【令和8年度】課題解決型技術開発促進事業とは?助成限度額2,000万円・助成率2/3の東京都助成金を徹底解説
東京都と公益財団法人東京都中小企業振興公社は、令和8年度(2026年度)から「課題解決型技術開発促進事業」を新たに開始しました。これまでの「安全・安心な東京の実現に向けた製品開発支援事業」等を再編し、東京都の長期ビジョン「2050東京戦略」の実現に資する都市課題の解決を軸に据えた助成制度です。助成限度額は2,000万円、助成率は助成対象経費の3分の2以内という、都内中小企業向けとしては最大級の規模を持ちます。
この制度の核心は、助成対象が「試作品の開発・改良」に限定されており、研究のための研究や設備投資は一切対象外であるという点にあります。市場に投入して事業化を目指す製品・サービスの核となる試作品を、助成対象期間内に完成させ、申請時に自ら設定した達成目標をすべて満たすことが助成金交付の絶対条件です。達成目標が一部でも未達成であれば、それまでに要した全経費が支払われません。
本記事では、令和8年度(2026年度)第2回募集の概要から、4つの支援テーマ、申請要件、助成対象経費の詳細、審査の5つの視点、対象外となる事業の類型、そして販路拡大助成への接続までを、公社が公表する一次情報に基づいて実務目線で解説します。
制度誕生の背景と政策的意義
課題解決型技術開発促進事業を理解するためには、東京都が抱える都市課題の構造と、公社の助成メニュー再編の経緯を俯瞰する必要があります。東京都は令和7年(2025年)に長期ビジョンとして「2050東京戦略」を策定し、防災、高齢化、デジタル化、気候変動といった領域を政策の柱に位置づけました。本助成金は、この長期ビジョンの実現を中小企業の技術開発によって後押しする、いわば政策目標と直結した助成制度です。
公社は従来、「安全・安心な東京の実現に向けた製品開発支援事業」をはじめとする複数の分野別開発助成を並立させていました。事業者側からは、どの助成金に申請すべきか判断しづらいという課題が指摘されてきました。令和8年度(2026年度)に、これらを課題解決型技術開発促進事業として統合・再編し、4つの支援テーマから最も該当するもの1つを選択する方式に改めています。制度の入口が一本化されたことで、開発テーマと都政課題との整合性がより明確に問われる設計になったと整理されます。
「研究支援」ではなく「事業化支援」であるという設計思想
募集要項では、助成対象とならない事業の筆頭に「助成事業の成果を活用した製品・サービスの具体的な販売予定がなく、研究開発のみを目的としている事業」が挙げられています。この一文が制度の性格を端的に示しています。言い換えれば、単に優れた技術を生み出すことを支援する制度ではなく、市場投入までの道筋が描けている開発を、その手前の試作段階で資金面から支える仕組みです。
同時に、助成事業の完了前に販売行為を行うことは厳しく禁じられています。完了検査の翌日以降でなければ販売を開始できず、価格や発売時期を掲載したチラシの配布、自社サイトへの販売中商品としての掲載、特定企業への有償貸与などは、いずれも営業行為とみなされます。開発から事業化への移行タイミングを制度側が厳格に区切っている点は、申請前に必ず理解しておくべき論点です。
📊 このセクションの要点
課題解決型技術開発促進事業は、東京都の長期ビジョン「2050東京戦略」と直結した政策型の助成金です。複数の分野別助成を統合・再編して令和8年度(2026年度)に新設され、都市課題との整合性が審査の第一の視点に据えられています。研究支援ではなく事業化支援であり、販売予定のない研究のみの開発は対象外です。
助成金の基本スペックと第2回募集スケジュール
まず制度の骨格を数値で押さえます。助成限度額2,000万円・助成率3分の2以内という条件は、自己負担3分の1で最大3,000万円規模の開発投資が可能になることを意味します。助成対象期間は最長1年9か月であり、複数年度にまたがる中規模の開発計画に対応できる設計です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 課題解決型技術開発促進事業(課題解決型製品・サービス等の試作品開発・改良助成) |
