【令和8年度】事業承継支援助成金(東京都)とは?対象・助成額・申請要件を徹底解説

東京都中小企業振興公社が、令和8年度(2026年度)の事業承継支援助成金の第1回募集を開始しました。自社株式の評価、セルフ・デューデリジェンス、中核人材の確保・育成など、事業承継や経営改善のために外部専門家へ委託する費用の一部を、最大200万円まで助成する制度です。

この助成金の最大の特徴は、単なる費用補助ではなく「事前の支援を受けていること」が申請の前提になっている点です。後継者が未定の企業から、親族内承継・従業員承継を進める企業、さらには事業を譲り受ける側の企業まで、4つのタイプに分かれて設計されており、自社の状況に応じてどのタイプで申請するかの見極めが重要になります。

本記事では、令和8年度の事業承継支援助成金について、助成内容・4つのタイプ・申請要件・申請の流れ・活用戦略までを網羅的に解説します。これから事業承継を検討する経営者の方はもちろん、顧問先の承継支援を担う士業・支援機関の方にも参考になる内容です。

事業承継支援助成金が設けられた背景

東京都が事業承継への支援を強めている背景には、中小企業の経営者の高齢化と後継者不在という構造的な課題があります。中小企業庁の公表資料でも、経営者の高齢化が進む一方で、後継者が決まっていない企業が依然として多く存在することが繰り返し指摘されてきました。黒字でありながら後継者が見つからず、廃業を選ばざるを得ない企業が一定数存在することが、地域経済にとって大きな損失となっています。

事業承継は、後継者を決めれば完了するものではありません。自社株式の評価、財務・法務の状況把握(デューデリジェンス)、承継後を担う中核人材の確保・育成など、専門的な検討を要する論点が数多く存在します。これらを経営者だけで進めることは難しく、税理士・中小企業診断士・M&Aアドバイザーといった外部専門家の関与が不可欠です。一方で、こうした専門家への委託費用が承継の初動を妨げる要因にもなっていました。

本助成金は、こうした「外部専門家への委託費用」を助成対象に据えることで、承継の検討を前に進めやすくする制度として設計されています。都内中小企業の持続的な成長・発展に向けた新たな事業展開に寄与し、円滑な事業承継と経営改善につなげることが、制度の目的に明記されています。

制度の基本的な仕組みと助成額

事業承継支援助成金は、事業承継や経営改善を実施する過程で活用する外部専門家等への委託費用の一部を助成する制度です。まず押さえておきたいのが、助成額・助成率・対象期間といった全体像です。

項目 内容
助成限度額 200万円(申請下限額20万円)
助成率 助成対象経費の2/3以内
※小規模企業者がA・B・Dタイプで「企業価値や事業価値等の算定」に取り組む経費は10/10以内
助成対象経費 事業承継・経営改善に係る外部専門家等への委託費
助成対象期間 令和8年(2026年)10月1日 ~ 令和9年(2027年)5月31日
(交付決定日から最長8か月間)
申請受付期間(第1回) 令和8年(2026年)7月17日(金)17:00まで
基準日 令和8年(2026年)6月1日
申請方法 電子申請システム「Jグランツ」のみ(GビズIDプライムが必要)

💡 POINT

小規模企業者が「企業価値・事業価値等の算定」に取り組む場合、A・B・Dタイプでは助成率が10/10(全額)になります。自社株評価や株価算定をこれから行う小規模企業者にとっては、特に活用効果の高い設計です。

助成額の上限は200万円ですが、下限として20万円の申請が必要です。少額の委託では対象にならない点に注意が必要です。また、助成対象期間は交付決定日(令和8年10月1日予定)から始まるため、それ以前に着手・契約した委託は原則として助成対象になりません。スケジュール設計が制度活用の成否を分けます。

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4つのタイプと申請要件

事業承継支援助成金は、企業の置かれた状況によってA・B・C・Dの4タイプに分かれています。申請にあたっては、いずれか一つのタイプを選択します。それぞれの対象と申請要件を整理します。

