設備投資に使える中小企業税制の使い分け|投資促進税制・経営強化税制・補助金との併用・経営力向上計画

設備投資をするとき、補助金を探す経営者は多いですが、実は税制でも設備投資は支えられます。ところが、中小企業投資促進税制、中小企業経営強化税制、少額減価償却資産の特例、固定資産税の特例と、制度の名前が似ていて、どれが使えるのか、補助金と一緒に使えるのかが分かりにくいのが実情です。

使い分けの分かれ目は、とてもシンプルです。設備を買ったあとに申告で選べる税制なのか、買う前に計画の認定を受けておく必要がある税制なのか。ここを間違えると、使えるはずの税制が使えなくなってしまいます。

本記事では、中小企業庁・国税庁の公式資料をもとに、設備投資に使える税制の地図、経営力向上計画の位置づけ、補助金との併用の考え方、専門家に任せる範囲を整理します。率・金額・期限は年度で変わるため、あえて数値は載せず、仕組みを中心に解説します。個別の税務判断は税理士の領域です。

まず結論|設備投資の税制は「認定が先か、申告で選べるか」で分かれる

設備投資に関わる税制を、次の5つに分けて整理します。賃上げ促進税制は人件費の側の税制なので、設備投資の側とは分けて考えます。

制度 一言で言うと 事前の手続き
中小企業投資促進税制 設備を買って使い始めたあと、申告で適用を選ぶ 事前の認定は不要
中小企業経営強化税制 経営力向上計画の認定を受けた会社が、その計画に基づいて設備を取得する 取得前に、計画の認定が必要(原則)
少額減価償却資産の特例 一定額未満の小さな設備を、取得した年に一括で経費にする 事前の認定は不要
固定資産税の特例 認定された先端設備等導入計画に基づく設備の固定資産税を軽減する 取得前に、市町村の認定が必要
賃上げ促進税制 給与等の支給額を増やした分を、税額から控除する(人件費の側) 事前の認定は不要

📊 このセクションの要点

設備投資の税制は、買ったあとに申告で選べるものと、買う前に認定が必要なものに分かれます。契約や発注の前に、どちらにあたるかを確認します。

賃上げ促進税制については、賃上げ支援の地図の記事で整理しています。中小企業税制の全体像は、中小企業税制の解説記事も参考になります。

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中小企業投資促進税制|事前の認定が要らない税制

青色申告をしている中小企業者などが、新品の機械装置などを取得して事業に使ったときに、特別償却か税額控除のどちらかを選べる制度です。特別償却は、普通の償却に上乗せして経費にできる仕組みで、税額控除は法人税から直接差し引ける仕組みです。両方は使えません。税額控除を選べるのは、資本金などの規模が一定以下の会社などです。

項目 中身
対象者 青色申告の中小企業者等(大規模法人の支配下にある場合などは除外)
選べるもの 特別償却、または税額控除のどちらか
対象設備 機械装置、測定工具・検査工具、一定のソフトウェア、貨物自動車、内航船舶など
手続き 事前の認定は不要。事業に使い始めたあとの確定申告で適用を受ける
対象外 中古品、貸付用の設備など

つまずきやすい4つの点

注意点 内容
対象設備が決まっている 設備の種類ごとに、最低の取得価額などの基準がある
中古や貸付用は対象外 新品を自社で使う設備が対象
パソコンは対象外 一定の電子計算機などは対象外。中小企業庁は経営強化税制の検討を案内している
期限のある制度 適用期間が定められている。最新は公式で確認する

📊 このセクションの要点

投資促進税制は、事前の認定が不要で、事業に使い始めたあとの確定申告で適用します。対象設備の種類と基準を、買う前に確認しておきます。

中小企業経営強化税制と経営力向上計画|順番が命

経営強化税制は、中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受けた会社が、その計画に基づいて一定の設備を取得して事業に使ったときに、即時償却(取得した年に全額を償却)か税額控除を選べる制度です。

手続きの順番

順番 やること ポイント
1 工業会の証明書、または経済産業局の確認書を取る 設備の取得前に取得する。設備の類型で書類が違う
2 経営力向上計画を申請して、認定を受ける 事業分野の主務大臣に申請。中小企業庁は受付をしていない
3 認定のあとに設備を取得する 原則は取得前に認定が必要。例外はあるが、あてにしない
4 確定申告で適用を受ける 認定書の写しなどを添付する

