【令和8年(2026年)10月】企業価値担保権とは?仕組み・経営者保証・利用35社の実績と事例を解説
令和8年(2026年)5月25日、会社の事業の将来性を担保にして借りられる新しい制度「企業価値担保権」が始まりました。不動産や経営者の個人保証に頼らない融資の入り口として注目されています。
施行から約4か月が経ち、実際に使った会社と金融機関の数が公表され始めました。東京商工リサーチの調べでは、令和8年(2026年)8月末までに少なくとも35社・31行・19都道府県が活用しています。一方で、認知度は低く、仕組みも「経営者保証がなくなる制度」と誤解されがちです。
企業価値担保権の本質は、特定の資産ではなく会社の総財産を一体で担保にすることと、融資後に金融機関が事業の実態を見続ける関係をつくることにあります。誰でも無担保で借りられる制度ではありません。
本記事では、仕組み、従来の担保との違い、使える会社、経営者保証との関係、利用実績と公表事例、使う前の注意点、経営者が準備しておくことを、金融庁の資料と条文にもとづいて整理します。
企業価値担保権とは|2026年5月25日に始まった新しい担保権
企業価値担保権は、事業性融資の推進等に関する法律(令和6年法律第52号、通称「事業性融資推進法」)で創設された担保権です。金融庁は、不動産担保や個人保証に依存した融資慣行を見直し、会社の事業に必要な資金調達を円滑にして事業の継続・成長を支えることを目的に掲げています(同法第1条)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠法 | 事業性融資の推進等に関する法律(令和6年法律第52号) |
| 公布・施行 | 公布:令和6年(2024年)6月14日/施行:令和8年(2026年)5月25日 |
| 所管 | 金融庁(銀行・証券監督局総務課 事業性融資推進室) |
| 担保の対象 | 会社の総財産(将来取得する財産を含む)を一体として担保にできる(法第7条) |
| 効力の発生 | 債務者の本店所在地の商業登記簿への登記が効力発生要件(法第15条) |
| 極度額 | 設定は任意。債務者は書面で請求すればいつでも定められる(現存債務等の合計額を下回れない。法第9条) |
信託方式の3者の関係
企業価値担保権は信託方式で設定します。借り手(債務者)が委託者、企業価値担保権信託会社が受託者、貸し手の金融機関が受益者になります。受託者は内閣総理大臣の免許を受けた信託会社で、銀行などが届出をした場合は免許を受けたものとみなす規定があります(法第6条・第33条)。
設定後も、会社は財産の使用・収益・処分を通常どおり続けられます。ただし、重要な財産の処分や事業の全部または重要な一部の譲渡などは、企業価値担保権者全員の同意が必要です(法第20条)。この「事前の対話」が、制度の運用の核になります。
📊 このセクションの要点
企業価値担保権は、会社の総財産を一体で担保にする信託方式の新しい担保権で、令和8年(2026年)5月25日に施行されました。登記が効力発生要件で、重要財産の処分や事業譲渡は貸し手の同意が必要です。
従来の担保・無担保融資との違い
金融庁のFAQは、不動産担保・無担保・企業価値担保を次のように比較しています。企業価値担保付き融資は、客観的に処分できる一般担保とは扱えず、引当の面でも無担保と同一視できないと整理されています。
| 比較項目 | 不動産担保 | 無担保 | 企業価値担保 |
|---|---|---|---|
| 回収原資 | 不動産 | 総財産 | 総財産 |
| 倒産時の担保付債権の価値 | 融資時点でも見込みやすい | ゼロに近い | 倒産時でないと予測困難 |
| デフォルト時の対応 | 実行 | 訴訟の提起 | 実行 |
| 他の債権者との関係 | 無担保等に優先 | 担保に劣後・他の無担保と按分 | 無担保等に優先 |
| 詐害的な財産処分 | 担保権を追及 | 訴訟の提起 | 処分は無効 |
補足
