【令和8年度第2回】東京都「創業助成事業」とは?最大400万円・申請要件・スケジュールを徹底解説
東京都中小企業振興公社(TOKYO創業ステーション)が実施する創業助成事業の令和8年度(2026年度)第2回募集が、令和8年(2026年)9月29日から10月8日にかけて行われます。都内で創業を予定する個人、または創業から5年未満の中小企業者等を対象に、賃借料・広告費・人件費といった創業初期の経費を助成する、東京都を代表する創業支援制度です。
本制度の最大の特徴は、助成限度額400万円・助成率2分の2以内という規模感にあります。返済不要の資金を創業初期に確保できるため、起業を検討する方にとってきわめて有力な選択肢です。一方で、申請には「指定された創業支援事業の利用」という事前準備が必須であり、思い立ってすぐに申請できる制度ではありません。
本記事では、令和8年度第2回創業助成事業の制度概要・申請要件・助成対象経費・申請スケジュール・採択のポイントまでを網羅的に解説します。これから都内で起業する方はもちろん、すでに創業して数年以内の経営者の方にも参考になる内容です。
創業助成事業が生まれた背景と政策的意義
創業助成事業を理解するためには、東京都が抱える「開業率の低さ」という構造的な課題を俯瞰する必要があります。東京都の公表によれば、都内の開業率は約4.4%(令和6年度)にとどまり、米国や英国と比較して低い水準にあります。開業率の低迷は、新陳代謝の停滞や雇用創出力の低下につながり、地域経済の活力を損なう要因となります。
そこで東京都および東京都中小企業振興公社は、創業希望者への着実な支援を通じて都内開業率の向上を図ることを目的に、本助成事業を実施しています。単に資金を配るのではなく、創業初期に必要な賃借料・広告費・従業員人件費・市場調査費といった「事業を軌道に乗せるための経費」を対象としている点に、政策的な意図が表れています。
補足:本助成事業は「負担付贈与契約」に基づく制度です。交付決定により公社と申請者の間に契約が成立し、助成対象期間中の事業遂行義務や、完了後5年間の事業継続・報告義務などが付されます。単なる給付金ではなく、義務を伴う支援である点を理解しておくことが重要です。
制度の基本的な仕組みと助成内容
創業助成事業は、都内の産業活力向上に寄与する「創業者等の事業計画」に対して、創業初期に必要な経費の一部を助成する制度です。まずは制度の骨格を、助成内容の一覧で確認します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 助成対象者 | 都内での創業を具体的に計画している個人、または創業後5年未満の中小企業者等のうち、一定の要件を満たす方 |
| 助成限度額 | 上限400万円・下限100万円 (事業費・人件費は上限300万円/委託費は上限100万円) |
| 助成率 | 助成対象と認められる経費の3分の2以内 |
| 助成対象期間 | 交付決定日(令和9年〈2027年〉3月1日予定)から6か月以上、最長2年が経過する日まで |
| 助成対象経費 | 事業費(賃借料・広告費・器具備品購入費・産業財産権出願導入費・専門家指導費)/従業員人件費/委託費(市場調査分析費) |
| 申請方法 | 電子申請(Jグランツ)のみ。GビズIDプライムの取得が必須 |
助成金は「後払い」である点に注意
本制度を活用するうえで最も理解しておくべき点が、助成金は後払いであるという仕組みです。交付決定を受けても、すぐに資金が振り込まれるわけではありません。助成対象期間中に自己資金や融資で経費を支払い、実績報告・検査を経て助成金額が確定し、その後に支払われます。
そのため募集要項でも、申請要件として「助成金の交付がない場合であっても事業の実施が可能な資金計画であること」が明記されています。助成金をあてにした資金繰りでは事業が立ち行かなくなるため、創業時の自己資金や創業融資とあわせて計画を組み立てることが賢明です。なお、助成対象期間が6か月を超えている場合、6か月経過以降に1回に限り「中間払」を受けられる仕組みも用意されています。
注意:助成対象となるのは、原則として交付決定日以降、助成対象期間中に契約・履行・支払いが完了した経費です。創業前や交付決定前に支出した経費は対象になりません(賃借料・従業員人件費のみ、交付決定日以前に契約した内容も対象)。
申請要件1:誰が申請できるのか(対象者の確認)
創業助成事業に申請するためには、申請要件1から4のすべてを満たす必要があります。まずは申請要件1、すなわち「創業者等」に該当するかどうかを確認します。次のいずれかに該当する方が対象です。
