【経営者向け】躍進的な事業推進のための設備投資支援事業とは|助成率と自己負担、審査で見られる点・国の補助金との併願
結論(先に答えます)
・助成率は区分とコースで決まり、最大で5分の4(小規模企業者の賃上げコース)。助成額は100万円から1億円で、アップグレード促進だけ1億円から2億円です。
・助成金は後払いです。たとえば税抜3,000万円の設備なら、先に3,300万円(消費税込み)を払い、助成の2,250万円(4分の3の場合)はあとから入ります。賃上げコースは2回に分けて入ります。
・審査では、財務の安全性・収益性・成長性と、計画の実現性、設備の価格が見られます。国の補助金との併願は可能ですが、同じ設備で二重には受け取れません。
この記事は、都内で数千万円規模の機械設備を入れたい中小の会社の経営者向けに、東京都中小企業振興公社(以下、公社)の「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」を、公社の募集要項をもとに整理したものです。金額の例は、税抜3,000万円の設備を入れる仮の例です。募集の回ごとに条件が変わるため、最終的には公社の募集要項で確認してください。
躍進的な事業推進のための設備投資支援事業とは?どんな会社の、どんな設備が対象か
公社が行う助成事業で、都内で2年以上事業をしている中小の会社・個人事業者が、量産のための機械装置・器具備品・ソフトウェアを新しく入れる費用の一部を助成します。研究開発で、量産や販売の目途が立っていないものは対象外です。
対象になる条件の主なものは、次のとおりです(募集要項 p.1・p.5〜6・p.12〜13)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | すべての業種の中小企業者(会社・個人事業者)と中小企業団体等。大企業が実質的に経営に参画していないこと |
| 都内の要件 | 基準日現在、都内に登記簿上の本店または支店があり、都内の事業所で継続して2年以上事業を行っている。機械設備を都外に置く場合は、都内に本店があること |
| 対象経費 | 機械装置・器具備品・ソフトウェアの新規導入と、搬入・据付等(稼働に最低限必要な訓練費用を含む)。消費税等は対象外 |
| 1基の下限 | 機械装置・器具備品は1基50万円(税抜)以上。ソフトウェアは1基300万円以上2,000万円以下で、複数基でも合計2,000万円以下 |
| 対象外 | 単なる更新、研究開発(量産・販売の目途が立っていない)、自家発電設備、運転資金、設備を外注先・関係会社が使うもの など |
| 申請方法 | Jグランツ(国の電子申請システム)のみ。GビズIDプライムのアカウントが必要 |
医療法人・社会福祉法人・NPO法人・学校法人・一般社団法人などは、中小企業基本法上の中小企業にあたらないため、申請できません(個人開業医は申請できます。募集要項 p.26)。GビズIDプライムの取り方は、GビズIDプライム登録の完全ガイドで整理しています。
助成率と助成額は?区分とコースで何が変わるか
助成率は区分(Ⅰ競争力強化・Ⅱ後継者チャレンジ・Ⅲアップグレード促進)とコース(通常・ゼロエミ・賃上げ)で決まります。最大は5分の4以内で、数字はどれも「以内」の上限です。

| 区分 | 通常 | ゼロエミ | 賃上げ |
|---|---|---|---|
| Ⅰ 競争力強化・中小企業者 | 1/2以内 | 3/4以内 | 3/4以内 |
| Ⅰ 競争力強化・小規模企業者 | 2/3以内 | 3/4以内 | 4/5以内 |
| Ⅱ 後継者チャレンジ | 2/3以内 | 3/4以内 | 3/4以内 |
| Ⅲ アップグレード促進 | — | 3/4以内 | 3/4以内 |
