【完全ガイド】デジタル化・AI導入補助金とは?5つの申請枠・補助額・加点・採択率まで徹底解説

【完全ガイド】デジタル化・AI導入補助金とは?5つの申請枠・補助額・加点・採択率まで徹底解説

「ソフトやクラウドを入れたいが、費用の半分を補助してもらえる制度はあるのか」「AIツールの導入にも使えると聞いたが、条件が分からない」。中小企業の経営者から、こうした相談が絶えません。この疑問に応える代表的な制度が、デジタル化・AI導入補助金です。

ただし、この制度は申請枠が5種類あり、枠ごとに補助額・補助率・対象経費が大きく異なります。さらに、事務局に登録されたITツールしか対象にならず、IT導入支援事業者と共同で申請するなど、他の補助金とは仕組みが違います。賃上げや生産性向上の約束を伴う枠では、未達のときに返還が生じる点も見落とせません。

本記事では、制度の恒常的な中身を、申請枠・補助額・対象ITツール・申請の流れ・賃上げ要件・加点・採択の実態・つまずきやすい点・来年度の動きの順に整理します。公募回ごとに変わる締切や細かな条件は記載せず、「公募要領で確認する」点として切り分けています。

Contents
  1. デジタル化・AI導入補助金とは|目的としくみ
  2. 5つの申請枠の違い|補助額・補助率の早見表
  3. 通常枠の中身|補助額・プロセス数・対象経費
  4. インボイス枠・セキュリティ対策推進枠・複数者連携枠の特徴
  5. 申請の流れ|準備から効果報告まで
  6. 賃上げ・生産性の要件と、未達のときの返還
  7. 加点項目の考え方|審査で有利になる取組み
  8. 採択の実態|どのくらいの事業者が採択されているか
  9. 申請者の負担と注意点|つまずきやすいポイント
  10. 省力化投資補助金との違いと使い分け
  11. 来年度の動き|概算要求で示されたこと、決まっていないこと
  12. デジタル化・AI導入補助金のよくある質問(Q&A)
  13. まとめ|デジタル化・AI導入補助金を使う5つのポイント

デジタル化・AI導入補助金とは|目的としくみ

デジタル化・AI導入補助金は、正式名称を中小企業デジタル化・AI導入支援事業といい、中小企業基盤整備機構(中小機構)の補助事業です。事務局はTOPPAN株式会社が担います。生産性の向上に役立つITツール(ソフトウェア、クラウドサービス、AI機能、関連する役務など)を導入する経費の一部を補助する制度です。

公募要領は、ITツールを「ソフトウェア(AIを含む)・オプション・役務・ハードウェアの総称」と定義しています。AIは、制度上も補助の対象に明確に含まれています。

他の補助金と違う3つの特徴

この制度の本質は、自社で自由に選んだソフトではなく、事前に登録されたITツールを、登録された支援事業者と一緒に導入する点にあります。特徴を整理すると次のとおりです。

特徴 内容
登録ITツールのみ対象 IT導入支援事業者が提供し、あらかじめ事務局に登録・公開されたITツールの費用だけが対象です。自社で選んで勝手に契約したソフトは対象外です。
共同申請 申請者はIT導入支援事業者とパートナーを組み、共同で申請します。申請内容の入力も、申請者と支援事業者が分担します。
補助金の流れ 補助金は事務局から補助事業者(申請者)へ直接支払われます。ただし後払いで、ITツールの代金はいったん自社で支払います。

POINT

公式サイトの「ITツール検索」で、登録済みのITツールとIT導入支援事業者を探せます。AIを搭載したソフトは登録時に申告する決まりがあり、検索画面にAI搭載の表示が出ます。区分は「生成AI」と「生成AI以外のAI技術(分類・分析・判断・予測など)」です。

申請できる事業者の目安

通常枠の対象者は、業種ごとの資本金または従業員数の基準で決まります。いずれかを満たせば対象となります。

業種 基準(資本金または従業員数)
製造業・建設業・運輸業 資本金3億円以下、または従業員300人以下
卸売業 資本金1億円以下、または従業員100人以下
サービス業(ソフトウェア業・情報処理サービス業・旅館業を除く) 資本金5千万円以下、または従業員100人以下
小売業 資本金5千万円以下、または従業員50人以下
ソフトウェア業・情報処理サービス業 資本金3億円以下、または従業員300人以下
旅館業 資本金5千万円以下、または従業員200人以下
医療法人・社会福祉法人・学校法人 従業員300人以下