| 区分 | 主な要件 |
|---|---|
| 創業予定の個人 | 都内での創業を具体的に計画している方。創業予定場所が都内であること |
| 個人事業主 | 税務署へ開業の届出を行ってから5年未満。納税地と主たる事業所等が都内に実在し、実質的に事業を行っていること |
| 法人の代表者 | 法人登記から5年未満の中小企業者。本店が都内に登記され、実質的に事業を行っていること(株式会社・持分会社・士業法人) |
| 特定非営利活動法人 | 法人登記から5年未満。主たる事務所が都内に実在し、中小企業者の振興に資する事業を行う等の要件を満たすこと |
「経営経験が通算5年未満」という最大の関門
申請要件1のなかでも、見落としやすいのが「経営経験が通算5年未満」という条件です。ここでいう経営経験とは、個人事業主または法人の登記上の代表者として事業を実施した期間を指します。重要なのは、今回申請する事業だけでなく、過去に営んでいた別事業や別法人の代表者期間も合算されるという点です。
たとえば、過去に3年間個人事業を営み、その後別の業種で法人を設立して3年が経過している場合、経営経験は通算6年となり、申請できません。雇われ社長や子会社社長として事業を実施した期間も経営経験に含まれます。一方、開業届を提出していないフリーランス期間は含まれません。自身の経歴を正確に棚卸ししたうえで判定することが重要です。
申請できない方:通算5年以上の経営経験がある方、みなし大企業に該当する法人、個人開業医(病院・診療所での医業としての申請)は対象外です。また、一般社団法人・一般財団法人・LLP・学校法人・宗教法人・医療法人なども対象になりません。
申請要件2:事前準備が必須となる「創業支援事業の利用」
創業助成事業における最大の特徴であり、最も準備に時間がかかるのが申請要件2です。本助成金に申請するには、公社が指定する23の創業支援事業のいずれかを利用し、所定の要件を満たしている必要があります。これは「思い立ってすぐに申請できない」制度であることを意味します。
指定された創業支援事業には、たとえば次のようなものがあります。
| 主な創業支援事業(抜粋) | 概要 |
|---|---|
| プランコンサルティング(TOKYO創業ステーション) | 事業計画書策定支援を修了し証明を受けた方。要件充足に概ね3か月程度を要する |
| 認定特定創業支援等事業 | 都内区市町村による産業競争力強化法に基づく支援を受け、過去3か年内に証明を受けた方 |
| 東京都中小企業制度融資(創業融資) | 創業融資を利用している方。区市町村の創業者向け保証付き融資も対象 |
| 認定インキュベーション施設への入居 | 認定施設に6か月以上入居し、個別具体的支援を受けている方等 |
| 創業支援施設への入居・融資制度の利用 ほか | 商工会議所等の支援、女性・若者・シニア創業サポート事業の融資、資本性劣後ローン(創業)など全23事業 |
POINT:公式ページでも明記されているとおり、申請要件2を満たすには概ね3か月以上かかるとされています。とくにプランコンサルティングを利用する場合は、申請受付期間から逆算して早めに動き出すことが、第2回募集に間に合わせる鍵になります。すでに創業融資を受けている方や、区市町村の認定特定創業支援を受けている方は、その証明書類が要件を満たすかどうかを早期に確認すべきです。
申請要件3・4:事業内容と納税・重複助成の条件
申請要件3は、申請する事業そのものが満たすべき条件です。中小企業者に該当すること、代表者以外の主体が実質的な経営の指揮命令を行っていないこと、他の個人事業主や法人の事業承継・譲渡ではないこと、必要な許認可を取得し関係法令を遵守していること、などが求められます。
とくに重要なのが、「従業員人件費のみ」「委託費のみ」での申請はできないという点です。必ず事業費(賃借料・広告費など)を助成対象経費に含める必要があります。また、助成金の交付がなくても実施可能な資金計画であること、後払いを踏まえた資金計画であることも要件に含まれます。
納税地と重複助成の確認(申請要件4)
申請要件4では、納税に関する条件が問われます。法人であれば本店が都内に登記され、法人事業税・法人都民税を東京都に納税すること。個人であれば個人事業税の納税地が都内にあり、個人事業税・個人都民税を東京都に納税することが求められます。
