【令和8年度】東京都の地球温暖化対策報告書制度とは?提出期限・作成方法と2030年度の達成水準を徹底解説

東京都の助成金や融資、減免税制の要件を調べていて、「地球温暖化対策報告書の提出が必要」という一文に突き当たった経営者は少なくないはずです。省エネ設備の導入助成、制度融資の保証料補助、事業税の減免。都内の中小企業が使える主要な省エネ支援策は、この報告書の提出を入口の条件としています。

地球温暖化対策報告書制度は、都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)に基づき、都内で中小規模事業所を所有又は使用する事業者が、各事業所のCO2排出量と地球温暖化対策の状況を毎年度、東京都に報告する制度です。都内に所在する約63万の事業所のうち、99.8%以上が中小規模事業所に該当します。つまり、都内で事業を営むほとんどの事業者が対象範囲に入ります。

そして令和7年(2025年)4月、この制度は大きく改正されました。従来は任意だった目標設定が制度の中心に据えられ、事業者は都が示す「2030年度の達成水準」を踏まえて自ら省エネと再エネ利用の目標・計画を設定し、その達成状況を毎年度報告することになりました。令和8年度(2026年度)に提出する報告書は、この新しい枠組みで取組状況を記載する最初の年にあたります。

本記事では、対象となる事業所・事業者の判定、義務提出と任意提出の分かれ目、令和8年度(2026年度)の提出期限、2030年度の達成水準とエネルギー・ベンチマークの読み方、作成ツールを使った報告書の作り方、そして提出することで開く支援策までを、実務目線で網羅的に解説します。

Contents
  1. 令和8年度の提出期限と制度の全体像
  2. 対象となる事業所と事業者の判定
  3. 義務提出と任意提出はどこで分かれるか
  4. 令和7年4月の制度改正で何が変わったか
  5. 2030年度の達成水準と目標設定の考え方
  6. エネルギー・ベンチマークの読み方
  7. 報告書の作成方法と提出手順
  8. 報告書を提出することで開く支援策
  9. 提出実績から読み取れる制度の現在地
  10. まとめ
  11. よくあるご質問
  12. 報告書の提出と省エネ投資の設計は壱市コンサルティングへ

令和8年度の提出期限と制度の全体像

まず押さえるべきは期限です。令和8年度(2026年度)の提出期限は、義務提出が令和8年(2026年)8月31日(月)、任意提出が令和8年(2026年)12月15日(火)です。

項目 内容
制度名 地球温暖化対策報告書制度
根拠 都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)第8条の23、同施行規則
所管 東京都環境局 気候変動対策部 総量削減課
対象事業所 都内の中小規模事業所(年間の原油換算エネルギー使用量が1,500kL未満の事業所)
報告単位 事業者単位(事業所ごとに事業所情報を作成し、事業者としてまとめて提出)
令和8年度の提出期限 義務提出:令和8年(2026年)8月31日(月)/任意提出:令和8年(2026年)12月15日(火)
提出方法 オンライン提出(印刷・郵送不要)。CD等の郵送による提出も可能
受付窓口 地球温暖化対策報告書受付窓口 電話 03-5388-3433

制度の狙いは、報告書の作成を通じて各事業所が自らのCO2排出量を把握し、地球温暖化対策を継続的に実施していくことにあります。都は事業者からの報告に基づいて省エネ対策等の取組レベルを見える化し、省エネ診断・補助金・減免税制といった支援策を関係局と連携して提供する構造になっています。報告書は都に対する一方通行の義務ではなく、支援策を受け取るための入口として設計されている点が制度理解の要諦です。

📊 このセクションの要点

地球温暖化対策報告書制度は環境確保条例に基づき、都内の中小規模事業所を所有又は使用する事業者が毎年度CO2排出量と対策状況を報告する制度です。令和8年度(2026年度)の提出期限は義務提出が8月31日、任意提出が12月15日。都は報告に基づき省エネ診断・補助金・減免税制を提供しており、報告書は支援策を受け取る入口として機能します。

対象となる事業所と事業者の判定

対象となる事業所・ならない事業所

対象となるのは、都内のすべての中小規模事業所です。中小規模事業所とは、年間(4月から翌年3月)の燃料・熱・電気の使用量を原油に換算した合計が1,500kL未満の事業所を指します。オフィス、工場、ビル、店舗のほか、事業に供される施設が広く含まれます。