注意

大企業の子会社等(みなし大企業)、直近3年の課税所得の年平均が15億円を超える事業者、風俗営業、宗教法人、任意団体、そしてIT導入支援事業者として登録されている事業者などは対象外です。細かな定義は、必ず最新の公募要領で確認してください。

📊 このセクションの要点

デジタル化・AI導入補助金は、登録済みのITツールをIT導入支援事業者と共同で導入する制度です。AIも対象に含まれますが、自社が自由に選んだソフトは補助されません。

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5つの申請枠の違い|補助額・補助率の早見表

公式サイトは、申請枠を「5つの申請枠・類型」と整理しています。目的が違うため、補助額・補助率・対象になる経費も別物です。まず全体像を一覧で押さえてください。

申請枠 支援の中心 補助額 補助率
通常枠 業務のデジタル化を目的としたソフトウェア・システムの導入 5万円以上150万円未満(1プロセス以上)/150万円以上450万円以下(4プロセス以上) 1/2以内(条件を満たすと2/3以内)
インボイス枠(インボイス対応類型) 会計・受発注・決済ソフト、PC・タブレット、レジ・券売機など ソフトは下限なし〜350万円/PC・タブレット等は〜10万円/レジ・券売機は〜20万円 ソフトは50万円以下の部分で3/4以内(小規模事業者は4/5以内)、50万円超の部分は2/3以内。ハードは1/2以内
インボイス枠(電子取引類型) 発注側が受発注システムを導入し、取引先に無償でアカウントを渡すケース クラウド利用費で下限なし〜350万円 中小企業・小規模事業者等のアカウント分は2/3以内、その他は1/2以内
セキュリティ対策推進枠 サイバーセキュリティお助け隊サービスの利用 5万円〜150万円 中小企業は1/2以内、小規模事業者は2/3以内
複数者連携デジタル化・AI導入枠 10者以上の中小企業等が連携して取り組む地域DX・生産性向上 合計上限3,000万円(基盤導入経費は上限350万円) 基盤導入経費はインボイス対応類型と同様。分析経費・その他経費は2/3以内

補足

補助額と補助率は、制度年度や公募回で見直されることがあります。上の表は恒常的な枠組みの整理です。実際に申請するときの数値は、必ずその回の公募要領で確認してください。

枠の選び方の考え方

枠の選択は、導入したいものから逆算します。壱市コンサルティングでは、次の整理で使い分けを案内しています。なお、これは当社の整理であり、公式見解ではありません。

導入したいもの 検討する枠
業務ソフト・クラウド・AIで業務を効率化したい 通常枠(インボイス対応が目的ならインボイス枠)
会計・受発注・決済ソフトやPC・レジをまとめて入れたい インボイス枠(インボイス対応類型)
取引先を巻き込んで受発注をデジタル化したい(発注側) インボイス枠(電子取引類型)
サイバー対策だけを強化したい セキュリティ対策推進枠
商店街・サプライチェーンなどで連携して取り組みたい 複数者連携デジタル化・AI導入枠

📊 このセクションの要点

申請枠は5種類で、補助額・補助率・対象経費は枠ごとに別物です。まず「何を導入したいか」を決め、枠から逆算して選びます。

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通常枠の中身|補助額・プロセス数・対象経費

最も利用者が多い通常枠は、補助額が2段階に分かれます。導入するITツールが持つ「プロセス」の数で、申請できる金額帯が決まる点が特徴です。

補助額の区分 必要な機能要件 賃上げ
5万円以上150万円未満 登録ITツールが持つプロセスを1つ以上含む 原則は加点項目
150万円以上450万円以下 共P-01〜汎P-07のプロセスのうち4種類以上を含む 申請要件(未達なら返還の対象)