助成額は、ⅠとⅡが100万円から1億円、Ⅲが1億円から2億円です。小規模企業者は、製造業・その他が従業員20人以下、商業・サービス業が5人以下です(募集要項 p.5)。Ⅲは、ゼロエミコースと賃上げコースのどちらの要件も満たす必要があります。ゼロエミコースと賃上げコースは併用できません。
ゼロエミコースまたは賃上げコースで申請した場合、審査の結果、適用される率が変わり、申請した助成額と決定額が異なることがあります(募集要項 p.2・p.26)。表の率は、申請どおりに決まるとは限りません。
Ⅲのアップグレード促進は、増産の要請に関する証明書と、パートナーシップ構築宣言の写しも必要です(募集要項 p.11〜12)。どの区分も、設備投資のあと、従業員1人当たりの付加価値額(労働生産性)を年率3%以上向上させる計画が必要です。
3,000万円の設備なら、自己負担はいくらになるか
税抜3,000万円の設備なら、通常コースの2分の1で自己負担は1,500万円、ゼロエミ・賃上げの4分の3で自己負担は750万円です。コースの選び方だけで、自己負担が750万円変わります。

| コース(率) | 助成 | 自己負担 |
|---|---|---|
| 通常コース(2分の1) | 1,500万円 | 1,500万円 |
| ゼロエミ・賃上げ(4分の3) | 2,250万円 | 750万円 |
助成は税抜の経費に対して計算します。この例では、消費税(10%)の300万円は、助成の計算に入りません。支払いの総額は、消費税込みで3,300万円になります。
同じ区分で、小規模企業者の賃上げコース(5分の4)なら、同じ3,000万円の設備で助成は2,400万円です。ただし、率は申請どおりに決まるとは限らないため、資金計画は、率が下がった場合も試算しておくと安全です。
助成金はいつ入る?後払いの資金繰りにどう備えるか
助成金は設備代金を支払ったあとに交付される後払いです。公社のスケジュールでは、完了検査から助成金の確定まで約1か月、確定から交付まで約1か月とされています。この間は、立て替える資金が必要です。

- 支払いは振込で:経費の支払いは、金融機関か郵便局からの振込にします(普通預金または当座預金から。募集要項 p.22)。
- 助成対象期間の中に終える:交付決定日の翌月1日から1年6か月の中に、契約・納品・支払いまで完了する必要があります(募集要項 p.1・p.13)。分割払いも、すべての支払いがこの期間内に完了していることが条件です。
- 金額は確定で変わりうる:助成金額は完了検査のあとに確定し、交付予定額から減ることがあります(募集要項 p.22)。
- つなぎの資金を先に決める:この例なら、助成が入るまで2,250万円を立て替える形です。手元資金で足りない分は、金融機関に、助成が入るまでの資金を、申請の前に相談しておくと安全です(当社の見立てです)。
見積書は、機械設備1機種につき、同じメーカー・同じ型番で2社から取り、安いほうを採用します。取れない場合は見積限定理由書を出します。「一式」と書かれた見積書は対象外です(募集要項 p.13)。
賃上げコースとゼロエミコース、どちらを選ぶか
賃上げの計画が立てられるなら賃上げコース、省エネの効果を示せるならゼロエミコースが目安です。賃上げコースは、率が高い一方で、2回に分かれて入り、条件を守れないと率が適用されないことがあります。
| 項目 | 賃上げコース | ゼロエミコース |
|---|---|---|
| 率 | 3/4以内(小規模企業者は4/5以内) | 3/4以内 |
| 条件 | 給与支給総額を基準の1.02倍以上にし、事業場内の最低賃金を、地域別最低賃金+30円以上にする | 「ゼロエミッション概要書」の内容を総合的に判断し、省エネ効果が高いと見込まれる計画で率が高くなる |
