【令和9年度概算要求】省力化・デジタル化・AI投資補助金へ統合|昨年度との比較で読む中小企業補助金の再編
令和8年(2026年)8月31日、中小企業庁が「令和9年度 中小企業・小規模事業者関係 概算要求等ポイント」を公表しました。中小企業向け補助金の枠組みが、昨年度から大きく組み替えられています。
最も大きな変更は、中小企業省力化投資補助金とデジタル化・AI導入補助金が「省力化・デジタル化・AI投資補助金」として一本化されたことです。あわせて、主要4補助金の受け皿が「中小企業生産性革命推進事業」から「独立行政法人中小企業基盤整備機構運営費交付金」へ移り、要求額は6,980億円となりました。
背景には、令和8年(2026年)7月30日に閣議了解された概算要求基準があります。「強く豊かな日本」投資枠の創設と、補正予算依存からの脱却という2つの方針が、補助金の箱の作り方そのものを変えました。今年の概算要求資料は、すべての事業について前年度当初予算額と前年度補正予算額を併記する形式に改まっています。
本記事では、令和9年度(2027年度)の概算要求について、昨年度の資料と突き合わせながら、何がどう変わったのかを事業単位で整理します。数値はすべて中小企業庁の公表資料に基づいています。
令和9年度概算要求で確定した3つの再編
省力化投資補助金とデジタル化・AI導入補助金が統合
令和9年度(2027年度)の概算要求資料には、「省力化・デジタル化・AI投資補助金」という新しい事業名が記載されました。説明文は「人手不足や生産性向上等の課題を抱える中小企業・小規模事業者等を対象に、業務効率化やAX・DXの推進に向け、AIを含むデジタル技術の活用や省力化設備の導入を一体的に支援」となっています。
昨年度の資料と比べると、変更の中身がはっきりします。令和7年度補正予算・令和8年度当初予算のポイントでは、デジタル化・AI導入補助金は「中小企業生産性革命推進事業」の中に位置づけられ、省力化投資補助金は「既存基金の内数」として別に記載されていました。別々の箱に入っていた2つの制度が、令和9年度は1つの事業名に統合されています。
資料には「省力化設備の導入」と「デジタル技術の活用」を一体的に支援すると書かれているだけで、現行の一般型・カタログ注文型という類型がどう扱われるかまでは示されていません。カタログ注文型は登録製品を販売事業者と共同申請する仕組みで、デジタル化・AI導入補助金と申請構造が一致します。一方の一般型は事業計画書を作成して審査を受ける類型です。統合後に類型がどう再編されるかは、公募要領の公表を待つ必要があります。
主要4補助金が中小機構運営費交付金に集約
2つ目の再編は、受け皿となる事業名の変更です。令和9年度(2027年度)では、独立行政法人中小企業基盤整備機構運営費交付金という箱に、中小企業成長加速化補助金、省力化・デジタル化・AI投資補助金、小規模事業者持続化補助金、M&A・事業承継補助金の4つが並んでいます。要求額は6,980億円で、一部が「強く豊かな日本」投資枠に位置づけられました。
昨年度は、これらの補助金は「中小企業生産性革命推進事業」という名称でまとめられ、令和7年度補正予算で3,400億円が措置されていました。ただし当時の内訳は、中小企業成長加速化補助金、デジタル化・AI導入補助金、小規模事業者持続化補助金、事業承継・M&A補助金の4つです。省力化投資補助金がこの箱に取り込まれ、事業名も生産性革命推進事業から中小機構運営費交付金へ変わりました。なお事業承継・M&A補助金は、令和9年度では「M&A・事業承継補助金」と語順が入れ替わっています。
新事業進出・ものづくりは独立した箱へ
3つ目は、新事業進出・ものづくり商業サービス補助事業の扱いです。昨年度は「既存基金の内数」とされ、単独の金額が示されていませんでした。令和9年度(2027年度)では2,200億円という金額が明示され、投資枠に位置づけられています。基金の内数という不透明な状態から、独立した要求事業へ格上げされた形です。
もう1つ、名称の変化に注意が必要な事業があります。昨年度に令和7年度補正予算で4,121億円が措置された「中堅等大規模成長投資補助金」は、令和9年度の資料では「地域の産業クラスター形成に向けたサプライチェーン形成支援補助金」として2,376億円が要求されています。うち1,376億円は後年度負担分で、これとは別に地域未来予算分の事項要求があるとされています。大規模成長投資という切り口から、地域のサプライチェーン形成という切り口へ、政策の建て付けが変わりました。
