料で確認できた範囲で整理します。
飲食店の悩みで制度を選ぶ
飲食店の投資の悩みは、大きく5つに分けられます。まず、いちばん困っていることをひとつ決めると、見るべき制度が絞れます。
| お店の悩み | 候補になる制度 |
|---|---|
| 厨房の作業を機械で省力化したい | 省力化投資補助金(一般型・カタログ注文型) |
| 予約・会計・在庫をデジタル化したい | デジタル化・AI導入補助金 |
| 集客・店づくり(広告・ホームページ・改装)を強めたい | 小規模事業者持続化補助金 |
| 時給を引き上げて、設備も入れたい | 業務改善助成金(厚生労働省) |
| 新しい業態に大きく挑戦したい | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 |
省力化投資補助金(一般型):厨房の省力化の中心
省力化投資補助金の一般型は、自社の現場に合わせて個別に設計した設備やシステムへの、大きな投資を支える制度です。飲食店なら、調理の工程を自動化するような投資がイメージしやすいでしょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率 | 中小企業者は1/2。小規模企業者・小規模事業者・再生事業者は2/3 |
| 上限(基本) | 従業員5人以下で750万円、6〜20人で1,500万円、21〜50人で3,000万円、51〜100人で5,000万円、101人以上で8,000万円 |
| 上限(大幅賃上げ特例) | 上記より上乗せされる(5人以下で1,000万円、101人以上で1億円など) |
| 内容 | ハードとソフトを組み合わせた、個別の設備導入・システム構築 |
飲食サービス業の採択の割合
中小機構が公表している採択結果概要では、飲食サービス業が採択全体に占める割合は、これまで公表された回で1.4%から1.7%の間でした。製造業や建設業が中心の制度で、飲食店はまだ少ない業種です。
補足
この割合は、採択全体に占める業種別の割合です。飲食店だけの採択率ではありません。飲食店の採択率は、公式には記載がありません。なお、公式の分類では「飲食店」と「持ち帰り・配達飲食サービス業」が飲食サービス業に含まれます。
公式が紹介している飲食の採択例
中小機構は、採択された事業計画の例として、飲食の事業者も紹介しています。複数の業態を持つ会社が、フライヤーなどを導入して調理の工程を自動化し、お店ごとの品質をそろえる計画や、製麺の工程を最初から最後まで自動化し、新規出店に必要な供給体制をつくる計画です。どちらも、省力化で生まれた時間を、営業や新店舗、新商品に使う筋書きでした。
注意
公式も「同様の事業計画を提出しても、不採択となる可能性がある」と注意しています。例はイメージをつかむためのものです。
省力化投資補助金(カタログ注文型):飲食向けの製品から選ぶ
カタログ注文型は、国が省力化の効果を認めた製品の中から選ぶ方式で、販売事業者が申請をサポートする共同申請の形です。補助率は1/2以下で、上限は従業員数で決まります(5人以下で200万円、6〜20人で500万円、21人以上で1,000万円。賃上げ特例を満たすと上乗せ)。
| 用途 | カタログに載っている製品の例 |
|---|---|
| 揚げる・焼く | 自動フライヤー、両面焼きグリドル |
| 温める・加熱する | コンベアオーブン、再加熱キャビネット/カート |
| 冷やす・戻す | 急速冷却機・急速凍結機、解凍機 |
| 洗う | 業務用自動食器類洗浄機 |
| 切る・包む・そのほか | 食品スライサ・カッタ、食品包覆機(餃子成型機など)、飲料ディスペンサー |
補足
掲載される製品は増えています。配膳ロボットなどは、この記事では製品名として取り上げていません。最新のカタログは、公式サイトで確認してください。
デジタル化・AI導入補助金:予約・会計・在庫のソフト
予約、会計、在庫、勤怠の管理といった、ソフトやクラウドの費用が対象になり得ます。事務局に登録されたITツールの中から選び、登録されたIT導入支援事業者と一緒に申請するのが前提です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 通常枠の補助率 | 1/2以内(最低賃金に近い従業員が多い場合などは2/3以内) |
| 通常枠の補助額 | 5万円以上150万円未満、150万円以上450万円以下 |
| 対象経費 | ソフトウェア購入費、クラウド利用費、導入関連費 |
| 機器の扱い | 通常枠の対象経費にはなく、レジや券売機などはインボイス枠で対象になることがある |