| 実施主体 | 東京都/公益財団法人 東京都中小企業振興公社 |
| 助成限度額 | 2,000万円 |
| 助成率 | 助成対象経費の3分の2以内 |
| 対象者 | 都内中小企業者(法人・個人事業者)、中小企業団体等、都内での創業を具体的に計画している者 |
| 助成対象期間 | 最長1年9か月(第2回は令和9年4月1日~令和10年12月31日) |
| 申請方法 | 電子申請システム「Jグランツ」のみ(GビズIDプライムが必須) |
| 申請可能件数 | 各回の募集につき一企業1件、同一年度の採択も一企業1件 |
第1回・第2回の申請スケジュール
令和8年度(2026年度)は年2回の募集が設定されており、第1回の申請受付は令和8年(2026年)7月3日をもって終了しています。現在応募可能なのは第2回です。
| 工程 | 第1回(終了) | 第2回(受付予定) |
|---|---|---|
| 申請受付 | 令和8年6月4日~7月3日17時 | 令和8年9月14日~10月30日17時 |
| 書類審査 | ~令和8年8月下旬 | ~令和9年1月中旬 |
| 面接審査 | ~令和8年10月上旬 | ~令和9年2月上旬 |
| 交付決定 | 令和8年11月30日 | 令和9年3月31日 |
| 助成対象期間 | 令和8年12月1日~令和10年8月31日 | 令和9年4月1日~令和10年12月31日 |
注意
申請にはGビズIDプライムアカウントが必須です。国の審査により発行まで期間を要するため、第2回の締切(令和8年10月30日17時)から逆算し、遅くとも9月中には取得手続きを完了させておくことが重要です。また、第2回募集の様式等は公社サイトで順次更新される旨が告知されているため、申請直前に必ず最新版をダウンロードして確認する必要があります。
📊 このセクションの要点
助成限度額2,000万円・助成率3分の2以内、助成対象期間は最長1年9か月です。令和8年度(2026年度)第2回の申請受付は令和8年9月14日から10月30日17時まで、交付決定は令和9年(2027年)3月31日、事業開始は令和9年4月1日からとなります。申請はJグランツのみで、GビズIDプライムの事前取得が前提です。
4つの支援テーマと選択の考え方
申請にあたっては、次の4つの支援テーマのうち最も該当するもの1つを選択します。複数テーマにまたがる開発であっても、選べるのは1つです。どのテーマを選ぶかによって審査における「適合性」の評価軸が決まるため、事業計画の書き出しに先立って慎重に判断する必要があります。
| 支援テーマ | 公社が例示する領域 |
|---|---|
| 持続可能で安全・安心な東京の実現 | 防災・減災、事業リスク対策、感染症対策、セキュリティ、子供の安全対策 |
| 高齢者・障害者のニーズ、介護従事者の負担軽減 | 福祉・アクセシビリティ、次世代介護機器、アクティブシニア、パラスポーツ |
| DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進 | 業務効率化、営業・マーケティング強化、業務自動化・データ活用、業界特化型 |
| 暑さ対策 | 気候変動適応、熱中症対策、設備・インフラ、管理・モニタリング |
なお「次世代介護機器」については、移乗支援、移動支援、排泄支援、見守り・コミュニケーション、入浴支援、介護業務支援、機能訓練支援、食事・栄養管理支援、認知症生活支援・認知症ケア支援のいずれかの場面で使用され、介護従事者の負担軽減効果があるものと定義されています。テーマを選択する際は、この定義に自社の開発内容が合致しているかを確認することが必要です。
石油供給不足に対応する別枠の存在
上記4テーマとは別に、公社は「石油供給不足に伴う課題解決に向けた製品・サービス等の開発・改良助成」を設けています。石油代替製品や、原材料・エネルギーを削減する製品・サービスの開発が対象で、助成限度額2,000万円・助成率5分の4以内と、本体事業より助成率が高く設定されています。中東情勢の影響による石油供給不足という足元の環境変化を背景とした枠であり、該当する開発テーマを持つ事業者は、どちらの枠で申請するのが有利かを比較検討する価値があります。
