創意工夫チャレンジ促進事業の3コースの違いは?賃上げ重点・業務改善・新市場進出の選び方と令和8年度の下期日程
東京都と東京都中小企業振興公社が実施する「経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業」は、業務改善・賃上げ重点・新市場・新分野進出の3コースがあり、令和8年度は年に複数回の募集があります。この記事では、公社の各コースのページと募集要項、東京都の報道発表(令和8年10月20日)で確認できた内容をもとに、3コースの違い、下期(11月〜3月)の申請日程、コースの選び方、自己負担の目安を整理します。
✅ 結論(3行)
① 3コースは、既存事業の深化・発展(業務改善・賃上げ重点。限度額600万円)と、新製品の開発と新市場への進出(新市場・新分野進出。限度額1,000万円)に分かれます。助成率は2/3以内が基本で、賃金引上げ計画を達成すれば3/4以内(小規模企業者は4/5以内)です。
② 下期の受付は、業務改善が11月2日〜13日と2月1日〜12日、賃上げ重点が11月16日〜12月14日・1月4日〜14日(追加)・2月15日〜3月12日、新市場が1月4日〜14日です。賃上げ重点は10月20日に、前倒しと追加が発表されました。
③ コースは申請の前に決めます。他のコースとの重複申請は受付されず、交付決定は1事業者につき1度だけです。助成金は後払いで、事業費の全額を先に用意します。
なお、この記事は令和8年11月1日時点の情報です。業務改善コースの第3回の受付開始(11月2日)まであと1日、賃上げ重点コースの第3回の受付開始(11月16日)まで15日です。
創意工夫チャレンジ促進事業とは?どんな会社が使える制度?
業績が前の期より悪化した都内の中小企業が、既存事業の見直しや新しい事業への挑戦に使う経費を、一部助成する制度です。東京都の発表では、令和8年度の新規事業で、専門家(アドバイザー)による運用改善の支援もつきます。
対象になるのは、申請受付開始日の時点で、次のいずれかに当てはまる都内の中小企業者(個人事業主を含む)です。
・直近の決算期の営業利益が、前の決算期より減少している
・直近の決算期に損失を計上している(業務改善コースの募集要項は「営業損失」の表記)
黒字でも、前の期より営業利益が減っていれば対象です。たとえば直近の決算期が2025年なら、2024年の決算期との比較で判断されます(募集要項の注記)。
このほか、東京都内で事業を営み、大企業が実質的に経営に参画していないこと、税金(事業税等)を滞納していないこと、同じテーマで公社・国・自治体などから助成を受けていないことなどが要件です(募集要項の「申請要件」)。また、令和8年度の中小企業収益力強化サポート事業のハンズオン支援の決定通知を受けた方は、申請できません。
3コースの違いは?助成率と限度額を比べると
限度額は、業務改善と賃上げ重点が600万円、新市場・新分野進出が1,000万円です。助成率は2/3以内が基本で、賃上げ重点は最初から3/4以内(小規模企業者は4/5以内)です。業務改善コースには、賃上げによる上乗せはありません(募集要項で確認)。

| 項目 | 業務改善コース | 賃上げ重点コース | 新市場・新分野進出コース |
|---|---|---|---|
| 取組の方向 | 既存事業の深化・発展 | 既存事業の深化・発展 | 新製品・新サービスの開発と、新市場・新分野への進出(両方) |
| 助成限度額 | 600万円 | 600万円 | 1,000万円 |
| 助成率 | 2/3以内 | 3/4以内(小規模企業者は4/5以内)。賃金引上げ計画が未達なら2/3以内 | 2/3以内。賃金引上げ計画を作成した場合は3/4以内(小規模企業者は4/5以内) |
| 賃金引上げ計画 | 不要 | 必要 | 任意(作成すると助成率が上がる) |
| 採択予定の社数 | 700社 | 500社 | 100社 |
| 助成対象期間 | 交付決定日から1年間 | 交付決定日から1年間 | 交付決定日から1年間 |
| アドバイザー派遣 | 完了検査時に必須。そのほか任意 | 完了検査時に必須。そのほか任意 | 最大10回(初回と完了検査時は必須) |
社数は、東京都の報道発表(令和8年4月15日)の目標です。「小規模企業者」は、常時使用する従業員が、製造業・その他は20人以下、商業・サービス業は5人以下の事業者です(賃上げ重点の募集要項)。
「深化・発展」と「新市場進出」の線引きに注意してください。既存事業の「深化」は、高性能な機器の導入や、品質向上、省エネ機器による生産性の向上などです。新市場・新分野進出コースでは、これらの設備導入だけの取組、既存の製品・サービスをそのまま別の市場に出す取組は対象外とされています(新市場コースの募集要項)。新市場コースは、新製品・新サービスの開発と、新市場・新分野への進出の両方が必要です。
何が助成対象になる?対象経費と注意点は?