出典は金融庁「企業価値担保権に関するFAQ」です。返済できなくなった場合の実行は裁判所の手続を経ます。細部(管財人の選任や事業譲渡の進め方)は条文と解説で確認が必要なため、本記事では「手続は裁判所を通る」という点にとどめます。
誰が使えるか|対象は株式会社と持分会社のみ
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 設定できる | 株式会社、持分会社(合名・合資・合同会社) |
| 設定できない | 個人事業主、一般社団・財団法人、医療法人、学校法人、NPO法人など会社以外の法人 |
| 貸し手になれる | 銀行、信用金庫、信用組合、農協・漁協、商工中金、日本政策金融公庫、日本政策投資銀行、保険会社など(法第2条第3項) |
| 設定の範囲 | 総財産が対象。一部の資産だけの設定や、他人の財産による担保(物上保証)はできない |
金融庁が示す活用場面
金融庁の制度概要は、活用場面として次の4つを例示しています。いずれも「既存の借入をすべて借り換えて行う」か「借入がない企業に行う」融資の類型だと注記されています。
| 場面 | 内容 |
|---|---|
| スタートアップ | VCと協調し、新株予約権付きで赤字期の資金に対応 |
| 地域の中小・中堅企業 | 設備投資などの資金 |
| 事業再生・事業承継 | 新しい事業計画・経営体制のもとでの資金需要 |
| M&A・プロジェクトファイナンス | 既存の全財産担保の設定負担の軽減、ローンの譲渡性の向上 |
📊 このセクションの要点
設定できるのは株式会社と持分会社だけです。個人事業主や医療法人は使えません。金融庁は、スタートアップに限らず、地域の中小企業、事業再生・承継、M&Aなど幅広い場面を想定しています。
経営者の個人保証との関係|設定した融資が対象
企業価値担保権で最も注目されるのが経営者保証です。法第12条により、企業価値担保権を設定した融資(特定被担保債権)については、貸し手は個人(法人でない者)の保証や、個人が生活の本拠として使う不動産への担保に基づく権利を行使できません。
POINT
これは「設定した融資」に限った話です。設定していない融資は対象外で、経営者保証がすべてなくなる制度ではありません。また「必ず保証なしで借りられる」わけでもありません。融資の可否と金額は、事業計画などを踏まえた貸し手の判断で決まります。
例外もあります(法第12条第4項)。個人保証の契約で、債務者が事業・財産の状況を貸し手に報告する義務を約し、虚偽の報告をしたことが停止条件になっている場合など、主務省令の要件を満たすときは、上記の制限は適用されません。粉飾などの虚偽報告があって初めて保証が効く形です。主務省令の要件の詳細は、本記事では確認できていません。
経営者保証ガイドラインとの違い
| 比較項目 | 企業価値担保権 | 経営者保証ガイドライン |
|---|---|---|
| 性質 | 法律上の担保権(登記が効力発生要件) | 全国銀行協会・日本商工会議所が策定した自主的ルール(法的拘束力なし) |
| 経営者保証 | 設定した融資では個人保証等の権利行使不可(法第12条) | 3要件の全部または一部を満たせば、保証なしの可能性。最終判断は金融機関 |
| 考え方 | 担保の中身を総財産に置き換える | 法人と経営者の区分、財務基盤の強化、適時適切な情報開示を求める |
📊 このセクションの要点
法第12条により、設定した融資では経営者の個人保証や自宅への担保の権利を行使できません。ただし対象は設定した融資に限られ、保証が不要になる制度ではありません。粉飾などの虚偽報告を停止条件とする保証には例外があります。
利用実績|施行後4か月で少なくとも35社
| 時点 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 施行前(5月22日) | 20金融機関から延べ26件の取り組み予定(予定であり実績ではない) | 報道(金融相の発表) |