プロセスとは、ITツールが担う業務機能の区分です。公募要領では次の区分が示されています。

区分 内容
共P-01 顧客対応・販売支援
共P-02 決済・債権債務・資金回収
共P-03 供給・在庫・物流
共P-04 会計・財務・経営
共P-05 総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス・統合業務
各業種P-06 業種固有のプロセス
汎P-07 汎用・自動化・分析ツール

注意

汎用プロセス(汎P-07)だけでは、単独で申請できません。また、150万円以上の要件を満たしていても、申請額を150万円未満に自主的に抑えて申請することは可能です。賃上げ要件の重さが変わるため、金額の決め方は戦略になります。

補助対象になる経費の分類

大分類 内容 期間・上限
Ⅰ ソフトウェア カテゴリー1:ソフトウェア本体。買取、またはサブスクリプションの使用料 クラウド利用料は最大2年分
Ⅱ オプション カテゴリー2:機能拡張、3:データ連携ツール、4:セキュリティ 最大1年分
Ⅲ 役務 カテゴリー5:導入・活用コンサルティング、6:導入設定・マニュアル作成・導入研修、7:保守サポート 役務は合計200万円が上限。カテゴリー7は最大2年分で1申請につき1つのみ

通常枠の対象経費に、PC・タブレット・レジなどのハードウェアは含まれません。ハードウェアはインボイス枠(インボイス対応類型)の対象です。また、導入するITツールに比べて役務費用の割合が著しく高額でないことも、申請要件とされています。

対象にならない費用の代表例

区分 対象外の例
経費として対象外 交通費・宿泊費、補助金の申請・報告の代行費、消費税、対外的に無償で提供されているもの、リース・レンタル契約(お助け隊サービスを除く)、中古品、交付決定前に購入したもの
ITツールとして登録できない 単一の処理(請求書作成のみなど)しかないソフト、ハードウェア製品、大幅なカスタマイズが必要なもの、製品が完成しておらずスクラッチ開発を伴うもの、導入済みソフトの増台・追加ライセンス、広告宣伝に類するものなど

📊 このセクションの要点

通常枠はプロセス数で補助額の帯が決まります。150万円以上は賃上げが申請要件になり、ハードウェアは対象外です。役務は合計200万円が上限です。

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インボイス枠・セキュリティ対策推進枠・複数者連携枠の特徴

インボイス枠(インボイス対応類型)

インボイス制度への対応を強力に推進するため、通常枠よりも補助率を引き上げて優先的に支援する枠です。会計・受発注・決済ソフトに加え、PC・タブレット、レジ・券売機といったハードウェアが対象になる点が、通常枠との大きな違いです。補助対象経費のうち役務は200万円までです。

通常枠にある労働生産性3%以上といった数値要件は、公募要領上は確認できません(申請者はITツールの継続活用状況等を報告する旨の記載にとどまります)。ただし、前身制度(2022〜2025年度版)で交付決定を受けた事業者は、賃上げが申請要件になります。細部は最新の公募要領で確認が必要です。

インボイス枠(電子取引類型)

取引先との受発注をデジタル化したい発注側が申請する枠です。インボイス対応の受発注システムを導入し、受注側の中小企業・小規模事業者等に無償でアカウントを渡す場合に、クラウド利用費の一部が補助されます。受注側アカウントを上限なく発行できる契約は対象外です。

セキュリティ対策推進枠

対象は、IPA(情報処理推進機構)が公表するサイバーセキュリティお助け隊サービスリストに掲載され、事務局に登録されたサービスです。補助対象はサービス利用料(最大2年分)で、5万円から150万円が補助額の範囲です。事業全体で労働生産性の年平均成長率を1%以上とする3年間の事業計画の策定・実行が求められます。

複数者連携デジタル化・AI導入枠

商業集積地やサプライチェーンの複数の中小企業等が連携してITツールを導入する取組みを、通常枠より高い補助率で支援する枠です。グループ構成員が10者以上必要で、コーディネート費や外部専門家の謝金なども対象になります。ITツールの事前登録が不要である点も、他の枠と異なります。