あわせて、他の助成金・補助金との重複助成の禁止も確認されます。本助成金と同一経費(同一の対象物に対して支払われる経費)について、他の制度から重複して助成を受けることはできません。ただし、賃借料のように継続して支払われる経費は、助成対象期間の重複がなければ、同一物件であっても対象となる場合があります。過去に国や区の補助金を受けている方は、対象期間と経費の重複関係を整理しておくことが重要です。
助成対象経費の詳細と申請額の計算方法
助成対象経費は「事業費」「従業員人件費」「委託費」の3つの経費区分に分かれます。それぞれの内訳と主な注意点を整理します。
| 経費区分 | 主な内容と注意点 |
|---|---|
| 賃借料 | 都内の事務所・店舗等の賃借料、共益費、器具備品のリース料。敷金・礼金・保証金・更新料、バーチャルオフィス利用料は対象外 |
| 広告費 | 販路開拓・顧客獲得目的の広告掲載、パンフレット作成、展示会出展、ホームページ作成等。販売を主目的とする費用やオンラインショップ出店費用は対象外 |
| 器具備品購入費 | 税込1万円以上50万円未満の机・PC・コピー機・エアコン等。中古品、消耗品、車両、機械装置は対象外 |
| 産業財産権出願・導入費 | 特許権・実用新案権・意匠権・商標権の出願、譲渡、実施許諾の経費。審査請求・登録・権利維持費は対象外 |
| 専門家指導費 | 外部専門家への相談・助言・指導の手数料。書類作成代行費用や顧問契約は対象外 |
| 従業員人件費 | 都内勤務の直接雇用従業員の給与。正規は月額35万円、パート・アルバイトは日額8,000円が上限。役員報酬・社会保険料・各種手当は対象外 |
| 委託費(市場調査・分析費) | 市場の調査・分析を外部専門業者に委託する経費。成果物の納品・提出が必須 |
申請額は「経費区分ごとに3分の2以内」で計算する
助成金申請額は、事業費・従業員人件費・委託費のそれぞれに3分の2を乗じて計算します。経費区分ごとに3分の2以内、かつ千円未満切り捨てで算出する点に注意が必要です。よくある誤りとして、次の2つが挙げられます。
よくある誤り①:交付申請額が所要金額の3分の2を超えている。たとえば事業費で270万円の申請を行うには、その1.5倍にあたる405万円以上の所要金額(事業費)が必要です。
よくある誤り②:交付申請額の合計が400万円を超えている。事業費・人件費・委託費を合算した申請額の合計は、100万円以上400万円以下に収める必要があります。
申請スケジュールと必要書類
令和8年度第2回創業助成事業の主なスケジュールは、次のとおりです。申請受付から助成金支払いまで、長期にわたる制度であることを把握しておく必要があります。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 令和8年(2026年)9月29日〜10月8日 | 申請受付期間(9月29日10時〜10月8日23時59分) |
| 令和8年(2026年)12月中旬頃 | 書類審査結果の通知(Jグランツにて連絡) |
| 令和9年(2027年)1月6日〜1月14日 | 面接審査(代表者本人が会場へ。日本語で実施) |
| 令和9年(2027年)3月上旬 | 面接審査結果の通知・交付決定通知書の発行 |
| 令和9年(2027年)3月1日 | 交付決定日(予定)。助成対象期間の起点 |
申請に必要な書類は、申請者の形態(法人・個人事業主・創業予定の個人)によって異なります。主な提出書類は次のとおりです。
- 創業助成事業申請書(指定様式・全ページ)と反社会的勢力排除に関する誓約事項
- 直近2期分の確定申告書等(1期目の法人や創業予定の個人は不要)
- 法人は履歴事項全部証明書(発行後3か月以内の原本)、個人事業主は開業届
- 納税証明書等(法人都民税・法人事業税、または住民税・事業税)
- 本人確認書類
- 申請要件確認書類(創業支援事業の利用を証明する書類)
書類審査で不通過になりやすいポイント:申請書(Excel)の一部のみをPDF化してしまう、確定申告書の添付書類の不足、インターネット取得の登記情報を提出してしまう(法務局発行の履歴事項全部証明書が必要)、納税証明書の種類・年度の間違い、創業支援事業の証明書類の不備、などが公社から注意喚起されています。
採択を高めるための実践的な戦略
創業助成事業は書類審査・面接審査・総合審査の3段階で評価されます。公社が公表する審査の視点を踏まえると、採択可能性を高めるためのポイントが見えてきます。
「助成金ありき」ではない事業計画を作る