| 5月(施行初月) | 20件・12都道府県・16行 | TRUSTART(商業登記ベース) |
| 6月 | 5件・4都道府県・4行 | TRUSTART |
| 7月 | 6件・4都道府県・5行 | TRUSTART |
| **8月末** | 少なくとも35社・19都道府県・31行 | 東京商工リサーチ(令和8年(2026年)9月26日掲載) |
TRUSTARTは商業登記の受付データ、東京商工リサーチは登記とヒアリングを基にした集計で、集計方法が異なります。「31件」と「35社」は同じ時点の食い違いではなく、時点と方法の違いです。
どんな会社が使っているか
東京商工リサーチによると、売上が判明した23社のうち10億円以上が16社(約7割)、最大87億円、最小1.5億円でした。業種は旅館、蒸留酒製造、産業廃棄物処理など多様で、TRUSTARTの7月分でも温泉旅館業、持株会社、M&A支援、時計・宝石販売など、特定の業態への集中は見られません。
認知度と金融庁の見方
東京商工リサーチの調査(令和8年(2026年)8月)では、企業価値担保権の認知度は23.2%でした。金融庁の担当者は「年内に50ケースが積み上がれば御の字」と述べたと報じられています(東京商工リサーチの記事内の発言であり、金融庁が公表した目標値ではありません)。スモールスタートで育てていく制度だと理解するのが実態に近い見方です。
注意
認知度は調査ごとに数字が大きく異なります(調査主体・設問・時期が違うため)。引用するときは調査名を添えてください。融資総額の公式集計は、本記事の作成時点で確認できていません。
📊 このセクションの要点
施行後の実績は、令和8年(2026年)8月末で少なくとも35社・31行・19都道府県です。売上10億円以上が約7割ですが、業種は幅広く、小さなスタートを切った段階といえます。
公表されている事例|老舗製造業から旅館、M&A資金まで
金融機関のリリースと報道で公表されている範囲の事例です。融資額や使途が公表されていないものは「非公表」としています。報道の一部は会員記事の概要にもとづくため、詳細は各社の公表資料でご確認ください。
| 貸し手 | 融資先 | 公表されている内容 |
|---|---|---|
| 福井銀行・商工中金 | ケイテー(福井県勝山市・合繊織物製造) | 令和8年(2026年)5月25日に実行。1910年創業。業歴110年超、一貫生産体制と独自の織繊技術に着目。商工中金は1億3,500万円の融資に加え2億円の融資枠(福井銀行分は非公表) |
| 東邦銀行 | Kokage(福島県川内村・クラフトジン蒸留所) | 5月25日に実行。月間生産1,000本を3,000本に増やす5年計画を銀行と共同で策定。販路別売上や在庫をKPIとし、卸・小売の売上にコベナンツを設定。融資額・期間は非公表 |
| 清水銀行 | 小泉チップ工業(静岡市・木くずのリサイクル) | 5月25日に契約締結。事業拡大の余地と将来キャッシュフローを評価。金額は1,000万円 |
| 筑邦銀行 | 福岡市の上場企業の創業家資産管理会社 | 介護関連企業の買収資金として約3億円、返済期間3年(報道は令和8年(2026年)6月5日付) |
| 三菱UFJ銀行 | ブイキューブ(東京都港区) | 7月31日に設定。担当者は「有形固定資産に乏しい一方、キャッシュフローを生む事業を有し、資産価値より事業価値が大きい」と説明 |
| 三島信用金庫・商工中金 | モガワ(静岡県・リネンサプライ) | 9月25日にコンサルティング会社が発表。地域金融機関と連携したシンジケートローンで、顧客との信頼関係やワンストップサービスを企業価値として可視化 |
各行が「初」「第1号」を名乗る案件が複数あり、全国で最初の案件がどれかは、設定登記と融資実行のどちらを基準にするかで変わります。本記事では「施行日から複数の金融機関が実行した」と整理します。
POINT
