【令和8年8月開始】省力化投資補助金(一般型)第8回公募|基準年度の後ろ倒しと足下の賃上げ評価を分析

中小企業省力化投資補助事業(一般型)の第8回公募が、令和8年(2026年)8月18日に開始されました。補助上限額は従業員数に応じて最大1億円、補助率は中小企業1/2・小規模企業者2/3という基本スペックは第7回から据え置かれており、一見すると前回の焼き直しに見えます。

しかし、第8回公募要領を第7回と逐条で突き合わせると、数値計画の起点である「基準年度」の定義が、応募申請時の直近決算期から補助事業完了年度へと後ろ倒しされ、あわせて「足下の賃上げ」を審査で評価する仕組みが新設されています。これは事業計画の数値設計の前提を根本から書き換える変更であり、第7回までの計画をそのまま流用すれば審査上きわめて不利になります。

本記事では、第8回公募のスケジュールと制度概要を確認したうえで、第7回公募要領からの変更点を一つずつ整理し、それぞれが事業計画の作り込みにどう影響するのかを実務目線で解説します。

Contents
  1. 第8回公募の全体像とスケジュール
  2. 第7回から第8回への主要変更点一覧
  3. 最大の変更は「基準年度」の定義変更
  4. 新設された「足下の賃上げ」評価と二段構えの賃上げ要求
  5. 補助事業実施期間が17か月に短縮
  6. 加点項目・減点項目の変更点
  7. 補助対象者・除外要件の変更
  8. 第8回公募に向けた実務上の準備ポイント
  9. まとめ
  10. よくある質問
  11. 省力化投資補助金の申請支援について

第8回公募の全体像とスケジュール

公募開始は令和8年(2026年)8月18日

中小企業省力化投資補助事業(一般型)は、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が実施する公募回制の補助金です。第8回公募要領は令和8年(2026年)8月付で公表され、公募開始日は令和8年(2026年)8月18日とされています。申請受付開始および公募締切は現時点で「予定」の段階であり、確定次第、事務局ホームページで更新されます。

項目 第8回公募 第7回公募(参考)
公募開始日 令和8年(2026年)8月18日 令和8年(2026年)6月5日
申請受付開始日 令和8年(2026年)9月中旬(予定) 令和8年(2026年)7月上旬
公募締切日 令和8年(2026年)10月中旬(予定) 令和8年(2026年)7月31日17:00
採択発表日 後日公表 令和8年(2026年)11月中旬(予定)
申請方法 電子申請のみ(GビズIDプライムアカウントが必須) 同左

公募開始から締切まで約2か月という設計は第7回と同様ですが、申請受付開始が9月中旬であれば、実質的に電子申請システムへ入力できる期間は1か月程度にとどまります。GビズIDプライムアカウントの取得には一定の期間を要するため、未取得の事業者は公募締切から逆算せず、直ちに取得手続きを進めることが重要です。

補助上限額・補助率は第7回から据え置き

補助金額の枠組みそのものに変更はありません。従業員数に応じた5段階の補助上限額、大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例、最低賃金引き上げに係る補助率引き上げの特例は、いずれも第7回と同一の内容が維持されています。

従業員数 補助上限額(カッコ内は大幅賃上げ特例適用時) 引き上げ額
5人以下 750万円(1,000万円) 250万円
6〜20人 1,500万円(2,000万円) 500万円
21〜50人 3,000万円(4,000万円) 1,000万円
51〜100人 5,000万円(6,500万円) 1,500万円
101人以上 8,000万円(1億円) 2,000万円
補助率 中小企業1/2(最低賃金引き上げ特例適用時2/3)/小規模企業者・小規模事業者・再生事業者2/3

対象経費も、機械装置・システム構築費(必須/単価50万円税抜以上の設備投資が1つ以上必要)、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費という区分が維持され、機械装置・システム構築費以外の経費は総額500万円(税抜)が上限という制約も変わっていません。