区分 内容
対象となる事業所 オフィス、工場、ビル、店舗ほか、都内に設置され、年間の原油換算エネルギー使用量が1,500kL未満の事業所
対象外① 自動車・鉄道・船舶・航空機等の運行(運航)に伴うもの
対象外② 住居
対象外③ 都外の施設
大規模事業所 年間1,500kL以上の事業所は本制度の対象外。温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度(キャップ&トレード制度)の対象となる

テナントビルはオーナーとテナントの双方が対象になる

実務でもっとも誤解が生じやすいのがテナントビルの扱いです。同一の事業所であっても、所有者(オーナー)と使用者(テナント)の双方が対象事業者となり、それぞれの報告範囲について別々に報告書を作成・提出できます。オーナーの報告範囲はビル全体、テナントの報告範囲は賃借部分のみです。

この考え方は、ビル1棟借り、サブリース、区分所有、共有といった形態にも同じく当てはまります。自社ビルを所有している事業者はもちろん、テナントとして入居しているだけの事業者も対象事業者に該当するという点を、まず認識する必要があります。「うちは借りているだけだから関係ない」という理解は誤りです。

補足

報告範囲の切り分けは、東京都の助成制度における申請範囲の考え方とも連動します。たとえばゼロエミッション化に向けた省エネ設備導入・運用改善支援事業では、事業所を所有する場合は登記上の所有権を有する範囲まで、使用する場合は賃貸借契約等における専有面積が申請範囲となります。報告書の報告範囲と助成金の申請範囲を揃えて整理しておくと、後の手続きが滑らかになります。

📊 このセクションの要点

対象は年間原油換算エネルギー使用量1,500kL未満の都内事業所で、都内約63万事業所の99.8%以上が該当します。自動車等の運行に伴うもの、住居、都外の施設は対象外です。テナントビルではオーナーがビル全体、テナントが賃借部分を報告範囲として双方が対象事業者となり、1棟借り・サブリース・区分所有・共有も同様に扱われます。

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義務提出と任意提出はどこで分かれるか

提出区分には義務提出と任意提出の2つがあります。判定は事業所単位ではなく、事業者が都内に所有又は使用する中小規模事業所の合計エネルギー使用量で行います。

区分 判定要件 該当しやすい事業者
義務提出 同一事業者が都内に設置(所有又は使用)している複数の中小規模事業所のうち、前年度の原油換算エネルギー使用量が30kL以上1,500kL未満のものをすべて合計すると3,000kL以上になる場合 連鎖化事業(フランチャイズ事業)の本部等をはじめとする大企業が中心
任意提出 上記の合計が3,000kL未満の場合。義務要件に該当しない事業者はすべて任意提出となる 中小規模事業者が中心。本制度で報告書を提出する事業者の大多数がこちらに該当する

合計の対象となるのは年間原油換算エネルギー使用量が30kL以上の中小規模事業所であり、30kL未満の事業所は合計の対象外です。中小企業が単独で3,000kLに達するケースはまれであり、実務上は任意提出に該当すると考えて差し支えありません。

ここで重要なのは、任意提出であっても提出することに実益があるという点です。後述するとおり、東京都の主要な省エネ支援策は報告書の提出を要件としています。任意という言葉から「出さなくてよいもの」と受け取ると、使えるはずの支援策を取りこぼすことになります。

📊 このセクションの要点

義務提出は、都内の中小規模事業所(30kL以上1,500kL未満)の合計が3,000kL以上となる事業者が対象で、フランチャイズ本部等の大企業が中心です。それ以外はすべて任意提出となり、中小企業の大多数がこちらに該当します。任意提出でも東京都の主要な省エネ支援策の要件を満たすため、提出しない選択には機会損失が伴います。

令和7年4月の制度改正で何が変わったか

東京都は、2030年までに温室効果ガス排出量を2000年比で50%削減する「カーボンハーフ」の実現に向け、令和7年(2025年)4月から本制度を改正しました。改正の柱は3つです。

改正のポイント 令和6年度までの旧制度 令和7年度以降の新制度
2030年度の達成水準の設定 目標設定は任意 都が省エネ・再エネ利用の2030年度の達成水準を提示。事業者は達成水準を踏まえて自ら目標と計画を策定し、達成状況を毎年度報告する
再エネ利用の報告拡充 再エネ利用に関する具体的な報告なし 再エネ利用に関する報告項目を拡充し、再エネ電気割合など公表内容も拡充。追加性のある再エネ導入など積極的な取組を評価する
評価・公表の拡充 旧制度における評価・公表 報告された取組状況を省エネ・再エネ利用・CO2削減の3つの視点から見える化し、第三者にも分かりやすく評価・公表する