事例から言えるのは、スタートアップに限らないということです。老舗製造業、地方の蒸留所、リサイクル、旅館、M&A資金、IT・クラウド、事業再生と、公表事例は幅広く、政府系金融機関や信用金庫との協調の形もあります。
📊 このセクションの要点
公表事例は老舗製造業、蒸留所、リサイクル、M&A資金、事業再生など幅広く、東邦銀行の例では5年計画とKPIを銀行と共同で策定しています。融資額が非公表の案件も多く、金額水準はまだ見通せません。
メリットと使う前の注意点
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| メリット | 設定した融資では経営者の個人保証等の権利を行使できない/不動産がなくても事業の将来性を評価してもらえる余地がある/融資後に業況を理解する金融機関から経営支援を受けやすい/設定手続が類似の全資産担保より簡便・安価になる可能性(以上、金融庁チラシ) |
| 注意点1:総財産が担保 | 第1順位で設定すると、他行からの後順位借入や無担保融資が実務上難しくなる場合がある。金融庁FAQは基本的に1つの金融機関団(シンジケート)での借入を想定 |
| 注意点2:事前の同意 | 重要財産の処分、事業の全部または重要な一部の譲渡は、貸し手全員の同意が必要(法第20条) |
| 注意点3:開示の負担 | 事業計画やKPIの共有、モニタリングが前提。資料提出の機会が増える |
| 注意点4:金融機関側の事情 | 事前調整の労力から、さらなる活用に二の足を踏む金融機関もあるとの指摘(東京商工リサーチ)。人的リソースやコスト構造の課題も指摘されている |
設定後も、借り換えにより企業価値担保権を消滅させることは可能です。債務者はいつでも特定被担保債権の元本の確定を請求でき、請求から1週間で確定します(法第28条)。メインバンクの交代などにも対応できる設計です。
信用保証付き融資との関係
金融庁・中小企業庁の留意事項(令和8年(2026年)5月)では、信用保証協会の求償権について個人が保証している場合や、個人の生活の本拠に担保がある場合は、その保証付き債権を企業価値担保権の特定被担保債権の範囲から除く対応が必要とされています。信用保証を併用する場合は、金融機関が信用保証協会へ「将来性展望シート」を提出します。実務上の調整が必要な点です。
注意
企業価値担保権の設定費用について、登録免許税は設定登記1件3万円と紹介する解説があります。ただし、本記事の作成時点で登録免許税法での一次確認ができていないため、実際の金額は法務局または司法書士へご確認ください。信託報酬や金利水準に関する公表データは確認できていません。
📊 このセクションの要点
最大の注意点は、総財産が担保に入ることと、事前の同意や開示が前提になることです。他行借入や信用保証との関係には調整が必要で、設定後も借り換えにより消滅させられます。
経営者が準備しておくこと
企業価値担保権の融資は、担保の評価ではなく事業の将来性の説明で決まります。公表事例でも、貸し手は事業の強み、将来キャッシュフロー、成長計画に着目しています。一般的な実務の流れは次のとおりです(公式資料や報道から組み立てた概観で、金融機関ごとに異なります)。
| 順序 | 内容 |
|---|---|
| 1 | メインバンク等に相談(事業の強み・将来性、資金使途、必要額) |
| 2 | 事業計画・KPIを金融機関と共同で策定(東邦銀行の例では5年計画) |
| 3 | 融資条件・コベナンツの協議 |
| 4 | 企業価値担保権信託契約の締結、極度額設定の有無の決定 |
| 5 | 本店所在地での設定登記 |
| 6 | 融資実行 |
| 7 | 融資後のモニタリング(業況報告、KPI進捗の共有)。重要財産の処分等は事前同意 |
壱市コンサルティングでは、準備として次の3点を実務上の見解として整理しています。これは公式資料が一律に求めている条件ではなく、当社の助言です。
| 準備 | 内容 |
|---|---|
| 中期の事業計画 | 事業の将来性を数字で説明できる計画を持つ。金融庁の調査では、中長期の事業計画を作成している企業は28.9%(日本総研の引用) |