| 補助金 | 令和7年度補正・令和8年度当初での位置づけ | 令和9年度概算要求での位置づけ |
|---|---|---|
| 省力化投資補助金 | 既存基金の内数として単独記載 | 省力化・デジタル化・AI投資補助金へ統合 |
| デジタル化・AI導入補助金 | 中小企業生産性革命推進事業の内数 | 省力化・デジタル化・AI投資補助金へ統合 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 中小企業生産性革命推進事業の内数 | 中小機構運営費交付金の内数 |
| 事業承継・M&A補助金 | 中小企業生産性革命推進事業の内数 | M&A・事業承継補助金として中小機構運営費交付金の内数 |
| 中小企業成長加速化補助金 | 中小企業生産性革命推進事業の内数 | 中小機構運営費交付金の内数 |
| 新事業進出・ものづくり補助金 | 既存基金の内数 | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助事業として2,200億円 |
| 中堅等大規模成長投資補助金 | 令和7年度補正で4,121億円 | 地域の産業クラスター形成に向けたサプライチェーン形成支援補助金として2,376億円 |
📊 このセクションの要点
令和9年度概算要求では、省力化投資補助金とデジタル化・AI導入補助金が「省力化・デジタル化・AI投資補助金」に統合されました。主要4補助金の受け皿は中小企業生産性革命推進事業から中小機構運営費交付金へ移り、新事業進出・ものづくりは独立した2,200億円の事業となりました。大規模成長投資補助金はサプライチェーン形成支援補助金へ建て付けが変わっています。
金額は昨年度からどう変わったか
表記形式そのものが変わった
金額を読む前に、資料の書き方が変わった点を押さえる必要があります。令和9年度(2027年度)の資料は、各事業について「令和9年度要求額(令和8年度当初〇億円、令和7年度補正〇億円)」という併記形式になりました。当初予算と補正予算の両方を並べ、合計と比較できるようにしたものです。
これは令和9年度概算要求基準の方針を反映したものです。財務省の閣議了解文書には「補正予算依存から脱却し恒常的な施策は当初予算に計上するため、適切に要求・要望」と明記されました。中小企業向け補助金は長年、当初予算ではなく補正予算で措置されてきましたので、その分が当初予算側に移れば、当初予算ベースの数字は大きく膨らみます。当初予算だけを前年と比べると、増額幅を過大に読むことになります。
主要事業の要求額
令和9年度(2027年度)の概算要求は「賃上げ起点の成長戦略と地域産業クラスター形成」という柱で1兆3,841億円が示されています。主要事業を、昨年度の当初予算と補正予算の合計と並べると次のとおりです。
| 事業名 | 令和9年度要求 | R8当初+R7補正 |
|---|---|---|
| 中小機構運営費交付金 (主要4補助金を含む) |
6,980億円 | 3,588億円 (188億円+3,400億円) |
| サプライチェーン形成支援補助金 | 2,376億円 | 4,121億円 (R7補正のみ) |
| 新事業進出・ものづくり商業サービス補助事業 | 2,200億円 | 既存基金の内数 |
| 日本政策金融公庫補給金・出資金 | 604億円 | 209億円 |
| 中小企業信用補完制度関連補助事業 | 518億円 | 184億円 |
| 中小企業活性化・事業承継総合支援事業 | 280億円 | 213億円 |
| 小規模事業対策推進等事業 | 175億円 | 159億円 |
| ワンストップ総合支援事業 | 96億円 | 82億円 |
| Go-Tech事業 | 128億円 | 122億円 |
| 中小企業取引対策事業 | 40億円 | 37.6億円 |