背景にあるのは東京都環境基本計画に掲げられた2030年目標です。都内温室効果ガス排出量を2000年比で50%削減し、業務・産業部門の都内エネルギー消費量を35%程度削減、再生可能エネルギーによる電力利用割合を50%程度とすることが掲げられています。達成水準の数値は、この目標を事業者単位に落とし込んだものです。

実務上の含意は明確です。従来の報告書は「昨年度どれだけエネルギーを使ったか」を記録する性格が強いものでしたが、改正後は「2030年に向けて何を目指し、今年どこまで進んだか」を説明する文書に変わりました。令和8年度(2026年度)に提出する報告書から、自ら設定した計画・目標に対する取組状況を記載することになります。設備投資計画と報告書を切り離して考えることは、もはやできません。

📊 このセクションの要点

令和7年(2025年)4月の改正により、①2030年度の達成水準の設定②再エネ利用に関する報告の拡充③評価・公表の拡充という3点が導入されました。旧制度では任意だった目標設定が制度の中心となり、令和8年度(2026年度)提出分から計画・目標に対する取組状況の記載が始まります。報告書は実績の記録から、2030年に向けた計画の進捗説明へと性格を変えました。

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2030年度の達成水準と目標設定の考え方

都は省エネと再エネ利用の各々について、「事業者の取組」と「事業所の取組」という2つの達成水準を提示しています。事業者はそれぞれについてどちらかを選択し、選んだ達成水準を参考に2030年度に向けた計画・目標を設定します。

分野 選択肢 2030年度の達成水準
省エネ 事業者の取組 事業者が報告する全ての都内事業所の合計エネルギー使用量を35%削減(2000年度比)
省エネ 事業所の取組 報告する全ての都内事業所のうち、エネルギー・ベンチマーク適合事業所の全てのエネルギー使用原単位が都のベンチマークのレンジA
再エネ利用 事業者の取組 報告する全ての都内事業所の電気使用量のうち再エネ電気の割合を50%
再エネ利用 事業所の取組 報告する全ての都内事業所のうち、再エネ電気100%事業所の割合が20%

基準年は2000年度以外も選べる

省エネの「事業者の取組」を選択する場合、基準年は原則として2000年度ですが、都が示す「基準年表」から別の年度を選ぶこともできます。基準年度を選択した場合、2030年度の達成水準は基準年表に定める削減率となります。たとえば2018年度を基準年として選択した場合、達成水準はエネルギー使用量20%削減(2018年度比)です。

これは実務上きわめて重要な選択肢です。2000年度のエネルギー使用実績が手元に残っていない事業者は少なくありません。都内中小規模事業所のエネルギー使用量は2000年度からすでに相当程度低下しており、基準年表では2021年度を基準年とする場合の目標削減率は11%と設定されています。直近の年度を基準年に選べば、求められる削減率は小さくなります。データの入手可能性と目標水準の両面から、どの年度を基準とするかを検討する余地があります。

再エネ電気として認められる4つの調達方法

再エネ利用の目標を考えるうえで、何が再エネ電気に該当するかの整理は欠かせません。都は次の4分類を示しています。

種類 供給方法と内容
① オンサイト再エネ 自家発電・発熱(事業所の敷地内に設置した再エネ設備で発生させ、自営線を介して供給された電気)、オンサイト型PPA(敷地内に設置した第三者保有の再エネ設備によるもの)
② オフサイト再エネ 自営線等(敷地外の再エネ設備から自営線等を介して供給)、オフサイト型PPA、自己託送(自営線等とは別の搬送方法で別の場所の事業所に供給)
③ 小売電気事業者からの購入 小売電気事業者が提供する再エネ電気プランを契約して供給を受けたもの。すべて再エネ電源で発電したものと、化石燃料由来の電源に非化石証書等を付与して実質再エネとしたものがある
④ 再エネ由来証書の利用 グリーン電力証書・グリーン熱証書、FIT非化石証書、非FIT非化石証書(再エネ指定)

太陽光発電設備を屋根に載せるだけが再エネ利用ではありません。小売電気事業者の再エネ電気プランへの切り替えや、非化石証書の調達によっても再エネ電気割合は積み上がります。設備投資を伴わない選択肢が用意されている点は、資金余力の限られる中小企業にとって現実的な意味を持ちます。

