【社長向け】資金繰り表の記入例|建設業・飲食店・小売業で「お金が減る月」はこう違う

資金繰り表の作り方は分かったけれど、自社の場合にどう数字を置けばよいのか迷う。そんな社長は少なくありません。同じ資金繰り表でも、業種によって「お金が減る月」の形はまったく違います。

本記事では、建設業のK社、飲食店のL社、小売業のM社という3つの架空の会社の記入例(4か月分)を使って、お金の減り方の違い、お金が減る月の見つけ方、業種に合わせた備えと見直しの観点を整理します。解説動画の内容に沿った一般的な説明で、数字はすべて架空です。個別の税務の判断や、金融商品のおすすめには触れていません。

資金繰り表そのものの作り方は、資金繰り表の記事で解説しています。まだの方は、先にそちらをご覧ください。

業種によって資金の動きが違う理由|表の形は同じでも、お金が入る時期と出る時期が違う

資金繰り表は、月ごとの「入るお金」と「出るお金」を書き出す表です。表の形は、どの業種でも同じです。けれども、お金が入る時期と出ていく時期は、商売によって大きく違います。ここが、業種ごとに記入例を見る意味です。

よくある資金の動きを、業種ごとに整理します。あくまで一般論としてのよくある一例で、実際の動きは、会社の取引条件や商売の形によって変わります。

業種 先に出やすいお金 入金の特徴(一例)
建設業 材料費・外注費 工事代金は工事が進んだあとにずれることが多い
飲食店 仕入れ・家賃・人件費 現金の売上が多く、日々入る
小売業 商品の仕入れ(在庫) 売上は季節によって波がある

建設業は、材料費や外注費を先に払い、工事代金の入金は後ろにずれることが多い、という形になりがちです。飲食店は、現金の売上が日々入る一方で、仕入れ、家賃、人件費が毎月決まって出ていきます。小売業は、売れる前に商品を仕入れるので、在庫への先行投資が先に出て、売上は季節で波があります。

📊 このセクションの要点

表の形は同じでも、お金が入る時期と出る時期は業種で違います。建設業は支払いが先、飲食店は毎月の固定的な支出、小売業は在庫への先行投資が目立ちます(いずれも一例)。

資金繰り表の項目と読み方|月末の残高は「最初の残高+入金−支払い」

表の項目は、日本政策金融公庫が公開している資金繰り表の記入例や、中小機構のJ-Net21の解説と同じ考え方です。収入には、現金売上や売掛金の回収などがあります。支出は、現金仕入や買掛金の支払いなどの仕入れ・外注費と、賃金給与などの経費に分かれます。借入と返済は、財務収支として別に扱います。今回は、わかりやすくするため、項目を少なくまとめて見せます。

読み方は単純です。月末の残高は、最初の残高に入金を足して、支払いを引いた金額です。K社の1か月目で確かめます。最初の残高が800万円、入金が300万円、材料・外注と給料・経費の支払いがあわせて750万円です。

項目 金額(万円)
最初の残高 800
入金 +300
材料・外注と給料・経費 −750
月末の残高 350

800に300を足して、750を引くと、月末の残高は350万円です。計算はこれだけです。大事なのは、数字を「いつの月」に置くかです。以降の3社の表も、同じ計算で月末の残高を出しています。

📊 このセクションの要点

月末の残高は、最初の残高+入金−支払い。計算は単純で、肝心なのは数字を実際にお金が動く月に置くことです。

記入例1:K社(建設業)|工事の途中で一気に減る

1社目は、社長のK社です。内装工事を請け負う建設業の会社で、最初の手元のお金は800万円です。数字はすべて架空で、単位は万円です。

項目 1か月目 2か月目 3か月目 4か月目
入金 300 200 900 500
材料・外注 500 600 200 300
給料・経費 250 250 250 250
差引 −450 −650 +450 −50
月末の残高 350 −300 150 100

2か月目は、工事が進んで材料・外注の支払いが600万円に増えましたが、入金は200万円しかありません。差引はマイナス650万円で、月末の残高はマイナス300万円になります。3か月目に工事代金が900万円入って、残高は150万円に戻ります。

K社は、工事の途中で、入金より支払いが先に来る月に、お金が一気に減ります。利益が出ていても、入金のタイミング次第でこうなります。

お問い合わせはこちら

記入例2:L社(飲食店)|売上が落ちた月も、毎月の支出は変わらない

2社目は、社長のL社です。1店舗の飲食店で、最初の手元のお金は150万円です。毎月の固定的な支出は、家賃、人件費、光熱費、返済などを合わせて330万円で、毎月変わらない想定です。

項目 1か月目 2か月目 3か月目 4か月目
入金 480 440 360 420
仕入れ 150 140 115 135
固定的な支出 330 330 330 330
差引 0 −30 −85 −45
月末の残高 150 120 35 −10

1か月目は差引がゼロで、残高は150万円のままです。2か月目に売上が少し落ち、3か月目は入金が360万円まで落ち込んで、残高は35万円です。4か月目は入金が420万円まで戻っても、毎月の支出が重く、残高はマイナス10万円になります。