注意

経営力向上計画に位置づける設備は、取得前に認定を受けることが必要です。契約・発注・取得のあとで気づいても、原則として使えません。例外の扱いは、中小企業庁の最新の案内でご確認ください。

設備の類型で、必要な書類が違う

類型 要件の骨格 必要な書類
A類型(生産性向上設備) 旧モデルに比べて、生産性が一定以上向上している設備 設備メーカーを通じて取得する工業会の証明書
B類型(収益力強化設備) 投資利益率が一定以上になる見込みの投資計画に必要な設備 経済産業局の確認書。事前に公認会計士または税理士の確認を受ける
そのほか D類型(経営資源集約化に資する設備)、E類型(経営規模拡大設備)がある 類型ごとに確認書などが必要

経営力向上計画の位置づけ

支援の種類 中身
税制措置 経営強化税制など
金融支援 融資や信用保証などの支援
補助金 認定事業者を優先して採択する補助金がある(加点の扱いは公募要領で確認)
策定の支援 商工会議所、金融機関、士業などの認定経営革新等支援機関が支援する

📊 このセクションの要点

経営強化税制は、計画の認定が先です。経営力向上計画は、税制だけでなく、金融支援や補助金の優先採択にもつながる「入口の書類」です。

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補助金との併用|補助金は課税される、設備の税制とは原則併用できる

場面 考え方
補助金そのもの 収入として課税の対象になる
いつの収入になるか 年度の扱いは、税理士に確認する
圧縮記帳 補助金で設備を取得した場合に、課税を繰り延べる処理。課税がなくなるわけではない
設備の税制との併用 補助金を受けた設備でも、原則として投資促進税制・経営強化税制の対象になる

併用するときの4つの注意

注意点 内容
補助金側の制限 補助事業が税制との併用を制限している場合がある。公募要領を確認する
圧縮後の取得価額 圧縮記帳をすると、税務上の取得価額は圧縮後の金額になる。基準を下回ると対象外になる場合がある
同じ設備での重複不可 同じ減価償却資産で、2つ以上の特別償却・税額控除は受けられない
控除額の上限 税額控除には、その年の法人税額に応じた上限があり、超えた分は翌年度に繰り越せる

補足

圧縮記帳をするかどうか、その計算は、税理士の領域です。個別の税務判断は、顧問の税理士にご確認ください。

📊 このセクションの要点

補助金は収入として課税されますが、圧縮記帳で課税の時期をずらす方法があります。設備の税制とは原則併用できますが、補助金側の条件の確認が必要です。

小さな設備と固定資産税の特例

少額減価償却資産の特例

項目 中身
対象者 青色申告の中小企業者等
内容 取得価額が一定額未満の設備を、取得した年に一括で経費にできる
上限 年間に使える合計額に上限がある
重複 同じ設備で、特別償却や税額控除と重ねて使うことはできない
期限 適用期間が定められている。最新の要件は国税庁で確認する

小さな設備はこの特例、大きな設備は投資促進税制か経営強化税制、という整理が基本になります。

固定資産税の特例(先端設備等導入計画)

認定された先端設備等導入計画に基づいて新しく取得した償却資産について、市町村の判断で、固定資産税を軽減する制度です。軽減の内容は、賃上げ方針の表明の度合いなどで変わり、市町村によって取扱いが異なる場合があります。

順番 やること
1 認定経営革新等支援機関に、事前の確認を受ける
2 従業員に向けて、賃上げの方針を表明する
3 設備を導入する市町村に、先端設備等導入計画を申請して、認定を受ける
4 認定のあとに、設備を取得する

補足

経営力向上計画は国の主務大臣が認定する計画、先端設備等導入計画は市町村が認定する計画で、別の計画です。名前が似ているため、混同しないようにしてください。

📊 このセクションの要点

小さな設備は少額の特例、固定資産税には市町村の計画が先に必要です。いずれも期限のある制度で、取得前の確認が欠かせません。

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悩みから逆引き|どの税制を見るか

場面 見る制度 事前の手続き
買ったあとに、申告で選びたい 中小企業投資促進税制 認定は不要
設備を大きく、早く償却したい 中小企業経営強化税制 経営力向上計画の認定が先
小さな設備をたくさん買う 少額減価償却資産の特例 認定は不要
固定資産税の負担が重い 固定資産税の特例 市町村の認定が先
補助金で買った設備 併用の条件を確認 公募要領と税制の条件を両方見る