補足
同一の申請テーマ・内容で公社が実施する他の助成事業に申請することはできません。石油供給不足枠と本体の4テーマは別事業として扱われるため、どちらか一方を選択して申請することになります。
📊 このセクションの要点
支援テーマは安全・安心、高齢者障害者と介護、DX推進、暑さ対策の4つで、最も該当するもの1つのみを選択します。選択したテーマが審査の「適合性」評価の基準となるため、計画立案の最初に確定させる必要があります。別枠として助成率5分の4の石油供給不足対応の助成も用意されています。
申請要件と対象者の範囲
申請要件は、事業者区分・組織形態・実施場所・その他遵守事項の4系統から構成されており、そのすべてを満たす必要があります。とりわけ実務上の争点になりやすいのが、対象法人の範囲と都内事業実態の要件です。
対象となる法人・ならない法人
対象となる「法人」は中小企業基本法上の会社、すなわち会社法上の会社に限られます。株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、特例有限会社等が該当します。一方で、社会福祉法人、医療法人、特定非営利活動法人、一般社団法人・一般財団法人、学校法人、有限責任事業組合(LLP)は助成対象外です。介護や福祉分野の開発を検討する法人にとっては、この点が入口の分岐となります。
| 業種 | 資本金及び従業員数(いずれかを満たす) |
|---|---|
| 製造業(ソフトウェア業・情報処理サービス業を含む)・その他 | 3億円以下 又は 300人以下 |
| ゴム製品製造業(一部を除く) | 3億円以下 又は 900人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 又は 100人以下 |
| サービス業(旅館業を除く) | 5,000万円以下 又は 100人以下 |
| 旅館業 | 5,000万円以下 又は 200人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 又は 50人以下 |
加えて、大企業が実質的に経営に参画していないことが要件です。大企業が単独で発行済株式総数の2分の1以上を、または複数で3分の2以上を保有している場合、役員総数の2分の1以上を大企業の役員・職員が兼務している場合は、中小企業者に該当しないものとして扱われます。
都内での事業実態と実施場所の要件
法人の場合、基準日(第1回は令和8年6月1日)時点で都内に登記簿上の本店または支店があり、都内事業所で実質的に1年以上事業を行っていることが求められます。ここでいう「実質的に事業を行っている」とは、単に建物があることではなく、納税状況、ホームページ、看板や表札、電話連絡時の状況、事業実態や従業員の雇用状況等から総合的に判断されるものとされています。都内バーチャルオフィスのみの場合は、別途、公社が検査を行える場所(原則都内)の設定が必要です。
助成事業の実施場所は自社の事業所・工場等であることが原則で、他社を実施場所として記載することはできません。原則都内ですが、状況により首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、山梨県、群馬県、茨城県、栃木県)であれば要件を満たすものとされています。実施場所が申請書記載の住所と異なると判明した場合、採択後であっても取消となる場合があります。
📊 このセクションの要点
対象は会社法上の会社と個人事業者、中小企業団体等、都内創業予定者です。医療法人・社会福祉法人・NPO法人・一般社団法人等は対象外となります。都内での1年以上の実質的な事業実態と、自社事業所での実施が要件であり、バーチャルオフィスのみの場合は検査可能な場所の設定が別途必要です。
助成対象経費7区分の詳細と実務上の留意点