| 助成金の入り方 | 2回に分けて交付 | 賃上げコースのような分割の記載は、募集要項にない |
| 気をつける点 | 計画または達成状況が確認できない場合、率が適用されないことがある。全従業員の賃金台帳の写しが必要 | 審査の結果、適用される率が変わることがある |

賃上げコースでは、1回目は賃上げの優遇を受けない率(2分の1〜3分の2)で計算した額、2回目は、賃金引上げ計画の達成を確認したあとに、賃上げの率(4分の3〜5分の4)で計算した額から1回目を引いた額が交付されます(募集要項 p.4)。公式の例では、対象経費6,000万円・助成率4分の3で、助成額は4,500万円、1回目が3,000万円、2回目が1,500万円です。
給与支給総額の基準は、基準日の前月までの12か月間に全従業員(役員を除く)に支払った給与で、計画の期間は、助成事業が完了した月の翌月からの12か月間です(募集要項 p.8)。最近の変更点として、賃上げコースの2回払いと、全従業員の賃金台帳の写しの提出が、公社のページに載っています。
審査では何が見られる?一次審査と二次審査
審査は一次審査(申請の条件の確認・経理・事業計画)と、二次審査(面接・価格)の2段階です。経理では財務の安全性・収益性・成長性、事業計画では目的との適合性・優秀性・実現性・成長・発展性・計画の妥当性が見られます。
| 段階 | 見られる点 |
|---|---|
| 一次審査 | 申請の条件の確認(募集要項の要件に合っているか)/経理審査(財務内容の安全性・収益性・成長性)/事業計画審査(目的との適合性・優秀性・実現性・成長・発展性・計画の妥当性) |
| 二次審査(一次を通った会社のみ) | 面接審査と、価格審査(機械設備が、一般的な市場価格に対して著しく高額でないか)。そのうえで総合審査会で決定 |
| 計画の数字 | 従業員1人当たりの付加価値額(労働生産性)を、設備投資から3〜5年後のいずれかの時点で年率3%以上向上。伸び率は、3年後9%以上、4年後12%以上、5年後15%以上(募集要項 p.12) |
申請書の収支計画には、売上や営業利益の根拠と、計画どおり進まなかった場合の次善策を書きます(募集要項 申請書記載例 p.56)。審査は非公開で、審査に関する個別の問い合わせには答えてもらえません(p.21)。現地調査は、申請した全社が対象ではありません(p.19)。
過去の採択の傾向は、採択事例の分析記事で整理しています。第13回の解説記事や第12回の完全解説も、回ごとの違いを知る参考になります。回によって基準日や期間が違うため、必ず最新の募集要項と照らしてください。
国の補助金と併願できるか
国など他の機関の助成金・補助金とは併願できます。ただし、同じ設備で二重に受け取ることはできず、両方に採択されたら、どちらかを辞退します。公社のほかの助成事業とは、同じ設備で併願できません。
| 併願の相手 | 同じ設備での併願 | 補足 |
|---|---|---|
| 公社のほかの助成事業 | できない | どちらか一方のみを申請する |
| 他の機関の助成金(ものづくり補助金など) | できる | 同じ設備(同じ型番)で二重に受け取れない。両方採択ならどちらかを辞退 |
併願で機会を増やす見方と、設備ごとにどの制度で出すかを先に決める見方があります。設備ごとの割り当てを先に決めておくと、採択後の辞退や、資金計画の組み直しを避けられます。国の制度の率や要件は、それぞれの公募要領で確認してください。東京都の制度を広く見たいときは、東京都のおすすめ補助金・助成金の記事もご覧ください。
申請の前に確認することは?
