【令和8年(2026年)】省力化投資補助金 一般型 第6回 採択結果を分析|採択1,176件・業種別・地域別の傾向と次回への示唆
中小企業省力化投資補助事業(一般型)第6回公募の採択結果が、令和8年(2026年)8月28日に独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)から公表されました。応募1,841者に対して採択1,176者、採択率は63.8%です。採択件数は第5回の1,251件から減少した一方、採択率は第5回の61.4%から2.4ポイント上昇しました。応募そのものが2,035者から1,841者へ減少しており、公表資料からは業種構成・地域分布・投資規模のいずれにも前回からの明確な変化が読み取れます。
今回の結果で目を引くのは3点です。製造業の比率が51.4%へ再び上昇したこと、都道府県別で大阪府が東京都を上回って最多となったこと、そして採択者の4.9%にあたる58件が個人事業主で、その多くが歯科医院であることです。3点目は、第6回公募要領で診療報酬・介護報酬の取扱いが変更された結果が、採択データとしてはじめて可視化されたものと整理されます。
本記事では、公表された採択結果概要と採択事業者一覧をもとに、第6回の採択傾向を業種別・地域別・投資規模別に分析し、公表された8件の採択事例から読み取れる審査の視点、そして現在公募中の第8回に向けた実務上の示唆までを整理します。
第1回から第6回までの採択件数と採択率の推移
まず、第1回から第6回までの応募者数・採択者数・採択率を通しで確認します。事務局が公表している数値をそのまま並べたものです。
| 公募回 | 応募者数 | 採択者数 | 採択率 | 採択発表 |
|---|---|---|---|---|
| 第1回 | 1,809者 | 1,240者 | 68.5% | 令和7年(2025年)6月16日 |
| 第2回 | 1,160者 | 707者 | 60.9% | 令和7年(2025年)8月8日 |
| 第3回 | 2,775者 | 1,854者 | 66.8% | 令和7年(2025年)11月28日 |
| 第4回 | 2,100者 | 1,456者 | 69.3% | 令和8年(2026年)3月6日 |
| 第5回 | 2,035者 | 1,251者 | 61.4% | 令和8年(2026年)6月上旬 |
| 第6回 | 1,841者 | 1,176者 | 63.8% | 令和8年(2026年)8月28日 |
第6回は応募1,841者に対して採択1,176者、採択率63.8%でした。採択率が6割を下回った回はなく、これまでの6回は60.9%から69.3%の範囲で推移しています。6回分を通算すると応募11,720者・採択7,684者で、通算の採択率は65.5%です。
注目すべきは、採択件数と採択率が逆方向に動いた点です。採択件数は第3回の1,854件をピークに、第4回1,456件、第5回1,251件、第6回1,176件と3回連続で減少しました。一方で採択率は、第5回の61.4%から第6回は63.8%へ2.4ポイント上昇しています。採択件数の減少は審査の厳格化ではなく、応募者数そのものの減少によるものと整理できます。応募は第3回の2,775者をピークに、2,100者、2,035者、1,841者と縮小しました。
第3回で応募が急増した後、公募を重ねるなかで制度の要件が正しく理解され、要件を満たさない申請が事前に絞り込まれてきたという読み方が成り立ちます。実際、第6回公募要領では汎用設備・パッケージソフトの単体導入が対象外であることが明記されました。申請前の段階でふるいがかかった結果として、応募が減り採択率が上がったという構造です。
ものづくり補助金が直近で3割前後の採択率で推移していることと比較すれば、6割台という水準は依然として高い部類に入ります。ただし裏を返せば、第6回でも応募者の36.2%にあたる665者が不採択となっています。準備なしに通る制度ではありません。
📊 このセクションの要点
第6回は応募1,841者・採択1,176者・採択率63.8%でした。採択件数は3回連続で減少しましたが、これは応募者数が2,775者から1,841者へ縮小したことによるもので、採択率はむしろ第5回の61.4%から2.4ポイント上昇しています。通算6回の採択率は65.5%です。