補助金の本体である中小機構運営費交付金は、昨年度の当初と補正の合計3,588億円に対して6,980億円と、およそ1.9倍の要求です。金融支援も伸びており、日本政策金融公庫関係が209億円から604億円へ、信用補完制度関連が184億円から518億円へと、いずれも約2.8倍から2.9倍になっています。一方で、伴走支援や小規模事業者向けの基盤事業は1割前後の伸びにとどまります。増額の重心は、設備投資支援と資金繰り支援に置かれています。
要求と決定は一致しない
ここで押さえておくべき事実があります。令和8年度(2026年度)の概算要求では、中小企業対策費として1,378億円が要求されました。しかし中小企業庁が公表した令和8年度当初予算案の資料によれば、中小企業対策費全体は1,079億円でした。令和7年度当初の1,080億円とほぼ同水準です。要求段階から約300億円が削られています。
概算要求は各府省の要求であり、財務省の査定を経て12月下旬に予算案として閣議決定されます。今年の概算要求基準には「補助金・基金の自己点検結果を要求・要望に反映し、予算編成過程において精査」とも明記されました。要求額をそのまま来年度の支援規模と受け取るのは早計です。ただし、事業名の統合や新設は要求段階でほぼ固まりますので、制度の枠組みを読む材料としては十分に使えます。
📊 このセクションの要点
補助金本体の要求額は昨年度の当初と補正の合計から約1.9倍、金融支援は約2.8倍に伸びました。ただし今年から当初と補正を併記する表記に変わっており、当初予算だけとの比較は増額幅を過大に見せます。前年度は1,378億円の要求に対して当初予算1,079億円で着地しており、要求額と決定額は一致しません。
制度設計の変更点
売上高10億円を目指す宣言の要件化
新事業進出・ものづくり商業サービス補助事業について、令和9年度(2027年度)の資料には「成長志向型の中小企業をより多く創出していく観点から、売上高10億円を目指す宣言を原則として要件化」と書かれています。設備投資の内容だけでなく、事業者としての成長目標の表明が入口条件になるということです。
昨年度の資料には、この要件は記載されていませんでした。現在の売上規模が10億円に届かない事業者にとっては、申請そのものの前提が変わります。実務上は、宣言の具体的な様式や、宣言と事業計画の数値との整合をどこまで求められるかが焦点になります。
持続化補助金と「成長志向の経営計画(仮称)」
小規模事業者持続化補助金の説明も変わりました。令和9年度の資料では「例えば1億円を目指すなど、売上規模を拡大し『成長志向の経営計画(仮称)』を宣言する者を含む小規模事業者等が、経営計画を自ら策定し、商工会・商工会議所の支援を受けながら取り組む販路開拓等を支援」とされています。
「含む」という書き方ですので、宣言が必須要件になったとは読めません。ただし、小規模事業対策推進等事業の説明には「経営発達支援計画に基づく支援実績・効果の把握・評価のための仕組み及び『成長志向の経営計画(仮称)』の宣言の仕組みを一体的に構築、運用する」とあり、宣言の仕組み自体が新たに作られます。持続化補助金の軸足が、事業の維持・販路開拓から売上拡大へ動きつつあります。
早期の賃上げに向けた補助金の見直し
賃上げの柱には、その他の施策として「早期の賃上げに向けた補助金の見直し」という一文が入りました。すでに省力化投資補助金(一般型)第8回公募では、補助事業の完了を待たずに行う足下の賃上げが審査項目に明記されています。予算資料の記述は、この方向が令和9年度以降の制度全体に及ぶことを示すものです。
税制でも動きがあります。中小企業向け賃上げ促進税制について「今後5年間を重点期間と位置づけ」「一人当たりの賃金の増加につながるよう『全雇用者の給与総額』や賃上げ水準の要件等について抜本的に見直し、強化を行う」とされました。昨年度の資料では現行制度の維持が基本方針でしたので、大きな転換です。
| 論点 | 昨年度の記述 | 令和9年度の記述 |
|---|---|---|
| ものづくり系の申請要件 | 革新的製品・サービス開発や新市場進出に係る設備投資等を支援 | 売上高10億円を目指す宣言を原則として要件化 |
| 持続化補助金の対象像 | 生産性革命推進事業の内数として記載 | 売上1億円を目指すなど成長志向の経営計画を宣言する者を含む |
| 賃上げと補助金審査 | 賃上げ環境整備として記載 | 早期の賃上げに向けた補助金の見直しを明記 |
