【経営者向け】月次決算と試算表|毎月「今の数字」を見る習慣のつくり方

決算書は、1年が終わってからできあがります。見たときには、すでに手を打つ時期を過ぎていた。そんな経験のある社長は、少なくありません。

この遅れを防ぐ方法が、毎月、その月までの数字を見て、判断する習慣をつくることです。そのための仕組みが、月次決算と試算表です。

本記事では、月次決算と試算表とは何か、毎月見る5つの数字、前年同月・前月・予算との比べ方、赤信号のサイン、会計の専門家と一緒に回す進め方、銀行に説明するときの役立て方を、社長のJ社の架空の数字で整理します。解説動画の内容に沿った個別解説で、数字はすべて架空です。個別の税務や会計処理の判断は扱いません。

月次決算と試算表とは|毎月の締めと、その月までの一覧

月次決算とは、毎月、その月の数字を締めて、経営判断に使うことです。年に1回の決算を、毎月行うイメージです。中小機構のJ-Net21「月次決算」のQ&Aでは、期末の決算とは別に、毎月の営業成績や財政状態を明らかにするために行う決算として説明されています。年1回の決算だけでは、期の途中の業績が見えにくいため、毎月の数字で現状をつかみ、次の手を考える、という位置づけです。

締めた結果を一覧にまとめたものが、試算表です。本記事では、試算表を「その月までの数字をまとめた一覧」として説明します。これは一般的な理解にもとづく説明で、公的資料で定義を確認したものではありません。会社や会計の専門家によって、使う言葉や資料の形が異なることがあります。

試算表には、たくさんの項目が並んでいますが、社長が見るのは、ほんの数か所です。売上、粗利、人件費、営業利益、現預金、借入。ここが見られれば十分です。数字を作る作業は会計の専門家の領域で、社長は、できあがった数字を見て判断する側に徹してください。

項目 何が分かるか
売上・粗利 稼ぎの元
人件費・営業利益 負担と、本業の稼ぎ
現預金 手元のお金
借入 返済の重さ

📊 このセクションの要点

月次決算は、毎月の数字を締めて経営判断に使うこと。試算表は、その月までの数字をまとめた一覧です。社長は、見て判断する側に徹します。

年1回では遅い理由|決算書と試算表の違い

決算書は、1年が終わってからできあがります。1年間の結果は分かりますが、見るのは、終わったあとです。たとえば、半年前から粗利が落ちていても、年に1回の決算書では、それに気づくのが遅れます。

一方、毎月の試算表なら、今月の異変に、今月のうちに気づけます。まだ間に合うタイミングで、手を打てるのが、最大の違いです。

項目 決算書 試算表
見る頻度 年に1回 毎月
分かること 1年間の結果 今月までの結果
手を打てる時期 終わったあと まだ間に合う

決算書そのものの見方は、損益計算書の記事と貸借対照表の記事で解説しています。この記事では、毎月の見方と、習慣のつくり方に絞ります。

📊 このセクションの要点

決算書は終わったあとに見るもの、試算表はまだ間に合う時期に見るものです。毎月見ることで、今月の異変に今月のうちに気づけます。

毎月見る5つの数字と、借入の確認

見る数字は、次の5つに絞ります。細かく見すぎると続かないからです。なお、この「5つ」は、一般的な経営管理の目安として整理したもので、公的な基準ではありません。

数字 見るポイント
1.売上 前年同月より増えたか、減ったか
2.粗利 売上から原価を引いた、稼ぎの元。売上が同じでも減っていたら要注意
3.人件費 粗利に対して重すぎないか
4.営業利益 本業で利益が残っているか
5.現預金 手元のお金が、毎月の支払いの何か月ぶんあるか

営業利益は、本業の利益のことです。見方は営業利益と経常利益の記事でも整理しています。

5つ目の現預金は、利益が出ていても、手元のお金が尽きれば事業が止まる、という理由で入れています。たとえば、毎月の支払いが約300万円のJ社で、現預金が900万円なら、約3か月ぶんです。あわせて、借入の残りと毎月の返済額も確認してください。お金の動きを先まで見たい場合は、資金繰り表の記事が役立ちます。

数字が動いたら、何を見直すか

数字は、見るだけでは意味がありません。動いたときに、何を見直すかまで、セットで考えます。

数字の動き 見直す先
売上が減る 営業や販促のやり方
粗利が減る 値付けや仕入れ
人件費が重い 人員の配置や、採用の時期
現預金が減る 資金繰りを確認し、早めに銀行や専門家に相談

この対応表は、考え方の一例です。実際の原因は会社によって異なるため、数字を作った専門家と一緒に確認してください。

📊 このセクションの要点

見る数字は、売上、粗利、人件費、営業利益、現預金の5つに絞り、借入の残りと返済額もあわせて確認します。動いたときに何を見直すかまでセットで考えます。

数字は並べて比べる|J社の試算表で見る3つの比べ方

数字は、1つだけ見ても、よいか悪いか分かりません。必ず並べて比べます。社長のJ社の、今月の試算表を見てみましょう。単位は万円で、数字はすべて架空です。

項目 今月 前年同月 前月
売上 1,000 1,100 1,050
粗利 400 440 420
人件費 260 250 255
その他経費 100 100 100
営業利益 40 90 65

売上は、前年同月から約9%減りました。ところが、営業利益は90万円から40万円へ、半分以下に落ちています。売上の減り以上に、利益が落ちているということです。原因を表で探すと、粗利が40万円減り、人件費が10万円増えています。合わせて50万円、営業利益が減った計算です。

