【社長向け】決算書の見方|税理士から届いたらまず見る3つの数字

税理士から決算書が届いた。けれど、どこを見ればいいのか分からない。そう感じる社長は少なくないはずです。

結論から言うと、最初に見る数字は3つだけで十分です。本業の稼ぎ(営業利益)、会社の体力(純資産がプラスか)、手元のお金(現預金が月商の何か月分か)。この3つを押さえるだけで、会社の今がおおよそつかめます。

本記事では、決算書の構成、3つの数字の見方、利益が出ても現預金が減る理由、赤信号のサイン、前の年との比べ方、銀行が見るとされる点、分からない数字の聞き方を、社長のK社・L社の架空の数字で整理します。解説動画の内容に沿った個別解説で、数字はすべて架空です。個別の税務や会計処理の判断は扱いません。

決算書の構成を一言でつかむ|全部は読まなくていい

決算書は、いくつかの資料のセットです。中小機構のJ-Net21「決算書とは?」では、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表、キャッシュフロー計算書が、決算書の種類として紹介されています。ただ、社長がまず押さえるのは、次の3つの役割だけで足ります。

資料 一言でいうと
貸借対照表 会社の体力。ある日の時点で、何を持っていて、いくら借りているか
損益計算書 1年間の成績。1年間で、いくら稼いで、いくら使ったか
お金の動きを示す資料 現金がなぜ増えて、なぜ減ったかを示す資料。どこまで作るかは会社によって違う

細かい数字は、顧問の税理士などの専門家に任せて大丈夫です。社長が届いたらまず見るのは、3つの数字だけ。数字を作るのは専門家、できあがった数字を見て判断するのは社長、という役割分担です。

それぞれの資料の詳しい見方は、貸借対照表の記事と損益計算書の記事で解説しています。この記事は、その入口です。

📊 このセクションの要点

決算書は資料のセット。貸借対照表は会社の体力、損益計算書は1年間の成績、お金の動きを示す資料もあります。全部を読もうとせず、まず3つの数字を見ます。

まず見る3つの数字|K社の例で確認する

最初に見るのは、次の3つです。社長のK社の例で、順番に見ていきます。単位は万円で、数字はすべて架空です。

見る数字 何が分かるか どの資料にあるか
1.営業利益 本業の稼ぎ 損益計算書
2.純資産がプラスか 会社の体力 貸借対照表
3.現預金は月商の何か月分か 手元のお金 貸借対照表と損益計算書

1つ目:営業利益|売上が増えても利益が減ることがある

営業利益は、本業で稼いだ利益のことです。K社は、売上高が前の年の1億1,500万円から、今年は1億2,000万円に増えました。ところが、営業利益は800万円から600万円に減っています。売上が増えても、利益が減ることはあります。だから、売上だけでなく営業利益を見ます。減った理由は、顧問の専門家に聞いてみましょう。

営業利益と、そのほかの利益の違いは、営業利益と経常利益の記事で整理しています。

2つ目:純資産|プラスか、マイナスか

純資産は、返済しなくていい、会社の体力です。K社は2,800万円から3,000万円に増えました。プラスで増えているので、ひとまず安心です。

一方、L社は純資産がマイナス400万円です。これを債務超過といいます。中小機構のJ-Net21の財務Q&Aでは、債務超過は負債が資産を上回り、純資産がマイナスの状態と説明されています。新規の借入が難しくなったり、金利の引き上げや早期の回収を求められたりする場合がある、とも書かれています。まずは、プラスかマイナスかを確認してください。

3つ目:現預金|月商の何か月分あるか

現預金を月商で割って、何か月分あるかを見ます。月商とは、1か月の売上のことです。K社は、現預金が1,500万円、月商が1,000万円(売上高1億2,000万円÷12)なので、1.5か月ぶんです。前の年は、現預金1,800万円、月商約960万円で、約1.9か月ぶんでしたから、減っています。

数字 前の年 今年 動き
営業利益 800 600 減った
純資産 2,800 3,000 増えた
現預金 1,800 1,500 減った

ここで、注意点があります。「現預金が月商の何か月分あれば安全」という決まった基準は、公的な資料では確認できていません。一般には、月商の1か月分を切ると不安が出る、という見方があります。これは一つの目安で、公的な裏付けはありません。業種や支払いの重さによって違うため、水準そのものよりも、減っているかどうかをあわせて見てください。

📊 このセクションの要点

見る数字は、営業利益、純資産、現預金(月商の何か月分か)の3つ。K社は営業利益と現預金が減り、純資産は増えていました。現預金の目安に公的な基準はありません。

利益が出ても現預金が減る理由|利益とお金は同じではない

よくある疑問が、利益が出ているのに、なぜ現預金が減るのか、というものです。中小機構のJ-Net21の起業マニュアルでも、利益と資金の増減は一致しないと説明されています。理由は、主に次の4つです。

理由 何が起きているか
売掛金が増える 売ったのに、代金がまだ入っていない
在庫が増える 仕入れで、お金が先に出ていく
借入の返済 返済は利益から引かれないが、手元のお金は確実に減る
設備への支払い 大きな支払いが、先に出ていくことがある

