【令和8年(2026年)】新事業進出補助金 第3回|採択423件を独自分析|「どの業種が、どの新市場へ」進出したか

令和8年(2026年)7月に公表された新事業進出補助金 第3回公募では、423件が採択されました。この制度の本質は「既存事業とは異なる新市場への進出」です。そこで本記事では、公表された採択案件一覧423件を、事業計画名をもとに1件ずつ重複なく「進出先」に分類し、「どの業種の事業者が、どの新市場へ進出して採択されたのか」を分析しました。

分析の結果、進出先として最も多かったのは宿泊・観光(74件)と高付加価値ものづくり(69件)で、この2分野で採択の約3分の1を占めました。さらに重要なのは、既存業種ごとに進出先のパターンが明確に分かれているという点です。製造業はより高度な製造へ、建設業は宿泊・循環型へ、情報通信業はAI・DXの新用途へと、それぞれ固有の流れが読み取れます。

第3回で申請された方の振り返りとしてはもちろん、後継制度「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」新事業進出枠への申請を検討している方が、自社の業種からどの新市場を狙うべきかを判断する材料としても参考になります。

本記事の分析方法について:採択案件一覧の「事業計画名」をもとに、各案件を進出先(新たに参入する市場)で相互排他に1件ずつ分類し、既存業種(主たる業種・大分類)とクロス集計しました。壱市コンサルティングによる独自分析であり、事務局の公式分類ではありません。事業計画名からの判定であるため一定の判断を含み、分類が難しい案件は「その他」に集約しています。件数は分析時点の集計値です。

採択事業の「進出先」分布|最大は宿泊・観光と高付加価値ものづくり

採択423件を進出先で相互排他に分類すると、次のような分布になりました。宿泊・観光・エンタメが74件で最多、高付加価値ものづくりが69件で続き、この2分野で全体の約34%を占めます。飲食・食品製造58件、AI・DX・情報通信56件がこれに続きます。

進出先(新たに参入する市場) 件数 構成比
宿泊・観光・エンタメ 74 17.5%
高付加価値ものづくり(半導体・航空宇宙・防衛・精密部品ほか) 69 16.3%
飲食・食品製造 58 13.7%
AI・DX・情報通信 56 13.2%
不動産・専門サービス・BtoB 40 9.5%
ウェルネス・美容・健康 31 7.3%
リサイクル・環境・エネルギー 25 5.9%
介護・福祉・医療 17 4.0%
ペット・動物関連 13 3.1%
農林・6次産業 7 1.7%
その他(自動車整備・印刷・物流ほか) 33 7.8%

「AIやDX」の見え方に注意

事業計画名に「AI」「DX」という語を含む案件を単純に数えると70件超に達しますが、その多くはAIやDXを進出先そのものではなく手段として活用する計画です。たとえば「AIを活用した宿泊事業」の進出先は宿泊業であり、「DXによる製造」の進出先はものづくりです。進出先という軸で相互排他に分類すると、AI・DXそのものを新市場とする案件は56件で全体の4番目となります。テーマの人気度と、実際に参入している市場は分けて捉える必要があります。

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「どの業種が、どの新市場へ」進出したか|既存業種×進出先のクロス分析

本制度の核心は「既存事業から新市場への進出」です。既存業種(主たる業種)と進出先をクロス集計すると、業種ごとに採択事業の流れがはっきりと分かれます。ここが、テーマ一覧を眺めるだけでは見えない、採択事業の実像です。

製造業(99件)|さらに高度な”ものづくり”へ(高度化型)

採択最多の製造業99件は、約半数がより高度な製造分野へと進出しています。既存の金属加工・切断・精密加工の技術を土台に、半導体製造装置向け部品、航空宇宙・防衛関連部品、高耐久製品などへ展開する計画が中心です。技術の延長線上で新市場へ移るため、進出の必然性を説明しやすいのが特徴です。

採択された計画の例
厚板対応プラズマ切断機の導入による高耐久集塵機製造事業
半導体製造装置用のクランクシャフトの設計・製造事業
ハニカム高速連続生産設備で航空・宇宙分野に進出

建設業(65件)|宿泊・循環・DXへ(資産と技術の横展開型)

建設業は進出先が最も多様です。上位は宿泊・観光、リサイクル・環境・エネルギー、AI・DXの順で、施工技術や保有不動産を、まったく異なる市場へ横展開するパターンが目立ちます。遊休地・自社保有地を宿泊施設へ、施工で扱う建材を再資源化事業へ、現場管理のノウハウをDXへと転じる計画です。

採択された計画の例
再エネ活用ペット共生型キャンプリゾート事業(→宿泊・観光)
廃石膏ボード再資源化による地盤改良材製造(→循環・環境)
建設業に特化した業務改善アプリの開発によるシステム業参入(→AI・DX)