POINT

計画・目標は一度設定したら固定というわけではありません。事業所の新設、廃止、移転等への対応のため、次年度以降に計画・目標を再設定することが認められています。省エネの「事業所の取組」を選択していた事業者が、事業所の新設・廃止によりベンチマーク適合事業所が7割未満となった場合は、翌年度以降は「事業者の取組」で計画・目標を再設定する必要があります。

📊 このセクションの要点

省エネと再エネ利用のそれぞれについて、事業者の取組か事業所の取組かを選択します。省エネの事業者の取組は2000年度比35%削減が基準ですが、基準年表から直近年度を選べば求められる削減率は下がります。再エネ電気はオンサイト・オフサイト・小売電気事業者からの購入・証書の4分類が認められており、設備投資を伴わない達成手段も用意されています。

エネルギー・ベンチマークの読み方

エネルギー・ベンチマークは、同じ業種の事業所のエネルギー使用原単位、すなわち延床面積当たりのエネルギー使用量を基準として、2030年度の達成水準レベルを段階で示したものです。報告された2018年度実績データをもとに都が作成しており、26の業種区分が設定されています。

レンジ レンジが示すレベル 基準(2018年度の原単位との比較)
A+ トップ10%レベル(同業種の2018年度実績での上位10%レベル) 2018年度の原単位の昇順で上位10%の値以下
A 2030年度達成水準レベル(平均値より20%以上削減) 上位10%の原単位の値超から2018年度の平均値の80%以下
B Nearly2030達成レベル(水準まで90%、平均値より18%以上削減) 2018年度の平均値の80%超から82%以下
C 平均値を下回る水準 2018年度の平均値の82%超から100%以下
D 平均値を上回る水準 2018年度の平均値の100%超から118%以下
E 下位に近い水準 2018年度の平均値の118%超から昇順で下位10%の値以下
F 下位10%レベル 2018年度の原単位の昇順で下位10%の値超

A+からFまでの7段階であり、2030年度の達成水準への到達はレンジA以上です。自社の事業所がどのレンジに位置しているかは、作成ツールで確認できます。同業種内での相対的な位置がわかるため、設備更新の優先順位を決める材料としても機能します。

業種区分は用途・産業分類・延床面積で決まる

業種区分は、用途等・産業分類・事業所の延床面積の3要素で判定されます。代表的な区分は次のとおりです。

業種区分 用途等 延床面積の区分
オフィス
(テナント専有部)
他社所有・建物一部使用・事務所 3,000平方メートル未満/3,000平方メートル以上
オフィス
(自社ビル)
自己所有・建物全部使用・事務所 6,000平方メートル未満/6,000平方メートル以上
テナントビル
(オフィス)
建物全部使用・事務所(貸事務所業) 1,000平方メートル以上
テナントビル
(商業複合系)
建物全部使用・物販、飲食、複合(貸事務所業) 1,000〜3,000平方メートル未満/3,000〜6,000平方メートル未満/6,000平方メートル以上
物販店
(コンビニ)
物販(コンビニエンスストア) 100平方メートル未満/100〜150平方メートル未満/150〜200平方メートル未満/200〜400平方メートル未満

事業所ごとに業態が多様であるなど比較に適さない場合は、ベンチマークの設定がないため、ベンチマークに適合しない事業所も存在します。そのため、ベンチマークを活用した「事業所の取組」を選択できるのは、報告する全事業所のうちベンチマーク適合事業所が7割以上ある事業者のみです。適合事業所が7割を超えていない場合、作成ツールでは事業所の取組を選択できません。単一拠点の中小企業では、この選択肢が使えないケースも生じます。

📊 このセクションの要点

エネルギー・ベンチマークは2018年度実績をもとに26業種区分で作成され、延床面積当たりのエネルギー使用量をA+からFまでの7段階に指標化したものです。2030年度の達成水準への到達はレンジA以上。業種区分は用途等・産業分類・延床面積で決まり、ベンチマークを使う「事業所の取組」を選べるのは適合事業所が7割以上の事業者に限られます。

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報告書の作成方法と提出手順

提出物は3点、作成は事業者単位で行う

報告書は事業者単位で提出します。提出物は、①報告書提出書、②事業者情報、③事業所情報(事業所ごとに作成)の3点で構成されます。作成方法は、都環境局のホームページから作成ツールをダウンロードし、報告事項を入力して出力したデータをオンライン提出する流れです。印刷や郵送は不要です。

手順 実施すること
1. 作成ツールの入手 都環境局ホームページから作成ツールをダウンロードする。毎年度、最新版を使用すること(令和8年4月1日にVer10.0がリリースされている)
2. 報告事項の入力 作成ツールを開いて報告項目を入力する。作成マニュアル動画が公開されている
3. データの出力 提出書および報告書データを出力する。エネルギー使用量の原油換算やCO2排出量への換算は自動計算される
4. オンライン提出 提出フォームからオンラインで提出する。手続きには担当者のメールアドレスが必要