📊 このセクションの要点

第8回公募は令和8年(2026年)8月18日に開始され、締切は10月中旬が予定されています。補助上限額・補助率・対象経費区分といった制度の骨格は第7回から据え置かれており、金額面での変更を理由に申請を見送る必要はありません。変更の本質は金額ではなく、事業計画の数値設計と審査の評価軸にあります。

第7回から第8回への主要変更点一覧

第7回公募要領(令和8年(2026年)6月)と第8回公募要領(令和8年(2026年)8月)を逐条で比較すると、以下の変更が確認されます。実務への影響度が高い順に整理しています。

変更項目 第7回 第8回
基準年度の定義 応募申請時の直近の決算期 補助事業が完了した日を含む事業年度の決算期
労働生産性・給与総額の比較起点 応募申請時の値 基準年度(補助事業完了年度)の値
足下の賃上げ評価 規定なし 審査(計画面)で新たに評価。物価上昇率を下回る計画は審査上大幅に不利
補助事業実施期間 交付決定日から18か月以内(採択発表日から20か月以内) 交付決定日から17か月以内(採択発表日から19か月以内)
付加価値額の増加要件 設備投資前と比較して増加 基準年度と比較して増加
事業場内最低賃金引き上げ加点 2025年7月と応募申請直近月を比較し63円以上の賃上げ 2026年6月と応募申請直近月を比較し55円以上の賃上げ
労働関係法令違反による除外 規定なし 過去1年において労働関係法令違反により送検処分を受けた事業者を補助対象外に追加
応募時の提出書類 【指定様式】1人当たり給与支給総額の確認書を提出 応募時の共通提出書類一覧から削除
交付申請時の提出書類 全従業員分の賃金台帳(応募申請の直近決算期分)を提出 共通提出書類一覧から削除
小規模事業者の補助率2/3対象 特定非営利活動法人・社会福祉法人(従業員20人以下) 医療法人を追加(従業員20人以下)
歯科医業を営む医療法人の提出書類 該当を確認できる書類(内容は手引きで指定) 診療所開設許可書・診療所開設届(副本もしくは写し)と明記
観光庁補助金による申請制限 交付決定から10か月を経過していない事業者 応募申請時点で10か月を経過していない事業者と起算点を明確化
法令違反による除外の起算点 本補助金の公募開始日から5年前の日以降 各公募回の公募開始日から5年前の日以降
口頭審査の辞退みなし 規定なし 連絡がつかず日時調整ができない場合は辞退とみなし不採択となる場合があると追加
減点対象となる補助金の列挙 令和7年4月時点の事業名で列挙 中小企業デジタル化・AI導入支援事業(デジタル化・AI導入補助金)を追加し、時点注記を削除

📊 このセクションの要点

第8回の変更は15項目前後に及びますが、事業計画そのものの作り直しを迫るのは「基準年度の定義変更」と「足下の賃上げ評価の新設」の2点です。それ以外は提出書類の整理、除外要件の追加、加点基準の年度更新といった運用面の調整と整理されます。

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最大の変更は「基準年度」の定義変更

起点が申請時決算から補助事業完了年度へ

第7回公募要領では、基準年度は「応募申請時の直近の決算期」と定義されていました。労働生産性の年平均成長率も、1人当たり給与支給総額の年平均成長率も、いずれも応募申請時の数値を分母として算出する構造でした。

これに対して第8回公募要領では、基準年度は「補助事業が完了した日を含む事業年度の決算期」と改められました。あわせて、労働生産性の年平均成長率の算式は「効果報告時の労働生産性÷基準年度の労働生産性」に、1人当たり給与支給総額の年平均成長率の算式も「効果報告時÷基準年度」に書き換えられています。

論点 第7回の考え方 第8回の考え方
基準年度 応募申請時の直近決算期(申請前に確定済み) 補助事業完了日を含む事業年度(申請時点では未到来)
労働生産性CAGR+4.0%の分母 応募申請時の労働生産性 基準年度の労働生産性
給与支給総額CAGR+3.5%の分母 応募申請時の1人当たり給与支給総額 基準年度の1人当たり給与支給総額
付加価値額の増加 設備投資前との比較 基準年度との比較
申請時に確認書で確定させる数値 1人当たり給与支給総額の確認書を応募時に提出 応募時の共通提出書類から削除(基準年度が事後に確定するため)