第6回採択結果の概要|採択1,176件・採択率63.8%
第6回公募は、令和8年(2026年)3月13日の公募開始、4月15日の申請受付開始、5月15日17時の申請締切というスケジュールで実施されました。採択発表は当初予定どおり8月下旬となり、令和8年(2026年)8月28日に結果が公表されています。公表資料から読み取れる第6回の基本データは次のとおりです。
| 項目 | 第6回公募の内容 |
|---|---|
| 採択発表日 | 令和8年(2026年)8月28日 |
| 応募者数 | 1,841者 |
| 採択者数 | 1,176者 |
| 採択率 | 63.8% |
| 申請締切日 | 令和8年(2026年)5月15日17時 |
| 最多の業種 | 製造業 51.4%(次いで建設業 14.6%) |
| 最多の都道府県 | 大阪府 131件(11.1%) |
| 最多の申請額帯 | 1,500万円以上〜1,750万円未満 17.8% |
| 最多の従業員規模 | 6人〜10人 17.7% |
| 最多の資本金帯 | 1,000万円以上〜2,000万円未満 32.7% |
採択者の中心像は、製造業を営む従業員20人前後・資本金1,000万円台の中小企業が、1,500万円前後の補助金を申請するという姿です。ただしこれは全体の重心であり、後述するとおり業種・規模ともに採択の広がりは相当に大きくなっています。
業種別の採択傾向|製造業51.4%・建設業14.6%
主たる業種別の採択件数割合を見ると、製造業51.4%、建設業14.6%で、この2業種だけで全体の66.0%を占めています。第5回では製造業49.7%、建設業17.7%でしたので、製造業が1.7ポイント上昇し、建設業が3.1ポイント低下した形です。第1回から続いていた「製造業の比率低下・建設業の比率上昇」というトレンドは、第6回でいったん反転しました。
| 業種 | 第6回の構成比 | 参考:第5回 |
|---|---|---|
| 製造業 | 51.4% | 49.7% |
| 建設業 | 14.6% | 17.7% |
| 学術研究、専門・技術サービス業 | 4.2% | 6.1% |
| 小売業 | 4.0% | — |
| 卸売業 | 3.9% | 4.2% |
| その他サービス業(自動車整備業、ビルメンテナンス業) | 3.7% | — |
| 医療、福祉 | 3.6% | — |
| 農業、林業 | 2.8% | 3.7% |
| サービス業(自動車整備業・ビルメンテナンス業以外) | 2.5% | — |
| 情報通信業 | 2.0% | — |
上位2業種以外は、いずれも構成比が4%台以下に分散しています。生活関連サービス業(理容業、美容業、クリーニング業、冠婚葬祭業等)1.6%、飲食サービス業1.4%、運輸業・郵便業1.2%、宿泊業0.4%、教育・学習支援業0.4%といった水準で、金融業・保険業と複合サービス事業は0.0%でした。業種の広がりはあるものの、実数で見れば製造業・建設業以外はいずれも少数派であるという構造は、制度開始以来変わっていません。
個人事業主58件の内訳|歯科医院が新たな採択層として登場
第6回で最も特徴的な変化は、採択事業者一覧における個人事業主の存在です。資本金別の採択件数割合では個人事業主が4.9%を占めており、採択事業者一覧で法人番号の記載がない事業者を数えると58件となります。そしてこの58件のうち26件が、歯科診療・歯科技工に関する事業計画です。
これは第6回公募要領の変更が採択データに表れたものです。第5回までは「公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬を受けている事業者は補助対象外」とされていましたが、第6回では補助対象外となる事業から診療報酬・介護報酬が除かれ、個人事業主として開業している歯科医院や介護事業者が申請可能となりました。採択事業者一覧には「予約DX・会計自動化で患者対応時間を創出する歯科省力化事業」「補綴製作のデジタル化による高付加価値診療体制の確立」といった計画名が並んでおり、CT・口腔内スキャナ・院内技工設備・自動分包機などを軸とした計画が採択されています。