📊 このセクションの要点

インボイス枠はハードも対象で補助率が高く、電子取引類型は発注側の申請、セキュリティ対策推進枠はお助け隊サービス限定、複数者連携枠は10者以上の連携が前提です。

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申請の流れ|準備から効果報告まで

申請は、事前準備から効果報告まで長い道のりです。契約・発注は交付決定のあとという順序が最大の注意点で、順序を誤ると補助対象外になります。

ステップ 内容
1 制度の理解 公式サイトと公募要領を読み込みます。
2 事前準備 GビズIDプライムを取得します(発行まで概ね2週間)。IPAのSECURITY ACTION「★一つ星」または「★★二つ星」を宣言します。どちらも全枠共通の交付申請の要件です。
3 ツール選定 IT導入支援事業者とITツールを選び、商談・見積を行います。この時点では契約ではありません。
4 マイページ入力 IT導入支援事業者から申請マイページの招待を受け、基本情報を入力します(携帯電話番号によるSMS認証が必要)。
5 申請内容の入力 申請者が必要情報と書類を入力・添付し、IT導入支援事業者がITツール情報と事業計画値を入力します。
6 提出 申請マイページで最終確認・宣誓を行い、事務局へ提出します。
7 審査・交付決定 外部審査委員会の意見聴取を含む審査を経て、交付決定となります。
8 契約・導入 交付決定後に、ITツールの契約・発注、納品・導入、代金の請求・支払いを行います。
9 実績報告 請求書、支払いの証憑、ITツールの利用が分かる画面のキャプチャなどを提出し、確定検査を経て補助金額が確定、交付されます。
10 効果報告 事業計画期間(3年)の効果報告を行います。

注意

交付決定前に契約・発注・納品・支払いをした経費は、補助の対象外です。支払い方法にも制限があり、原則として銀行振込(または口座振替)とクレジットカード1回払いに限られます。現金払い、分割払い、補助事業者名義でない口座からの支払いは認められません。

通常枠の主な提出書類

事業者区分 主な書類
法人 履歴事項全部証明書(発行から3か月以内)、直近の法人税の納税証明書、直近の貸借対照表・損益計算書
個人事業主 運転免許証等または住民票、直近の所得税の納税証明書、確定申告書の控え、青色申告決算書または収支内訳書

賃金状況報告シートやIT戦略マップ(PDF)は、補助率2/3の適用や一部の加点を受けるときに追加で必要になります。なお、1法人(1個人事業主)につき通常枠は1申請のみで、他の枠との組み合わせは可能です。一度提出した申請は、結果が公表されるまで取り下げられません。

📊 このセクションの要点

事前にGビズIDプライムとSECURITY ACTIONを整え、交付決定後に契約します。支払い方法と順序を誤ると補助対象外です。

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賃上げ・生産性の要件と、未達のときの返還

通常枠の申請者は、補助金を受ける代わりに、3年間の事業計画で数値目標を約束します。この約束が、制度の最も重い部分です。

項目 内容
労働生産性(全申請共通) 翌事業年度以降の3年間の事業計画で、1年後に労働生産性を3%以上向上させ、3年間の年平均成長率3%以上。前身制度(2022〜2025年度版)の一部で交付決定を受けた事業者は4%以上
労働生産性の計算式 (営業利益+人件費+減価償却費)÷ 年間の事業者当たり総労働時間
補助額150万円以上 給与支給総額(非常勤を含む)の1人当たり年平均成長率3%以上、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上にする、賃金引上げ計画を従業員に表明する。いずれも申請要件
補助額150万円未満 賃上げは原則、加点項目。前身制度(2022〜2025年度版)で交付決定を受けた事業者は、年平均3.5%以上と従業員への表明が申請要件

保険医療機関、介護保険サービス事業者、社会福祉法に基づく社会福祉事業の事業者、学校教育法に基づく学校等は、賃上げ要件の適用外とされています。

未達のときの返還ルール

未達の内容 返還の考え方
事業場内最低賃金の目標が未達 補助金額÷3年×未達の年以降の年数を返還。1年目で未達なら全額、2年目なら3分の2、3年目なら3分の1
給与支給総額の目標が未達 全額の返還を求められる場合がある
従業員への表明をしていなかった 申請時に表明したと申告して実際は表明していなかった場合、交付決定の取消し