助成対象経費は7区分に整理されています。各区分には固有の制約があり、区分の振り分けを誤ると助成対象外となるため、見積段階から正確に分類しておくことが重要です。
| 経費区分 | 主な内容と留意点 |
|---|---|
| 原材料・副資材費 | 試作品の構成部分となる原料・材料・副資材。事業終了時点の未使用品は対象外。受払簿による管理が必要 |
| 機械装置・工具器具費 | 試作金型、計測機械、サーバ、ソフトウェア、クラウドサービス利用料等。税抜100万円以上は原則2者以上の見積が必要。パソコン等の汎用品や量産用設備は対象外 |
| 委託・外注費 | 自社で実施できない機械加工・設計・試験評価等。共同研究、ユーザーテストも対象。1契約100万円以上は2者以上の見積が必要。全部・主要部分の再委託は不可 |
| 産業財産権出願・導入費 | 開発した試作品の特許・実用新案・意匠・商標の出願費用、譲渡・実施許諾を受ける費用。調査・審査請求・登録に係る経費は対象外 |
| 直接人件費 | 開発工程に直接従事する役員・従業員の人件費。交付申請額の上限は1,000万円。1人1日8時間・年間1,800時間が上限。単価は公社の人件費単価表を適用 |
| 専門家指導費 | 外部専門家からの技術指導への謝金等。各回の指導報告書の提出が必要。技術開発要素を伴わない指導は対象外 |
| 規格認証・登録費 | 防炎性能確認審査手数料、フェーズフリー認証審査料等。認証取得後の定期審査・更新審査料は対象外 |
直接人件費で対象外となる作業に注意
直接人件費は最大1,000万円まで計上できる大きな費目ですが、対象となる作業は設計(要件定義・目標仕様・設計)、製作(プログラミング・試作)、検査(単体テスト・総合テスト)に限定されています。開発統括、ディレクション、スケジュール管理、進行管理、会議、資料収集、調査、打合せは対象外です。また、機械学習における長時間の機械稼働のように人が直接関与していない時間、所定労働時間外の労働時間、休日の労働時間も計上できません。役員についてもこの取扱いは同様です。
POINT
直接人件費を計上する場合、採択後に就業規則と賃金規程の提出が必要となり、報告時には作業日報・賃金台帳・雇用保険被保険者証等の提出が求められます。従業員10人未満であっても就業規則の提出は必要です。就業規則が未整備の企業は、申請段階から整備に着手しておくことが賢明です。
支払方法と関連会社取引の制限
支払いは助成事業者名義の口座からの振込払いが原則です。役員や社員の口座から振り込んだ経費は対象外となります。現金払いは、やむを得ない理由があり総額10万円未満(税込)の場合に限られ、クレジットカード払いは法人名義カードでリボ払い・分割払いでないことなど複数の条件を満たす必要があります。手形小切手・電子記録債権による支払いは一切認められません。
また、親会社・子会社・グループ企業等の関連会社との取引により生じる経費は対象外です。ここでいう関連会社には、資本関係のある会社、役員・社員を兼任している会社、代表者の三親等以内の親族が経営する会社も含まれます。外注先の選定にあたっては、この点の確認が欠かせません。
📊 このセクションの要点
助成対象経費は7区分で、直接人件費は上限1,000万円です。開発の管理業務や打合せは人件費の対象外であり、対象作業は設計・製作・検査の各工程に限定されます。支払いは自社名義口座からの振込が原則で、代表者の三親等以内の親族が経営する会社との取引は対象外となります。
審査の仕組みと5つの評価視点
審査は一次審査(資格審査・経理審査・書類審査)、二次審査(面接審査)、総合審査会の三段階で行われます。書類審査と面接審査では、次の5つの視点から評価されます。
| 評価視点 | 審査される内容 |
|---|---|
| 適合性 | 支援テーマとの整合性、東京の都市課題解決への貢献度 |
| 優秀性 | 技術・サービスにおける先進的な新しい開発要素、技術的・実用的な優位性 |
| 市場性 | 販売戦略、競争優位性 |
| 実現性 | 開発体制、開発計画、開発後の事業推進体制 |