なお、第7回公募からは歯科医業を営む医療法人(従業員300人以下)も対象に追加されています。歯科分野は第6回で個人事業主、第7回で医療法人へと段階的に対象が拡大されたと整理でき、第7回以降の採択結果では医療・福祉の構成比がさらに動く可能性があります。
事業計画名から見るキーワード|AI関連が95件
採択事業者一覧に記載された1,176件の事業計画名を対象に、頻出キーワードを集計しました。制度の重心がどこに置かれているかを把握する参考になります。
| キーワード | 該当件数 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|
| 自動化 | 181件 | 15.4% |
| システム | 146件 | 12.4% |
| AI | 95件 | 8.1% |
| DX | 46件 | 3.9% |
| ロボット | 37件 | 3.1% |
| ICT(ICT建機・ICT施工等) | 36件 | 3.1% |
AIを計画名に含む案件が95件、全体の8.1%に達している点は注目に値します。AI外観検査、AIネスティング、AI配車、AI見積・積算、AIエージェント型CRMなど用途は多岐にわたり、機械装置の導入だけでなく、ソフトウェア・システム構築を主軸に据えた計画が確実に採択されていることが確認できます。建設業ではICT建機・ICT施工の内製化が定番の類型になりつつあり、業種ごとの「勝ち筋」が形成されつつあると整理されます。
📊 このセクションの要点
製造業51.4%・建設業14.6%で全体の3分の2を占め、製造業比率は第5回から反転上昇しました。個人事業主58件のうち26件が歯科関連であり、第6回公募要領における診療報酬・介護報酬の取扱い変更が採択データに直接反映されています。事業計画名ではAIが95件と、システム主軸の計画が定着しています。
都道府県別の採択傾向|大阪府が東京都を上回り最多
都道府県別では、大阪府131件(11.1%)が最多となり、東京都120件(10.2%)、愛知県102件(8.7%)が続きました。この上位3府県だけで353件、全体の30.0%を占めています。多くの補助金で東京都が最多となるなか、本制度で大阪府が首位に立った点は、ものづくり中小企業の集積という産業構造の違いを反映したものと理解するのが実態に近い見方です。
| 順位 | 都道府県 | 採択件数 | 構成比 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 大阪府 | 131件 | 11.1% |
| 2位 | 東京都 | 120件 | 10.2% |
| 3位 | 愛知県 | 102件 | 8.7% |
| 4位 | 静岡県 | 56件 | 4.8% |
| 5位 | 兵庫県 | 55件 | 4.7% |
| 6位 | 神奈川県 | 51件 | 4.3% |
| 7位 | 広島県 | 43件 | 3.7% |
| 8位 | 茨城県 | 41件 | 3.5% |
| 9位 | 岐阜県 | 35件 | 3.0% |
| 10位 | 埼玉県 | 33件 | 2.8% |
| 11位 | 長野県 | 32件 | 2.7% |
| 12位 | 千葉県・福岡県 | 各31件 | 各2.6% |
| 14位 | 北海道 | 30件 | 2.6% |
一方で、高知県1件、佐賀県4件、沖縄県4件、島根県5件、青森県5件など、採択が一桁にとどまる県も複数あります。地域による採択件数の差は、人口規模だけでなく、地域内で申請支援を担う認定経営革新等支援機関の層の厚さにも左右されると整理されます。地方の事業者にとっては競争相手が少ないことを意味するとも読めますが、それは制度が使えないことの裏返しではありません。ICT建機や測量DXなど地方の建設業・農林業で採択されている類型は明確に存在します。
📊 このセクションの要点
大阪府131件が東京都120件を上回って最多となり、上位3府県で全体の30.0%を占めました。ものづくり中小企業の集積地が上位を占める構造です。採択が一桁にとどまる県もありますが、地方ではICT建機・測量DX・農業機械の導入といった採択類型が確立しており、地域を理由に申請を見送る必要はありません。