比べ方は、次の3つが基本です。

比べ方 分かること
前年同月と比べる 季節の影響を除いて見られる
前月と比べる 直近の流れが分かる
予算と比べる 計画とのずれが分かる

J社の今月の営業利益は40万円で、予算の70万円より30万円少ない状態です。予算との対比は、J-Net21のQ&Aでも、目標の達成状況と原因を明らかにする方法として紹介されています。一方、前年同月や前月と比べる方法は、一般的な経営管理の考え方です。差が出たら、数字を作った専門家に、理由を聞いてください。

📊 このセクションの要点

前年同月、前月、予算の3つと並べて比べます。J社は、売上の減り以上に営業利益が落ちており、粗利の減少と人件費の増加が重なっていました。

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赤信号のサイン|早めに手を打つ4つの目安

毎月見ていると、危ない兆しに気づきやすくなります。次の4つは、一般的な経営管理の目安で、基準値ではありません。

赤信号のサイン 何を意味するか
粗利が減っている 売上が同じでも要注意。値引きや原価の上昇が隠れているかもしれない
人件費の割合が上がる 粗利に対して重くなっている
現預金が減り続ける 月の支払い1か月ぶんに近づいたら、早めの対策が必要
試算表が出てこない 数字を見られない状態が、いちばんの赤信号

J社の場合、人件費が粗利に占める割合は、今月が65%(260万円÷400万円)、前年同月は約57%(250万円÷440万円)でした。売上が減った中で人件費の負担が重くなっていることが、数字から読み取れます。

現預金が減ってきたときは、資金繰りの確認が先です。見直しの進め方は、資金繰りが苦しいときの見直しの記事で整理しています。

📊 このセクションの要点

粗利の減少、人件費の割合の上昇、現預金の減少、試算表が出てこないこと。この4つが赤信号の目安です。基準値ではなく、一般的な目安です。

専門家と一緒に回す|毎月10日ごろを目安にする進め方

おすすめは、毎月10日ごろを目安に、試算表を見る時間を決めてしまうことです。ただし、いつまでに試算表を出すかは、会社の規模や会計の専門家との取り決めで変わります。10日ごろは、あくまで目安です。顧問の税理士など会計の専門家と一緒に、30分ほどで回します。

手順 やること
1.試算表を作ってもらう 作成は会計の専門家の領域
2.5つの数字を見る 前年同月・前月・予算と比べる
3.差の理由を聞く なぜ変わったかを確認する
4.打ち手を1つ決める 来月までにやることを、1つだけ決める

たくさん決めなくてかまいません。続けることが、いちばん大切です。

試算表を早く出してもらう4つの工夫

試算表が遅れると、見る意味が薄れます。早く出してもらうために、次の4つの工夫があります。J-Net21のQ&Aでも、月次決算の確定日を決めて関係者で共有することが、早期化の仕組みとして挙げられています。

工夫 内容
確定日を決める 毎月この日までと、関係者で共有しておく
資料を毎月同じ日に渡す 請求書や通帳の資料をためない
見る数字を5つに絞る 細かく見すぎない
見る時間を先に決める 予定に入れてしまう

📊 このセクションの要点

毎月10日ごろを目安に、専門家と30分ほどで回します。いつまでに出すかは会社と専門家の取り決めしだいです。打ち手は毎月1つだけ決めます。

続かない4つの理由と対策

毎月見る習慣は、続かないこともあります。よくある理由は、次の4つです。

続かない理由 対策
専門家に丸投げする 数字を作るのは専門家でも、5つの数字だけは社長が見る
見て終わりになる 打ち手を1つだけ決める
細かく見すぎる 数字は5つに絞る
忙しくて後回しにする 毎月の予定に、先に入れてしまう

中小企業診断士として、いろいろな社長と話していて感じるのは、試算表が届いているのに、見ていない社長が意外に多いということです。難しいことは、いりません。まずは今月の試算表で、5つの数字を前年同月と比べてみてください。

銀行に説明するときにも役立つ

毎月、試算表を見る習慣は、銀行への説明にも役立ちます。J-Net21のQ&Aでは、融資の申込時には、決算書のほかに、直近の月次決算書の提出を求められることが多いとされています。毎月見ていれば、今の数字を自分の言葉で説明しやすくなります。

場面 役立つこと
融資の相談 直近の数字を説明できる
借入の見直し 返済の余裕を伝えられる
赤字の月 理由と見通しを、落ち着いて話せる

ただし、何を求められるかは、金融機関や案件によって異なります。ここで紹介したのは一般論で、審査の基準ではありません。銀行にどう説明するかは、貸借対照表の記事の見方とあわせて考えると整理しやすくなります。

📊 このセクションの要点

毎月の習慣が続かない理由には、丸投げ、見て終わり、見すぎ、後回しの4つがあります。毎月見ていれば、銀行にも今の数字を説明しやすくなります。求められる資料は金融機関によって異なります。

まとめ|月次決算と試算表の4つのポイント

ポイント 内容
1.毎月の締めと一覧 月次決算は毎月の締め。試算表は、その月までの数字の一覧
2.見る数字は5つ 売上・粗利・人件費・営業利益・現預金。借入も確認する
3.並べて比べる 前年同月・前月・予算と比べる
4.専門家と毎月回す 社長は、見て判断する側に徹する

会計の処理や税務の個別の扱いは、顧問の税理士など会計の専門家にご確認ください。この記事は、経営者が毎月の数字を見て判断するための、一般的な考え方の整理です。

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参考:中小機構 J-Net21 経営相談Q&A「月次決算」、J-Net21「決算書とは?」。

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