注意

付加価値額が増えていないなど一定の場合や、天災などの場合は、返還を求めないとされています。また、賃上げ未達の返還額は補助金交付額が上限で、加算金・延滞金は含みません。ただし、辞退などで返還が必要になる場合は、別途加算金が生じます。

📊 このセクションの要点

補助額150万円以上は賃上げが申請要件で、未達なら最大で全額の返還があり得ます。金額帯の選択は、賃上げの実現可能性と併せて判断します。

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加点項目の考え方|審査で有利になる取組み

申請の審査では、加点項目を満たすほど有利になります。加点項目は公募回ごとに追加・改訂されるため、具体的な項目の数や番号は公募要領で確認する前提で、考え方を整理します。なお、加点の詳しい一覧は補助金の加点制度まとめで別途解説しています。

加点の種類 内容
導入ツールの選定 クラウド製品、サイバーセキュリティお助け隊サービス、インボイス制度対応製品を選ぶ
デジタル化セカンドオピニオン 通常枠のみ対象。中小企業診断士またはITコーディネータの確認者と、経営者本人がオンライン面談を行う。詳しくはデジタル化セカンドオピニオンの解説を参照
賃金引上げ 最低賃金の引上げ幅や給与支給総額の伸びを約束する
IT戦略ナビwith/IT経営サポートセンター 中小機構の診断、または1回60分の無料オンライン相談を利用する(両方利用しても加点は片方)
健康経営優良法人・くるみん・えるぼし 認定を受けている
成長加速マッチングサービス・省力化ナビ 中小企業庁・中小機構の無料サービスを利用する(締切日時点の状態が問われる)

注意

SECURITY ACTION の宣言は、通常枠の交付申請の要件です。加点ではありません。加点項目として挙げられる SECURITY ACTION「★★二つ星」は、セキュリティ対策推進枠などの別枠の加点であり、通常枠の要件と混同しないでください。

注意

加点を受けたのに賃上げ等の要件を達成できなかった場合、効果報告で未達が報告されてから18か月の間、中小企業庁所管の補助金で大幅な減点を受けます。加点のための約束は、守れる範囲で行うことが原則です。

📊 このセクションの要点

加点は公募回ごとに変わります。SECURITY ACTION は通常枠では申請要件、加点は別枠の話です。加点のための約束を守れなければ、他の補助金にも影響します。

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採択の実態|どのくらいの事業者が採択されているか

デジタル化・AI導入補助金の採択件数は、中小企業庁が締切回ごとに公表しています。公式発表には採択率の記載がないため、申請者数に対する採択者数を、当社で割り算した値を以下に示します。回次によって数値は動くため、水準の目安として読んでください。

区分 採択率の水準(公表された直近3回の範囲) 3回累計
全体 44.0%〜51.5% 47.2%
通常枠 42.2%〜43.9% 43.2%
インボイス枠(インボイス対応類型) 44.7%〜55.3% 48.8%
セキュリティ対策推進枠 71.4%〜72.7% (母数が少なく、1回あたり18〜88者)

補足

電子取引類型は、採択発表に内訳の記載がありません。複数者連携枠も公表は限られています。全体の累計値は、これらが含まれる回があるため、枠別の合算とは一致しない場合があります。

丸めて表現すると、全体でおおむね4割から5割が採択され、通常枠は4割台前半、セキュリティ対策推進枠は7割前後です。つまり、通常枠では申請者の半数以上が不採択になっています。

不採択の要因は公表されていない

公募要領は、審査内容は開示しない、不採択理由も事務局から通知する事項以外は開示しない、と定めています。不採択理由の統計も公表されていません。民間サイトには要因を挙げるものがありますが、公式の根拠はありません。一方、公募要領から、審査で見られる点は読み取れます。

審査で見られる点
自社の経営課題を正しく理解しているか
導入するITツールの機能が、課題とマッチしているか
データ連携や横断的な分析に取り組んでいるか
生産性向上の目標値は妥当か
国が推進する関連事業やセキュリティサービスに取り組んでいるか
セキュリティ対策を進めているか