登録されていないツールは対象外です。使いたいソフトが登録されているか、申請の前に公式サイトで確認してください。
小規模事業者持続化補助金:集客と店づくり
チラシや看板、ホームページなど、販路を広げる取り組みに使える制度です。飲食店は、一般に商業・サービス業の区分とされることが多く、従業員5人以下が小規模事業者の目安です。業種の判定は現に行っている業態で行われるため、自社が当てはまるかは公募要領で確認してください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率 | 2/3(賃金引上げ特例のうち赤字事業者は3/4) |
| 補助上限 | 50万円(インボイス特例で+50万円、賃金引上げ特例で+150万円、両方で+200万円) |
| 対象経費の区分 | 機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費、旅費、新商品開発費、借料、委託・外注費 |
店舗の改装は対象になるか
公募要領には、対象になる経費の例として、店舗の改装・バリアフリー化の工事、お客様用のトイレの改装工事が載っています。一方で、販路開拓や業務の効率化に結びつかない工事(単なる店舗移転のための解体・建設工事など)は対象外です。また、単価50万円(税抜)以上の機械や、50万円(税抜)以上の外注の店舗改装は、補助のあとも一定の期間、処分が制限されることがあります。
補足
ホームページ関連費だけでの申請はできません。必ず他の経費と一緒に申請します。交付決定の前に発注・契約・支払いをしたものは対象外です。
業務改善助成金:時給を上げながら設備投資をする
厚生労働省の業務改善助成金は、補助金ではなく助成金です。事業場内で最も低い時給を50円以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資などを行った場合に、その費用の一部が助成されます。公式のご案内では、最大600万円です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 助成率 | 事業場内最低賃金の水準によって4/5または3/4(境目の金額は年度で変わります) |
| 上限 | 引き上げる金額(コース)と、引き上げる労働者数によって変わる(例:90円コースで8人を引き上げた場合、公式の計算例の上限は450万円) |
| 計算 | 設備投資の費用×助成率と、上限額を比べて、安いほうが支給される |
| 対象経費の例(公式) | POSレジシステム導入による在庫管理の短縮、顧客管理情報のシステム化、業務フロー見直しのコンサルティング |
| 申請の単位 | 事業場(店舗)ごと |
注意
機械の契約や納品は、必ず交付決定の後です。決定の前に契約や納品をすると助成の対象になりません。助成率や条件は年度で変わるため、最新の内容は労働局か公式サイトで確認してください。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金:新しい業態への大きな挑戦
| 枠 | 補助上限(賃上げ特例時) | 補助率(中小企業者) |
|---|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 2,500万円(3,500万円) | 1/2(2/3)。小規模・再生は2/3 |
| 新事業進出枠 | 7,000万円(9,000万円) | 1/2(2/3) |
| グローバル枠 | 7,000万円(9,000万円) | 2/3 |
新事業進出枠は、既存の事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出が対象です。いまのお店の延長ではなく、新しい市場に向けた事業かどうかが見られるところです。公式の概要ページには業種制限の明記がありません。飲食業が対象になるか、具体の事例は、ここでは断言せず、公募要領で確認してください。
自治体の制度は、地域ごとに確認する
都道府県や市区町村が、独自に飲食店を支援している場合があります。ただし、地域ごとに違うため、全国共通としてはお伝えできません。お店のある市区町村、商工会議所、商工会に、一度聞いてみてください。
フランチャイズ加盟店の注意点
フランチャイズに加盟しているお店は、制度によって扱いが違います。公式資料で確認できたことは次のとおりです。
| 制度 | 確認できたこと | 出典 |
|---|---|---|
| 持続化補助金 | フランチャイズ本部との取引(FC指定の機器を本部以外から購入する場合を含む)は補助対象外。本部が作製する広告物の購入も対象外 | 公募要領 |