作成ツールには、報告書と提出書の一括作成、CO2排出量等の自動換算、複数事業所の一括入力、過去の提出データの取込み、複数事業所データの統合といった機能が備わっています。前年度に提出実績がある事業者は、過去データを取り込むことで入力負荷を大きく下げられます。拠点数の多い事業者ほど、この機能の恩恵は大きくなります。

報告書の表紙で記入を誤りやすい箇所

報告書提出書は環境確保条例第8条の23の規定に基づく様式です。記入で迷いやすいのは、義務提出と任意提出の選択欄です。義務提出事業者は第1項に丸を付けるか第2項に取消線を引き、任意提出事業者は第2項に丸を付けるか第1項に取消線を引きます。氏名欄には法人名・代表者役職・氏名を記入し、代表者は法人の代表権を持つ者を記入します。押印は不要です。

連絡先欄には、報告書の内容についての問合せに対応できる担当者の部署・氏名・電話番号・メールアドレスを記入します。建物管理を受託している事業者など、提出事業者とは別の事業者が窓口となる場合は、提出事業者の連絡先の下に、窓口となる事業者との関係性と連絡先を記入する形式です。

注意

東京都は制度リーフレットにおいて、行政書士又は行政書士法人でない者が、業として他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類を作成することは、法律に別段の定めがある場合を除き行政書士法違反となる旨を明記しています。管理会社や設備業者に報告書の作成を依頼する場合は、この点を確認しておく必要があります。

📊 このセクションの要点

提出物は報告書提出書・事業者情報・事業所情報の3点で、事業者単位で作成します。都環境局が提供する作成ツール(令和8年4月1日にVer10.0をリリース)に入力し、出力したデータをオンライン提出する流れです。原油換算やCO2排出量への換算は自動計算され、過去データの取込みも可能です。報酬を得て報告書を作成する行為には行政書士法上の制約があります。

報告書を提出することで開く支援策

任意提出の事業者にとって、報告書を出す最大の実益はここにあります。東京都は中小規模事業所の省エネルギー対策を推進するため、東京都地球温暖化防止活動推進センター(クール・ネット東京)と連携して各種支援策を実施しており、その主要なものが報告書の提出を要件としています。

支援策 内容 報告書提出の要否
ゼロエミッション化に向けた省エネ設備導入・運用改善支援事業 省エネ設備の導入と運用改善に係る経費の一部を助成。CO2削減量28t-CO2以上で助成率3/4・上限4,500万円、3t-CO2又は30%以上削減の場合は助成率2/3で上限2,500万円(省エネ診断受診)または1,000万円(自ら計画を作成) 必要
東京都中小企業制度融資「HTT・ゼロエミッション支援」 融資限度額2億8,000万円、融資期間15年以内(据置2年以内)。地球温暖化対策報告書を提出し、都のウェブサイト上で公表している場合は信用保証料の2/3を補助 保証料補助に必要
中小企業者向け省エネ促進税制 都の指定する導入推奨機器(空調設備、小型ボイラー設備、照明設備、再生可能エネルギー設備)を取得した場合、設備の取得価額(上限2,000万円)の1/2を事業税額から減免(事業税額の1/2を限度) 必要
都の省エネルギー診断 無料。経験豊富な診断員が現地を訪問し、室内の明るさや室温を計測して具体的な省エネ対策を提案。約7,000件の実績があり、受診者の78%が効果を実感。現地での診断時間は概ね60〜90分、診断から最短1か月で結果を送付 不要
セミナー講師派遣 無料。事業者や業界団体、行政機関が開催する省エネ・再エネの研修会等に講師を派遣。基本メニューは30〜90分で、参加者にオリジナルテキストを進呈 不要

とりわけ設備投資を検討している事業者にとって決定的なのが、ゼロエミッション化に向けた省エネ設備導入・運用改善支援事業との関係です。同事業では、助成対象設備を導入する事業所について、工事完了の届出に合わせて地球温暖化対策報告書データを提出することが交付の要件とされています。さらに、事業期間の最終年度まで毎年度継続して報告書を提出することが交付の条件に含まれています。