卸売・小売業/宿泊・飲食業|食の川上(製造)へ(垂直統合型)

卸売・小売業62件、宿泊・飲食業33件では、販売や提供から一歩川上の「食品製造」へ進出する垂直統合型が多く見られます。仕入れ・販売の顧客基盤を持つ事業者が、自社製造・自社ブランド化によって付加価値を取り込む構図です。

採択された計画の例
133年の歴史を持つ茶舗のフランス仕込み本格パン製造販売事業
高級飲食店向け小ロット特注無添加加工肉の自社製造事業

情報通信業/専門・技術サービス業|得意技術を新用途へ(技術転用型)

情報通信業29件は過半がAI・DX・情報通信の新サービスへ、専門・技術サービス業32件はAI・DXと宿泊・観光へ進出しています。自社の得意技術を、これまで扱っていなかった用途・顧客層へ転用するのが基本パターンです。

採択された計画の例
生成AI×在庫データ連携で実現する酒販・飲食DX推進事業
中小企業経営者に特化した戦略的リカバリー施設の一棟貸し事業(→宿泊)

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クロス分析から見える採択の「型」

業種ごとの進出パターンを俯瞰すると、採択事業は次の4つの「型」に整理できます。いずれも、既存事業で培った強みが新市場進出の必然性を裏づけている点で共通します。

採択事業に見られる4つの型

①高度化型(製造業に多い):既存の加工技術を、半導体・航空宇宙・防衛など、より高付加価値な製造分野へ引き上げる。

②横展開型(建設業に多い):施工技術・保有不動産を、宿泊・観光や循環・環境など異分野の市場へ転じる。

③垂直統合型(卸売・小売/飲食に多い):販売・提供から川上の食品製造へ進出し、自社ブランド化で付加価値を取り込む。

④技術転用型(情報通信・専門サービスに多い):得意技術やノウハウを、これまで扱っていなかった用途・顧客層へ転用する。

この4類型に加え、第3回では採択423件のうち176件が関税加点の対象でした。外部環境の変化を事業リスクとして捉え、その克服策として新市場進出を描く「外部環境対応」の視点が、いずれの型にも横断的に効いていたと整理できます。

傾向を踏まえた次の一手|後継制度の新事業進出枠へ

新事業進出補助金の枠組みは、後継制度「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の新事業進出枠へ引き継がれています。同枠は令和8年(2026年)6月29日に第1回公募を開始し、応募締切は9月30日18:00です。新規性・新市場性の考え方や設備投資必須という骨格は維持されているため、第3回までのクロス分析はそのまま計画づくりの指針になります。

項目 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 新事業進出枠(第1回)
応募締切 令和8年(2026年)9月30日 18:00厳守
補助率 中小企業者 1/2(一定条件で2/3)
補助上限 最大7,000万円(賃上げ特例で最大9,000万円)/下限750万円
押さえるべき要件 既存事業と異なる新規性・新市場性/機械装置・システム構築費または建物費が必須/付加価値・賃上げの達成要件

クロス分析が示す実務的な示唆は明快です。「自社の業種は、どの新市場と相性がよいか」をデータから逆算できるということです。製造業なら高度な製造分野、建設業なら宿泊・循環、卸売・小売や飲食なら食の川上、IT・専門サービスなら得意技術の新用途——採択の実績が集中する方向は、進出の必然性を語りやすい方向でもあります。人気テーマを追うのではなく、自社の強みが活きる進出先を選ぶことが、採択への近道です。

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この記事のまとめ

ポイント 内容
進出先の最多は宿泊・観光 423件を進出先で分類すると宿泊・観光74件、高付加価値ものづくり69件が上位。2分野で約34%を占めます。
AI・DXは手段が多い 計画名にAI・DXを含む案件は多いものの、進出先そのものとしては56件で4番目。手段と市場は分けて捉える必要があります。
業種で流れが分かれる 製造業→高度な製造、建設業→宿泊・循環、卸売小売/飲食→食品製造、IT・専門→AI・DX新用途、と明確です。
採択には4つの型 高度化・横展開・垂直統合・技術転用。いずれも既存の強みが進出の必然性を裏づけています。
自社の強みから逆算 後継制度の新事業進出枠でも同じ傾向が有効。締切は令和8年9月30日です。

よくある質問(Q&A)

Q1.採択事業の進出先で最も多いのは何ですか?

A1.宿泊・観光・エンタメです。採択423件を進出先で相互排他に分類すると、宿泊・観光が74件(17.5%)で最多、高付加価値ものづくりが69件(16.3%)で続き、この2分野で全体の約34%を占めました。飲食・食品製造58件、AI・DX・情報通信56件がこれに続きます。遊休資産を活かせる宿泊業と、既存技術を高度化しやすい製造業が、新市場進出の受け皿として大きな比重を占めていることが読み取れます。

Q2.「AI・DXが最多」という話を聞きましたが、実際はどうですか?

