【経営者向け】資金繰りが苦しい会社が最初に見直す5つのこと|原因の見つけ方と打ち手

売上はあるのに、なぜか毎月のお金のやりくりが苦しい。そんな会社には、よくあるパターンがあります。利益が出ていても、お金の入りより出が先に来れば、手元のお金は減っていきます。

苦しくなったときは、闇雲に動くのではなく、原因を見つけてから、小さく早く手を打つことが大切です。原因が分かれば、打ち手も選べます。

本記事では、資金繰りが苦しくなる5つの原因、原因の見つけ方、今日からできる5つの打ち手、避けたいこと、早めに相談できる窓口を、建設業の架空の会社(社長のJ社)の数字で整理します。解説動画の内容に沿った個別解説で、数字はすべて架空です。個別の税務や法律の判断は扱いません。

黒字でもお金が足りなくなる|苦しくなる5つの原因

資金繰りとは、会社のお金の入りと出を、やりくりすることです。中小機構のJ-Net21「資金繰り改善のための財務・資本戦略」では、仕入代金を先に払い、売上代金が後から入るといった入出金のタイミングのずれが、資金繰りを苦しくする原因として挙げられています。売掛金の回収に時間がかかったり、在庫が寝ている期間が長かったりすると悪化しやすく、赤字だと逼迫しやすい、黒字でも資金が足りなくなることがある、という内容です。

苦しくなる原因は、だいたい次の5つのパターンに分けられます。なお、この5つの整理は、動画と同じ一般的な見方です。

原因 何が起きているか
1.売掛金の回収が遅い 売ったけれど、まだ受け取っていない代金が多い
2.在庫が増える 仕入れたお金が、倉庫で眠っている
3.設備投資の先払い 機械や車両の代金が、まとまって先に出る
4.借入返済の重さ 毎月の返済が、会社が生み出せるお金に比べて重い
5.利益が出ていない 出るお金が、入るお金より多い状態が続く

建設業のように、工事が終わってから入金される商売では、材料費や人件費を先に払うので、売掛金が重くなりやすい面があります。この5つのうち、自社はどれに当てはまるでしょうか。いくつか重なっている会社も、少なくありません。

📊 このセクションの要点

利益が出ていても、お金の入りより出が先に来れば、手元のお金は減ります。原因は、回収の遅れ、在庫、設備投資、借入返済、利益不足の5つに分けて考えます。

原因の見つけ方|資金繰り表でお金が減る月を探す

原因を見つける一番の方法は、資金繰り表を作って、お金が減る月を見つけることです。資金繰り表は、月ごとの入るお金と出るお金を書き出した表で、J-Net21でも、資金が不足する時期を事前に予測し、不足する前に手を打つために使う表として紹介されています。作り方そのものは資金繰り表の記事で詳しく解説していますので、ここでは苦しいときの見方に絞ります。

例として、内装工事を請け負う建設業のJ社(社長のJ社、数字はすべて架空)を見てみます。最初の手元のお金は500万円です。

項目 1か月目 2か月目 3か月目
入金 900 700 600
出金 1,000 1,000 900
差引 -100 -300 -300
月末の残高 400 100 -200

単位は万円です。1か月目の月末の残高は400万円、2か月目は100万円まで減り、3か月目にはマイナス200万円、つまり200万円が足りなくなります。足りなくなる月が前もって分かれば、その前に手を打てます。

原因を見つける4つの手順

手順 やること
1.数か月先まで書く 3か月から6か月先まで見ておくと、苦しくなる月を早く見つけられる
2.入金は入る月に書く 売った月ではなく、実際にお金が入る月に書く
3.出金は払う月に書く 仕入れ、給料、返済など、実際に払う月に書く
4.マイナスの月を探す その月に何が重なっているかを見る

J社の3か月目は、入金が減ったのに、材料費と外注費の支払いが残っていました。このように、マイナスになる月に何が重なっているかを見ると、原因の当たりがつきます。

月の動き 疑う原因
入金が少ない月 売掛金の回収の遅れ
仕入れが多い月 在庫の増えすぎ
大きな出金がある月 設備投資や借入の返済
毎月じわじわ減っている 利益が出ていない可能性

ここまで分かれば、打ち手が選べます。ただし、これは原因の当たりをつけるための目安です。実際には、複数の原因が重なっていることもあります。

📊 このセクションの要点

資金繰り表で、お金が減る月を先に見つけます。入金は入る月、出金は払う月に書き、マイナスの月に何が重なっているかで、原因の当たりをつけます。

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今日からできる打ち手|まずは4つ

打ち手は5つあります。まず、すぐに取りかかれる4つを紹介します。

打ち手 やること
1.入金を早める 工事が終わったらすぐ請求書を出す。入金の確認とお願いを確実に行う
2.支払いを後ろにずらす 取引先と相談して、支払いまでの期間を少し延ばせないか話してみる
3.在庫を減らす 余っている材料を確認し、仕入れを必要なぶんに絞る
4.固定費を見直す 家賃、通信費、保険、使っていない契約などを一覧にして見直す

J-Net21のQ&A「資金ショートしそうです。何から手を打てばよいですか」でも、回収条件の見直し、過剰在庫の換金、仕入先や外注先への支払期日延長の相談、固定費の洗い出しと見直しなどが挙げられています。