対象経費は、原材料・副資材費、機械装置・工具器具費、委託・外注費、産業財産権出願・導入費、規格等認証・登録費、設備等導入費、システム等導入費、専門家指導費、不動産賃借料、販売促進費、その他経費の11区分です。3コースで区分は共通ですが、販売促進費の上限額などはコースで異なるため、募集要項で確認してください(賃上げ重点は150万円、新市場は200万円。業務改善は募集要項で確認)。
次の点に注意が必要です。
・市場調査費、専門家指導費、販売促進費、その他経費は、それだけでは申請できません(これらだけを組み合わせた申請も不可)。
・助成対象期間(交付決定日から1年間)に、契約・実施・支払まで終わった経費だけが対象です。交付決定の前に発注・契約した経費は対象外です。クレジットカード払いは、口座からの引き落とし日が期間を超えると対象外になります。
・単価が税抜10万円未満の機械装置・設備や、中古の機械装置などは対象外とされています(新市場コースの募集要項の例)。
・既存の取組でも、法令改正への対応など義務的な取組や、単なる老朽設備の維持更新は対象外です。
令和8年度の下期(11月〜3月)の申請日程は?
下期の受付は、業務改善コースが2回、賃上げ重点コースが3回、新市場・新分野進出コースが1回です。受付の最終日は、各回とも午後4時までです(各コースのページ)。

| コース | 回 | 受付期間 | 状況(11月1日時点) |
|---|---|---|---|
| 業務改善 | 第1回 | 5月11日(月)〜5月29日(金) | 終了 |
| 業務改善 | 第2回 | 8月3日(月)〜8月14日(金) | 終了 |
| 業務改善 | 第3回 | 11月2日(月)〜11月13日(金)16時 | これから(あと1日で開始) |
| 業務改善 | 第4回 | 令和9年2月1日(月)〜2月12日(金)16時 | これから |
| 賃上げ重点 | 第1回 | 6月1日(月)〜6月12日(金) | 終了 |
| 賃上げ重点 | 第2回 | 9月1日(火)〜9月14日(月) | 終了 |
| 賃上げ重点 | 第3回 | 11月16日(月)〜12月14日(月)16時 (前倒し。旧12月1日〜14日) |
これから |
| 賃上げ重点 | 追加募集回 | 令和9年1月4日(月)〜1月14日(木)16時(新設) | これから |
| 賃上げ重点 | 第4回 | 令和9年2月15日(月)〜3月12日(金)16時 (前倒し。旧3月1日〜12日) |
これから |
| 新市場・新分野進出 | 第1回 | 7月1日(水)〜7月14日(火) | 終了 |
| 新市場・新分野進出 | 第2回 | 令和9年1月4日(月)〜1月14日(木)16時(予定) | これから |
注意:賃上げ重点コースの追加募集回と、新市場・新分野進出コースの第2回は、同じ令和9年1月4日〜14日です。年末年始(12月29日〜1月3日)は事務局が休みで、年明けすぐに受付が始まる日程です。また、公社のページには、「予算の都合等により、予告なく募集予定が変更される場合があります」との注記があります。日程は、申請の前に、必ず公社のページで再確認してください。
追加募集回・第4回など、まだ募集要項が出ていない回の審査や交付決定の時期は、募集要項の公開後に確認してください。
どのコースを選べばいい?選び方の2つの質問
まず「新製品の開発と新市場への進出の両方を行うか」を考え、既存事業の深化・発展なら、「賃金引上げ計画を立てて実行できるか」で、賃上げ重点か業務改善かを分けます。前提として、直近の決算で営業利益が減少、または損失であることが必要です。

コースの選択は、日程にも影響します。他のコースと重複して申請すると受付されません。また、1事業者につき交付決定は1度だけで、不採択になった場合は、次の募集回以降に再申請できます(各募集要項の「申込にあたっての留意事項」)。たとえば業務改善コースの第3回(11月2日〜13日)に申請した場合、審査の結果が出るまでの間に、別のコースの回へ重ねて申請することは受付されません。どのコースにするかは、申請の前に決めておきます。