| 賃上げ促進税制 | 現行制度を維持 | 今後5年間を重点期間とし要件を抜本的に見直し・強化 |
| 事業承継税制 | 特例承継計画等の提出期限を延長 | 抜本見直しにより「稼ぐ力」強化に取り組む企業を後押しする措置へ |
📊 このセクションの要点
ものづくり系では売上高10億円を目指す宣言が原則要件化され、持続化補助金でも成長志向の経営計画の宣言という仕組みが導入されます。賃上げは補助金の審査と税制の双方で強化される方向が明記されました。支援対象の重心が、事業の維持から売上拡大と賃上げの実行へ移っています。
新設・拡充される支援メニュー
地域AXネットワーク事業
令和9年度(2027年度)で新たに登場したのが地域AXネットワーク事業です。中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業96億円の中に位置づけられています。中小企業とAIサービス提供者、商工会・商工会議所、税理士、金融機関、高専等が出会う場を地域ごとに構築し、AI導入を伴走支援するという内容です。あわせて、業種別にAI導入の進め方・手法を整理した「業種別ガイドライン」が作成・周知されます。
補助金でAI関連の設備・ツールを導入する事業者にとって、この施策は関連が深いものです。省力化・デジタル化・AI投資補助金で設備を入れ、地域AXネットワークで導入の進め方を支援するという組み合わせが想定されます。業種別ガイドラインが公表されれば、事業計画書におけるAI活用の記述も、そのガイドラインとの整合を求められる可能性があります。
事業承継・M&A関連の強化
中小企業活性化・事業承継総合支援事業は280億円で、昨年度の当初139億円と補正74億円の合計213億円から約1.3倍です。投資枠に位置づけられました。M&A・事業承継補助金は中小機構運営費交付金の中に置かれ、M&A時の設備投資や専門家活用費用等を支援するとされています。
制度面では「中小M&Aを支援する個人・機関の規律向上を図る法制化の検討」が挙げられました。仲介事業者の規律に関する議論が、法制化という段階に進む可能性があります。税制では事業承継税制の抜本見直しに加え、中小企業事業再編投資損失準備金(中堅・中小グループ化税制)について、適用期限の延長とM&A実務の実態に即した計画認定手続の見直しが要望されています。
消費税減税を前提とした予算
見落とされやすい記述として、消費税・インボイス特別相談窓口・広報事業94億円の説明があります。「消費税減税の影響を受ける中小企業の事業者への相談窓口や税理士派遣等の対応を行うとともに、税率変更に柔軟に対応できるスマートレジシステムの普及に向けたプロモーションを実施する」とされています。昨年度の同種の記述はインボイス制度の定着が中心でした。
予算資料が消費税減税を前提に組まれている点は、小売・飲食など税率変更の影響が大きい業種にとって実務上の意味があります。レジやPOSの改修が必要になる場合、その時期と補助制度の公募時期をどう合わせるかが検討課題になります。
| 施策 | 内容 | 実務への影響 |
|---|---|---|
| 地域AXネットワーク事業 | 地域ごとにAI導入の伴走支援体制を構築、業種別ガイドラインを作成 | 事業計画のAI活用の記述がガイドラインと整合を求められる可能性 |
| 中小M&Aの規律向上 | 支援する個人・機関の規律向上を図る法制化を検討 | 仲介事業者の選定基準や手数料の妥当性の説明がより重要に |
| 消費税減税対応 | 相談窓口・税理士派遣、スマートレジシステム普及のプロモーション | レジ・POS改修の時期と補助制度の公募時期の調整が必要 |
| 資金繰り支援の拡充 | 信用補完制度518億円、日本公庫604億円へ増額要求 | 補助金と融資を組み合わせた投資計画が立てやすくなる |
📊 このセクションの要点
地域AXネットワーク事業が新設され、AI導入の伴走支援と業種別ガイドラインの整備が進みます。事業承継・M&Aは予算・税制の両面で強化され、仲介事業者の規律については法制化が検討されます。消費税減税を前提とした相談体制とレジ対応の予算も計上されました。
今後のスケジュールと今からの準備