| 妥当性 | 計画全体の確実性、資金計画、投資規模及び申請経費の適切性 |
面接審査にコンサルタントは同席できない
二次審査の出席者は、会社概要および申請内容を説明できる申請事業者の代表者、役員・従業員に限られます。顧問や経営コンサルタント、委託先企業はいかなる場合も同席できず、同席の事実が発見された場合には審査に重大な影響を及ぼすとされています。この点は、他の補助金の審査と大きく異なる特徴です。申請支援を受ける場合であっても、面接では自社の人間が自らの言葉で技術内容と事業化構想を説明できる状態を作っておく必要があります。
面接審査では、申請書類以外の説明資料やパネルの持ち込みはできません。ただし模型や従来製品等の参考サンプルは持ち込み可能で、ソフトウェアやサービスの開発の場合はパソコン等の持ち込みが認められています。プロジェクターの使用、写真撮影、録音・録画、動画利用や実演は原則不可です。
代理申請の位置づけ
Jグランツ上の当初申請手続きに限り、代理申請機能を使用することができます。GビズID上で委任関係を結び、受任した行政書士等がJグランツ上で申請を作成する形です。ただし、申請の確認および提出は申請者自身が行う必要があり、申請受付以降の手続きも申請者自身が行います。また、助成対象経費に関与する事業者(外注・委託先)およびその従業員は代理申請を請け負うことができません。代理申請を行う場合は「同意書(代理申請用)」の提出が必要です。
📊 このセクションの要点
審査は一次審査、面接審査、総合審査会の三段階で、適合性・優秀性・市場性・実現性・妥当性の5視点から評価されます。面接審査にコンサルタントや顧問は一切同席できず、自社の代表者・役員・従業員が自ら説明する必要があります。代理申請はJグランツ上の当初申請手続きに限られます。
対象外となる事業の類型と達成目標の重み
募集要項には、助成対象とならない事業が16類型にわたって列挙されています。申請を検討する段階で、自社の計画がこれらに該当しないかを確認することが最初の作業になります。
| 類型 | 対象外となる事業の例 |
|---|---|
| 事業化の欠如 | 具体的な販売予定がなく研究開発のみを目的としている事業/助成事業完了前の販売を目的としている事業 |
| 自社開発性の欠如 | 開発・改良の主要な部分が自社開発ではない事業/全部または大部分を外注している事業/他社が開発した技術の実用化を目的とする事業 |
| 技術的新規性の欠如 | 既製品の模倣に過ぎない事業/技術的な開発・改良要素がない事業/量産化段階にある技術や既に事業化され収益を上げている事業 |
| 目的の相違 | 開業・運転資金など開発以外の経費が目的の事業/生産・量産用の機械装置や金型導入など設備投資が目的の事業/試作品自体の販売を目的とする事業 |
| 時期・汎用性 | 申請時点で開発が概ね終了している事業/期間内に完了が見込めない事業/特定の顧客向けで汎用性のない事業 |
達成目標が未達なら助成金はゼロになる
この制度で最も重い実務論点が達成目標の設定です。申請書には、開発する試作品の新規性・優秀性につながる特長的な機能を1つ以上(最大3つまで)、機能目標と数値目標の形で記載します。そして達成目標のすべてを助成対象期間内に達成し、完了検査で公社が確認できたことをもって初めて事業完了となります。一部でも未達成であった場合は事業完了とならず、それまでに要した全ての経費が助成対象外となり、助成金は一切交付されません。
注意
申請書の提出後、達成目標の変更はできません。事業計画の変更承認手続きを経ても、達成目標だけは変更が認められない設計です。野心的な数値を掲げれば審査上の評価は高まる可能性がありますが、達成できなければ助成金がゼロになるという構造を理解し、確実に検証可能かつ第三者が到達を判断できる水準で設定することが求められます。
達成目標の確認方法欄には、機能目標と性能目標それぞれの達成を確認するための試験・評価方法を、測定条件や判断基準、判定方法まで含めて具体的に記載する必要があります。開発計画の立案段階から、何をもって達成とみなすかの検証設計を織り込んでおくことが賢明です。
