【社長向け】事業計画書の書き方|銀行に刺さる骨格は「数字の前の3ページ」

【社長向け】事業計画書の書き方|銀行に刺さる骨格は「数字の前の3ページ」

銀行や日本政策金融公庫に出す事業計画書を、数字の表から作り始めていないでしょうか。融資担当者がいちばん気にするのは、貸したお金が返ってくるかどうかです。事業計画書は、返せる根拠を見せる書類だと考えると、書く順番が変わります。

数字を並べる前に、書いておきたいのが「数字の前の3ページ」です。何を売るのか、誰に売るのか、なぜ選ばれるのか。ここが曖昧だと、後ろの数字は願望に見えてしまいます。なお、この記事で紹介する「骨格6つ」「数字の前の3ページ」「よくある失敗3つ」は、壱市コンサルティングの整理であり、公式の決まりではありません。

本記事では、融資担当者が見る点、事業計画書の骨格、売上から資金繰りまで数字を作る順番、よくある失敗、補助金の計画書への転用を整理します。解説動画の内容に沿った個別解説です。数字はすべて架空の例で、融資の可否や条件を示すものではありません。

銀行が見るのは「返せる根拠」|融資担当者が見る5つの点

見られる点は金融機関や案件によって異なります。ここでは、日本政策金融公庫の創業計画書の様式と、中小機構J-Net21の説明をもとに、壱市コンサルティングが5つに整理した考え方を紹介します。

見る点 計画書のどこに書くか
誰に何を売るか 事業の概要・顧客
選ばれる強み 強み・競合との違い
売上の根拠 数値計画
資金の使い道 資金計画
返済の見込み 利益と返済額の比較

大切なのは、この5つがバラバラではなく、1本の線でつながっていることです。

J-Net21が示す「3つの問い」

J-Net21の財務Q&Aでは、金融機関に出す事業計画書は、貸す側の立場で作るよう説明されています。貸す側が最も心配しているのは、貸したお金が返ってこないことだからです。示すべき点は、次の3つです。

問い 示す中身
なぜお金が必要か 設備資金か運転資金か。そのお金で利益が増えることを、具体的な数字で示す
どうやって返すか 売上や利益がいつまでにどの程度伸びるかを、根拠とともに示す。返済は、計画を多少下回っても返せる余裕のある期間で組む
うまくいかないときはどうするか 複数のケースを想定しておく。保有資産の売却などの対応も検討する

📊 このセクションの要点

融資担当者が見るのは、返せる根拠です。誰に何を売るか、強み、売上の根拠、資金の使い道、返済の見込みが1本の線でつながっているかが、計画書の出来を左右します。

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事業計画書の骨格6つと「数字の前の3ページ」

壱市コンサルティングの整理では、事業計画書は次の6つの順番で組み立てます。文章が先で、数字は後です。

順番 項目 答える問い
1 事業の概要 何を売るのか
2 市場と顧客 誰に売るのか
3 強み なぜ選ばれるのか
4 売る仕組み どう売るのか
5 数値計画 いくら稼ぐのか
6 資金計画 いくら必要か

このうち、数字より前に書く事業の概要、市場と顧客、強みの3つを、数字の前の3ページと呼んでいます。1ページ目は、何をいくらで売るのかを一言で言えるようにします。2ページ目は、誰に売るのかを具体的に書きます。「みんな」では数字が作れません。3ページ目は、似た競合ではなく、なぜ自社が選ばれるのかを書きます。

そして売る仕組みが、この3ページと数字をつなぐ橋になります。どうやってお客様に来てもらい、買ってもらうのかです。この部分が曖昧なままだと、数字はただの願望に見えてしまいます。

📊 このセクションの要点

事業の概要、市場と顧客、強みの3つを数字の前に固めます。売る仕組みがその3ページと数字を結ぶ橋になります。いずれも壱市コンサルティングの整理です。

数字は売上から順に作る|架空のB店で考える

数字は、売上、原価と固定費、返済との比較、資金繰りの順に作ります。日本政策金融公庫の創業計画書の様式にも、売上高、売上原価、経費を計算した根拠を書く欄があります。数字だけでなく、その根拠が見られるということです。例として、小さなカフェダイニング「B店」(架空)を考えます。