数値計画の設計思想が根本から変わる

この変更が実務にもたらす影響は、単なる計算式の書き換えにとどまりません。第7回までは、応募申請時の決算数値という確定した低い水準を分母に置いたうえで、補助事業実施期間中の自然な賃金上昇分もCAGRの達成に取り込むことができました。つまり、申請から効果報告までの全期間が目標達成の助走区間として機能していたのです。

第8回では、この助走区間が目標達成のカウント対象から外れます。分母となる基準年度は補助事業完了年度であり、それまでに実施した賃上げは分母を押し上げる方向に働きます。補助事業完了後の3〜5年間で、改めて年平均成長率3.5%以上・労働生産性4.0%以上を積み上げなければならない構造に変わったと理解するのが実態に近い見方です。

注意

第7回で作成した事業計画書(その3)の数値表をそのまま流用すると、分母の年度がずれたまま提出することになります。基準年度が補助事業完了年度に移動している以上、事業計画1年目以降の各年度の売上高・営業利益・人件費・減価償却費・給与支給総額は、すべて設定し直す必要があります。数値表の年度ラベルだけを書き換えても整合は取れません。

また、基準年度が申請時点では未到来であるため、申請書の作成段階では基準年度の数値そのものが見込値になります。したがって、補助事業完了時点でどの水準の付加価値額・人件費を見込むのか、その根拠を事業計画書に明示することが、審査上の説得力を左右します。省力化指数や投資回収期間の算定と、基準年度の見込値が矛盾していないかという整合性のチェックも欠かせません。

📊 このセクションの要点

基準年度が「応募申請時の直近決算期」から「補助事業完了年度」へと後ろ倒しされたことで、賃上げ・労働生産性の目標達成の起点が実質的に数年後ろへ移動しました。補助事業実施期間中の改善は目標達成にカウントされず、分母を押し上げる要素になります。第7回の数値表を流用せず、基準年度の見込値から組み立て直すことが必須です。

新設された「足下の賃上げ」評価と二段構えの賃上げ要求

基準年度の後ろ倒しと表裏一体の関係にあるのが、第8回で新設された「足下の賃上げ」の評価です。第8回公募要領の書面審査(計画面)には、次の趣旨の記述が追加されました。

補足

補助事業完了後における基準年度から最終年度の賃上げ率に加えて、設備の導入といった補助事業の完了を待たずに実施する「足下の賃上げ」を評価する。最低でも、応募申請時の直近決算期から基準年度までの1人当たり給与支給総額の年平均上昇率が物価上昇率を上回る程度の賃上げが達成されない計画の場合は、審査上大幅に不利になる。足下の賃上げについては、採択後交付決定までの間に従業員への表明を必須とし、補助事業期間中の賃上げ実績はモニタリングの対象となる。

つまり、第8回の事業計画は「申請時決算から補助事業完了年度までの賃上げ」と「補助事業完了年度から事業計画最終年度までのCAGR3.5%以上」という二段構えの賃上げを求める設計になっています。前段が足りなければ審査で大幅に不利となり、後段が未達であれば補助金の返還対象となります。制度全体として、賃上げの継続性を評価する構造がきわめて強まったと認識する必要があります。

POINT

足下の賃上げは「採択後、交付決定までの間に従業員への表明が必須」とされています。採択されてから検討を始めるのでは、交付申請のスケジュールに影響します。申請段階で、補助事業期間中にどの水準まで賃金を引き上げるのか、社内で意思決定しておくことが実務上の前提となります。

なお、「物価上昇率を上回る程度」という水準について、公募要領は具体的な数値を明示していません。基本要件である1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%が「日本銀行が定める物価安定の目標+1.5%」として設定されていることから逆算すると、物価安定の目標である2.0%が一つの目安と整理されますが、審査における具体的な判定水準は公表されていないため、この点は事務局への確認事項として扱うのが適切です。