📊 このセクションの要点
対象外事業は16類型が明示されており、研究目的のみ、外注依存、既製品の模倣、量産設備投資、特定顧客向けの非汎用開発などが該当します。最大の論点は達成目標で、申請後の変更は認められず、一部でも未達成なら全経費が助成対象外となります。検証可能な水準での目標設定が不可欠です。
採択後の実務負担と販路拡大助成への接続
交付決定後は、約2か月以内に公社担当職員が事業実施場所を訪問し、事業の全体把握や開発内容の確認、事務処理の説明を目的とした事前支援が行われます。事業期間が12か月を超える場合は遂行状況報告書の提出が必要で、これをもとに中間検査が実施されます。事業終了後15日以内に実績報告書を提出し、完了検査を経て助成金額が確定します。
さらに、事業終了年度の翌年度から5年間、毎年度「企業化状況報告」を提出する義務があります。この期間中に事業化により相当の収益を得た場合、収益の一部を公社へ納付する収益納付の対象となります。納付額は助成金の交付額が上限です。助成金は交付されて終わりではなく、5年間の報告義務がセットになった制度であると理解しておく必要があります。
開発から販路拡大までの一気通貫の設計
本助成事業を完了した事業者は、課題解決型技術開発促進事業の「販路拡大助成」開発枠を申請することができます。助成限度額は350万円で、一般枠の150万円を大きく上回ります。展示会出展等の販促に活用でき、資格審査のみで申請可能とされています。申請手続きの詳細は事務局から対象者に直接案内される仕組みです。
加えて、本事業に採択されている小規模企業者は、東京都中小企業制度融資「DX・イノベ・産業育成支援」の対象となり、信用保証料の2分の1補助を受けることができます。試作品開発から販路拡大、資金調達までを一連の支援として設計している点は、この制度の実務上の大きな価値です。
POINT
開発助成の申請段階から、完了後の販路拡大助成と制度融資の活用までを見通した資金計画を組み立てることで、開発投資の総合的な負担を大きく圧縮できます。単発の助成金として捉えるのではなく、3年から5年の事業化ロードマップの起点として位置づけることが有効な活用方法です。
📊 このセクションの要点
交付決定後は事前支援、遂行状況報告、中間検査、実績報告、完了検査という工程が続き、事業終了後も5年間の企業化状況報告と収益納付の義務があります。一方で完了者は販路拡大助成の開発枠(限度額350万円)を申請でき、小規模企業者は制度融資の信用保証料2分の1補助も受けられます。
まとめ|申請を検討する際の5つのポイント
| ポイント | 確認すべき内容 |
|---|---|
| 事業化の道筋が描けているか | 研究のみを目的とする事業は対象外。市場投入の形と販売戦略を具体的に説明できることが前提となる |
| 支援テーマとの整合性 | 4テーマから1つを選択。適合性は審査の第一の視点であり、都市課題解決への貢献度を論理的に示す必要がある |
| 達成目標の設定水準 | 申請後の変更は不可。一部でも未達成なら助成金はゼロ。第三者が客観的に確認できる検証方法まで設計する |
| 自社開発の比重 | 仕様策定やテスト等の主要部分は自社実施が必要。ファブレス企業でも申請可能だが、根幹部分の外注依存は対象外となる |
| スケジュールと準備期間 | 第2回締切は令和8年10月30日17時。GビズIDプライムの取得、2者見積の取得、就業規則の整備には相応の期間を要する |
よくあるご質問
Q1.国の補助金と同じテーマで重複して申請できますか
A1.他の公的機関の助成金との重複申請は可能です。ただし、同一の申請テーマで二重に助成金を受け取ることはできないため、両方が採択された場合はいずれか一方を辞退する必要があります。一方で、公社が実施する他の助成事業に同一の申請テーマ・内容で申請することはできません。この場合はどちらか一方のみを選択して申請します。実務上は、ものづくり補助金など国の制度と併願する場合、経費区分と開発内容が明確に区分できるかを事前に整理しておくことが重要です。また、過去に同一の申請テーマ・内容で公社・国・都道府県・区市町村等から助成を受けたことがある場合は、そもそも申請要件を満たしません。