順番と注意

注意点 内容
買う前に確認 契約・発注・取得の前に、使える税制を確認する
併用は事前に確認 補助金の公募要領と、税制の条件の両方を見る
適用には期限 期限のある制度が多い。最新の案内を確認する
得かどうかは会社で違う 利益や税額によって効果が違う。黒字で法人税を払っている会社に向きやすい制度が多い

専門家に任せる範囲

内容 相談先
税務の判断・申告 税理士
圧縮記帳の要否と計算 税理士
経営力向上計画・先端設備等導入計画の策定 認定経営革新等支援機関(商工会議所・金融機関・士業など)
設備の証明書 設備メーカー・工業会
制度の整理・選び方 壱市コンサルティング(制度の整理のご相談)

設備投資の税制のよくある質問

Q1.補助金を使う設備でも、税制は使えますか。

A1.原則として使えます。ただし、補助金側の条件の確認が必要です。中小企業庁は、補助金を受けた設備でも原則として投資促進税制・経営強化税制の対象になるとしています。ただし、補助事業が税制との併用を制限している場合があるため、公募要領を確認してください。

Q2.補助金には税金がかかりますか。

A2.収入として課税の対象になります。国庫補助金等で固定資産を取得した場合は、圧縮記帳という処理で、課税の時期をずらす方法があります(国税庁の法人税基本通達に定めがあります)。いつの年度の収入になるか、圧縮記帳の要否と計算は、税理士に確認してください。

Q3.経営強化税制は、設備を買ったあとでも使えますか。

A3.原則は、取得前に計画の認定が必要です。中小企業庁は、経営力向上計画に位置づける設備は取得前に認定を受けることが必要としています。例外の扱いは、最新の案内で確認してください。

Q4.投資促進税制と経営強化税制は、同じ設備で両方使えますか。

A4.同じ設備では、2つ以上の特別償却・税額控除は受けられません。同じ減価償却資産で、2つ以上の特別償却・税額控除に係る税制の適用を受けることはできません。どちらを選ぶかは税理士に相談してください。

Q5.経営力向上計画と先端設備等導入計画は同じですか。

A5.別の計画です。経営力向上計画は事業分野の主務大臣が認定し、先端設備等導入計画は市町村が認定します。目的の制度も異なります。

Q6.赤字の会社でも使えますか。

A6.制度によって使える場面が異なります。税額控除は法人税額を前提とするため、赤字の会社は控除を使える場面が限られます。個別の判断は税理士に確認してください。

まとめ|設備投資の税制の4つのポイント

ポイント 内容
1.地図 投資促進税制、経営強化税制、少額の特例、固定資産税の特例の4つで整理する
2.分かれ目 買ったあとに申告で選べるか、買う前に認定が必要か
3.補助金との関係 補助金は収入として課税。設備の税制とは原則併用できるが、補助金側の条件を確認する
4.専門家 個別の税務判断は税理士。計画づくりは認定経営革新等支援機関

率・期限・対象設備は年度で変わります。契約や発注の前に、最新の公式資料を必ずご確認ください。

主な参照元(公式)

・中小企業庁 中小企業投資促進税制
・国税庁 タックスアンサー No.5433(中小企業投資促進税制)、No.5434(中小企業経営強化税制)、No.5408(少額減価償却資産の特例)
・中小企業庁 中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き/経営力向上計画策定の手引き/経営強化税制Q&A集
・中小企業庁 固定資産税の特例(中小企業等経営強化法による支援)
・国税庁 法人税基本通達 第10章第2節(国庫補助金等で取得した資産の圧縮記帳)

制度の整理のご相談

設備投資の制度で迷ったら、まず制度の整理から

壱市コンサルティングでは、設備投資を考えている経営者に向けて、補助金と税制のどれから見ればよいかを整理するご相談をお受けしています。書類の作成や手続きなど、士業の業務にあたる部分は、提携先の士業事務所と連携して対応します。

📋 制度の整理

補助金・税制・経営力向上計画のうち、自社の設備投資に関わる制度と、確認すべき順番を整理します。

🤝 士業事務所との連携

税務の判断や書類の作成など、士業の業務にあたる部分は、提携先の士業事務所と連携して対応します。

買う前にご相談いただくほど、選べる対応は広がります。

こんなお悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください

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