📊 このセクションの要点

第8回では、補助事業完了を待たずに実施する「足下の賃上げ」が審査項目として新設されました。基準年度の後ろ倒しによって助走区間が目標達成から外れた分を、審査面で埋める設計と理解できます。申請時決算から補助事業完了までの賃上げ計画を、社内の意思決定として固めたうえで申請することが求められます。

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補助事業実施期間が17か月に短縮

第7回の補助事業実施期間は「交付決定日から18か月以内(採択発表日から20か月以内)」でしたが、第8回では「交付決定日から17か月以内(採択発表日から19か月以内)」へと1か月短縮されています。

1か月の差は軽視できません。一般型はオーダーメイド設備やシステム構築を対象とする制度であり、要件定義から設計・製作・据付・検収までの工程が長期化しやすいという特性があります。加えて、交付申請は原則として採択発表日から2か月後が期限とされ、交付決定前の契約・発注はいかなる理由でも事前着手として認められません。実質的に動かせるのは交付決定後の17か月であり、この期間内に契約・納品・検収・支払・実績報告のすべてを完了させる必要があります。

注意

半導体製造装置や大型のロボットシステムなど、納期が1年を超える設備を計画に含める場合は、17か月という上限を前提にスケジュールを再検証することが重要です。公募要領は「極端に開発期間の短いシステム構築等」を遂行困難と判断する旨を明記しており、逆に納期が実施期間を超過する計画も、遂行可能性の観点から審査上の懸念材料となります。

📊 このセクションの要点

補助事業実施期間が18か月から17か月に短縮されました。事前着手が一切認められない制度であるため、設備ベンダーからの納期回答を申請段階で取得し、交付決定後17か月に収まることを事業計画書のスケジュール欄で示すことが、計画面の評価につながります。

加点項目・減点項目の変更点

加点項目は10項目という構成に変更はありませんが、事業場内最低賃金引き上げに係る加点の判定基準が年度更新されています。

加点項目 第8回での取扱い
事業承継・M&Aを実施した事業者 変更なし(過去3年以内の事業承継が対象)
事業継続力強化計画/連携事業継続力強化計画 変更なし(実施状況の振り返り報告・複数回認定で上乗せ)
成長加速マッチングサービス登録 変更なし(応募締切日時点で挑戦課題を登録)
地域別最低賃金引き上げに係る加点 変更なし(2024年10月〜2025年9月の該当月が3か月以上)
事業場内最低賃金引き上げに係る加点 比較起点が2025年7月から2026年6月へ、必要な引き上げ額が63円から55円へ変更
えるぼし加点/くるみん加点 変更なし
省力化ナビ加点 変更なし(申請に用いるGビズIDプライムの一致が必要)
健康経営優良法人加点 変更なし(健康経営優良法人2026の認定)
生産性向上支援センター利用加点 変更なし(生産性向上取組計画書を応募申請時に提出)

事業場内最低賃金引き上げ加点は、2026年6月の事業場内最低賃金と応募申請直近月とを比較し、全国目安で示された額(55円)以上の賃上げを行った事業者が対象となります。第7回の「2025年7月比較・63円以上」から、比較起点も必要額も入れ替わっているため、第7回で加点を取得できた事業者も、第8回では改めて要件を満たすか検証する必要があります。

減点については、賃上げ加点の要件未達事業者に対する大幅減点の枠組み自体は変わりませんが、対象となる補助金の列挙に「中小企業デジタル化・AI導入支援事業(デジタル化・AI導入補助金)」が追加され、第7回にあった「令和7年4月時点」という時点注記が削除されました。中小企業庁所管の補助金全体で賃上げ加点の履行状況が横断的に管理される運用が、より明確になったと整理されます。