| 月次の数字の管理 | 月次試算表・資金繰り表・予実管理を整え、金融機関に継続して開示できる体制にする |
| 金融機関との対話 | 銀行から提案を受けても即断せず、メインバンクの体制と伴走力を見極める |
📊 このセクションの要点
準備の中心は、事業の将来性を数字で説明できる計画と、月次で開示できる管理体制です。提案を受けても即断せず、貸し手の伴走力を見極めてください。
よくある誤解
| 誤解 | 事実 |
|---|---|
| 担保がなくても誰でも借りられる | 融資の可否・額は事業の将来性や必要資金額の評価で決まる。企業価値は融資時に算定されない場合も多く、融資額に直結しない |
| スタートアップ専用の制度 | 老舗製造業、旅館、リサイクル、M&A資金、事業再生など公表事例は幅広い |
| 個人事業主や医療法人も使える | 設定できるのは株式会社・持分会社のみ |
| 経営者保証がすべてなくなる | 設定した融資の特定被担保債権が対象。他の融資は別 |
| 設定すると事業の自由がなくなる | 通常の事業活動は続けられる。重要財産の処分・事業譲渡などは同意が必要 |
| 返済できないとすぐ会社を取られる | 実行は裁判所の手続を経る |
| 複数の金融機関から借りられない | 複数の貸し手から借りることは可能。ただし調整負担があり、通常は1つの金融機関団が想定される |
📊 このセクションの要点
企業価値担保権は、誰でも無担保で借りられる制度でも、経営者保証が全面的になくなる制度でもありません。対象は設定した融資で、融資判断は事業の将来性に基づきます。
まとめ|企業価値担保権の5つのポイント
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 1. 仕組み | 会社の総財産を一体で担保にする信託方式の担保権。令和8年(2026年)5月25日施行、登記が効力発生要件 |
| 2. 対象 | 株式会社と持分会社のみ。個人事業主や医療法人は不可 |
| 3. 経営者保証 | 設定した融資では、個人保証や自宅への担保の権利を行使できない。保証が全面的になくなる制度ではない |
| 4. 実績 | 8月末で少なくとも35社・31行・19都道府県。業種・規模は幅広いが、まだ小さなスタート |
| 5. 準備 | 事業の将来性を数字で語れる計画と、月次で開示できる管理体制。事前同意と開示が前提 |
よくある質問(Q&A)
Q1.企業価値担保権とは何ですか。
A1.会社の総財産を一体で担保にできる、法律上の新しい担保権です。事業性融資推進法により令和8年(2026年)5月25日に始まりました。不動産のような特定の資産ではなく、将来取得する財産を含む会社の総財産が対象で、信託方式で設定し、商業登記簿への登記で効力が生じます。貸し手は、担保の価値そのものよりも事業の将来性や計画を評価して融資を判断します。
Q2.企業価値担保権を設定すれば、経営者保証は不要になりますか。
A2.設定した融資については、個人保証等の権利を行使できませんが、保証が全面的になくなる制度ではありません。法第12条により、特定被担保債権については個人の保証や生活の本拠への担保に基づく権利を行使できません。ただし、設定していない他の融資は対象外です。また、虚偽報告を停止条件とする保証など、主務省令の要件を満たす場合は例外があります。融資の可否は貸し手が事業計画などを踏まえて判断します。
Q3.個人事業主や医療法人でも使えますか。
A3.使えません。設定できるのは株式会社と持分会社だけです。金融庁のチラシは、個人事業主や会社以外の法人は設定できないと明記しています。持分会社には合同会社などが含まれます。個人事業主の場合は、別の資金調達手段や経営者保証ガイドラインの活用を検討することになります。
Q4.どんな会社が実際に使っていますか。