飲食店は、売上が落ちた月でも家賃や人件費は同じように出ていきます。だから、お金がじわじわ減っていく形になりやすいのです。

記入例3:M社(小売業)|先に出て、あとで戻る

3社目は、社長のM社です。雑貨を売る小売業で、最初の手元のお金は500万円です。売上が伸びる季節の前に、商品を多めに仕入れます。仕入れ代金は、同じ月に払う想定です。

項目 1か月目 2か月目 3か月目 4か月目
入金 300 350 700 800
仕入れ 500 400 200 150
家賃・人件費 150 150 150 150
差引 −350 −200 +350 +500
月末の残高 150 −50 300 800

1か月目は、入金300万円に対して仕入れが500万円で、残高は150万円まで減ります。2か月目も仕入れが続いて、残高はマイナス50万円です。3か月目から売上が伸びて入金が700万円になり、残高は300万円に戻ります。4か月目は入金が800万円で、残高は800万円です。

小売業は、商品が売れる前にお金が出ていくので、繁忙期の手前が苦しくなりやすい、という形です。

3社を並べて比べる|いちばん減った月と、減り方の形

会社 減った月 残高(万円) 形
K社 建設業 2か月目 −300 一気に減る
L社 飲食店 4か月目 −10 じわじわ減る
M社 小売業 2か月目 −50 先に出て戻る

K社は工事の途中で一気に減り、L社は売上の波と毎月の支出でじわじわ減り、M社は仕入れが先に出て、そのあと戻りました。同じ資金繰り表でも、お金の減り方はこれだけ違います。だから、自社の商売に合わせて、先の月まで書くことが大切です。

📊 このセクションの要点

3社とも一時的にマイナスになる月がありました。減り方の形は、一気に減る、じわじわ減る、先に出て戻る、と業種で違います。

お金が減る月の見つけ方|4つのポイント

3社の表で、共通して使える見方があります。残高がマイナスになる月と、その月に何が重なっているかを見ることです。見つけ方は4つあります。

ポイント 内容
1.先まで書く 3か月から6か月先まで書く
2.入金は入る月に 売った月ではなく、実際に入る月に書く
3.支払いは払う月に 仕入れ・給料・返済は、実際に払う月に書く
4.印を付ける 残高が低くなる月に印を付ける

マイナスにならなくても、いつもより大きく減る月は要注意です。自社なりの「これ以下になったら心配」という目安の金額を決めておくのも、一つの方法です。これは公的な基準ではなく、一般的な考え方の一例です。

お金が減る月への備えと、業種ごとの見直しの観点

お金が減る月が見えたら、備えを考えます。足りなくなりそうな月が前もって分かれば、金融機関に早めに相談することもできます。

業種 お金が減る月 備えの観点
建設業 工事の途中 請求の時期や入金の条件を確認し、支払い時期とのずれを小さくできないか考える
飲食店 売上が落ちる月 落ち込む月を見込んで、前もって手元のお金を残しておく考え方がある
小売業 繁忙期の手前 仕入れの量と時期を、売れ行きに合わせて調整する

建設業の入金や支払いの条件は、取引先と相談して決めるものなので、勝手に変えないでください。契約や法律にかかわる判断、税務の個別の判断は、顧問の税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。

もう一歩進めて、業種ごとに「まず見る数字」を決めておくと、見直しが楽になります。

業種 まず見る数字
建設業 工事ごとの入金と支払いの時期
飲食店 売上の波と、毎月の固定的な支出
小売業 在庫の量と、仕入れの時期

建設業は、工事ごとに入金と支払いの時期を並べると、どの工事でお金が先に出ているかが見えてきます。飲食店は、売上が落ちた月でも払える水準かどうかを確認します。小売業は、売れ残りの在庫がお金の眠っている状態なので、仕入れの量を見直す目安になります。

すでに資金繰りが苦しくなってきた場合の見直しの進め方は、資金繰りが苦しいときの見直しの記事で整理しています。借入の組み立ては、運転資金と設備資金の記事や創業融資の記事もあわせてご覧ください。

まずは自社の3か月先を書いてみる

数字を見るのが後回しになり、苦しくなってから表を作るケースがあります。はじめから正確である必要はありません。まずは、自社の3か月先までを書いてみてください。作り方に迷ったら、基本の記事に戻って、もう一度確認してください。

まとめ|業種に合わせて、自社の数字で見直す

ポイント 内容
1.業種で動きの形が違う 表の形は同じでも、お金の入る時期と出る時期が違う
2.減る月も業種で違う 工事の途中、売上が落ちる月、繁忙期の手前
3.先の月まで書く 3か月から6か月先まで書いて、残高が低い月に印を付ける
4.自社の数字で見直す 業種に合わせて、まず見る数字を決める

詳しくは個別の記事で

出典:日本政策金融公庫「資金繰り表(記入例)」、中小機構 J-Net21「資金繰り表を活用する」、J-Net21「資金繰りとは」、J-Net21「資金繰り表って何ですか?」。なお、業種ごとの資金の動きは、公的資料で確認できたものではなく、よくある一例としての当社の整理です。

制度の整理のご相談

制度の整理のご相談をお受けしています

壱市コンサルティングでは、制度の整理のご相談を、事前相談としてお受けしています。書類作成や手続きなど士業の業務にあたる部分は、提携先の士業事務所と連携します。

お問い合わせはこちら

友だち追加 お問い合わせ