なお、省エネ促進税制については併用の可否に注意が必要です。ゼロエミッション化に向けた省エネ設備導入・運用改善支援事業の募集要項では、同助成金を交付された場合は都の省エネ促進税制による事業税の減免措置は受けられないと明記されています。助成金と税制のどちらを選ぶかは、設備投資額と課税所得の水準を並べて事前に比較する必要があります。

📊 このセクションの要点

報告書の提出は、ゼロエミ省エネ設備導入支援事業(上限4,500万円)、HTT・ゼロエミッション支援融資の信用保証料2/3補助、中小企業者向け省エネ促進税制の入口条件となっています。省エネ診断とセミナー講師派遣は報告書提出を要しません。助成金と省エネ促進税制は併用できないため、どちらが有利かの事前比較が求められます。

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提出実績から読み取れる制度の現在地

東京都が公表する直近の報告書提出実績は、この制度が中小企業のあいだでどう受け止められているかを示しています。

区分 令和5年提出 令和6年提出 令和7年提出
義務提出(事業者数) 250 259 254
任意提出(事業者数) 2,057 2,562 3,248
合計(事業者数) 2,307 2,821 3,502
合計(事業所数) 32,593 33,483 33,926
合計CO2排出量(万t) 634 655 531

令和8年(2026年)3月31日時点の数値です。注目すべきは任意提出の伸びで、令和5年提出の2,057事業者から令和7年提出の3,248事業者へと、2年間で約1.6倍に増えています。義務提出の事業者数がほぼ横ばいであるのに対し、任意提出だけが伸び続けている構造は、支援策の受給要件として報告書提出が組み込まれていることの反映と理解するのが実態に近い見方です。

一方で、都内には約63万の事業所が存在します。報告対象となる事業所数33,926という数字は、その5%程度にとどまります。制度の認知が行き渡っているとは言いがたく、支援策を使えるはずの事業者が入口の手続きを知らないまま機会を逃している状況が続いていると整理されます。

📊 このセクションの要点

令和7年提出分は義務提出254事業者、任意提出3,248事業者の合計3,502事業者、33,926事業所、CO2排出量531万tです。任意提出は2年で約1.6倍に増加しており、支援策の要件として報告書提出が組み込まれていることが背景にあります。一方で都内約63万事業所に対する報告事業所数は5%程度にとどまります。

まとめ

ポイント 内容
都内事業者のほぼ全員が対象範囲 都内約63万事業所の99.8%以上が中小規模事業所です。テナントとして入居している事業者も対象事業者に該当し、オーナーとテナントの双方がそれぞれの報告範囲について提出できます
令和8年度の提出期限 義務提出は令和8年(2026年)8月31日(月)、任意提出は12月15日(火)です。中小企業の大多数は任意提出に該当します
令和7年4月改正で目標設定が中心に 都が示す2030年度の達成水準を踏まえ、事業者が自ら省エネと再エネ利用の目標・計画を設定し、達成状況を毎年度報告する制度に変わりました。令和8年度提出分から取組状況の記載が始まります
達成水準は選択制で基準年も選べる 省エネ・再エネ利用のそれぞれで「事業者の取組」と「事業所の取組」を選択します。省エネの基準年は2000年度が原則ですが、基準年表から直近年度を選べば求められる削減率は下がります
提出は支援策の入口条件 ゼロエミ省エネ設備導入支援事業(上限4,500万円)、HTT・ゼロエミッション支援融資の信用保証料2/3補助、中小企業者向け省エネ促進税制はいずれも報告書の提出を要件としています

よくあるご質問

Q1.任意提出なのですが、出さないと罰則はありますか

A1.任意提出である以上、提出しないこと自体に条例上の義務違反は生じません。ただし実務上の損失は小さくありません。東京都のゼロエミッション化に向けた省エネ設備導入・運用改善支援事業は報告書の提出を交付要件としており、HTT・ゼロエミッション支援融資における信用保証料3分の2の補助も、報告書を提出し都のウェブサイト上で公表されていることが条件です。中小企業者向け省エネ促進税制も同様に報告書等の提出を求めています。空調やLED照明の更新を数年以内に検討しているのであれば、その時点で慌てて提出するのではなく、あらかじめ提出実績を作っておくほうが手続きは滑らかに進みます。提出は無料で、作成ツールを使えば入力から提出までオンラインで完結します。