Q2.設立して間もない会社でも申請できますか
A2.申請可能です。都内で創業し、引き続く事業期間が1年に満たない法人は「未決算法人」として、個人事業者は「未決算個人事業者」として申請できます。さらに、都内での創業を具体的に計画している個人も対象です。ただし、これらの区分では提出書類が異なります。未決算法人・未決算個人事業者・創業予定者はいずれも、代表者の直近の源泉徴収票と月次資金繰表(任意様式・助成期間全体の収支を記載)、残高証明書等の資金保有状況が分かる書類の提出が必要です。創業予定者の場合は、交付決定後に速やかに開業し、開業届の写しまたは登記簿謄本により都内所在が確認できることが条件となります。
Q3.既に販売している製品の改良も対象になりますか
A3.対象となります。既存の製品やサービスをもとに、新たな価値(機能や仕組み)を付加し、差別化を図るための改良を行う場合も助成対象事業に含まれます。この場合、申請書の「申請概要」で申請テーマとして「改良」を選択し、改良前の製品・サービスの説明資料(カタログ、仕様書、写真、試験結果等)の提出が必要です。ただし、量産化段階にある技術や既に事業化され収益を上げている事業、技術的な開発・改良要素がない事業は対象外とされています。改良によってどのような新規性・優秀性が生まれるのかを、技術的な根拠とともに示せるかが判断の分かれ目となります。
Q4.製造設備を持たないファブレス企業でも申請できますか
A4.ファブレス企業でも申請は可能です。ただし、開発・改良の主要な部分は自社で行う必要があります。公社は「開発・改良の主要な部分」について、仕様策定やテスト等、開発・改良の根幹をなす部分であると説明しています。製造工程そのものを外部に委託していても、仕様を自社で策定し、試験評価を自社で実施する体制があれば要件を満たす余地があります。逆に、開発の全部または大部分を外注している事業、委託業務の全てまたは主要な部分を第三者に再委託する経費は対象外です。事業計画では、自社が担う工程と外注に出す工程を明確に切り分けて記載することが求められます。
Q5.クラウドサービスの利用料は対象経費になりますか
A5.対象経費となり、機械装置・工具器具費に計上します。レンタルサーバ代やクラウドサービス利用料は、助成事業のために利用する費用であって、助成対象期間内に発注または契約、取得・実施、支払いが発生したものが対象です。ただし提出書類の要求水準が高く、開発に資するための契約書、助成事業実施期間内における利用開始と終了が確認できる資料、助成事業のためだけに利用するものであることを確認できる資料、自社の他事業と共有していないことが確認できる資料の提出が必要となります。既存の全社共通環境をそのまま計上することはできないため、助成事業専用の契約として分離しておくことが実務上の対応となります。
Q6.申請前に支払った経費は助成対象になりますか
A6.対象になりません。助成対象となるのは、助成対象期間内に発注または契約、取得・実施、支払いのすべてが完了した経費です。第2回募集の場合、助成対象期間は令和9年(2027年)4月1日から令和10年(2028年)12月31日までであり、この期間より前に契約または支払いを行った経費は一切対象外となります。申請から交付決定まで約5か月、事業開始までさらに時間を要するため、開発着手のタイミングをこの日程に合わせて計画する必要があります。急いで開発を進める必要がある場合は、助成金の活用自体を再検討すべき局面もあります。
Q7.見積書は何者分必要ですか
A7.1件100万円(税抜)以上の機械装置・工具器具費、および1契約あたり100万円(税抜)以上の委託・外注費については、申請時に2者以上の見積書の提出が必須です。それ未満の金額であれば申請時の見積書提出は不要です。見積書には単価、数量、規格、メーカー、型番等の記載が必要で、市販品の場合は価格表示のあるカタログ等でも代替できます。1者しか生産していない、販売先が1者に限られているといった業界・商慣習に起因するやむを得ない理由がある場合に限り1者分でも認められますが、その理由を申請書に記載する必要があります。「過去に取引実績があるため」という理由では認められない点に注意が必要です。