だから、利益と現預金は、両方見る必要があります。お金の回りを先まで見たいときは、資金繰り表の記事が役立ちます。

📊 このセクションの要点

利益が出ても、売掛金の増加、在庫の増加、借入の返済、設備への支払いで、現預金は減ります。利益と現預金は両方見ます。

3つの数字は組み合わせで読む|見方の一例

3つの数字は、セットで読むと、会社の様子が見えてきます。次の表は、見方の一例です。会社や業種によって変わるため、基準や判定ではありません。

営業利益 純資産 現預金 読み方の一例
プラス プラス 十分 まずは安定した会社
減少 プラス 減少 K社:稼ぐ力に注意
プラス プラス 少ない お金の回りに注意
赤字 マイナス 少ない 早めに専門家へ相談

K社のように、営業利益が減り、現預金も減っているなら、稼ぐ力に注意が必要です。利益も純資産もプラスなのに、現預金が少ないときは、お金の回りに注意です。三つとも悪いときは、早めに専門家に相談してください。

お問い合わせはこちら

赤信号のサイン|早めに手を打つ4つの目安

次の4つは、危ない兆しの目安です。一般的な経営管理の見方で、基準値ではありません。どれか1つでも当てはまったら、専門家に早めに相談してください。

赤信号のサイン 何を意味するか
営業利益が赤字 本業で赤字、または減り続けている
純資産がマイナス 債務超過の状態。銀行との取引にも影響する
現預金が減り続ける 月商の1か月分に近づいたら、早めの対策が必要
売掛金や在庫が膨らむ 売った代金が入らず、利益が出ても手元のお金は増えない

現預金が減ってきたときの見直しの進め方は、資金繰りが苦しいときの見直しの記事で整理しています。

📊 このセクションの要点

営業利益の赤字、純資産のマイナス、現預金の減少、売掛金や在庫の膨らみ。この4つが赤信号の目安です。基準値ではありません。

前の年と並べて見る|1年分だけではよしあしが分からない

決算書の数字は、1年分だけ見ても、よいか悪いか分かりません。必ず、前の年と並べて見ます。中小機構のJ-Net21の財務Q&Aでも、自社の数字を時系列に並べて比べ、問題点を探る方法が紹介されています。

K社の場合、営業利益が減り、現預金も減りましたが、純資産は増えています。つまり、体力はあるものの、稼ぐ力と手元のお金が弱ってきている、と読み取れます。前の年に加えて、さらに前の年も並べると、流れがもっと見えやすくなります。

毎年の決算を待たずに、毎月の数字で追いかける方法は、月次決算と試算表の記事で解説しています。

📊 このセクションの要点

数字は前の年と並べて見ます。K社は、体力はあるものの、稼ぐ力と手元のお金が弱ってきていました。

銀行が見るとされる点|一般論として

ここからは一般論です。銀行の見方は、金融機関や案件によって異なります。審査の基準を示すものではありません。また、次の4点は、公的資料の一般的な説明をもとに、当社が整理したものです。

見られやすい点 決算書のどこで確認するか
本業で利益が出ているか 営業利益
債務超過ではないか 純資産
返済の元手があるか 利益と現預金
数字の変化を説明できるか 前の年との差の理由

中小機構のJ-Net21では、金融機関が融資の可否を見る点として、簡易キャッシュフロー、実態債務超過の有無、債務償還年数が挙げられています。数値の基準は示されていません。悪い数字でも、理由と立て直しの見通しを話せることが大切です。銀行ごとの見方や、貸借対照表の数字の見られ方は、貸借対照表の記事や自己資本比率と流動比率の記事もあわせてご覧ください。

📊 このセクションの要点

銀行の見方は金融機関や案件で違い、審査基準ではありません。当社の整理では、本業の利益、債務超過、返済の元手、数字の変化の説明の4点に注目が集まりやすいといえます。

分からない数字の聞き方|専門家に質問してよい

決算書の数字は、分からなくて当たり前です。顧問の税理士などに、遠慮なく質問してください。聞き方には、4つのコツがあります。

コツ 聞き方の例
どの数字か伝える 「この行が分かりません」
前の年との差を聞く 「なぜ減ったのですか」
社長にできることを聞く 「何を見直せばいいですか」
毎月の数字で追いかける 次の決算を待たずに、月次の数字で確認する

なお、税金や申告の判断、決算書の作成や数字の個別の扱いは、顧問の税理士など専門家にご確認ください。この記事は、一般的な考え方の整理です。

📊 このセクションの要点

分からない数字は、どの数字かを伝え、前の年との差を聞き、社長として見直すことを尋ねます。税務や申告の判断は専門家に確認します。

まとめ|決算書の見方の4つのポイント

ポイント 内容
1.見る数字は3つ 営業利益、純資産、現預金(月商の何か月分か)
2.前の年と並べて見る 1年分だけではよしあしが分からない
3.赤信号は早めに相談 営業利益、純資産、現預金、売掛金や在庫
4.分からない数字は質問 顧問の専門家に遠慮なく聞く

まずは、届いた決算書の中から、3つの数字を探してみてください。難しいことはいりません。見つけた数字を前の年と並べるところから、始められます。

詳しくは個別の記事で

参考(中小機構 J-Net21):「決算書とは?」、財務Q&A(Q0243)貸借対照表の見方と活用、財務Q&A(Q0223)債務超過、起業マニュアル(利益と資金の増減は一致しない)、「キャッシュポジションを高める」。

制度の整理のご相談

制度の整理のご相談をお受けしています

壱市コンサルティングでは、制度の整理のご相談を、事前相談としてお受けしています。書類作成や手続きなど士業の業務にあたる部分は、提携先の士業事務所と連携します。

お問い合わせはこちら

友だち追加 お問い合わせ