賃上げ重点を選ぶ前に、賃上げの費用を見てください。賃金引上げ計画の要件は、計画期間(助成事業の完了日の属する月の翌月から最大12か月)に、常時使用する従業員の給与等総額を、基準期間(第3回の募集要項では、令和8年11月1日の属する月の前月から遡る12か月。ほかの回は、その回の募集要項で確認)より2.0%以上増加させること、そして事業場内の最低賃金を、地域別最低賃金+30円以上にすることです(賃上げ重点の募集要項)。次の章の試算で、助成率の上乗せと賃上げの費用を比べます。
自己負担はいくらになる?同じ会社で比べると
仮の例では、設備導入に750万円かけた場合、業務改善コースの自己負担は250万円、賃上げ重点コース(小規模企業者)は150万円で、差は100万円です。計算は、助成率に対象経費を掛け、千円未満を切り捨て、限度額で頭打ちにします。次の数字はすべて仮の例で、実在の会社ではありません。
| 仮の会社の前提 | 内容 |
|---|---|
| 事業 | 製造業・常時使用する従業員15人(小規模企業者) |
| 業績 | 直近決算期の営業利益が、前期900万円から600万円に減少(要件に該当) |
| 給与等総額 | 基準期間4,500万円(賃上げ計画では、2.0%以上=90万円以上の増加が必要) |
| 取組A(既存事業の深化) | 加工機の導入。助成対象と認められた経費が750万円 |
| 取組B(新製品開発+新市場進出) | 新製品の開発と、新しい販路への進出。助成対象と認められた経費が1,250万円 |

| 取組・コース | 対象経費 | 助成率 | 助成額 | 自己負担 |
|---|---|---|---|---|
| A 業務改善コース | 750万円 | 2/3 | 500万円 | 250万円 |
| A 賃上げ重点(小規模) | 750万円 | 4/5 | 600万円(限度額に到達) | 150万円 |
| A 賃上げ重点(小規模でない場合) | 750万円 | 3/4 | 562万5千円 | 187万5千円 |
| B 新市場コース | 1,250万円 | 2/3 | 833万3千円 | 416万7千円 |
| B 新市場コース+賃上げ計画(小規模) | 1,250万円 | 4/5 | 1,000万円(限度額に到達) | 250万円 |
上乗せ分と、賃上げの費用を並べると、次のとおりです。取組Aで、業務改善から賃上げ重点(小規模)に変えると、助成が100万円増えます。一方、賃金引上げ計画では、給与等総額を2.0%以上(この例では90万円以上)増やす必要があります。取組Bでは、賃上げ計画を立てると助成が約166万7千円増え、賃上げの費用90万円を上回ります。ただし、この比較は、法定福利費などを入れていない単純な計算です。賃上げは、計画期間のあとも続く費用になりえます。賃上げを予定していたかどうかで、見え方は変わります。
助成額が限度額に届く対象経費の目安も、確認しておきましょう。賃上げ重点では、助成率が3/4なら800万円、4/5なら750万円で、助成が600万円に届きます。これ以上に対象経費をかけても、助成額は増えません。業務改善(2/3)は900万円で届きます。新市場コースでは、2/3なら1,500万円、4/5なら1,250万円で、助成が1,000万円に届きます。
賃上げ分の助成は、2回に分けて交付されます。1回目は2/3で計算した額、2回目は賃金引上げ計画の達成確認のあとに、特例の助成率で計算した額から1回目を引いた差額です。募集要項の例では、対象経費600万円の場合、中小企業者(3/4)は助成450万円(1回目400万円、2回目50万円)、小規模企業者(4/5)は助成480万円(1回目400万円、2回目80万円)です。賃金引上げ計画を達成できなかった場合は、助成率が2/3になり、すでに特例分が交付されていれば、返還を求められることがあります。
申請から交付決定、助成金が入るまでの流れは?