2つ目の支払いを後ろにずらすことは、あくまで取引先との相談として進めるものです。相談なしに勝手に遅らせるのは避けてください。支払いの条件は取引先との約束で、契約や法律にかかわる判断は専門家にご確認ください。固定費は、一度減らすと毎月効果が続くのが強みです。

J社の3か月目は、どう変わるか

J社の3か月目は、何もしなければマイナス200万円でした。次の数字は、うまくいった場合の単純な計算です。支払いを後ろにずらす相談は、取引先しだいのため、計算には入れていません。

打ち手 3か月目の月末
何もしない -200万円
入金を150万円早める -50万円
在庫を80万円減らす -120万円
3つを合わせる(入金150万円、在庫80万円、固定費は月10万円ずつ3か月で30万円) +60万円

それぞれの効果は単独の場合の計算で、3つを合わせると-200万円に150万円、80万円、30万円を足して、プラス60万円となり、不足が解消できる計算です。実際には、取引先や状況によって結果は変わります。

📊 このセクションの要点

入金を早める、支払いの相談、在庫を減らす、固定費の見直しが、まず取りかかれる4つです。効果の数字は、うまくいった場合の単純な計算です。

5つ目の打ち手|借入の返済条件を金融機関に相談する

5つ目は、借入の返済条件を、金融機関に相談することです。返済の負担が重いときは、返済の条件を見直せないか、金融機関に相談する方法があります。日本政策金融公庫のよくあるご質問でも、返済条件の見直しは、まずお取引支店に相談するよう案内されています。

ポイント 内容
苦しくなる前に相談する 早いほど選べる道が多い
資金繰り表を持っていく いつ、いくら足りないかを具体的に説明できる
今後の見通しを話す ここまでの打ち手もあわせて伝えると、見通しが伝わりやすい
決めるのは金融機関 条件は個別に判断される

大切な前提として、返済の条件を変えられるかどうかは、金融機関が会社の状況を見て個別に判断します。必ず変えられるというものではありません。契約や法律にかかわる判断は、顧問の税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。

📊 このセクションの要点

返済の負担が重いときは、苦しくなる前に、資金繰り表を持って金融機関に相談します。変えられるかどうかは、金融機関が個別に判断します。

やってはいけないこと|早めの相談につなげる

避けたいこと 起きること
返済のための場当たり的な借入 原因が変わらないまま借入だけが増えると、返済の負担がさらに重くなることがある
相談なしの支払い遅延 取引先の信頼を損なう
数字を見ずに放置 気づくのが遅れる
一人で抱え込む 早く相談するほど、選択肢が残る

1つ目は、動画でも触れた一般的な注意点です。原因を見つけないまま借入だけを重ねると、負担が重くなることがあります。2つ目の支払いの遅れは、事前に相談して信頼を守ってください。支払いは黙って遅らせず、事前に説明して合意を得ることが必要、という趣旨がJ-Net21でも示されています。

早めに相談できる窓口

窓口 特徴
よろず支援拠点 全国47都道府県にある経営相談の窓口。何度でも無料で相談できる
商工会・商工会議所 地域の経営相談。支援内容は、地域によって異なる
取引のある金融機関 返済や借入の相談
顧問の専門家 税務や法律にかかわることは、顧問の税理士・弁護士などに確認する

どこに相談するか迷うときも、まずは窓口に電話してみることをおすすめします。商工会議所の経営相談は費用が原則無料とされていますが、内容は各地で異なります。詳しくは、お近くの窓口でご確認ください。

📊 このセクションの要点

よろず支援拠点、商工会・商工会議所、取引のある金融機関、顧問の専門家が、早めに相談できる窓口です。迷ったら、まず電話してみます。

補助金は後払い|資金繰りの解決策にはなりにくい

ここで、補助金についてもお伝えしておきます。補助金は、多くの場合、事業を行って先に自分でお金を支払ったあとに受け取る、後払いです。たとえば小規模事業者持続化補助金でも、実績報告書の提出と確定通知書の受領を経て、精算払いの請求を行う流れになっています。制度や回によって扱いが異なることがあるため、必ず最新の公募要領をご確認ください。

そのため、今、苦しい資金繰りの解決策にはなりにくく、むしろ先にお金が出ていくので、資金繰りを確認してから考える必要があります。補助金を使うかどうかは、数字の整理が先です。

まとめ|資金繰りが苦しいときの4つのポイント

ポイント 内容
1.原因は5つ 売掛金の回収、在庫、設備投資、借入返済、利益不足
2.お金が減る月を探す 資金繰り表で、足りなくなる月を先に見つける
3.打ち手は5つ 入金を早める、支払いの相談、在庫を減らす、固定費の見直し、返済条件の相談
4.早めに相談する 窓口、金融機関、専門家

中小企業診断士として社長の話を聞いていて感じるのは、苦しくなってから、はじめて資金繰りを見る方が少なくないということです。難しい計算はいりません。まずは、3か月先までの資金繰り表を作って、お金が減る月を見つけてみてください。

黒字なのにお金が足りなくなる仕組みはキャッシュフローの記事、数字を銀行に説明するときの考え方は事業計画書の記事、本業の利益と借入の負担の見分け方は営業利益と経常利益の記事で解説しています。

関連記事

参考:中小機構 J-Net21「資金繰り改善のための財務・資本戦略」「資金繰り表って何ですか?」、J-Net21 Q&A「資金ショートしそうです。何から手を打てばよいですか」、日本政策金融公庫 よくあるご質問、よろず支援拠点(J-Net21)、日本商工会議所 経営相談。

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