【経営者向け】損益計算書の見方|4つの利益で会社の稼ぐ力・銀行が見る点・値上げ判断
決算書を渡されても、売上と利益の数字が並んでいるだけで、どこを見ればよいのか分からない。そんな経営者の方は少なくありません。損益計算書は、1年間でいくら稼いだかを示す成績表です。見るべきなのは、売上の次に出てくる4つの利益です。
4つの利益は、売上から費用を順に引いていく途中で出てきます。それぞれ「何を引いたあとの利益か」が違うため、どの利益が弱いかを見るだけで、会社のどこに問題があるのかが絞り込めます。
本記事では、4つの利益の意味、問題の見つけ方、金融機関が融資の相談でよく見る点、値上げやコスト見直しの判断への使い方を整理します。解説動画の内容に沿った個別解説です。数字はすべて架空の例で、税金の計算や個別の税務には触れていません。
損益計算書は「1年間の稼ぎの成績表」|売上から順に引くと4つの利益が出る
損益計算書は、1年間の売上から費用を順番に引いていき、最後にいくら残ったかを示す表です。費用の種類が変わるたびに利益の名前が変わるので、4つの利益が出てきます。中小機構の解説でも、売上総利益、営業利益、経常利益、当期純利益の順に整理されています。
| 利益 | 何を引いたあとの利益か | A社の数字(年間) |
|---|---|---|
| 売上総利益(粗利) | 売上高から、仕入れや材料費などの売上原価を引いたもの | 10,000万円-6,500万円=3,500万円 |
| 営業利益 | 粗利から、人件費・家賃などの販売費及び一般管理費(販管費)を引いたもの。本業の利益 | 3,500万円-3,000万円=500万円 |
| 経常利益 | 営業利益に、受け取る利息・支払う利息など本業以外の損益を加減したもの | 500万円-利息150万円=350万円 |
| 当期純利益 | 経常利益に臨時の損益を加減し、税金などを引いた最終の利益 | 最終的に会社に残る利益(金額は扱いません) |
A社は、年間の売上が1億円、売上原価が6,500万円の会社です。売上から原価を引いた粗利は3,500万円、そこから販管費3,000万円を引くと営業利益は500万円になります。A社は借入があり、年間150万円の利息を払っているので、経常利益は350万円です。
粗利を売上で割ると「粗利率」
粗利を売上で割った割合が粗利率です。A社は3,500万円÷1億円で35%です。100円売って、粗利が35円残るということです。この粗利率が、会社の稼ぐ力の出発点になります。
📊 このセクションの要点
損益計算書は、売上から費用を順に引いていく成績表です。引く費用が変わるたびに、売上総利益、営業利益、経常利益、当期純利益と名前が変わります。
4つの利益がそれぞれ教えてくれること
| 利益 | 教えてくれること |
|---|---|
| 売上総利益(粗利) | 商品やサービスそのものの稼ぐ力 |
| 営業利益 | 人件費や家賃を含めた、本業全体の稼ぐ力 |
| 経常利益 | 利息まで含めた、会社の通常の力 |
| 当期純利益 | 最終的に会社に残る力 |
つまり、どの利益が弱いかが分かれば、どこに問題があるかが分かります。粗利が弱いなら商品やサービスの段階、営業利益が弱いなら販管費の段階、経常利益が弱いなら利息の段階に原因があると、順に絞り込めます。
📊 このセクションの要点
4つの利益は、それぞれ稼ぐ力の違う段階を表します。弱い利益を見つけることが、問題の場所を見つける第一歩です。
問題の見つけ方|よくある3つのパターン
損益計算書で問題が出やすい場所は、大きく3つに分けられます。粗利が薄い、販管費が重い、借入の利息が重い、の3パターンです。A社と比べて見てみます。
| パターン | 数字の例(年間) | 見方 |
|---|---|---|
| 1.粗利が薄い(B社) | 売上1億円、粗利2,000万円(粗利率20%)、販管費1,800万円、営業利益200万円 | 販管費を抑えても営業利益は200万円しか残らない。売上を増やしても残りにくい |
| 2.販管費が重い(C社) | 粗利3,500万円(A社と同じ35%)、販管費3,300万円、営業利益200万円 | 売上に対する販管費の割合がA社は30%、C社は33%。人件費・家賃・広告費などの使い方を見直す |
| 3.借入の利息が重い(D社) | 営業利益500万円(A社と同じ)、支払利息450万円、経常利益50万円 | 本業の力は同じでも、利息が営業利益の9割を食っている |
パターン1|粗利が薄い会社
B社は売上が1億円でも、粗利率が20%しかありません。販管費を1,800万円まで抑えても、営業利益は200万円しか残らないという会社です。このパターンは、売上を増やしても残りにくいのが特徴です。見直すのは、価格、仕入れ先、売っている商品の組み合わせです。
パターン2|販管費が重い会社
C社は粗利率がA社と同じ35%なのに、販管費が3,300万円かかっていて、営業利益が200万円まで下がっています。売上に対する販管費の割合は、A社が30%、C社が33%です。見直すのは、人件費、家賃、広告費などの使い方です。
パターン3|借入の利息が重い会社
D社は営業利益が500万円とA社と同じですが、支払利息が450万円かかり、経常利益は50万円しか残りません。営業利益と経常利益の差を見ると、利息の重さが分かります。このパターンは、本業の稼ぎを増やすだけでなく、借入の返し方や、借入の条件を見直すことも大切になります。