タイプ別の対象事業

タイプ 対象となる取組
Aタイプ
(後継者未定)
第三者への事業譲渡(M&A等)に向けた取組
Bタイプ
(親族内・従業員承継)
後継者への事業承継(譲渡)に向けた取組
Cタイプ
(企業継続支援)
令和7年度の企業継続支援を受けて実施する、事業承継に向けた経営改善等の取組
Dタイプ
(譲受支援)
事業又は株式の譲受に向けた取組

承継する側(譲り渡す側)だけでなく、事業や株式を譲り受ける側(Dタイプ)も対象になっている点が、この制度の特徴です。M&Aによる事業の引き継ぎを検討する企業にとっても活用余地があります。

タイプ別の申請要件(基準日:令和8年6月1日)

タイプ 主な申請要件
A・Bタイプ ①令和7年(2025年)6月1日から申請日の前日までに、公社や指定機関が行う事業承継関連の支援(個別相談・短期支援・企業継続支援、商工会議所・商工会連合会の地域持続化支援、信用金庫協会・信用組合協会・信用保証協会・中央会の各支援等)のいずれかを受けていること
②基準日以降10年以内に事業承継を予定していること
Cタイプ 令和7年度(令和7年4月1日~令和8年3月31日)に、公社が実施する企業継続支援を受けていること
Dタイプ 令和8年(2026年)6月1日から7月10日までの期間に、公社が行う現地診断(訪問による承継に関するヒアリング)を実施できること

⚠️ 注意

A・Bタイプは「事前に公社等の支援を受けていること」が要件です。申請時点で何の支援も受けていない場合、そのままでは申請できません。ただし、支援を受けていない方も申請前相談(個別相談)を受けることで申請が可能になります。Dタイプは6月1日~7月10日という限られた期間での現地診断が前提となるため、早めの動きが欠かせません。

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助成対象になる経費の考え方

本助成金の対象経費は、事業承継・経営改善に係る外部専門家等への委託費です。経営者が自ら行う作業や、社内人件費は対象になりません。あくまで外部の専門家に委託して行う取組が前提です。代表的な委託内容としては、次のようなものが想定されます。

委託内容の例 内容
自社株式の評価 承継・譲渡にあたっての株価算定。税理士等への委託が中心
セルフ・デューデリジェンス 自社の財務・法務・事業上のリスクを事前に把握する調査
中核人材の確保・育成 承継後の経営を担う人材の確保・育成に向けた取組
経営改善に係る取組 承継・継続に向けた経営改善の検討・計画策定(特にCタイプ)

📝 補足

対象経費の細かな範囲や、対象とならない経費は募集要項に詳しく定められています。同じ委託でも、契約形態・支払時期・内容の記載によって対象可否が変わることがあります。委託契約を結ぶ前に、募集要項と照らして整理しておくことが重要です。

申請の流れと必要書類

申請は、国の電子申請システム「Jグランツ」でのみ受け付けます。手続きは大きく4つのステップに分かれます。

申請の4ステップ

ステップ 内容
STEP1
GビズID取得
Jグランツの利用には「GビズIDプライム」アカウントが必要。発行に時間がかかるため早めに準備
STEP2
申請前面談・現地診断
申請前チェック表で要件を確認。対象者は「申請前面談」または「現地診断」を申込・実施
STEP3
申請書類の準備
募集要項を確認し、交付申請書等の様式をダウンロードして作成
STEP4
Jグランツで電子申請
受付期間内にJグランツで提出。持参・郵送・メール等は不可

主な提出書類

申請には複数の様式が必要です。タイプや事業者の属性によって、提出する書類が変わります。

  • 申請前確認書・交付申請書
  • 事業承継計画書(Bタイプのみ
  • 支援内容証明書(公社以外の支援を受けた方のみ
  • 小規模企業者に該当することの確認書(該当事業者のみ
  • 申請に必要な書類一覧表 ほか、募集要項で指定された添付書類

⚠️ 注意

申請受付期間を過ぎた場合、申請は一切受け付けられません。第1回の締切は令和8年(2026年)7月17日(金)17:00です。アクセス集中で手続きが滞る可能性もあるため、締切間際を避け、十分な余裕をもって電子申請を済ませることが重要です。