📊 このセクションの要点

加点10項目の構成は維持されましたが、事業場内最低賃金引き上げ加点の判定基準が2026年6月比較・55円以上に更新されました。減点の対象補助金にはデジタル化・AI導入補助金が追加され、賃上げ加点の履行状況が省庁横断で管理される運用が明確化されています。

補助対象者・除外要件の変更

労働関係法令違反による除外が新設

第8回では、補助対象外となる事業者に「過去1年において、労働関係法令違反により送検処分を受けた事業者」が新たに追加されました。第7回にはこの規定は存在しません。賃上げと労働環境の改善を政策目的に掲げる制度の性格上、労働法制の遵守状況を申請段階で選別する趣旨と理解されます。

あわせて、法令違反による除外の起算点も「本補助金の公募開始日から5年前の日以降」から「各公募回の公募開始日から5年前の日以降」へと表現が改められ、公募回ごとに起算されることが明確化されました。

医療法人の取扱いが明確化

小規模企業者・小規模事業者の補助率2/3が適用される法人について、第7回は「特定非営利活動法人及び社会福祉法人」のみを列挙していましたが、第8回では「特定非営利活動法人、社会福祉法人及び医療法人」と医療法人が加えられました。歯科医業を営む医療法人が補助対象者に含まれることとの整合が図られた形です。

提出書類についても、第7回では「上記に該当することを確認できる書類」と抽象的に記載されていたものが、第8回では「診療所開設許可書」「診療所開設届(副本もしくは写し)」と具体的に列挙されました。歯科医院での省力化投資を検討する場合、これらの書類を早期に手配することが実務上の起点となります。

観光庁補助金による申請制限の起算点

観光庁の「観光地・観光産業における人材不足対策事業」(令和7年度)または「観光地・観光産業における省力化投資補助事業」(令和8年度)で設備投資に対する補助金の交付決定を受けた事業者は、10か月を経過するまで本事業に申請できません。第8回では「応募申請時点で10か月を経過していない事業者」と起算基準が明記され、判定時点の解釈の余地が解消されています。宿泊業・観光関連事業者は、この点を必ず確認する必要があります。

📊 このセクションの要点

労働関係法令違反による送検処分を受けた事業者の除外が新設され、医療法人の補助率の取扱いと提出書類が明確化されました。観光庁の関連補助金を受けている事業者の待機期間についても、応募申請時点を基準とすることが明記されています。いずれも申請可否の入口に関わる論点です。

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第8回公募に向けた実務上の準備ポイント

基準年度の見込値から数値計画を組み立てる

最初に着手すべきは、補助事業完了時期の特定です。交付決定から17か月という上限のなかで、設備の納期・据付時期・検収時期を確定させ、それがどの事業年度に着地するのかを決めます。その事業年度が基準年度となり、労働生産性・1人当たり給与支給総額・付加価値額のすべての起点になります。補助事業完了時期の設定を誤ると、数値計画全体がずれるという構造を理解しておくことが重要です。

足下の賃上げを社内で意思決定しておく

申請時直近決算期から基準年度までの間に、1人当たり給与支給総額をどの程度引き上げるのかを、申請前に経営判断として固めます。採択後、交付決定までの間に従業員への表明が必須とされている以上、申請書に記載した水準は実行を前提とした約束になります。実現可能性のない高い数値を掲げることは、補助事業期間中のモニタリングでの未達につながるため、慎重に設定することが賢明です。

省力化指数の算定根拠を実測ベースで固める

書面審査の技術面では、省力化指数・投資回収期間・付加価値額の年平均成長率・オーダーメイド設備の4観点が評価されます。いずれも「記載内容や算出根拠が妥当なものとなっているか」という基準で審査されるため、削減対象業務の時間を推計値ではなく工程別の実測データで示すことが、評価を分ける要素になります。この審査観点は第7回から変更されていません。

オーダーメイド性の論証を準備する

汎用設備やパッケージソフトを単体で導入する事業は対象外です。ただし、導入環境に応じて周辺機器や構成機器の数、搭載機能が変わる場合、または汎用設備を複数組み合わせてより高い省力化効果を生み出す場合は、オーダーメイド設備とみなされます。「なぜ自社の工程には既製品では対応できないのか」という論証を、レイアウト図や工程図を用いて具体的に示すことが求められます。