また、前身制度(2022〜2025年度版)で交付決定を受けた事業者は、審査で減点されます。前身制度で導入したソフトと機能(プロセス)が重なる場合も減点で、完全に一致する場合は不採択とされています。

📊 このセクションの要点

採択率は公式発表からの当社算出で、通常枠は4割台前半です。不採択理由は開示されないため、公募要領が示す審査の観点に沿って、課題とツールの結びつきを示すことが基本です。

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申請者の負担と注意点|つまずきやすいポイント

制度の魅力が語られる一方で、申請者が負う負担は決して小さくありません。申請前に把握しておくべき点を整理します。

項目 内容
3年間の計画と報告 3年間の事業計画を策定し、効果報告を数年にわたって行います。
先払い 補助金は後払いです。ITツールの代金はいったん自社で支払い、実績報告後に交付されます。
事前準備 GビズIDプライム(約2週間)、SECURITY ACTION、決算書類、納税証明書などを準備します。
書類の保管 補助事業に関する書類は、補助事業の完了の日の属する年度の終了後5年間保管します。
立入調査 事務局・中小機構が、予告なしに立入調査を行う場合があります。
契約後の制約 導入したITツールを解約・利用停止した場合は、辞退の手続きが必要で、補助金の返還になる場合があります。
選択肢の限定 ITツールは登録済みのものから選ぶため、選択肢が限られます。

失格・取消しにつながる行為

次の行為は、交付決定の取消しや、IT導入支援事業者の登録取消しにつながり得ます。

行為 理由
申請マイページのID・パスワードを第三者(IT導入支援事業者を含む)に渡す なりすましと判断されるおそれがあり、交付取消しの対象
他人が管理するメールアドレスを登録する 同上
自己負担を減額・無償にする販売方法(キャッシュバックを含む) 補助金の目的に反する行為として、立入調査・交付決定の取消し等の対象
補助対象経費で取得したソフトを他者に供与する 不可とされている

注意

公式サイトには、IT導入支援事業者の登録取消しに関するお知らせが複数回掲載されています。IT導入支援事業者の選び方が、そのまま申請のリスクに直結するため、実績や対応力を見極めたうえで選んでください。

📊 このセクションの要点

先払い・3年間の報告・書類保管など、申請後の負担まで含めて判断することが重要です。ID・パスワードの共有やキャッシュバックは、取消しの対象になり得ます。

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省力化投資補助金との違いと使い分け

デジタル化・AI導入補助金とよく比較されるのが、中小企業省力化投資補助金です。目的と対象が異なります。

比較項目 デジタル化・AI導入補助金 省力化投資補助金
目的 ITツール(ソフトウェア・クラウド・AI)の導入による生産性向上 人手不足に悩む中小企業等が、IoT・ロボット等のデジタル技術を活用した設備を導入する
主な対象経費 ソフトウェア購入費、クラウド利用費、導入関連費(通常枠は最大450万円) 機械装置・システム構築費など(一般型)、登録された汎用の省力化製品(カタログ注文型)
事務局 中小機構・TOPPAN株式会社 別の公式サイト・公募要領

使い分けの考え方は、ソフト・クラウド・AIで業務を効率化するならデジタル化・AI導入補助金、機械・ロボット・IoT設備で省力化するなら省力化投資補助金です。これは当社の整理であり、公式見解ではありません。迷ったときは、公式のシミュレーターやIT導入支援事業者への相談で、補助額と要件を比較してください。

補足

国および中小機構その他の独立行政法人の他の補助金等と重複する事業は、補助事業の対象にできません。同じ経費での併用は不可です。別々の事業・別の経費での併用可否は、公式に明記が確認できないため、各公募要領で確認してください。

📊 このセクションの要点

ソフト・クラウド・AIならデジタル化・AI導入補助金、設備・ロボットなら省力化投資補助金が基本です。同じ経費での併用はできません。

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来年度の動き|概算要求で示されたこと、決まっていないこと

中小企業庁が公表した令和9年度の概算要求のポイント資料には、「省力化・デジタル化・AI投資補助金」という事業名が記載されています。内容は、人手不足や生産性向上等の課題を抱える中小企業・小規模事業者等を対象に、業務効率化やAX・DXの推進に向け、AIを含むデジタル技術の活用や省力化設備の導入を一体的に支援するものとされています。