自社の数字で見る3つの点
| 見るところ | 計算 | 分かること |
|---|---|---|
| 1.粗利率 | 売上総利益 ÷ 売上高 | 商品やサービスの稼ぐ力 |
| 2.販管費の割合 | 販管費 ÷ 売上高 | 固定的な費用の重さ |
| 3.営業利益と経常利益の差 | 営業利益 - 経常利益 | 借入の利息の重さ |
まずはこの3つを出してみてください。1年分だけでなく、3年分を並べて見ると、数字がよくなっているのか、悪くなっているのかという流れまで分かります。
📊 このセクションの要点
問題の場所は、粗利、販管費、利息の3つに絞り込めます。粗利率、販管費の割合、営業利益と経常利益の差を、3年分並べて確認します。
銀行が損益計算書で見ることが多い点
融資の相談をすると、金融機関は損益計算書を見ます。中小機構の起業マニュアルにも、融資を依頼するとき、担当者が最初に目を向けるのが損益計画だと書かれています。ただし、何を重視するかは金融機関や案件によって異なります。ここでは、よく見られる点を一般的な目安としてお伝えします。審査の基準を示すものではありません。
| 見られる点 | 内容 |
|---|---|
| 1.本業で利益が出ているか | 営業利益がプラスなら、本業で稼げているという確認になる |
| 2.利息を払ったあとも黒字か | 経常利益がプラスなら、今の借入の利息を払っても残るか、新しく借りた場合に返していけるかを考える材料になる |
| 3.利益が続いているか | 1年だけでなく、3年分の流れで安定しているかを見られることが多い |
補足
赤字の年があるときは、その理由と立て直しの見通しを、自分の言葉で説明できるようにしておくと安心です。理由が分かっている赤字と、理由が分からない赤字では、受け取られ方が変わります。
借りる前に、自社の損益計算書を3年分並べて、今お伝えした点を確認しておいてください。数字の意味を自分の言葉で説明できる経営者は、金融機関との話もスムーズに進みます。
📊 このセクションの要点
本業の利益、利息を払ったあとの黒字、利益の続き方が、よく見られる3点です。3年分を並べて、自分の言葉で説明できる状態にしておきます。
値上げ・コスト見直しの判断に使う|どの利益に効くかで結果が変わる
同じ金額の改善でも、どの利益に効くかで結果が変わります。A社で、3つの手を同じ5%で比べてみます。いずれも、お客様が買う数量は変わらないという前提です。
| 打つ手 | 起きること | 営業利益(年間) |
|---|---|---|
| 5%値上げ | 売上が500万円増え、費用は変わらない。粗利率も約38%に上がる | 500万円 → 1,000万円(+500万円) |
| 売上原価を5%減らす | 原価6,500万円の5%=325万円が減る | 500万円 → 825万円(+325万円) |
| 販管費を5%減らす | 販管費3,000万円の5%=150万円が減る | 500万円 → 650万円(+150万円) |
同じ5%でも、値上げがいちばん大きく営業利益に効いています。ただし、これは買う数量が変わらない前提の計算です。値上げでお客様が減れば、効果は小さくなります。
判断の4つの注意
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| 値上げ | 数量が減ると効果が小さくなる。お客様の反応を見ながら進める |
| 原価の見直し | 品質が落ちないかを必ず確かめる |
| 販管費の見直し | 人材や広告など、稼ぐ力まで削らないようにする |
| 数字の前提 | 数量や費用が変わらないという前提の目安。実際は変わる |
設備投資に補助金を使うことを検討するときも、まず損益計算書で採算が成り立つかを確認しておくと安心です。補助金は採択されるとは限らず、お金が入るのも基本的に後払いです。補助金の条件は、必ず公募要領で確認してください。
📊 このセクションの要点
値上げ、原価の見直し、販管費の見直しは、効く利益が違います。数量が変わらない前提の目安として比べ、実際の動きを見ながら判断します。
損益計算書は、4つの利益に分けて見るだけで十分役に立つ
中小企業診断士として経営者と話していて感じるのは、損益計算書を4つの利益に分けて見るだけで、悩んでいた場所がはっきりするということです。細かい計算は必要ありません。まずは自社の損益計算書を3年分並べて、粗利率、営業利益、経常利益を出してみてください。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 1.4つの利益に分けて見る | 売上総利益・営業利益・経常利益・当期純利益 |
| 2.弱い場所を探す | 粗利、販管費、利息のどこが弱いか |
| 3.銀行の見る点を確認する | 借りる前に、自社で3年分を見ておく |
| 4.打つ手を数字で選ぶ | どの利益に効く手かを比べて決める |
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参考:中小機構 J-Net21「決算書とは?」、同 起業マニュアル「損益計画の書き方」。
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