会社全体へのシナジーを描く

計画面の審査では、部分的な省力化にとどまらず会社全体にシナジーをもたらす取組みであるかが評価されます。省力化によって捻出された時間と労働力を、どの高付加価値業務に振り向け、それがどのように賃上げの原資となるのか。人員の再配置先を具体的な部署名・業務名で示すことが、労働生産性と給与支給総額の算出根拠の妥当性を裏づけます。

📊 このセクションの要点

第8回では、補助事業完了時期の特定が数値計画のすべての起点になります。足下の賃上げを社内で意思決定し、省力化指数を実測データで裏づけ、オーダーメイド性と全社シナジーを論証するという流れで準備を進めることが、採択可能性を高める実務手順です。

まとめ

ポイント 内容
スケジュール 第8回公募は令和8年(2026年)8月18日開始、申請受付開始は9月中旬、締切は10月中旬が予定されている
基準年度の後ろ倒し 応募申請時の直近決算期から補助事業完了年度へ変更され、賃上げ・労働生産性・付加価値額の比較起点がすべて移動した
足下の賃上げ評価 申請時決算から基準年度までの賃上げが物価上昇率を下回る計画は審査上大幅に不利となり、採択後は従業員への表明が必須となる
実施期間の短縮 交付決定日から18か月以内が17か月以内へ短縮され、長納期設備を含む計画は前倒しの工程設計が必要になる
要件・加点の更新 労働関係法令違反による送検処分を受けた事業者が除外対象に追加され、事業場内最低賃金加点は2026年6月比較・55円以上へ更新された

よくある質問

Q1.第8回公募はいつまでに申請すればよいですか

A1.公募締切は令和8年(2026年)10月中旬が予定されていますが、確定日は事務局からの公表を待つ必要があります。第8回の公募開始日は令和8年(2026年)8月18日であり、申請受付開始は9月中旬が予定されています。過去の公募回では締切日の17時が期限とされており、第8回も同様の運用となる見込みです。注意すべきは、電子申請システムでの入力可能期間が申請受付開始から締切までの1か月程度に限られる点です。事業計画書の作成、見積書の取得、履歴事項全部証明書や納税証明書の手配は、受付開始を待たずに並行して進める必要があります。特にGビズIDプライムアカウントは発行までに一定の期間を要するため、未取得であれば最優先で手続きを開始することが重要です。

Q2.第7回に申請した事業者は第8回にも申請できますか

A2.本事業へ応募申請中・交付申請中の事業者、および交付決定を受けて補助金の支払いが完了していない事業者は、第8回に申請できません。第8回公募要領は、補助対象外となる事業者の筆頭にこの規定を掲げています。第7回に申請して審査結果を待っている段階の事業者は、その審査が終了するまで第8回への申請ができないという整理になります。また、同一法人・事業者の応募は公募回ごとに1申請に限られ、同時申請も認められません。みなし同一法人の判定では、議決権50%超の親子会社関係だけでなく、代表者が同じ法人、配偶者・親子など生計を同一にする者が保有する複数の法人も同一とみなされます。グループ会社での複数申請を検討している場合は、この判定に該当しないか事前に確認することが不可欠です。

Q3.基準年度の変更で、具体的に何を作り直せばよいですか

A3.事業計画書(その3)の数値表を、基準年度=補助事業完了年度という前提で全面的に組み直す必要があります。第7回までは応募申請時の直近決算期の実績値が分母でしたが、第8回では補助事業完了年度の見込値が分母になります。したがって、まず補助事業の完了時期を事業年度単位で特定し、その年度における売上高・営業利益・人件費・減価償却費・従業員数・給与支給総額の見込値を積算します。そのうえで、事業計画1年目以降の各年度について、労働生産性の年平均成長率4.0%以上、1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上を満たす数値を設定します。年度ラベルだけを書き換えて数値を据え置くと、省力化投資による効果が基準年度に既に織り込まれているのか未計上なのかが不明瞭になり、審査で算出根拠の妥当性を問われることになります。