募集要項には、「採択がされない場合でも実施可能な事業内容に対し、助成金活用による事業内容の充実を期待して助成する」と明記されています。つまり、助成金を前提としなければ成立しない計画は評価されません。自己資金・融資・売上で事業が成り立つ前提を示したうえで、助成金がその事業をどう拡充するかを描くことが重要です。
審査の視点に沿って事業計画書を組み立てる
審査では、製品・サービスの完成度、問題意識・潜在力の明確さ、対象市場への理解度、事業の実現性、助成金活用の有効性、スケジュール・経営見通しの妥当性、資金調達の妥当性、申請経費の妥当性が問われます。事業計画書の各項目(事業内容・想定顧客・競合との差別化・収益構造・リスク対策・資金計画)を、これらの視点に対応させて記述することが、採択への近道です。
とくに経費(助成対象経費明細)と事業計画・資金繰り表の整合性は重視されます。「どの経費を、なぜ、どのタイミングで使い、それが事業の拡充にどうつながるか」を一貫したストーリーで示すことが求められます。
制度活用にあたっての注意点
最後に、創業助成事業を活用するうえで見落としやすい注意点を整理します。
第一に、交付決定後5年間の継続義務です。助成事業完了の翌年度から起算して5年間、都内での事業活動・納税の継続、企業化状況報告書の毎年提出、関係書類の保存、財産の管理などが求められます。さらに、収益を得た場合は収益納付(助成額を上限に算定式で計算)が発生する可能性があります。
第二に、創業予定の個人・個人事業主が助成対象期間中に法人を設立すると、助成金を受給できなくなる点です。法人化を予定する場合は、面接審査開始日の前営業日である基準日(令和9年〈2027年〉1月5日)までに登記を完了し、所定の書類を提出する必要があります。創業のタイミングと法人化の計画は、申請前に慎重に設計しておくことが賢明です。
第三に、申請は1人につき1件に限られます。同一の代表者が経営する複数の法人による申請は受付不可です。また、申請書提出後の内容変更・加筆修正はできないため、提出前の十分な確認が欠かせません。
まとめ:令和8年度第2回 創業助成事業の要点
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| ① 最大400万円・助成率3分の2 | 都内創業初期の経費を上限400万円・下限100万円、助成率3分の2以内で助成する制度。返済不要の資金を確保できる |
| ② 申請受付は9月29日〜10月8日 | 第2回募集はJグランツでの電子申請のみ。GビズIDプライムの事前取得(審査に約2週間)が必須 |
| ③ 創業支援事業の利用が前提 | 指定23事業のいずれかの利用が必須。要件充足に概ね3か月以上かかるため、早期の準備が鍵 |
| ④ 経営経験は通算5年未満 | 過去の別事業・別法人の代表者期間も合算される。自身の経歴の棚卸しが重要 |
| ⑤ 後払い・5年間の継続義務 | 助成金は実績報告・検査後の後払い。完了後5年間の事業継続・納税・報告義務、収益納付の可能性がある |
よくある質問(Q&A)
創業助成事業の申請なら壱市コンサルティング
創業期の資金戦略を、申請準備から伴走支援まで
創業助成事業は、申請要件の確認、創業支援事業の利用準備、事業計画書の作成、面接審査の対策まで、長期にわたる準備が必要な制度です。壱市コンサルティングでは、採択そのものを目的にするのではなく、採択後も継続できる事業計画と資金戦略を軸に支援を行っています。
📋 事業計画書の作成支援
審査の視点に沿って、事業の実現性・市場理解・経費の妥当性を一貫したストーリーで描き込みます。
🏦 創業期の資金計画の設計
後払いの助成金を前提にしない、自己資金・創業融資を組み合わせた資金繰り計画を一緒に組み立てます。
🔄 採択後の伴走支援
実績報告・検査・5年間の企業化状況報告まで見据えた、創業後の経営伴走をお手伝いします。
創業の構想段階こそ、制度を最も有効に活用できる時期です。お早めにご相談ください。
こんなお悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください
- ✅ 自分が創業助成事業の申請要件を満たすか確認したい
- ✅ 申請要件2(創業支援事業の利用)の準備を何から始めればよいか分からない
- ✅ 審査を通過できる事業計画書を作りたい
- ✅ 創業融資と助成金を組み合わせた資金計画を立てたい
- ✅ 採択後の報告や経営の伴走支援まで任せたい
※本記事は令和8年度第2回創業助成事業の募集要項(令和8年〈2026年〉6月公開)およびTOKYO創業ステーション公式情報をもとに作成しています。申請にあたっては、必ず最新の募集要項および公式情報をご確認ください。