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制度を活用するための実践的な戦略

この助成金を有効に活用するうえで、押さえておきたい実務上のポイントを整理します。

第一に、「事前支援」と「申請」を逆算してスケジュールを組むことです。A・Bタイプは事前に公社等の支援を受けていることが要件であり、Dタイプは6月1日~7月10日の現地診断が前提です。7月17日の申請締切から逆算すると、事前の動きに使える時間は限られています。承継を検討し始めた段階で、まず相談・支援の枠を確保することが起点になります。

第二に、委託の着手時期と交付決定日の関係に注意することです。助成対象期間は交付決定日(令和8年10月1日予定)から始まります。それ以前に専門家と契約・着手してしまうと、その費用は助成対象から外れる可能性があります。「承継を急ぎたいから先に動いてしまう」という判断が、結果的に助成を取り逃す原因になりかねません。

第三に、小規模企業者は助成率10/10の対象になるかを確認することです。A・B・Dタイプで「企業価値・事業価値等の算定」に取り組む小規模企業者は、当該経費が全額助成の対象になります。自社株評価をこれから行う小規模企業者にとっては、優先的に検討すべき論点です。

この記事のまとめ

ポイント 内容
① 最大200万円の委託費助成 事業承継・経営改善に係る外部専門家への委託費を、助成率2/3以内・上限200万円(下限20万円)で助成する制度です。
② 4タイプから選択 後継者未定(A)、親族内・従業員承継(B)、企業継続支援(C)、譲受支援(D)の4タイプから、自社の状況に応じて一つを選びます。
③ 事前支援が申請の前提 A・Bタイプは公社等の事前支援、Dタイプは現地診断が要件です。支援未受給でも、申請前相談を受ければ申請が可能になります。
④ 小規模企業者は全額助成も 小規模企業者がA・B・Dタイプで企業価値・事業価値等の算定に取り組む経費は、助成率10/10(全額)の対象になります。
⑤ 締切と着手時期に注意 第1回の申請締切は令和8年(2026年)7月17日17:00。助成対象期間は交付決定日(10月1日予定)からで、それ以前の着手は対象外となる点に注意が必要です。

よくある質問(Q&A)