Q4.「足下の賃上げ」では、どの程度の引き上げが求められますか

A4.公募要領は「応募申請時の直近決算期から基準年度までの1人当たり給与支給総額の年平均上昇率が物価上昇率を上回る程度」と記載し、具体的な数値は明示していません。基本要件である年平均成長率3.5%が「日本銀行が定める物価安定の目標+1.5%」として設定されている構造から逆算すると、物価安定の目標である2.0%が一つの参照点と整理されます。ただし、審査における実際の判定水準は公表されていないため、確定的な数値として扱うことは避けるべきです。実務的には、基本要件と同水準の3.5%程度を足下の期間にも適用し、その根拠として業績見通しと人員計画を示す構成が、審査上の説得力と実行可能性のバランスが取れた対応となります。この水準は採択後、交付決定までの間に従業員へ表明することが必須とされている点にも留意が必要です。

Q5.実施期間17か月で、長納期の設備は間に合いますか

A5.交付決定後に契約・発注してから17か月以内に、納品・検収・支払・実績報告のすべてを完了させる必要があります。本事業では事前着手が一切認められず、交付決定前に締結した契約は補助対象になりません。したがって、実質的に利用できるのは交付決定日からの17か月です。納期が12か月を超えるオーダーメイド設備やシステム構築案件では、要件定義・設計・製作・据付・試運転・検収という工程を17か月に収める工程表を、申請段階でベンダーと共有しておくことが不可欠です。あわせて、交付申請は原則として採択発表日から2か月後が期限とされているため、採択後の手続きが遅延すると交付決定日そのものが後ろにずれ、実施可能期間がさらに圧縮されます。採択発表日から19か月という外枠も設定されている点に注意が必要です。

Q6.事業場内最低賃金の加点は、第7回と何が違いますか

A6.比較の起点が2025年7月から2026年6月へ、必要な引き上げ額が63円から55円へ、いずれも変更されています。第8回では、2026年6月時点の事業場内最低賃金と応募申請直近月の事業場内最低賃金を比較し、全国目安で示された額である55円以上の賃上げを実施していることが加点の要件となります。第7回の要件で加点を取得した実績があっても、第8回では起点となる月が異なるため、改めて賃金台帳をもとに検証する必要があります。加点の申請には【指定様式】事業場内最低賃金引き上げに係る要件確認書の提出が求められます。なお、地域別最低賃金引き上げに係る加点(2024年10月〜2025年9月の該当月が3か月以上)は第7回から変更されておらず、両者を混同しないよう区別して確認することが重要です。

Q7.汎用設備を複数組み合わせる計画は対象になりますか

A7.汎用設備を複数組み合わせることでより高い省力化効果や付加価値を生み出す場合は、オーダーメイド設備とみなされ対象となります。この取扱いは第7回から変更されていません。公募要領は、汎用設備であっても導入環境に応じて周辺機器や構成する機器の数、搭載する機能等が変わる場合も、オーダーメイド設備とみなすと明記しています。一方で、汎用設備やパッケージソフト等のオーダーメイド性のない設備・システムを単体で導入する事業は明確に対象外とされています。したがって、申請にあたっては、組み合わせによってどのような相乗効果が生じるのか、自社の工程やレイアウトに合わせてどの部分をカスタマイズするのかを、図表を用いて具体的に論証することが必要です。単に複数台を導入するという説明では、組み合わせによる効果の論証として不十分と判断される可能性があります。