受付の締切から交付決定まで、約3か月半かかる予定です。助成金は、事業を終えて、完了検査のあとに交付される後払いで、先に事業費の全額を用意します。

| 順番 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 申請(Jグランツ) | GビズIDプライムが必要。発行は約1週間、代理申請は2〜3週間 |
| 2 | 書類審査 → 面接審査 | 面接は原則対面。同席できるのは代表者・役員・申請書に記載のある従業員(最大2名) |
| 3 | 交付決定 | 決定の前に発注・契約した経費は対象外。交付決定額は上限で、減額されることもある |
| 4 | 助成事業の実施(交付決定日から1年間) | 契約・実施・支払のすべてをこの期間内に終える |
| 5 | 実績報告 → 完了検査 → 金額の確定 → 請求 → 支払 | 実績報告は事業完了後、原則1か月以内。確定は完了検査から約1か月、支払は請求から約1か月(賃上げ重点の募集要項のスケジュール) |
| 6 | 賃金引上げ計画の実施・報告(賃上げ重点・計画ありの新市場) | 計画期間は最大12か月。達成確認のあとに、2回目の助成金 |
面接審査には、顧問や経営コンサルタント等の同席・代理出席はできません(募集要項)。事業計画は、申請者自身の言葉で説明できる状態にしておきましょう。
申請までに何を準備する?逆算チェックリスト
最初にやることは、GビズIDプライムの発行申請です。発行には約1週間(代理申請の場合は同意書とともに2〜3週間)かかります。次の日程は、賃上げ重点コースの第3回(11月16日〜12月14日16時)に申請する場合の当社の目安で、公式の日程ではありません。
| 時期の目安(当社の提案) | やること |
|---|---|
| 11月1日〜11月6日 | コースを決める(重複申請不可)。GビズIDプライムを申請する。取組の内容と、助成対象経費を整理する |
| 11月9日〜11月20日 | 見積書を取る(1契約あたり税抜30万円以上は必要。100万円以上は2社以上の相見積)。賃金台帳(12か月分)と賃金引上げ計画を準備する |
| 11月16日 | 受付開始(午前9時から) |
| 11月下旬〜12月初め | 申請書の作成。決算書(損益計算書。直近・前期)、納税証明書、履歴事項全部証明書(発行後3か月以内)を取る |
| 12月7日ごろ | Jグランツに入力・アップロードを終える目安 |
| 12月14日16時 | 締切(最終日はアクセスが集中するため、余裕を持って) |
📋 準備のチェックリスト
□ 直近の決算で営業利益が前期より減少、または損失か(損益計算書で確認)
□ 取組の内容が、コースに合っているか(新市場コースは、新製品の開発と新市場進出の両方が必要)
□ コースを1つに決めたか(他のコースとの重複申請は受付されない)
□ GビズIDプライムの発行を申請したか(約1週間。代理申請は2〜3週間)
□ 見積書を取ったか(税抜30万円以上の契約は必要。100万円以上は2社以上。「一式」は不可)
□ 賃金引上げ計画(賃上げ重点・新市場の計画ありの場合):給与等総額を2.0%以上増やせるか、最低賃金は地域別最低賃金+30円以上か
□ 交付決定の前に、発注・契約・支払をしていないか
□ 経費の全額を先に払う資金(後払い)を用意できるか
□ 令和8年度の最新の申請様式を使っているか(令和7年度の様式は使えない)
必要書類は、コースによって異なる場合があります。上の書類は、賃上げ重点コースの募集要項に記載された主なものです。申請の前に、選んだコースの募集要項の「申請に必要な書類」で、すべてを確認してください。
令和8年度の途中で何が変わった?
令和8年10月20日に、東京都が賃上げ重点コースの募集開始時期の前倒しと、募集回の追加を発表しました。第3回・第4回の開始日が早まり、追加募集回が新設されています。締切日は変わりません。
| 募集回 | 変更前 | 変更後 |
|---|---|---|
| 第3回 | 12月1日(火)〜12月14日(月) | 11月16日(月)〜12月14日(月) |
| 追加募集回 | なし | 令和9年1月4日(月)〜1月14日(木) |
| 第4回 | 3月1日(月)〜3月12日(金) | 令和9年2月15日(月)〜3月12日(金) |
受付期間は、第3回が14日から29日に、第4回が12日から26日に、長くなりました。以前の日程で準備していた場合は、早めに申請できます。以前の記事や、他のサイトに、旧日程が残っている場合がありますので、ご注意ください。業務改善コースの第3回の募集要項は、10月23日に更新されています(更新内容は、募集要項でご確認ください)。
なお、この事業は令和8年度の新規事業で、昨年度の同じ制度との比較はできません。
よくある質問(FAQ)
関連する制度は?
新市場・新分野進出コースの詳しい内容は新市場・新分野進出コースの解説記事で、都の助成金の使い分けは創意工夫チャレンジ・中東緊急対策・事業承継の使い分けで、ほかの制度との比較は東京都のおすすめ補助金・助成金7選で、解説しています。
助成金の申請と、資金計画の相談は、どこにすればいい?
壱市コンサルティングは、補助金の申請支援から、財務の分析や財務支援まで、中小企業を支えています。今回の制度について、ご相談があれば、公式LINEから事前相談をどうぞ。
※本記事は、東京都中小企業振興公社の各コースのページ・募集要項(業務改善コース・賃上げ重点コースは第3回、新市場・新分野進出コースは第1回)と、東京都の報道発表(令和8年4月15日付、令和8年10月20日付)をもとに、令和8年11月1日時点で作成しています。日程や要件は変更される場合があるため、申請にあたっては必ず公社の最新の募集要項をご確認ください。表中の自己負担の試算は、仮の数字による当社の計算で、採択や助成額を保証するものではありません。