A4.老舗製造業、旅館、蒸留所、リサイクル、IT・クラウドなど、業種は幅広く、売上10億円以上の会社が約7割です。東京商工リサーチの調べでは、売上が判明した23社のうち16社が10億円以上でした。事例は福井県の合繊織物製造、福島県のクラフトジン蒸留所、静岡市のリサイクル、東京のIT関連企業などです。小規模な会社の利用が少ないわけではありませんが、現時点では中堅規模の割合が高いのが実態です。
Q5.設定すると、会社の財産を自由に売れなくなりますか。
A5.通常の事業活動は続けられますが、重要な財産の処分や事業譲渡には貸し手の同意が必要です。法第20条により、財産の使用・収益・処分は通常どおり可能です。ただし重要な財産の処分、事業の全部または重要な一部の譲渡などは企業価値担保権者全員の同意が必要で、違反した行為は無効になる場合があります。日常の仕入れや販売まで制限されるわけではありません。
Q6.他の金融機関からも借りられますか。
A6.借りることは可能ですが、調整に時間がかかるため、通常は1つの金融機関団での借入が想定されます。金融庁FAQは、複数の貸し手から借りることは可能としつつ、基本的に1つの金融機関団(シンジケート)からの借入が想定されると記載しています。第1順位で総財産を担保にするため、他行からの後順位借入は難しくなる場合があります。借入先の構成は設定前に整理しておく必要があります。
Q7.信用保証協会の保証付き融資とは併用できますか。
A7.併用は可能ですが、保証付き債権を特定被担保債権から除くなどの調整が必要です。金融庁・中小企業庁の留意事項(令和8年(2026年)5月)によると、個人が求償権を保証している場合や生活の本拠に担保がある場合は、その保証付き債権を企業価値担保権の範囲から除く対応が必要です。併用時は金融機関が信用保証協会へ「将来性展望シート」を提出します。
Q8.設定した後、やめることはできますか。
A8.借り換えにより企業価値担保権を消滅させることができます。債務者は、いつでも特定被担保債権の元本の確定を請求でき、請求から1週間で確定します(法第28条)。金融庁FAQは、借り換えによる消滅(メインバンクの交代など)ができると説明しています。
Q9.返済できなくなったら、どうなりますか。
A9.担保権の実行は裁判所の手続を経ます。企業価値担保権者が裁判所に申し立て、事業を継続しながら事業譲渡などで換価し、配当に進む仕組みと解説されています。実行手続の詳細は条文と解説で確認する必要があるため、個別の案件では専門家にご相談ください。
Q10.利用を考えるとき、最初に何をすべきですか。
A10.メインバンクに相談する前に、事業の将来性を数字で説明できる事業計画と月次の管理体制を整えてください。公表事例では、貸し手が事業の強み、将来キャッシュフロー、成長計画に着目しています。中期の事業計画、月次試算表・資金繰り表・予実管理を整え、金融機関に継続して開示できる状態にすることが、制度を使うかどうかにかかわらず有効な準備です。
事業性融資・金融機関対応のご相談
事業の将来性を、金融機関に伝わる数字と計画に。
企業価値担保権を含め、融資の選択肢を比較するには、自社の事業計画と月次の数字を金融機関に説明できる状態にすることが出発点です。壱市コンサルティングは、中小企業診断士として、資金調達の準備を支援しています。
📋 事業計画の策定支援
事業の強みと将来性を、金融機関に伝わる計画と数字に整理します。
📊 月次管理の整備
月次試算表・資金繰り表・予実管理を整え、継続して開示できる体制づくりを支援します。
🏦 金融機関との対話の準備
融資条件や開示の範囲を整理し、提案を受けたときの判断材料をそろえます。
制度の名前よりも、自社の計画と数字を整えることが資金調達の力になります。
こんなお悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください
- ✅ 企業価値担保権や経営者保証の見直しが、自社に合うか知りたい
- ✅ 金融機関に説明できる事業計画・月次管理を整えたい
- ✅ 資金調達の選択肢を整理して比較したい