区分 内容
一次情報(中小企業庁の資料) 「省力化・デジタル化・AI投資補助金」という事業名が、中小機構運営費交付金の内訳として記載されている。概算要求は要求の段階で、予算は未確定
解釈(民間・当社) 「現行の2制度が統合・一本化される」という見方。中小企業庁の資料に「統合」「一本化」の文言は確認できていない
未確定の事項 補助率・補助上限・申請枠・加点・開始時期は、公式に記載なし

注意

概算要求は、あくまで要求です。予算案の閣議決定(例年12月下旬)を経て決まり、要求額と決定額は異なることがあります。また、概算要求に出てくる6,980億円は中小機構運営費交付金全体の要求額で、新しい補助金だけの金額ではありません。「統合」「一本化」という表現は、民間や当社の解釈であり、公式に確定した事実ではありません。

したがって、今の時点で言えるのは、一体的に支援する新名称の事業が要求されたところまでです。デジタル化・AI導入補助金を使う予定の事業者は、現行制度で申請できる時期を逃さないことと、制度変更の情報を公式サイトで確認し続けることの両方が必要です。関連する動きは令和9年度概算要求の解説記事でも整理しています。

📊 このセクションの要点

来年度については、新名称の事業が要求されたのが一次情報です。統合・一本化という言い方は解釈で、詳細は未確定です。

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デジタル化・AI導入補助金のよくある質問(Q&A)

Q1.デジタル化・AI導入補助金とは、どんな制度ですか。

A1.中小機構の補助事業で、登録されたITツールの導入費用の一部を補助する制度です。ソフトウェア、クラウドサービス、AI機能、関連する役務などが対象で、運営は中小機構、事務局はTOPPAN株式会社です。申請者はIT導入支援事業者と共同で申請し、補助金は事務局から申請者へ直接支払われます。自社が自由に選んだソフトではなく、事前に登録されたITツールだけが対象になる点が、他の補助金との大きな違いです。

Q2.AIツールは補助対象になりますか。

A2.登録されたITツールであれば、AI機能を搭載したものも対象です。公募要領はITツールを「ソフトウェア(AIを含む)・オプション・役務・ハードウェアの総称」と定義しています。AIを搭載したソフトは登録時に申告する決まりで、ITツール検索画面にAI搭載の表示が出ます。区分は「生成AI」と「生成AI以外のAI技術」です。ただし、自社で選んだAIツールが未登録であれば対象外です。まず公式サイトで登録状況を確認してください。

Q3.申請枠はいくつあり、何が違いますか。

A3.5種類あり、補助額・補助率・対象経費が枠ごとに異なります。通常枠、インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)、セキュリティ対策推進枠、複数者連携デジタル化・AI導入枠の5つです。通常枠は最大450万円で、ハードウェアは対象外です。インボイス対応類型はPC・レジなども対象で補助率が高く、セキュリティ対策推進枠はお助け隊サービス限定、複数者連携枠は10者以上の連携が必要です。

Q4.自分でソフトを選んで契約し、後から補助を受けられますか。

A4.受けられません。登録ITツールを、交付決定後に契約する必要があります。補助の対象は、IT導入支援事業者が提供し、事務局に登録されたITツールの導入費用だけです。さらに、交付決定前に契約・発注・納品・支払いをした経費は対象外です。商談や見積は交付決定前でも行えますが、契約は交付決定を待たなければなりません。順序を誤ると補助金を受けられなくなります。

Q5.申請の前に準備しておくことはありますか。

A5.GビズIDプライムの取得と、SECURITY ACTIONの宣言が必要です。どちらも全枠共通の交付申請の要件です。GビズIDプライムは発行まで概ね2週間かかります。SECURITY ACTIONは「★一つ星」または「★★二つ星」を宣言し、宣言済みアカウントIDを申請時に入力します。加えて、法人は履歴事項全部証明書や納税証明書、決算書類などが必要です。締切直前は混み合うため、早めの準備が欠かせません。