売上は「客数×単価×営業日数」で積み上げる

項目 数字(架空)
1日の客数 40人
客単価 1,500円
営業日数 月25日
月の売上 40人×1,500円×25日=150万円

大切なのは、40人という客数に根拠があるかどうかです。席の数、近くの人通り、似たお店の混み具合など、根拠を言葉で書けるようにしておきます。

売上から利益を出し、返済と比べる

項目(月・万円) 金額 補足
月の売上 150 ―
原価(売上の30%) ▲45 ―
固定費 ▲80 人件費40、家賃20、その他20
月の利益 25 150-45-80
月の返済(元金のみ) ▲8 700万円を7年(84か月)で返す場合の目安
返済後の残り 17 利息は別にかかる

B店が700万円を借りて7年で返すと、元金だけで月に約8万円です。月の利益25万円から引くと17万円が残ります。実際には利息もかかり、売上が計画を下回る月もあります。J-Net21でも、返済は計画を多少下回っても返せる余裕を持って組むのがよいとされています。

開業直後の資金繰りと、資金計画

月(万円) 売上 利益
1か月目 80 ▲24
2か月目 100 ▲10
3か月目 120 4
4か月目 140 18
安定後 150 25

毎月150万円の売上が最初からあるとは限りません。固定費は毎月80万円かかるため、最初の2か月は合計34万円の持ち出しです。この谷を越えるお金が運転資金で、数字の計画と資金繰りが合っているかを確かめます。

必要な資金 金額(万円) 調達 金額(万円)
内装・厨房設備 650 自己資金 300
開業準備・保証金 100 借入 700
運転資金 250 ― ―
合計 1,000 合計 1,000

運転資金250万円は、最初の持ち出し34万円を十分に上回る額です。資金繰りの谷から逆算して、根拠を持って決めます。資金の使い道は、金額と中身を一覧にして見せるのが基本です。

📊 このセクションの要点

数字は、売上、原価と固定費、返済との比較、資金繰り、資金計画の順に作ります。売上は客数×単価×営業日数で積み上げ、運転資金は資金繰りの谷から逆算します。

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よくある失敗は「つながりのずれ」|3つの典型

よくある失敗も、壱市コンサルティングの整理です。公式のリストではありません。どれも、5つの点がつながっていないという問題です。

失敗 起きること 直し方
売上の根拠が弱い 「頑張って売ります」では数字にならない 客数×単価で積み上げ、根拠を書く
数字と文章がずれる 文章は「高めの単価で勝負」なのに、数字の単価が周りと同じ 強みの文章を数字に反映する
資金の使い道が曖昧 「運転資金として」だけでは中身が見えない 何にいくら使うかを一覧にする

📊 このセクションの要点

売上の根拠が弱い、数字と文章がずれる、資金の使い道が曖昧、の3つは、いずれも計画書のつながりの問題です。

補助金の事業計画書にも使える考え方

誰に何を売るか、強み、売上の根拠、お金の使い道は、補助金の事業計画書でも聞かれる点です。ここまでの整理は、補助金の計画書を書くときの土台にもなります。ただし、様式も審査の観点も制度ごとに異なります。実際に使うときは、その制度の最新の公募要領で確認してください。補助金は、採択されるとは限りません。

数字を作る順番 内容
1.売上を積み上げる 客数×単価×営業日数
2.原価と固定費を引く 利益を出す
3.返済と比べる 利益の中に収まるかを確かめる
4.資金繰りを確かめる 最初の谷を越えられるかを見る

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数字の説得力は、数字の前の3ページで決まる

中小企業診断士として事業計画書を見ていて感じるのは、数字の説得力は、数字の前の3ページで決まるということです。まずは、誰に何を売るのかを一言で言えるようにしてみてください。そこから売上の積み上げへ進めば、計画書はつながりのあるものになります。

関連記事

参考:日本政策金融公庫 国民生活事業「各種書式ダウンロード」(創業計画書・月別収支計画書・資金繰り表の様式と記入例)、中小機構 J-Net21 財務Q&A「金融機関向けの事業計画書の作り方」。

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