Q2.テナントとして入居しているだけでも提出できますか

A2.提出できます。同一の事業所であっても、所有者と使用者がそれぞれの報告範囲について別々に報告書を作成・提出できる仕組みです。テナントの報告範囲は賃借部分のみとなり、オーナーの報告範囲はビル全体となります。ビル1棟借り、サブリース、区分所有、共有といった形態でも同じ考え方が適用されます。テナントとして自社の専有部の空調やLED照明を更新する場合、ゼロエミッション化に向けた省エネ設備導入・運用改善支援事業では賃貸借契約等における専有面積が申請範囲となるため、報告範囲と申請範囲を揃えて整理しておくと手続きが整合します。なお、賃貸人の承諾書が必要になる場合がある点もあわせて確認が必要です。

Q3.実績年度とはいつの年度を指しますか

A3.実績年度とは報告書に記載する実績の年度を指し、令和8年度(2026年度)提出の場合は一般的に2025年度です。年間の区切りは4月から翌年3月までです。したがって、令和8年度に提出する報告書では、2025年4月から2026年3月までの燃料・熱・電気の使用量を集計することになります。電気やガスの検針票、請求書を1か年分そろえる作業が最初の実務となるため、経理担当者への依頼は早めに行うべきです。なお、この集計作業は、ゼロエミッション化に向けた省エネ設備導入・運用改善支援事業の交付申請で求められるエネルギー購買伝票等の準備とも重なります。設備投資を検討している事業者は、両者をまとめて進めると効率的です。

Q4.2000年度のエネルギー使用実績が残っていません

A4.基準年は原則2000年度ですが、都が示す「基準年表」から別の年度を選択できます。基準年度を選択した場合、2030年度の達成水準は基準年表に定める削減率となります。たとえば2018年度を基準年として選択した場合の達成水準はエネルギー使用量20%削減(2018年度比)、2021年度を基準年とする場合の目標削減率は11%と設定されています。都内中小規模事業所のエネルギー使用量は2000年度からすでに相当程度低下しているため、直近の年度を基準年に選ぶほど求められる削減率は小さくなります。手元にデータが残っている年度のうち、どこを基準とするのが自社にとって合理的かを検討する余地があります。ただし基準年の選択は目標の水準に直結するため、事業計画との整合を確認したうえで判断することが重要です。

Q5.エネルギー・ベンチマークのレンジはどこで確認できますか

A5.作成ツールで確認できます。エネルギー・ベンチマークは、報告された2018年度実績データをもとに、事業所の延床面積当たりのエネルギー使用量を業種区分別に7段階(A+、A、B、C、D、E、F)に指標化したものです。2030年度の達成水準への到達はレンジA以上とされています。業種区分は26区分あり、用途等・産業分類・延床面積の3要素で判定されます。ただし、事業所ごとに業態が多様であるなど比較に適さない場合はベンチマークの設定がなく、適合しない事業所も存在します。ベンチマークを活用した「事業所の取組」を選択できるのは、報告する全事業所のうちベンチマーク適合事業所が7割以上ある事業者に限られており、7割を超えていない場合は作成ツールで選択できない仕様です。

Q6.再エネ電気の割合はどうやって増やせますか

A6.都は4つの調達方法を再エネ電気として認めており、太陽光発電設備の設置以外の選択肢があります。①オンサイト再エネは事業所の敷地内に設置した再エネ設備によるもので、自家発電のほか第三者が設備を保有するオンサイト型PPAも含まれます。②オフサイト再エネは敷地外の設備から自営線等を介して供給されるもので、オフサイト型PPAや自己託送が該当します。③小売電気事業者からの購入は、再エネ電気プランの契約によるものです。④再エネ由来証書の利用には、グリーン電力証書・グリーン熱証書、FIT非化石証書、非FIT非化石証書(再エネ指定)があります。設備投資の余力が限られる場合でも、電力契約の見直しや証書の調達により再エネ電気割合を高めることは可能です。

Q7.一度設定した目標は変更できませんか

A7.事業所の新設、廃止、移転等への対応のため、次年度以降に計画・目標を再設定することが認められています。省エネの「事業者の取組」を選択した場合、2030年度までの計画期間中に事業所の新設・廃止・移転等が生じるときは、基準年の変更や「事業所の取組」への変更等により計画・目標を再設定できます。逆に「事業所の取組」を選択していた事業者が、事業所の新設・廃止によりベンチマーク適合事業所が7割未満となった場合は、翌年度以降は「事業者の取組」で計画・目標を再設定する必要があります。また、事業者要件を満たしている場合でも、計画期間中に事業者の判断で「事業者の取組」へ再設定することは可能です。事業環境の変化に一定の柔軟性をもって対応できる設計になっています。