申請額・従業員規模から見る採択者像
採択者における補助金申請額の分布を見ると、最も多いのは1,500万円以上〜1,750万円未満の17.8%です。これに次ぐのが750万円以上〜1,000万円未満の12.6%、2,000万円以上〜3,000万円未満の11.8%となっています。
| 申請額帯 | 構成比 | 対応する主な補助上限額 |
|---|---|---|
| 750万円未満 | 15.9% | 従業員5人以下(750万円)の枠内 |
| 750万円以上〜1,500万円未満 | 29.7% | 従業員6〜20人(1,500万円)の枠内 |
| 1,500万円以上〜2,000万円未満 | 21.7% | 6〜20人の上限またはその大幅賃上げ特例 |
| 2,000万円以上〜3,000万円未満 | 11.8% | 従業員21〜50人(3,000万円)の枠内 |
| 3,000万円以上〜5,000万円未満 | 12.1% | 21〜50人の上限または51〜100人の枠内 |
| 5,000万円以上 | 8.7% | 従業員51人以上の大型投資層 |
申請額の分布は、従業員規模ごとの補助上限額に沿って山ができています。従業員数別では6人〜10人が17.7%で最多、21人〜30人13.9%、5人以下12.8%と続き、従業員20人以下の事業者が全体の46.8%を占めています。一方で101人以上の事業者も13.0%あり、幅広い規模層に採択が及んでいます。資本金別では1,000万円以上〜2,000万円未満が32.7%と突出しており、個人事業主を含めた資本金1,000万円未満の層も34.8%を占めます。
POINT
1,500万円以上〜1,750万円未満に山ができている背景には、従業員6〜20人の補助上限額が1,500万円、大幅賃上げ特例適用時が2,000万円という制度設計があります。上限いっぱいまで投資を設計した事業者が一定数存在すると読めますが、投資規模を上限に合わせて先に決めてしまうと、省力化指数や投資回収期間の説明に無理が生じます。順序としては、削減する業務量から必要な設備を積み上げ、その結果として投資額が決まるという組み立てが審査上は説得力を持ちます。
📊 このセクションの要点
申請額は1,500万円以上〜1,750万円未満が17.8%で最多、従業員20人以下が46.8%、資本金1,000万円以上〜2,000万円未満が32.7%を占めました。採択者の中心は従業員20人前後・資本金1,000万円台の中小企業であり、上限額の枠に沿って投資規模が設計されている実態が読み取れます。
公表された8件の採択事例から読み取る審査の視点
中小機構は採択結果概要のなかで、第6回で実際に採択された事業計画の概要を8件公表しています。いずれも事務局が要約・加工したものであり実際の提出書類とは異なりますが、どのような計画が採択されるのかを示す事実上の模範例として位置づけられます。
| 業種 | 導入設備 | 示された省力化効果 |
|---|---|---|
| 製造業(航空・半導体部品加工) | パレットチェンジャー付き横形マシニングセンタ(オーダーメイド) | 6〜7時間の夜間無人運転を実現し、24時間稼働体制を構築 |
| 建設業(空調設備工事) | ファイバーレーザー切断機+AIネスティングソフト | 年間約1,585時間の省力化、鋼材の有効利用率が約10%改善 |
| 卸売業(身の回り品卸売) | 高効率・高容量デバンニングロボット | 荷下ろし作業員を5名から2名へ削減し、3名を新設物流基地へ再配置 |
| 宿泊業(ホテル業) | PMSとセルフチェックイン端末等の専用システム | 13ホテルの情報をリアルタイム共有し、フロント業務を効率化 |
| 飲食サービス業(製麺) | 大型製麺ライン一式、石臼機・ふるい機、真空包装機・冷却機 | 作業時間を1日600分から150分へ削減、常時3名体制から1名監視体制へ |
| 運輸業・郵便業(倉庫業) | 自動封緘機、画像検品システム、出荷梱包用WCS | 出荷工程の作業人員9〜12名を1〜3名へ削減 |