A2.計画名に「AI」「DX」の語を含む案件を単純に数えると70件超に達しますが、その多くはAIやDXを進出先そのものではなく手段として用いる計画です。たとえば「AIを活用した宿泊事業」の進出先は宿泊業です。進出先という軸で相互排他に分類すると、AI・DXそのものを新市場とする案件は56件で全体の4番目となります。テーマの登場頻度と、実際に参入している市場は区別して捉えることが重要です。

Q3.製造業はどのような新市場へ進出していますか?

A3.より高度な製造分野への「高度化型」が中心です。採択最多の製造業99件は、約半数が半導体製造装置向け部品、航空宇宙・防衛関連部品、高耐久製品などへ進出しています。既存の金属加工・切断・精密加工の技術を土台に、より付加価値の高い製品領域へ引き上げる計画です。技術の延長線上にあるため新市場進出の必然性を説明しやすく、付加価値向上の要件とも整合しやすいのが特徴です。

Q4.建設業の進出先に偏りはありますか?

A4.建設業は進出先が最も多様です。上位は宿泊・観光、リサイクル・環境・エネルギー、AI・DXの順で、施工技術や保有不動産を異分野へ横展開する「横展開型」が目立ちます。遊休地・自社保有地を宿泊施設へ、施工で扱う建材を再資源化事業へ、現場管理ノウハウをDXへと転じる計画です。建物費を必須経費の核に据えやすいため、宿泊施設への進出と相性がよいことも一因といえます。

Q5.卸売・小売業や飲食業の採択には特徴がありますか?

A5.川上の「食品製造」へ進出する垂直統合型が多く見られます。卸売・小売業62件、宿泊・飲食業33件では、販売・提供から一歩さかのぼって自社製造・自社ブランド化に踏み出す計画が目立ちます。仕入れ・販売の顧客基盤を持つ事業者が、製造機能を取り込むことで付加価値と収益性を高める構図です。既存の販路という強みが、新市場である製造への進出を裏づける形になっています。

Q6.採択事業に共通する「型」とは何ですか?

A6.業種ごとのクロス分析から、4つの型に整理できます。①既存の加工技術を高付加価値製造へ引き上げる高度化型、②施工技術・保有不動産を異分野へ転じる横展開型、③販売から川上の食品製造へ進む垂直統合型、④得意技術を新用途へ転用する技術転用型です。いずれも、既存事業で培った強みが新市場進出の必然性を裏づけている点で共通します。加えて関税影響への対応という外部環境の視点が、各型に横断的に効いていました。

Q7.人気の進出先を選べば採択されやすいのですか?

A7.進出先の人気は採択を保証しません。宿泊・観光やものづくりに採択が集中しているのは、「その市場が人気だから」ではなく、「既存事業の強みからその市場への進出の必然性を語りやすいから」です。自社の技術・資産・顧客基盤との接続が示せなければ、人気分野であっても新規性・新市場性の要件を満たしにくくなります。進出先選びは、テーマの流行ではなく自社の強みからの逆算で行うべきです。

Q8.地域による進出先の違いはありますか?

A8.採択のエリア分布は関東129件、中部89件、関西83件と三大都市圏で約7割を占めますが、これは応募件数の分布を反映したものです。地方圏では地域資源を活かした宿泊・観光や食品加工の計画が各地で採択されています。進出先の選択は地域そのものより、その地域で自社が持つ資産・技術に左右されると理解するのが妥当です。地方だから不利ということはなく、むしろ地域資源が進出の必然性を補強する材料になります。

Q9.この傾向は後継制度でも通用しますか?

A9.通用すると考えられます。新市場進出への支援は後継制度「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の新事業進出枠へ引き継がれ、新規性・新市場性の考え方や設備投資必須という骨格は維持されています。したがって、業種ごとの進出パターンや4つの型は、後継制度の計画づくりでも有効な指針です。ただし付加価値額の年平均成長率+4.0%以上などの達成要件が明確化されているため、公募要領との突き合わせは欠かせません。

Q10.クロス分析を自社の申請にどう活かせばよいですか?

A10.「自社の業種は、どの新市場と相性がよいか」を逆算する材料に使えます。製造業なら高度な製造分野、建設業なら宿泊・循環、卸売小売や飲食なら食の川上、IT・専門サービスなら得意技術の新用途——採択が集中する方向は、進出の必然性を語りやすい方向でもあります。まず自社の強み(技術・資産・顧客基盤)を棚卸しし、それが活きる進出先を選ぶ。そのうえで設備投資と収益・賃上げ計画を一貫させることが、採択される事業計画の条件です。

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後継制度の応募締切は令和8年(2026年)9月30日。計画づくりは早い着手が有利です。

こんなお悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください。

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