| 業務改善助成金 | FC契約等で指定された業者以外から購入できる場合に申請できる。二者以上の見積書と、指定外から購入できることが分かる書面(FC契約書の写し等)を提出 | 業務改善助成金Q&A |
| 省力化・デジタル化 | 要領・FAQで、フランチャイズ特有の記載は確認できていない | 契約と要領で確認 |
申請の前に、次の4つを確認すると安心です。
| 確認すること | 中身 |
|---|---|
| 契約の内容 | 設備や仕入れ先の指定がないか |
| 資本関係 | 大企業が1/2以上を出資している会社は、みなし大企業として対象外になる制度がある |
| 見積もり | 二者以上の見積書が必要なことが多い。指定外の業者から買えるか |
| 本部への相談 | 改装や設備の導入に、本部の承認が必要な契約もある |
経費の考え方と、申請の前に確認すること
補助金は、事業の目的に直接つながる投資が対象になります。省力化の機器、予約・会計のソフト、集客のための広報などがその代表です。一方で、汎用的なもの、家賃や光熱費といった日々の経費、古い機械の取替えだけの投資は、対象外になりやすいです。厨房の設備や内装工事は制度ごとに扱いが違うので、公募要領の対象経費の欄で必ず確認してください。そして、交付決定の前に発注や支払いをしてしまうと、多くの制度で対象外になります。順番を守ってください。
お店の悩み別・制度の選び方
| 悩み | 候補 | 最初に確認すること |
|---|---|---|
| 厨房の作業を機械で楽にしたい | 省力化投資補助金 | 個別設計か、カタログの製品か |
| 予約・会計・在庫をデジタルで管理したい | デジタル化・AI導入補助金 | 使いたいソフトが登録済みか |
| 集客・店づくりを強めたい | 持続化補助金 | 従業員5人以下か、経費の区分 |
| 時給を上げながら設備投資をしたい | 業務改善助成金 | 事業場内最低賃金の水準、交付決定の順番 |
| 新しい業態に挑戦したい | 新事業進出・ものづくり補助金 | 公募要領の対象と要件 |
補足
この表は当社の整理した目安であって、公式の区分ではありません。最終的には各制度の窓口で確認してください。
まとめ|お店の悩みを決めて、制度を選ぶ
📊 このセクションの要点
飲食店だけの専用の補助金はないが、厨房の省力化、デジタル化、店づくり、賃上げと設備、新業態と、悩みに合わせて使える制度がある。飲食サービス業の採択割合が公式に出ているのは省力化(一般型)で、1.4%から1.7%の間。フランチャイズ加盟店は、持続化補助金の注意点と、業務改善助成金の指定業者の扱いを押さえる。機械の契約や発注は、必ず交付決定のあと。
よくある質問
Q1.飲食店専用の補助金はありますか?
A1.国の制度としては、基本的にありません。業種を問わない制度の中から、お店の悩みに合わせて選びます。自治体が独自に支援している場合もあるため、市区町村や商工会議所に確認してください。
Q2.店舗の改装に補助金は使えますか?
A2.制度によります。持続化補助金では、店舗の改装やバリアフリー化の工事が、対象になる経費の例として公募要領に載っています。ただし、販路開拓や業務効率化に結びつかない工事は対象外です。
Q3.フランチャイズ加盟店でも申請できますか?
A3.制度によって扱いが違います。業務改善助成金は、FC契約で指定された業者以外から購入できる場合に申請できます。持続化補助金は、フランチャイズ本部との取引が対象外です。契約と公募要領の両方で確認してください。
Q4.機械をすぐ買ってもいいですか?
A4.先に買うのはおすすめできません。交付決定の前に発注・契約・支払いをしたものは、多くの制度で対象外になります。順番を守ってください。
制度の整理のご相談
どの制度が自分のお店に合うのか迷ったときは、壱市コンサルティングが制度の整理のご相談をお受けしています。
📋 制度の整理
お店の悩みと、各制度の公募要領をもとに、候補になる制度と確認すべき点を整理します。
🤝 士業事務所との連携
書類作成や手続きなど、士業の業務にあたる部分は、提携先の士業事務所と連携して対応します。
早い段階でご相談いただくほど、選べる道は広がります。
こんなお悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください
- ✅ 厨房の機械やレジ・予約のシステムを入れたいが、どの制度か分からない
- ✅ フランチャイズ加盟店で、契約との関係が心配
- ✅ 店舗の改装や、時給の引き上げと設備投資を同時に考えている