| 生活関連サービス業(洗濯業) | 自動投入機、カレンダーロール、両面検査付フォルダー | 投入から検査・折り畳み・仕分けまでを一貫自動化 |
| サービス業(廃棄物処理業) | AI監視制御装置、自動破袋機、高性能選別・圧縮処理設備 | 選別ライン全体の作業時間を削減し、再選別作業も削減 |
3つの類型に整理されている点が重要
8件の事例には、中小機構によって次の3つの類型ラベルが付されています。製造業の1件が「オーダーメイド性の高い設備を導入することで、高い省力化効果が見込まれる事例」、建設業・卸売業・宿泊業・運輸業・サービス業の5件が「一連の業務プロセスを自動化・効率化することで、高い省力化効果が見込まれる事例」、飲食サービス業・生活関連サービス業の2件が「複数の汎用設備を組み合わせて導入することで、高い省力化効果が見込まれる事例」です。
この分類は、公募要領における「汎用設備・パッケージソフト等のオーダーメイド性の無い設備・システムを単体で導入する事業は対象外」という規定と表裏一体をなしています。一品一様の特注設備でなくとも、複数の汎用設備を組み合わせて工程全体をつなぐ計画であればオーダーメイド性は認められるという運用が、公表事例によって明確に示されたと整理されます。事例8件のうち特注設備そのものは1件にとどまり、残る7件は「プロセスをつなぐ」「複数機器を組み合わせる」という発想で構成されています。
共通するのは「削減した人員の行き先」が書かれていること
8事例をあらためて読むと、省力化効果の数値だけでなく、創出した人員・時間をどこへ振り向けるのかが例外なく記載されています。卸売業は削減した3名を新設する物流基地事業へ、飲食サービス業は営業・新店舗支援・新商品開発へ、生活関連サービス業は営業・品質管理業務へ、運輸業は入荷検品業務と箱もの出荷業務へ、というように再配置先が具体的です。
審査の計画面では「省力化で生まれたリソースを高付加価値業務に振り向け、会社全体の成果につながる計画か」が評価項目とされています。省力化指数を高く算出できても、その先が空欄であれば計画としては完結しません。削減時間の算定と再配置計画は、セットで初めて審査上の意味を持つという点に注意が必要です。
注意
中小機構は公表資料において、これらの事例と同様の事業計画を提出したとしても不採択となる可能性があると明記しています。採択事例は模倣の対象ではなく、自社の工程に置き換えて構造を学ぶための素材と位置づけるのが適切です。
📊 このセクションの要点
公表された8事例のうち、特注設備そのものは1件のみで、残る7件は業務プロセスの一貫自動化または複数の汎用設備の組み合わせです。いずれの事例も削減時間・削減人員を数値で示し、創出したリソースの再配置先まで具体的に記載しています。この2点が採択計画に共通する構造と整理されます。
次回応募者への示唆|第8回公募は数値計画の前提が変わる
第6回で不採択となった事業者にとって、次の受け皿は第8回公募です。第7回は令和8年(2026年)7月31日に締め切られ、採択発表は11月中旬が予定されています。第8回は令和8年(2026年)8月18日に公募が開始され、申請受付開始は9月中旬、締切は10月中旬が予定されています。
ここで重要なのは、第6回や第7回で作成した事業計画をそのまま流用できないという点です。第8回公募要領では、数値計画の起点である基準年度の定義が「応募申請時の直近の決算期」から「補助事業が完了した日を含む事業年度の決算期」へと後ろ倒しされました。労働生産性・1人当たり給与支給総額・付加価値額の比較起点がすべて移動しており、補助事業完了時期を特定したうえで、基準年度の見込値から数値計画を組み立て直す必要があります。
あわせて、補助事業の完了を待たずに実施する「足下の賃上げ」を審査で評価する仕組みが新設されました。申請時の直近決算期から基準年度までの1人当たり給与支給総額の年平均上昇率が物価上昇率を下回る計画は、審査上大幅に不利になるとされています。補助事業実施期間も18か月から17か月へ1か月短縮されており、長納期設備を含む計画は工程表の再検証が必要です。
POINT