概算要求から公募開始までには、およそ8か月から1年の時間があります。統合後の制度がどのような公募要領になるかは、令和9年(2027年)春以降に明らかになる見込みです。ただし、要求資料の段階で審査の方向性はかなり読めますので、逆算して準備を進めることができます。
| 時期 | 予算編成の動き | 事業者が取るべき行動 |
|---|---|---|
| 令和8年(2026年)9月〜11月 | 財務省査定、経済対策と補正予算の議論 | 現行の省力化投資補助金・デジタル化・AI導入補助金で使える公募回を確認 |
| 令和8年(2026年)12月下旬 | 令和9年度予算案の閣議決定 | 統合後の予算規模と事業名が確定、投資判断の材料が揃う |
| 令和9年(2027年)1月〜3月 | 通常国会での予算審議・成立 | 設備の見積取得、金融機関との資金計画の詰め |
| 令和9年(2027年)春以降 | 統合後の補助金の公募要領公表 | 要件・上限額・審査項目を確認し申請作業へ着手 |
この間に着手すべきことは3つです。第一に賃上げの実績づくりです。審査に足下の賃上げが反映されるのであれば、令和8年度(2026年度)内の昇給・賞与の設計から逆算する必要があります。給与支給総額の推移を、賃金台帳や決算書と整合する形で説明できる状態にしておくことが求められます。
第二に成長目標の整理です。ものづくり系では売上高10億円を目指す宣言が原則要件化され、持続化補助金でも成長志向の経営計画という仕組みが導入されます。現在の売上規模から目標までの道筋を、投資計画と結びつけて説明できるようにしておく必要があります。第三に現行制度での実行です。統合を待つより、いま動かせる制度で実績を作るほうが確実な場面は少なくありません。
POINT
省力化投資補助金(一般型)は第8回公募が令和8年(2026年)8月18日に公開され、申請受付は9月中旬、締切は10月中旬が予定されています。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募は令和8年(2026年)9月30日に受付を開始し、10月30日18時に締め切られる予定です。統合後の制度を待つのではなく、現行の公募回で申請できるかをまず検討してください。
📊 このセクションの要点
統合後の公募要領が出るのは令和9年春以降ですが、賃上げ実績と成長目標の整理は今から進められます。制度の確定を待つ間も、現行の省力化投資補助金や新事業進出・ものづくり商業サービス補助金で公募が動いています。まず現行制度で申請できるかを検討することが実務上は確実です。
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 2制度の統合が確定 | 省力化投資補助金とデジタル化・AI導入補助金が「省力化・デジタル化・AI投資補助金」に一本化。類型の扱いは公募要領待ち。 |
| 受け皿の事業名が変更 | 主要4補助金は中小企業生産性革命推進事業から中小機構運営費交付金へ。要求額は6,980億円。 |
| 増額の読み方に注意 | 今年から当初と補正を併記する表記に変更。当初予算だけとの比較は増額幅を過大に見せる。 |
| 成長目標が入口条件に | ものづくり系は売上高10億円を目指す宣言を原則要件化。持続化補助金にも成長志向の経営計画の宣言が導入。 |
| 要求と決定は一致しない | 前年度は1,378億円の要求に対し当初予算1,079億円で着地。確定は令和8年12月下旬の予算案閣議決定。 |
よくあるご質問
Q1.省力化投資補助金とデジタル化・AI導入補助金は本当に統合されるのですか。
A1.令和9年度概算要求の資料に「省力化・デジタル化・AI投資補助金」という事業名で記載されています。説明文は、人手不足や生産性向上等の課題を抱える中小企業・小規模事業者等を対象に、業務効率化やAX・DXの推進に向け、AIを含むデジタル技術の活用や省力化設備の導入を一体的に支援する、というものです。昨年度の資料では、デジタル化・AI導入補助金は中小企業生産性革命推進事業の内数、省力化投資補助金は既存基金の内数として別々に記載されていましたので、明確な統合です。ただし概算要求は要求段階ですので、予算編成過程で事業名や内容が変わる可能性は残ります。確定するのは令和8年(2026年)12月下旬の予算案閣議決定です。
Q2.一般型とカタログ注文型はどうなるのですか。