Q8.報告した内容は公表されるのですか

A8.報告内容は東京都環境局のホームページで公表されます。公表用サイトでは事業者情報と事業所情報が掲載され、事業者又は事業所ごとの条件検索ができるほか、事業者・事業所を特定しない形式でのオープンデータ化も予定されています。令和7年(2025年)4月の改正では、報告された取組状況を省エネ・再エネ利用・CO2削減の3つの視点から見える化し、第三者にも分かりやすく評価・公表する方針が示されました。公表されること自体を負担と捉える向きもありますが、HTT・ゼロエミッション支援融資では報告書を提出し都のウェブサイト上で公表されていることが信用保証料補助の条件となっており、公表は支援を受けるための前提でもあります。取引先や金融機関に対する脱炭素の取組の説明材料としても機能します。

Q9.作成ツールはどこで入手し、どのバージョンを使えばよいですか

A9.都環境局のホームページからダウンロードし、必ず毎年度の最新版を使用してください。令和8年(2026年)4月1日に作成ツールVer10.0がリリースされています。旧バージョンを使い回すと、改正後の報告項目に対応できません。作成ツールには、報告書と提出書の一括作成、CO2排出量等の自動換算、複数事業所の一括入力、過去の提出データの取込み、複数事業所データの統合といった機能が備わっています。エネルギー使用量の原油換算やCO2排出量への換算は自動計算されるため、換算式を自分で用意する必要はありません。入力方法については作成マニュアル動画が公開されているほか、報告書の作成に関するガイドラインも都環境局のホームページに掲載されています。提出手続きには担当者のメールアドレスが必要です。

Q10.管理会社や設備業者に報告書の作成を任せてもよいですか

A10.法令上の制約を確認したうえで判断する必要があります。東京都は制度リーフレットにおいて、行政書士又は行政書士法人でない者が、業として他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず報酬を得て、官公署に提出する書類を作成することは、法律に別段の定めがある場合を除き行政書士法違反となる旨を明記しています。一方で、報告書提出書の連絡先欄には、建物管理を受託している事業者を窓口として記入する様式が用意されており、提出事業者とは別の事業者が問合せ窓口となること自体は制度上想定されています。実務では、事業者自身が作成ツールに入力し、管理会社からエネルギー使用量のデータ提供を受けるという役割分担が現実的です。設備業者から「報告書もこちらで作成します」と提案された場合は、報酬の有無と作成主体を整理しておくべきです。

報告書の提出と省エネ投資の設計は壱市コンサルティングへ

報告書を「出すだけの書類」で終わらせず、助成金・融資・税制につなげる設計をします

地球温暖化対策報告書は、単体では義務でも罰則でもありません。しかし東京都の主要な省エネ支援策は、この報告書の提出を入口に置いています。設備更新を数年以内に検討しているのであれば、報告書の提出実績を先につくり、そのうえで助成金・融資・税制のどれを使うかを設計するほうが、結果として手元に残る金額は大きくなります。壱市コンサルティングは、認定経営革新等支援機関として、この順序の組み立てから関与します。

📋 報告書の作成・提出体制の整備

対象事業所と報告範囲の切り分け、義務提出・任意提出の判定、エネルギー使用量データの収集体制づくりまで、初回提出のつまずきどころを整理します

📊 2030年度目標・計画の設計

省エネ・再エネ利用それぞれについて事業者の取組と事業所の取組のどちらを選ぶか、基準年をどこに置くかを、設備投資計画と整合させて検討します

💼 助成金・融資・税制の有利判定

ゼロエミ省エネ設備導入支援事業、HTT・ゼロエミッション支援融資、省エネ促進税制のうち、投資額と課税所得の水準から自社に有利な組み合わせを比較します

🔄 設備更新から完了報告までの伴走

助成金の交付申請から交付決定後の契約管理、工事完了届、そして事業期間中の報告書の継続提出まで、切れ目なく支援します

令和8年度(2026年度)の任意提出期限は12月15日(火)です。設備投資の予定がある事業者ほど、早い段階での着手が結果を左右します。

こんなお悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください

  • ✅ 助成金の要件に「地球温暖化対策報告書の提出」とあるが、何から始めるかわからない
  • ✅ 自社が義務提出に該当するのか任意提出なのか判定がつかない
  • ✅ 複数拠点があり、どこまでを報告範囲にすべきか整理できていない
  • ✅ 2030年度の目標をどの水準で設定すべきか判断できない
  • ✅ 空調やLED照明の更新を控えており、助成金と税制のどちらが有利か比較したい
  • ✅ テナントとして入居しているが、自社で提出できるのか確認したい

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