Q6.賃上げの約束は必ず必要ですか。

A6.補助額150万円以上の通常枠では、賃上げが申請要件です。150万円以上では、1人当たり給与支給総額の年平均成長率3%以上、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上にすること、従業員への表明が求められます。150万円未満では、原則は加点項目です。ただし前身制度(2022〜2025年度版)で交付決定を受けた事業者は、150万円未満でも年平均3.5%以上と表明が申請要件になります。保険医療機関や介護保険サービス事業者などは適用外です。

Q7.賃上げや生産性の目標を達成できなかったらどうなりますか。

A7.目標の内容により、補助金の一部または全額の返還を求められる場合があります。事業場内最低賃金の目標が未達の場合は、1年目で未達なら全額、2年目なら3分の2、3年目なら3分の1を返還します。給与支給総額の目標が未達の場合は、全額の返還を求められる場合があります。付加価値額が増えていないなど一定の場合や天災は、返還を求めないとされています。約束は、実現可能な範囲で行うことが重要です。

Q8.採択率はどのくらいですか。

A8.公式は採択率を公表していません。公表件数から当社が算出すると、全体でおおむね4割から5割です。通常枠は4割台前半、インボイス対応類型は4割台後半、セキュリティ対策推進枠は7割前後が目安です。いずれも申請者数に対する採択者数の割り算で、回次により変動します。不採択理由は事務局から通知する事項以外は開示されないため、審査の観点(課題の理解、ツールとのマッチ、目標値の妥当性など)に沿った計画づくりが基本です。

Q9.補助金は、いつ受け取れますか。

A9.補助金は後払いで、実績報告と確定検査のあとに交付されます。ITツールの代金は、交付決定後にいったん自社で支払います。その後、請求書、支払いの証憑、ITツールの利用が分かる画面のキャプチャなどを実績報告として提出し、確定検査を経て補助金額が確定、交付されます。支払いは銀行振込(または口座振替)とクレジットカード1回払いに限られ、現金払いや分割払いは認められません。資金繰りの準備が必要です。

Q10.来年度はどうなりますか。

A10.概算要求に、一体的に支援する新名称の事業が載りました。詳細は未確定です。令和9年度の概算要求のポイント資料に「省力化・デジタル化・AI投資補助金」という事業名が記載されました。これが一次情報です。「現行の2制度が統合される」という見方は民間や当社の解釈で、公式の資料に統合・一本化の文言は確認できていません。補助率・上限・申請枠・開始時期も未確定のため、公式サイトで情報を確認し続けてください。

まとめ|デジタル化・AI導入補助金を使う5つのポイント

ポイント 内容
1 枠から逆算する 5つの申請枠は、補助額・補助率・対象経費が別物です。導入したいものから枠を選びます。
2 登録ツールと交付決定後の契約 登録ITツールのみが対象で、交付決定前の契約・発注・支払いは対象外です。
3 賃上げの約束を見極める 補助額150万円以上は賃上げが申請要件で、未達なら返還があり得ます。
4 審査の観点に沿う 採択率は通常枠で4割台前半です。課題とツールの結びつきを示します。
5 回次依存の点は公募要領で確認 締切、補助率の条件、加点項目は回ごとに変わります。最新の公募要領で確認します。

制度選びから申請準備まで、事業者の状況に合わせて整理します

デジタル化・AI導入補助金は、枠の選び方、ITツールとIT導入支援事業者の見極め、賃上げ・生産性の約束の置き方で、結果と負担が大きく変わります。壱市コンサルティングでは、中小企業診断士の視点から、事業者の状況に合わせた整理をお手伝いしています。

📋 補助金の申請支援

制度の選定から、事業計画の整理、申請準備までを支援します。

💼 経営アドバイザリー

賃上げ・生産性向上の計画が実行可能かを、経営の視点から点検します。

🤝 AI導入支援

AIをどの業務に入れるべきか、補助金を使う前提で整理します。

まずは、導入したいツールと現状の課題をお聞かせください。

こんなお悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください

  • ✅ どの申請枠が自社に合うのか分からない
  • ✅ 賃上げの約束を置いても守れるのか不安
  • ✅ IT導入支援事業者の選び方に迷っている
  • ✅ 省力化投資補助金とどちらを使うべきか判断したい

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