Q8.カタログ注文型と一般型は、どちらを選ぶべきですか

A8.製品カタログ掲載製品をそのまま導入するのであればカタログ注文型、自社の工程に合わせた設計が必要であれば一般型という切り分けになります。公募要領は、一般型の申請を検討する前にカタログ注文型の製品カタログを必ず確認するよう求めています。カタログ掲載製品は既に国が省力化効果を認めた製品であり、申請手続きも一般型より迅速かつ簡易です。一方の一般型は、省力化効果の見込み、付加価値向上の程度、事業状況に見合った投資であるか、一品一様で設計されているか、革新性がどれだけあるかを総合的に審査するため、審査項目が多くなります。なお、製品カタログに登録されているカテゴリに該当する製品を一般型で導入する場合は、省力化効果が十分に見込める設備として審査で一部考慮される取扱いとなっています。

Q9.賃上げ目標が未達だった場合、補助金はどうなりますか

A9.1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%が未達の場合は達成率に応じた返還、事業場内最低賃金の要件が未達の場合は補助金額を事業計画年数で除した額の返還が求められます。返還額は「(補助金交付額-補助上限引き上げ額)×(1-達成率)」で算定され、年平均成長率が0またはマイナスの場合は全額返還となります。ただし、付加価値額が増加しておらず、かつ企業全体として事業計画期間の過半数が営業利益赤字である場合や、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は、返還を求められません。また、再生事業者については基本要件未達の場合の返還要件が免除されます。大幅賃上げ特例を適用して補助上限額の引き上げを受けた場合は、合計で年平均成長率6.0%以上という目標が未達であれば、引き上げ額相当分の返還が別途求められる点にも留意が必要です。

Q10.労働関係法令違反があると、申請できなくなりますか

A10.第8回公募要領では、過去1年において労働関係法令違反により送検処分を受けた事業者は補助対象外と明記されました。これは第7回にはなかった新設規定です。対象となるのは送検処分を受けた場合であり、是正勧告や指導を受けた段階の事案がただちに該当するかどうかは、公募要領の文言だけでは判断できません。該当の可能性がある場合は、申請前に事務局へ確認することが適切です。あわせて、補助事業に関連する法令違反があった事業者についても、各公募回の公募開始日から5年前の日以降の違反が除外事由とされています。賃上げと労働環境の改善を政策目的に掲げる制度である以上、労働法制の遵守状況が申請の入口で確認される運用は今後も継続すると認識する必要があります。

省力化投資補助金の申請支援について

基準年度の後ろ倒しに対応した数値計画の再設計を支援します

壱市コンサルティングは、認定経営革新等支援機関として、中小企業省力化投資補助事業(一般型)の事業計画策定を支援しています。第8回公募では、基準年度の定義変更と足下の賃上げ評価の新設により、第7回までの計画をそのまま流用することができません。補助事業完了時期の設定から逆算した数値計画の組み立てを、審査観点に沿って伴走支援します。

📋 事業計画書の作成支援

現状分析・経営課題の整理から、省力化投資の具体的内容、業務プロセスのビフォーアフター、全社へのシナジーまで、審査項目に対応した構成で作り込みます。

📊 数値計画・省力化指数の算定

基準年度の見込値設定、労働生産性・1人当たり給与支給総額のCAGR設計、省力化指数と投資回収期間の算定根拠を、実測データに基づいて整理します。

🛡️ 提出前レビューと採択可能性の検証

審査項目ごとのスコアリングと、過去の採択・不採択事例との突合により、提出前に弱点を洗い出して補強します。

🔄 交付申請から実績報告までの伴走

採択後の交付申請、賃金引き上げ計画の表明書、実績報告、事業化状況報告まで、5年間の報告義務を見据えて継続的に支援します。

第8回公募の締切は10月中旬が予定されています。準備は今すぐ始めることが賢明です。

こんなお悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください

  • ✅ 第7回で不採択となり、第8回で再チャレンジしたい
  • ✅ 基準年度が変わったことで、数値計画をどう組み直せばよいか分からない
  • ✅ 足下の賃上げをどの水準で設定すべきか判断がつかない
  • ✅ 導入予定の設備がオーダーメイド設備に該当するか確認したい
  • ✅ 省力化指数の算定根拠をどう示せばよいか整理できていない
  • ✅ カタログ注文型と一般型のどちらで申請すべきか迷っている

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