申請の前に決めておくのは、コース・資金・設備ごとの制度の割り当ての3つです。あわせて、GビズIDプライムの取得と、前の採択事業の確定・審査中の申請がないかを確認します。
- ☐ コース(賃上げか、ゼロエミか)を決め、自己負担の試算を、率が下がった場合も含めて作る
- ☐ 先に払う額(消費税込み)と、助成が入るまでのつなぎの資金を決める
- ☐ 設備ごとに、どの制度で申請するかを決める(公社のほかの助成事業とは同じ設備で併願しない)
- ☐ GビズIDプライムを取得する(公社の募集要項では、発行に2週間ほどかかるとされています。GビズIDの公式では、書類での申請の審査は最大1か月です)
- ☐ 同じ回は1社1申請。前の採択事業が確定していない、または審査中の申請があると、申請できない
- ☐ 「自己負担なしで導入できる」といった勧誘に注意する(公社は個別の製品の認定をしていません)
補足
2026年11月2日時点で、公社のページでは、第14回の申請書類の提出期間は、2026年10月23日(金)9時〜11月24日(火)13時(Jグランツで受付)とされています。回ごとに基準日・受付期間・助成対象期間が変わるため、最新の情報は公社のページで確認してください。申請はJグランツのみで、持参・郵送・メールは受け付けられません。
導入した設備を移したり処分したりするときは、事前の承認が必要です。期間は、完了した年度の翌年度から、10年か法定耐用年数のうち、早い日までです(募集要項 p.25)。
よくある質問(FAQ)
Q1.個人事業者でも申請できますか?
A1.申請できます。対象は、中小企業者(会社・個人事業者)です。都内で継続して2年以上事業を行っていることなどが条件です。医療法人・社会福祉法人などは申請できませんが、個人開業医は申請できます。
Q2.消費税も助成の対象ですか?
A2.対象外です。助成は、消費税等の間接経費を除いた経費に対して計算します。支払いは消費税込みになるため、資金計画では、税込みの額で考えてください。
Q3.賃上げコースとゼロエミコースは、併用できますか?
A3.併用できません。ただし、アップグレード促進の区分は、両方のコースの要件を満たすことが必要です。
Q4.国の補助金と併願できますか?
A4.併願できます。ただし、同じ設備(同じ型番)で二重に受け取ることはできず、両方採択された場合は、どちらかを辞退します。公社のほかの助成事業とは、同じ設備で併願できません。
Q5.見積書は何社分が必要ですか?
A5.同じメーカー・型番で2社分です。安いほうを採用します。2社分を取れない場合は、見積限定理由書を出します。「一式」と書かれた見積書は対象外です。
Q6.助成金は、いつ入りますか?
A6.設備代金を支払ったあとの後払いです。公社のスケジュールでは、完了検査から助成金の確定まで約1か月、確定から交付まで約1か月です。賃上げコースは、賃金引上げ計画の期間(事業完了の月の翌月からの12か月間)が終わり、達成を確認したあとに、2回目が交付されます。
出典と注意
この記事の内容は、次の公式資料によります(確認日:2026年11月2日)。募集の回ごとに条件が変わるため、最新の情報は公社のページでご確認ください。ページ番号は、募集要項に印字されたページ番号です。
- 東京都中小企業振興公社「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」第14回 募集要項(助成率 p.2、スケジュール p.3、賃上げコース p.4・p.8、対象 p.5〜13、審査 p.19〜21、注意事項 p.22〜25、よくあるご質問 p.26)
https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/setsubijosei/h0iqeh000001jkzg-att/r8_14yakushin_youkou_ver.1.pdf - 東京都中小企業振興公社 第14回のページ(賃上げコースの注意事項、受付期間、勧誘への注意)
https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/setsubijosei/yakushin-14th.html - 東京都中小企業振興公社 事業全体のページ
https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/setsubijosei/yakushin.html
補助金の申請支援から、財務の分析や財務支援まで、中小企業を支えています。今日の内容について、ご相談があれば、公式LINEから事前相談をどうぞ。
※この記事は、公社の募集要項にもとづく一般的な制度の整理で、個別の助言ではありません。採択を保証するものではありません。申請する回ごとの条件は、募集要項で必ずご確認ください。金額の例は、税抜3,000万円の設備の仮の例です。
※ご相談は、制度の整理が中心です。書類作成や手続きなど士業の業務にあたる部分は、提携先の士業事務所と連携します。
株式会社壱市コンサルティング(ICHI-ICHI)