Q1. 事業承継支援助成金の助成額はいくらですか?
A1.助成限度額は200万円です。助成率は助成対象経費の2/3以内で、申請の下限額は20万円とされています。つまり、20万円未満の委託は対象になりません。なお、小規模企業者がA・B・Dタイプで「企業価値・事業価値等の算定」に取り組む経費については、助成率が10/10(全額)になります。自社株評価などをこれから行う小規模企業者にとっては、活用効果の大きい設計です。委託の規模や内容によって助成額は変わるため、見込み額は委託内容を整理したうえで試算することが重要です。
Q2. どのような費用が助成の対象になりますか?
A2.事業承継・経営改善に係る外部専門家等への委託費が対象です。具体的には、自社株式の評価、セルフ・デューデリジェンス、中核人材の確保・育成などが想定されています。経営者自身が行う作業や社内の人件費は対象になりません。あくまで外部の専門家へ委託して行う取組が前提です。同じ委託でも契約形態・支払時期・内容の記載によって対象可否が変わることがあるため、契約前に募集要項と照合して整理しておくことが重要です。
Q3. 4つのタイプは、どう選べばよいですか?
A3.自社の承継の状況に応じて選びます。後継者が決まっておらず第三者へのM&A等を検討するならAタイプ、親族や従業員への承継を進めるならBタイプ、令和7年度の企業継続支援を受けて経営改善に取り組むならCタイプ、事業や株式を譲り受ける側ならDタイプです。申請はいずれか一つのタイプを選択します。要件もタイプごとに異なるため、どのタイプで申請するかの見極めが、申請可否と準備内容を左右します。
Q4. これまで何の支援も受けていませんが、申請できますか?
A4.A・Bタイプは「事前に公社等の支援を受けていること」が要件ですが、支援を受けていない方も、申請前相談(個別相談)を受けることで申請が可能になります。まずは公社の事業承継・再生支援の個別相談の枠を確保することが起点になります。ただし、締切が令和8年(2026年)7月17日であることを踏まえると、事前相談に使える時間は限られています。承継を検討し始めた段階で、早めに相談の申込みを進めることが賢明です。
Q5. 申請はどこから行いますか?
A5.国の電子申請システム「Jグランツ」からのみ受け付けます。持参・郵送・電子メール等、Jグランツ以外の方法による提出はできません。Jグランツの利用には「GビズIDプライム」アカウントが必要で、このアカウントは発行までに時間がかかります。申請時にGビズIDの発行や公社HPでの申請エントリーが完了していないと受付できないため、早めの準備が必須です。締切間際はアクセスが集中する可能性もあるため、余裕をもった手続きが重要です。
Q6. いつまでに専門家へ委託すればよいですか?
A6.助成対象期間は交付決定日(令和8年〈2026年〉10月1日予定)から令和9年(2027年)5月31日までの最長8か月間です。この期間内に実施した委託が助成対象になります。交付決定前に契約・着手した費用は原則として対象外となるため、「承継を急ぎたいから先に動く」という判断が助成を取り逃す原因になりかねません。事前の相談・支援と、交付決定後の委託着手を切り分けてスケジュールを設計することが重要です。
Q7. 代理申請はできますか?
A7.代理申請を行う場合は、募集要項の「申請における留意事項」を確認のうえ、申請者が「同意書(代理申請用)」を作成し、Jグランツの申請フォームの指定箇所にアップロードする必要があります。士業や支援機関が承継の手続きをサポートするケースでも、この手順を踏むことが求められます。代理申請の可否や手順は募集要項に従う必要があるため、委託先と役割分担を整理したうえで進めることが重要です。
Q8. 譲り受ける側でも使えますか?
A8.使えます。Dタイプ(譲受支援)は、事業又は株式を譲り受ける側に向けた取組を対象としています。承継は譲り渡す側だけの課題ではなく、引き継ぐ側にも自社株評価やデューデリジェンスといった専門的な検討が生じます。Dタイプは、令和8年(2026年)6月1日から7月10日までの期間に公社の現地診断を受けられることが前提になります。期間が限られているため、譲受を検討している企業は早めに現地診断の枠を確保することが重要です。
Q9. 国の事業承継・引継ぎ補助金とは何が違いますか?
A9.本助成金は東京都中小企業振興公社が実施する都内中小企業向けの制度で、外部専門家への委託費を対象に、事前支援を前提とする設計が特徴です。国の事業承継・引継ぎ補助金は、対象経費の範囲・補助率・公募時期などが異なる別制度です。両制度は目的が近いため、どちらを使うか、あるいは時期をずらして使い分けるかは、自社の承継スケジュールと対象経費の照合が必要になります。併用の可否や重複の扱いは各制度の要綱で確認することが重要です。
Q10. 経営者として、まず何から始めるべきですか?
A10.まず「どのタイプに該当しそうか」と「事前要件を満たしているか」を確認することから始めるのが現実的です。A・Bタイプなら公社等の事前支援、Dタイプなら現地診断が前提になるため、これらの枠を早めに確保することが起点になります。並行して、GビズIDプライムの取得を進めておくと、申請段階で慌てずに済みます。承継は検討開始から実行まで時間を要するテーマです。早い段階で制度の前提を整え、交付決定後に委託を着手できる体制をつくっておくことが、助成を活かす最も確実な進め方です。

事業承継・助成金の活用なら壱市コンサルティング

事業承継支援助成金は、制度そのものよりも「事前支援・タイプ選択・スケジュール設計」という前さばきが成否を分ける制度です。壱市コンサルティングでは、中小企業診断士・認定経営革新等支援機関として、承継の入口から助成金の活用、その後の経営改善までを一貫して支援しています。

壱市コンサルティングでは、補助金・助成金の「申請代行」だけで終わらせるのではなく、承継後も会社が伸びていく事業計画づくりと伴走支援を大切にしています。

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後継者の有無に応じたタイプ選択、自社株評価・デューデリジェンスの段取りまで、承継の全体像を整理して支援します。

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事前要件・締切・交付決定日から逆算したスケジュール設計で、助成を取り逃さない申請をサポートします。

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承継をゴールにせず、その後の経営改善・成長戦略まで継続的に伴走します。

承継を検討し始めた今が、制度を最も有効に使えるタイミングです。

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※本記事は令和8年度 第1回募集時点で公表された情報をもとに作成しています。助成内容・要件・スケジュール等は変更される場合があります。申請にあたっては、必ず東京都中小企業振興公社が公表する最新の募集要項をご確認ください。

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