A2.概算要求の資料には類型についての記載がなく、現時点では不明です。予算資料は事業名と要求額、支援の方向性を示すもので、申請類型のような制度の詳細は公募要領で決まります。構造の面から見ると、カタログ注文型は登録された省力化製品を販売事業者と共同で申請する仕組みで、登録済みITツールをIT導入支援事業者と共同申請するデジタル化・AI導入補助金と設計が一致します。事務局もいずれも中小企業基盤整備機構です。一方の一般型は事業計画書を作成して審査を受ける類型で、性格が異なります。統合後に3類型が並立するのか、登録製品型として2つが統合され一般型が別に残るのかは、公募要領の公表を待つ必要があります。
Q3.予算が大幅に増えたという話は正しいのですか。
A3.要求額は増えていますが、比較の仕方に注意が必要です。補助金の受け皿である中小機構運営費交付金は6,980億円の要求で、昨年度の当初188億円と令和7年度補正3,400億円の合計3,588億円と比べると約1.9倍です。ただし今年から当初と補正を併記する表記に変わっており、当初予算だけと比べれば数十倍という数字も作れてしまいます。これは概算要求基準に「補正予算依存から脱却し恒常的な施策は当初予算に計上する」と明記されたことによる、財源の付け替えの側面が大きいものです。加えて概算要求は要求段階です。令和8年度は1,378億円の要求に対して当初予算での中小企業対策費は1,079億円でした。要求額をそのまま来年度の支援規模と受け取らないことが重要です。
Q4.小規模事業者持続化補助金は続きますか。
A4.令和9年度概算要求の資料に事業名が明記されており、継続の方向です。中小機構運営費交付金の中に、中小企業成長加速化補助金、省力化・デジタル化・AI投資補助金、M&A・事業承継補助金と並んで記載されています。ただし対象像の書き方が変わりました。従来は経営計画を策定して販路開拓に取り組む小規模事業者という位置づけでしたが、令和9年度の資料では「例えば1億円を目指すなど、売上規模を拡大し『成長志向の経営計画(仮称)』を宣言する者を含む」と書かれています。「含む」ですので宣言が必須要件になったとは読めませんが、小規模事業対策推進等事業の中で宣言の仕組みが構築されるとされており、審査での取扱いには注意が必要です。
Q5.売上高10億円を目指す宣言とは何ですか。
A5.新事業進出・ものづくり商業サービス補助事業について、原則として要件化すると記載された成長目標の表明です。資料には「成長志向型の中小企業をより多く創出していく観点から、売上高10億円を目指す宣言を原則として要件化」とあります。具体的な様式や、宣言と事業計画の数値をどこまで整合させる必要があるかは、公募要領で示されることになります。実務上は、現在の売上規模から10億円までの道筋を、今回の投資がどう寄与するのかという形で説明できるかどうかが問われると考えられます。なお「原則として」という表現ですので、例外の扱いが設けられる可能性もあります。
Q6.賃上げの実績はどこまで見られるのですか。
A6.概算要求の資料には「早期の賃上げに向けた補助金の見直し」とあるのみで、具体的な審査方法は示されていません。ただし現行制度にすでに動きがあります。省力化投資補助金(一般型)第8回公募では、補助事業の完了を待たずに行う足下の賃上げが審査項目として明記されました。これから賃上げしますという計画ではなく、すでに賃上げしていますという事実が問われる方向です。準備としては、直近の昇給・賞与の実施状況を給与支給総額の推移として整理し、賃金台帳や決算書と突き合わせて説明できる状態にしておくことが有効です。申請の直前に着手して間に合う性質の項目ではありません。
Q7.統合されるなら、いまの公募での申請は待つべきですか。
A7.設備投資の必要性が現時点で明確であれば、待たずに現行制度で進めるほうが合理的です。統合後の制度が現行より有利になる保証はありません。予算規模は増額要求されていますが、同時に売上高10億円を目指す宣言の要件化や賃上げ実績の審査反映といった、要件の厳格化も進んでいます。また統合直後の公募は要領の解釈が定まらず、事務局への確認に時間を要する傾向があります。統合後の最初の公募は令和9年(2027年)春以降と見込まれ、交付決定まで含めると設備の導入は相当先になります。人手不足が現実に事業運営を圧迫しているのであれば、待機期間そのものが機会損失です。