第6回の採択データが示すのは、この制度が製造業・建設業の設備投資に偏っているという事実ではなく、工程を分解して削減時間を数値化できる事業者が業種を問わず採択されているという事実です。歯科医院・動物病院・クリーニング業・廃棄物処理業まで採択が広がっている以上、自社の業種を理由に検討をやめる必要はありません。
📊 このセクションの要点
次の受け皿は第8回公募で、締切は令和8年(2026年)10月中旬が予定されています。第8回では基準年度が補助事業完了年度へ後ろ倒しされ、足下の賃上げ評価が新設され、補助事業実施期間が17か月へ短縮されました。第6回・第7回の事業計画をそのまま流用すると審査上不利になるため、数値計画の組み直しが前提となります。
まとめ|第6回採択結果から押さえるべき5つのポイント
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 応募1,841者・採択1,176者・採択率63.8% | 令和8年(2026年)8月28日公表。採択件数は3回連続の減少だが、応募も縮小しており採択率は第5回61.4%から2.4ポイント上昇した。 |
| 製造業51.4%・建設業14.6% | 2業種で全体の66.0%。第5回まで続いた製造業比率の低下傾向が反転し、建設業は3.1ポイント低下した。 |
| 個人事業主58件・歯科26件 | 診療報酬・介護報酬の取扱い変更により、個人開業の歯科医院が新たな採択層として登場した。 |
| 大阪府が最多・上位3府県で30.0% | 大阪府131件、東京都120件、愛知県102件。ものづくり中小企業の集積地に採択が集中している。 |
| 採択事例に共通する2要素 | 削減時間・削減人員の数値化と、創出したリソースの再配置先の明示。8事例すべてがこの構造を備えている。 |
よくある質問(Q&A)
Q1.第6回の採択率はどのくらいですか
A1.応募1,841者に対して採択1,176者で、採択率は63.8%です。過去の採択率は第1回68.5%、第2回60.9%、第3回66.8%、第4回69.3%、第5回61.4%であり、第6回の63.8%はこの範囲のほぼ中間に位置します。6回分を通算すると応募11,720者・採択7,684者で、通算採択率は65.5%です。ものづくり補助金が直近で3割前後の採択率で推移していることと比べれば高い水準といえますが、第6回でも665者が不採択となっています。採択率が6割を超えているからといって、準備不足の計画が通る制度ではありません。汎用設備の単体導入など要件を満たさない計画は、審査以前の段階で対象外と判断されます。
Q2.採択件数が減っているのは審査が厳しくなったからですか
A2.審査の厳格化というより、応募者数そのものの減少が主な要因と整理できます。採択件数は第3回1,854件、第4回1,456件、第5回1,251件、第6回1,176件と3回連続で減少していますが、応募者数も第3回2,775者、第4回2,100者、第5回2,035者、第6回1,841者と同じ方向に動いています。むしろ採択率は第5回61.4%から第6回63.8%へ2.4ポイント上昇しました。第3回で応募が急増した後、制度の要件が正しく理解され、要件を満たさない申請が事前に絞り込まれてきたと読むのが実態に近い見方です。ただし第6回では、汎用設備の単体導入が対象外であることが公募要領に明記され、交付申請期限の運用も厳格化されました。要件面での引き締めが進んでいることは事実として押さえておく必要があります。
Q3.製造業でなければ採択されにくいのですか
A3.製造業が51.4%を占めるのは事実ですが、これは申請母数の構成を反映したものであり、業種そのものが採否を決めているわけではありません。第6回では建設業14.6%のほか、学術研究・専門技術サービス業4.2%、小売業4.0%、卸売業3.9%、医療・福祉3.6%、農業・林業2.8%と幅広い業種が採択されています。公表事例にも宿泊業のPMS導入、洗濯業のリネン処理自動化、廃棄物処理業のAI選別ラインが含まれています。重要なのは業種ではなく、どの工程にどれだけの人手がかかっており、それをどの設備でどれだけ削減できるのかを数値で示せるかどうかです。非製造業の場合はシステム構築が中心になりやすく、口頭審査の対象となる可能性がある点も想定しておくことが賢明です。