Q8.助成対象期間中に展示会に出展したり広報したりできますか
A8.販売・営業行為に該当する広告や宣伝は実施できません。公社が営業行為として例示しているのは、完了検査前に自社サイト内で本助成事業の開発対象を販売中の商品として掲載すること、展示会で販売価格・発売時期が掲載されたチラシを配布すること、特定の企業に対し有償で貸与・提供することです。一方で、販売を行わなければメディアの取材対応や見込顧客への製品紹介は可能です。その際は「課題解決型技術開発促進事業に採択された」という表現を用い、「認定を受けた」「認証を受けた」といった誤解を招く表現は避けるよう求められています。なお成果の公表を行う際は、事前に公社への報告が必要です。
Q9.交付決定後に事業計画を変更することはできますか
A9.正当な理由がある場合に限り、事前の承認申請と公社の承認を得ることで変更できます。ただし達成目標の変更は一切できません。承認が必要となるのは、事業終了予定日の変更(早まる場合を除く)、実施場所の変更、助成事業内容の著しい変更、増額する経費区分について当初金額から20%を超える増加、新たな経費区分の計上、1件100万円(税抜)以上の機械装置・工具器具の新規購入、委託・外注費における契約先の変更や追加などです。公社の承認を得ずに変更を行った経費は助成対象外となります。名称・所在地・代表者の変更や会社形態の変更については、速やかに届出を行う必要があります。
Q10.事業完了後に何か義務は残りますか
A10.事業終了年度の翌年度から5年間、企業化状況報告の提出義務と収益納付の可能性が残ります。毎年度、助成事業に係る事業化の実施状況について報告書を提出します。この期間中に事業化により相当の収益を得た場合、収益の一部を公社へ納付することがあり、納付額は助成金の交付額が上限です。また、取得価格が税抜50万円以上の設備・成果物については、公社配布のステッカーを貼って管理し、5年間保存する義務があります。この期間内に財産を処分する場合は、事前に財産処分承認申請書の提出と公社の承認が必要です。関係書類も助成事業完了年度の翌年度から5年間の保管義務があります。
課題解決型技術開発促進事業の申請をご検討の事業者さまへ
技術の優位性を、都市課題解決の文脈で語り直す支援を
課題解決型技術開発促進事業は、助成限度額2,000万円という規模の一方で、達成目標が一部でも未達成であれば助成金が交付されないという厳しい構造を持つ制度です。技術的な優位性を持っていても、それを東京都の政策課題と接続し、事業化の道筋まで一貫して語れなければ採択には至りません。壱市コンサルティングでは、認定経営革新等支援機関として、開発計画の設計段階から事業者さまに伴走します。
📋 申請可否の事前診断
対象外事業16類型との照合、支援テーマの選択、都内事業実態の要件充足を、申請着手前に確認します
📊 達成目標の設計支援
審査上の訴求力と、期間内に確実に達成できる実現可能性の両立を、検証方法まで含めて設計します
💼 事業計画・経費計画の作成支援
5つの審査視点に沿った計画書の構成、7区分の経費振り分け、直接人件費の積算までを支援します
🔄 採択後の報告実務の伴走
遂行状況報告、実績報告、5年間の企業化状況報告まで、継続的にサポートします
第2回の締切は令和8年(2026年)10月30日17時です。準備期間を確保するため、早い段階でのご相談が賢明です。
こんなお悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください
- ✅ 自社の開発テーマが4つの支援テーマのどれに当てはまるか判断できない
- ✅ 達成目標をどの水準で設定すべきか迷っている
- ✅ ものづくり補助金など国の制度とどちらを選ぶべきか比較したい
- ✅ 面接審査で自社の技術をどう説明すればよいか整理したい
- ✅ 採択後の報告実務まで含めた体制づくりに不安がある