Q8.地域AXネットワーク事業とは何ですか。
A8.令和9年度概算要求で新設された、AI導入の伴走支援を地域ごとに行う仕組みです。中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業96億円の中に位置づけられています。中小企業とAIサービス提供者、商工会・商工会議所、税理士、金融機関、高専等が出会う場を全国に構築し、AI導入を伴走支援するという内容です。あわせて、業種別にAI導入の進め方・手法を整理した「業種別ガイドライン」が作成・周知されます。補助金でAI関連の投資を検討している事業者にとっては、導入の設計段階から相談できる窓口が増えることを意味します。業種別ガイドラインが公表されれば、事業計画書におけるAI活用の書き方の参照基準にもなり得ます。
Q9.大規模成長投資補助金はなくなるのですか。
A9.令和9年度の資料では「地域の産業クラスター形成に向けたサプライチェーン形成支援補助金」という名称に変わっています。要求額は2,376億円で、投資枠に位置づけられました。うち1,376億円は後年度負担分とされ、これとは別に地域未来予算分の事項要求があると注記されています。昨年度は「中堅等大規模成長投資補助金」として令和7年度補正で4,121億円が措置されており、うち2,121億円が後年度負担分でした。名称の変更は、企業単位の大規模投資支援から、地域のサプライチェーン形成という切り口への建て付けの変化を示しています。対象や要件がどう変わるかは、公募要領の公表を待つ必要があります。
Q10.情報はどこで確認すればよいですか。
A10.中小企業庁の「中小企業対策関連予算」ページと、経済産業省の概算要求ページが一次情報です。中小企業庁は例年8月末に「中小企業・小規模事業者関係 概算要求等ポイント」を公表しており、政策目的ごとの事業名と要求額が整理されています。経済産業省側では概算要求等概要と、事業ごとの内容を示すPR資料が公開されます。PR資料は本体公表から数週間後に掲載される運用ですので、個別事業の詳細を確認したい場合はこちらを待つことになります。なお補助金の再編情報は、事務局の公式公表より先に解説記事やSNSで流通する傾向があり、事実と異なる記述も見られます。制度の存否や統合の有無は、必ず官公庁の公表資料で裏を取ることをおすすめします。
補助金の活用についてのご相談
制度の変化に振り回されず、投資判断から逆算して支援します
補助金は制度が変わります。統合され、名称が変わり、審査項目が入れ替わります。変化を追いかけること自体が目的化すると、本来必要だった投資の時期を逃します。壱市コンサルティングでは、認定経営革新等支援機関として、まず投資の必要性と時期を整理したうえで、その時点で使える制度を選ぶという順序で支援しています。
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📊 制度動向のモニタリング
概算要求から予算成立、公募要領公表までの動きを追い、自社に関係する制度の変更点を整理してお伝えします。
🔄 伴走支援と事業化状況報告
採択後の交付申請、実績報告、事業化状況報告まで継続して支援します。賃上げ要件の達成状況の管理も含みます。
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AIをどの業務に入れ、空いた工数をどこへ再配置するのかという設計から支援します。補助金の事業計画としても説明できる形に整理します。
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こんなお悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください
- ✅ 補助金が統合されると聞いたが、いま申請すべきか判断がつかない
- ✅ 賃上げ実績が審査に反映されると聞き、何を準備すればよいか知りたい
- ✅ 売上高10億円を目指す宣言をどう書けばよいか分からない
- ✅ AI導入を検討しているが、投資対効果を数値で説明できない
- ✅ 事業承継やM&Aを見据えて、使える制度を知っておきたい