Q4.個人事業主でも申請できますか
A4.申請できます。第6回では採択1,176件のうち58件が個人事業主であり、全体の4.9%を占めています。資本金または従業員数が中小企業者の基準以下であれば、個人事業主も補助対象者に含まれます。第6回公募からは、補助対象外となる事業から診療報酬・介護報酬が除かれ、個人開業の歯科医院や介護事業者も申請可能となりました。実際に採択事業者一覧では、CT・口腔内スキャナ・院内技工設備・自動分包機などを導入する歯科の計画が26件確認できます。ただし応募時点で従業員が0名の事業者、または1人当たり給与支給総額の対象となる従業員が0名の事業者は補助対象外とされている点には注意が必要です。
Q5.汎用設備を組み合わせる計画でも採択されますか
A5.採択されます。第6回の公表事例8件のうち2件は「複数の汎用設備を組み合わせて導入することで、高い省力化効果が見込まれる事例」として明示的に分類されています。飲食サービス業の製麺ライン一式・石臼機・真空包装機の組み合わせ、生活関連サービス業の自動投入機・カレンダーロール・両面検査装置の組み合わせがこれにあたります。公募要領は、汎用設備であっても導入環境に応じて周辺機器や構成機器の数、搭載機能が変わる場合、または複数を組み合わせてより高い省力化効果を生み出す場合はオーダーメイド設備とみなすと規定しています。一方で、汎用設備やパッケージソフトを単体で導入する事業は明確に対象外です。組み合わせによってどの工程がどうつながり、なぜ既製品単体では対応できないのかを、レイアウト図や工程図で論証することが必要になります。
Q6.どのくらいの投資規模で申請している事業者が多いのですか
A6.最も多いのは1,500万円以上〜1,750万円未満で17.8%、次いで750万円以上〜1,000万円未満が12.6%、2,000万円以上〜3,000万円未満が11.8%です。1,500万円未満の申請が45.6%を占める一方、5,000万円以上の大型投資も8.7%あり、規模の幅は広いといえます。分布の山が1,500万円台にできているのは、従業員6〜20人の補助上限額が1,500万円、大幅賃上げ特例適用時が2,000万円という制度設計と対応しています。ただし、上限額から逆算して投資規模を先に決めると、省力化指数や投資回収期間の算定に無理が生じます。削減対象業務の実測から必要な設備を積み上げ、その結果として投資額が決まるという順序で組み立てることが、審査上の整合性につながります。
Q7.不採択だった場合、次はいつ申請できますか
A7.次の受け皿は第8回公募です。令和8年(2026年)8月18日に公募が開始され、申請受付開始は9月中旬、締切は10月中旬が予定されています。第7回は令和8年(2026年)7月31日で締め切られており、採択発表は11月中旬の予定です。なお、本事業へ応募申請中・交付申請中の事業者は重複して申請できないため、第7回に申請して結果を待っている段階の事業者は第8回に申請できません。第6回で不採択となった事業者は第8回への申請が可能ですが、第8回では基準年度の定義が変更されているため、第6回の事業計画をそのまま再提出することは適切ではありません。数値計画の前提から組み直すことが必要です。
Q8.第8回で変わった点のうち、最も影響が大きいのは何ですか
A8.数値計画の起点である基準年度が、応募申請時の直近決算期から補助事業完了年度へ後ろ倒しされた点です。労働生産性の年平均成長率4.0%以上、1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上という要件の分母が、申請時点で確定している実績値ではなく、補助事業完了時点の見込値に変わりました。これにより、補助事業実施期間中に実施した賃上げは目標達成にカウントされず、むしろ分母を押し上げる方向に働きます。あわせて「足下の賃上げ」を審査で評価する仕組みが新設され、申請時決算から基準年度までの賃上げが物価上昇率を下回る計画は審査上大幅に不利になるとされています。補助事業完了時期を事業年度単位で特定するところから計画づくりを始める必要があります。
Q9.採択された計画名にAIが多いのはなぜですか
A9.第6回の採択事業者一覧では、事業計画名にAIを含む案件が95件、全体の8.1%を占めています。用途はAI外観検査、AIネスティング、AI配車、AI見積・積算、AI画像判定、AIエージェント型の顧客対応など多岐にわたります。これは審査でAIが優遇されているというより、人手に依存していた判断業務をAIに置き換えることで削減時間を明確に説明しやすいためと理解するのが実態に近い見方です。政策面の審査では先端的なデジタル技術やロボットの活用がイノベーションの観点で考慮されるとされていますが、AIという言葉を計画名に入れれば評価されるわけではありません。どの判断業務に何時間かかっており、それがどの程度削減されるのかという説明が伴わなければ、審査上の効果は期待できません。
Q10.採択後に注意すべきことは何ですか
A10.最優先は交付申請の期限管理です。第6回公募要領では、交付申請の期限を採択発表日から2か月後の日とし、期限を過ぎた場合は採択決定が取消となることが明記されました。第5回までの「取り消す可能性があります」という表現から、断定的な表現へ改められています。交付申請には相見積書の取得、賃金引き上げ計画の表明書、事業実施場所を証明する書類、全従業員分の賃金台帳、研修動画の修了証などが必要であり、採択発表から着手したのでは間に合わないおそれがあります。加えて、交付決定前の契約・発注は補助対象になりません。採択後は、1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上と事業場内最低賃金の水準維持が未達の場合に補助金返還の対象となる点、事業化状況報告を5年間提出する義務がある点も、事前に社内で共有しておくことが重要です。
省力化投資補助金の申請なら壱市コンサルティング
第6回の採択傾向を踏まえ、第8回公募に向けた事業計画づくりを支援します
壱市コンサルティングは、認定経営革新等支援機関として省力化投資補助金の申請支援を行っています。第6回の採択結果が示すのは、業種や設備の種類ではなく、工程を分解して削減時間を数値化し、創出したリソースの行き先まで描けているかが採否を分けるという構造です。第8回公募では基準年度の定義が変更されているため、過去回の計画をそのまま流用することはできません。
📋 事業計画書の作成支援
現状分析・経営課題の整理から、省力化投資の内容、業務プロセスのビフォーアフター、全社へのシナジーまで、審査項目に沿った構成で作り込みます。
📊 省力化指数・数値計画の設計
基準年度の見込値設定、労働生産性と1人当たり給与支給総額の設計、省力化指数と投資回収期間の算定根拠を、実測データに基づいて整理します。
🛡️ 提出前レビューと採択可能性の検証
審査項目ごとのスコアリングと過去の採択・不採択事例との突合により、提出前に弱点を洗い出して補強します。
🔄 交付申請から事業化状況報告までの伴走
採択後の交付申請、賃金引き上げ計画の表明書、実績報告、5年間の事業化状況報告まで、返還リスクを抑える視点で継続支援します。
第8回公募の締切は令和8年(2026年)10月中旬が予定されています。準備は今すぐ始めることが賢明です。
こんなお悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください
- ✅ 第6回で不採択となり、第8回で再チャレンジしたい
- ✅ 省力化効果をどう数値で示せばよいか分からない
- ✅ 導入予定の設備がオーダーメイド設備に該当するか確認したい
- ✅ 基準年度が変わったことで数値計画をどう組み直せばよいか判断がつかない
- ✅ 削減した人員の再配置先をどう描けばよいか整理できていない
- ✅ 歯科医院・動物病院など医療分野で申請できるか確認したい
※本記事は令和8年(2026年)8月28日に公表された中小企業省力化投資補助事業(一般型)第6回公募の採択結果および採択決定事業者一覧をもとに作成しています。構成比は公表資料の数値をそのまま用い、事業計画名の集計は採択決定事業者一覧1,176件を対象に壱市コンサルティングが実施したものです。制度内容・スケジュールは変更される場合があるため、申請にあたっては必ず最新の公募要領をご確認ください。
